7 カラオケ河原乞食
「「すごい!」
ってことは、つまり、
や、や、殺ったわけですか!!」
「そんなに殺ってほしいですか。やっぱり」
「い、いえ、別にそんな」
「すごいんですよ、これが」
「じゃあ、やっぱり、や、殺ったわけですか!!!」
何を言っているのだ。どうせ大した話ではないのだ。
彼はこの、蟇蛙と人参の会話には全く興味なかったが,
「だからね、君もカラオケで騒ぎすぎると大変だよ。はっは、はっは」と蟇蛙から急に話をふられたので、
「いや、まいったですねえ、僕もそのうち、日本刀でテヤーですかね。はひほひはひ」
などと、条件反射のスイッチを入れ、聞きたくもない話に耳を傾けざるを得なくなってしまった。
「や、殺ったわけですか」
人参は執拗に話の先を聞きたがった。馬鹿じゃなかろうか。蟇蛙は話をすすめた。
「それがですね・・・」
男は日本刀をもって斬り込んだ。しかし結果として殺られたのは、この男のほうだった。いや、殺されはしなかったが、瀕死の重傷を負った。
くだんのカラオケ三昧の家へ、男は斬り込んだ。
耐え難きを耐え忍びがたきを忍んできたが、もう我慢できない。
もうやめろ、と日本刀をもって怒鳴り込んだ。
その前に警察にでも届ければいいと思うのだが、そうしなかったこの男も変といえば変だ。
まあともかく、男は乱入した。すると、かのカラオケ三昧の家の方は大パーティーの最中で、男の怒鳴り声など聞こえもしない。
その家には十何人、いや何十人の客がいて、やがて男の怒鳴り声に気付いてカラオケの音が止んだ。
すると、興奮していた日本刀男は、改めて怒鳴り、家の中を見渡した。
けしからんこのカラオケ宴会の参加者を見た。それは実にけばけばしい見なりをした連中で、悪趣味な仮装パーティーだった。
年齢不祥な連中で、まるで昔の河原乞食みたいな連中だった。
「静かにしろ!こんな宴会はもうやめて、立去れ!」
男は命令した。しかしその家にいた連中は、みんな怪訝な顔をした。不思議だ、疑問だ、心外だ、という顔をした。
「・・・ど、どうしてですか」
人参が尋ねた。
河原乞食みたいなこの連中は、やがてみんな悲しそうな顔をして、いった。
だって、私たちを呼んだのは、あなたじゃないですか・・・