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ポンド  作者: 新庄知慧
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18 行き止まりは行き止まり

しかし、そうした振る舞いの無理が自分の内側で黒いマイナスのエネルギーになって心を歪めていってるんだろうと思うんです。


小さい時から、僕は人の顔色をうかがってばかりいたんです。そして、どうしてやるとその人が一番喜ぶのか、そればかり必死で見つけ出そうとしてたんです。


しかしそれはすべて保身のためのご機嫌うかがいだ。そうですよ、人間失格よりもまだ始末が悪い。


しかしそれなりに苦労もあった。ご機嫌うかがいも、はじめはうまくいったためしがなくて、失敗しては、ギャーギャー泣いてばかりいたんです。いじめられっ子だったんですよ、僕は。わかるでしょう?


ああ、そうなんだ。僕は人の顔色ばかりうかがっていたので、自分の顔色をうかがうことが出来なくなっちまったんですよね。自分で自分の欲しいものが見当もつかなくなってしまった。


―ああしかし僕は最近、もう終わりだなって、つくづく思ってしまって、


―そりゃあ、職場の中年に言わせれば、年齢的にはまだまだ若い。しかし、ホラ、青春ていうのは17くらいから24歳くらいまでと、社会通念上、相場が決まってんですよ、僕は通り過ぎてしまった。そして通り過ぎてみると、ほとんど何も青春みたいなものはなかった


ーいや、苦痛だけはあったというべきでしょうが、青春なんて苦痛以外の何者でもないのかな。


―しかし、いいことは何も…いや、こういう言い方は贅沢な欲張り者の言い方なんでしょうね、そうです。僕は欲張りなんだ。


―しかし、私は、現にここに在る私は、幸福じゃないことは確かです。これまでに何もなかった、そして、これから・・・・・


ー結婚して子供をつくってパパになれたとして、一体何なのでしょう。



僕は今、自分の一番嫌がってたレールの上に、おめおめと戻ってきて乗っかってるんです。



―と言って、レールを脱する気力もない。さらに悪いことには、僕はもう色んなことに興味や好奇心もなくなってきてしまった。人生は上り坂ではなく下り坂だ、と何かに書いてありましたが、こんな予想もしなかった急勾配の下り坂があろうとは思わなかった。


―つまんねえ、つまんねえ、何てつまんねえんだ!人は歩くとき、右足を出して、左足を出して、そうやって歩く、


―ひどくつまんねえ、つまらないですよね、本当に。


でも、つまらないと苛立ってるうちは、まだ若いのでしょう。しかし絶命寸前であることに変わりはない。いずれにしてもひどいことだ。



・・・・・



言いながら、「でも」とか「しかし」とか「いや」とかいう言葉だらけなことに気づき、全く優柔不断な、いやになる告白物語であることに気づいた。


どうしようもない奴だ。俺は。どうしようもないから、もう終わりなのだ。


「言ってしまった。また死にたい気持ちになってしまう。僕はこんな風にまくしたてて、一年前に最後の頼みだった女友達…もちろん恋人なんかじゃあない、その人にまで愛想をつかされた。


それ以来、パチンと脳細胞のヒューズが飛んで…何も、もう考えないことにした。


望んだり希望をもったりするのは悪だと体感して、何も、ものを考えないで、そのおかげで生命を維持してきた。死ねばいいのだともいえますが、


死ぬ勇気などもありゃしない。


それ以上に、


生きる理由は、


全くない!!」

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