表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ポンド  作者: 新庄知慧
54/88

54 会社へ知らせた?!

続けて彼は言った。


「はあ。あ、会社に、連絡してよろしいでしょうか」


「もう連絡してあるわ」


「げっ」


「何、その反応」


「あの、どうして私の勤め先が分かったのですか、それで、何とおっしゃったのでしょうか」


「あんたの名刺からね。半狂乱になって、意識不明やからね、会社にも知らせとかんと、迷惑やろ、会社にとっても。


昨日あったことをかいつまんで知らせたわ。


あんた、未成年者と違うんだからね、ああいうことやったら、こうなるっていうこと、分かっといてもらわんと困るよ」


「は、はい」


彼は目の前が真っ暗になった。




それから30分ほども説教され、さらに幾つかの書類を書かされると、いったんは放免されることになった。


警察の建物の外へ出た。建物には、もとより冷房もきいていなかったが、外に出ると、強い陽射しが体にこたえて、よろけそうになった。


会社へ知らせた?


警官の言葉を思い出し、愕然とする。あの職場にこんなことがあったなどと知らせたら、どんな反応を示すか。想像がつかなかった。


どんな顔をして出社したものか。とにかく、まずは連絡しなくては。しかし、何と言ったものか。


実は、彼の会社は国策企業であるゆえに、犯罪を犯した場合には免職となるという就業規定があった。


これが発動されるのは、社員が仕事に関連して収賄をした場合などであり、10年に一人くらいはこの規定によって会社をクビになる人が出ているという。


僕もクビか…。


しかし、まずは電話しよう。気をとりなおして公衆電話を見つけ、会社に連絡することにした。


電話にでたのは、枯尾花の一人、森下婆あだった。


「あら。阿村さん」


いやあな感じに彼はとらわれた。


彼女には、小女と公園で二人しているところを目撃された。きっと変な男だと思われているだろう。


彼女の口を通して、今回のことがどんな風に流布されるか、考えるとゾッとする。続けて森下さんは言った。


「このたびは、とんだご災難で」


よそよそしい、無表情な受け答えだった。


声の影で、「あんた、もう、だめやね」と言っているのか「けったいな人やね、ほんま、そやけど、可笑しいわ、ひひひひ」 と嘲笑しているのか判断がつかなかった。


「あの、酒乱だったんです。実は事情があって。はは。あの、課長はいますか」


課長を出してもらうことにした。まずは事情をよく説明しよう。若気のいたりの酒酔い事件として、うまく説明しなければ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ