表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ポンド  作者: 新庄知慧
52/88

52 取り調べ

「すみません。しかし、覚えてないいんです。


あ、そう、あの池で、若武者に会って、お姫さまみたいな美人に会って、


それから、そう、お化けに追いかけられて、泥棒、と怒鳴られて、ああ、そこまでは覚えてるんですが。


今、何時なんでしょうか。会社に連絡しないと」


「何ゆうとんねん、泥棒って怒鳴られたんやろ。とぼけくさって。まあ、ええわ、いちいちつきおうてられへん。


あんたを突き出した人も、まあ、あんまり事を荒立てるつもりはないようやし」


ぶつぶつ言いながら、警官は牢屋の鍵を開けた。


「そいつを放すのか!」


隣の牢屋の男がさけんだ。


「うるさい!おまえもいい加減で正気にもどったらどやねん。何が妖怪や。いつまでもそんなやと、またジョットガンぶちかまされるで」


ショットガン?彼は思い出した。蟇蛙の話を。


「あ。この方。カラオケ事件の方ですか。日本刀のひと」


「どうでもええやろ、そんなこと」


痩せた男がまた叫んだ。


「やめろ!貴様も妖怪か。また私のような犠牲者が増えることになる。悪いことは言わないから、そいつを斬り捨てろ!でなきゃ、閉じ込めておくんだ!」


「ああああ、全く」


と、警官は疲れきったという感じの溜息をついた。


「あんた、もうここでは面倒みきれんなあ。はやいとこ気違い病院に行ってもらわんと」


そう言いながら、「来い」と言って、彼を牢屋の外へ連れ出した。


廊下を歩き、階段を上って、取り調べ室らしきところへ連れて行かれた。机に向かい合って座り、警官が調書らしきものを取り出し、彼に訊問を始めた。


「酔ってたんやろ」


「は、はい」


いいえ、と言ったらまた叱られそうな気がした。早くここから出たかったので、なんでも、はい、はい、と言うことにした。


 酔ったあげくに池に迷い込み、気が大きくなって舟に乗り、天然記念物の植物たちを荒らしまわった。暑気あたりで頭が少しおかしくなっており、そんな行為にでてしまい、しっちゃかめっちゃかだった。と、そんなことであったということにされた。


「夜のことやし、侵入禁止の看板も見えなかった。そやな?まあ、だからって許されるもんとちゃうけどな」


「はい・・・・」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ