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ポンド  作者: 新庄知慧
86/88

86 パレードが始まる

・・・・・まだ死ぬことはないよ、あんた。



あ。妖怪の声。



・・・・そうよ、私たちを呼んどいて、それはないよ。



今度は金色銀色目の女の声だ。そういえば、あなたたち、やっぱり沈んじゃったのですか。



・・・・・人なんて、生きてもたかだか100年。本当にあっという間なんです。その間にも辛いことばかりでしょう。だから一度死なないとならん。



 死んだら終わりじゃないですか。今の僕みたいに。



・・・・・・そうじゃないと思ってるから、あなた私たちを呼んだんでしょう?



僕はあなたたちを呼んだんでしょうか?



・・・・・・そうです。一度死ぬために。そしてこの世に生まれるとは何なのかを知るために。私やこの女や、子女を呼んだのです。私たちはあなた自身です。



あなたたちが、僕自身?



・・・・妖怪です。



  ・・・・・・・・・・・・・



 池の上では、灯籠たちの光が、激しく輝き始めた。一休みした婆さんたちの、お経のコーラスが再び始まった。それはお経というのとは少し違うような、生命のシンフォニーとでもいうような、よく分からない音楽に変わっていった。


「さあ、始まるぞ!」


あの病院の廃屋には、大群集が集結していた。そしてそれらが、生命の交響曲にのって、行進を始めた。


行進にあわせて、池の灯籠たちは美しくリズミカルに反応し、色々な光を発し、音をたてた。


行進する大行列には、課長が、人参が、蝦蟇が、若侍が、絶世の美女が参加して先導している。


大群集に近寄ってよく見れば、それは紛れも無い、妖怪たちのパレードだった。


夏の盆の夜。行止まりの池を囲み、妖怪たちの祭りが始まったのだった。

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