表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ポンド  作者: 新庄知慧
16/88

16 こおんなが現れた

そのまま小一時間も過ぎた。彼は眠くなった。


「ねえ、誰も受け持ちの人、見つからないんでしょ。私、眠くなってきたから帰ってもいいかしら」


返事がないので、立ち上がり橋桁の下の彼女のもとへ歩み寄った。


ねえ、と声をかけると、あいすみません、今宵あなたを誘って、どうにかこうにかしようと思ったのですけれど(どうにかこうにかというところが聞き取れなかったのでくやしい思いをした)店の者は皆出払っておりまして、お相手といってはこの者しかおりません。


これは女でもなければ、男でもない。


小女こおんなに過ぎないのです、と言って、30センチほどの長さの物体を、女はうつむいたまま、彼の方に差し出した。


暗いのでよくわからなかったが、人形のようだった。


そして、もうおしまいが近づいているから、この世は店じまいです、と、わけのわからないことを言って、「ああ疲れた」と女は吐き捨てるように言った。


彼は事の運びに何がしかの興味を覚え、またこの女が暗闇の中にしゃがんでいると、またぐっとセクシーにも感じられたので、そこに並んで腰を降ろし、少し話をしようかと尋ねた。


答えがなかったので、彼はかまわずしゃべり始めた。


「この世の店じまい」というあたりから言葉が紡ぎだされてきてしまったのだ。


「この世の店じまいってね、そのその言葉が気になってしまったのです」


女は小女の体を手に持って差し出し、下を向いたまま動こうともしない。


「僕は昨日の晩、その言葉に通ずるような体験をしたんですよ」


昨日の晩?一体何があったというのだ。


しゃべり始めてつまづいた。御大層な体験など何一つないサラリーマンのくせに。


そう思って口を止め、脇を見ると小女は左右に揺れて踊っていた。


何かを促して女がその人形を動かしていたのだ。相変わらず下を向いたまま。受け取れと言っているようだ。


彼は小女に両手を伸ばし受け取った。


「ありがとうございます」


と彼は礼を言った。小女を手にすると、生暖かく、まるで体温のある生き物のようだったので彼はどきりとした。


何だろう、これは。


彼はその物体の正体を確かめようとも思ったが、それより、しゃべり始めた話の続きをするほうが先決になってしまった。


「昨日の晩だったんです。それはね、つまり…」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ