81 だんだんわかってくる・・・
「しかしね、死刑というのが、これが難しいんだなあ」と課長は言った。「どうするか、死刑なんて、どうやるのか」
人参が学者みたいな言い方で言う。
「や、やはり、その阿村さんがわざわざ持ってきたバケツに入って、池に沈むんではないでしょうか。重しなら、その辺から石を拾ってきましょう」
課長は困った顔で言った。
「いや、そういうことではなくて。死刑と言ってるのは、極刑という意味でね。永遠に終わりにしなければならないということなんだ。
それは死ぬってことでいいのかな。死んでどうなる。それが極刑か。そこのそれ、妖怪さんたちみたいに、また出てきたら困るし。
森下君、どうだろう」
闇の中から、枯尾花の森下婆の声がした。
「うちはこの人の弁護人どす」
「何?!」課長は声を上げた。
「これは驚いた」蟇蛙が言った。
「うちは難しいことは分からしまへん。そやけど、この人はかわいそうな人ですよ。いい人ですよ」
「い、いい人はいっぱいいますよ。世の中の人は、みんないい人ですよ」
人参が言う。
「どうしてこの阿村君がいい人なのかな」
蟇蛙がきいた。
「その子に、色んなこと教えてくれはった」
闇の中から、森下婆のシルエットが進み出てくる。月明かりが彼女の顔を、次第に浮かびあがらせる。
彼は息をのんだ。
その森下の顔は、あの森下ではない。20年か、200年も若返ったような顔である。
そしてその顔は、驚くほど美しい。どこかで見た顔。
「あなたは…?」彼は声をあげた。
「うちの子のこと、どうもありがとうございました」
その絶世の美女は、彼に頭を下げた。
「いえ、そんな。これは、あそこの、あの方が私のお相手にと引き合わせてくれた方なんです。あそこの、あの…」
彼は妖怪たちの方を指さし、そちらを見た。小舟の上では、金色銀色目の女も彼に頭を下げた。
「この子は一体、誰だったんでしょう」
「うちの子。この世に生まれることができずに、行止まりになってしまった可哀そうな子です」
彼のもとに近寄り、子女を抱き上げて彼女は言った。
「水子?」




