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ポンド  作者: 新庄知慧
38/88

38 不遇の深掘り 

妖怪は言った。


「妖怪といい、乞食といい、私はそんなものが無性に好きで、だから私はそんなものになりたいと思い、事実そうなってしまった」


「ジュリーさんですか、あなた?」と彼がきく。


「ジュリーって、あの芸能人か。ちがうよ。あいつはこの世に居場所があるじゃないか。私は場所がないんだよ。場所を得るべく遇されてないんだな。だから不遇なのだよな」


「あなたの言うことが分からないではない。つまりドロップアウトですね。オフコース、コースから外れて落ちる。何かとても、何もかもに、満足しないんですよね」


「無いんだよ」


「は?」


「無いというべきなんだよ」


「虚無的なんですね」


そんなことではないんだと言いたげに、妖怪いや乞食は、視線を水面の近くから遠くへとすべらせた。


否、という思いが鋭く眼を光らせ、水面には彼の視線によって飛沫がたつのではないかと思われた。


「つまんないのよね」


「それは僕も同感で」


「俺のつまんないは、根が深いんだよ、バカ」


「怒らないで下さいよ」


「いや、つまらないのではない」


「というと?」


「捜している途中なのだ。胡乱に立ち尽くしているのではない。苛立ってるんだ。ぐつぐつ苛立って、かきむしっているのだよ」


「あなた、本当は、ご職業は何なんです」


 夕暮れがそろそろ近づいてきていた。


 休日もこれで終わり。明日から、灰色の労働の日々、不遇、屈託、エトセトラ…ふっとそんな思いがよぎると、いたたまれなくなる。ああ、典型的の絶命寸前。


「本当の職業。本当の職業というのはね…」


 妖怪乞食は自問するように言い始めた。


 言いかけて口をつぐんで、小女の方に目をやった。まるで同胞を見るかのような、妙に生暖かい親しみをもって。


「…・じゃあ、またついてきて下さいよ。職業、教えるから」


 彼は再び妖怪について歩き出した。

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