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小品

VR家族

作者: 星野☆明美

「なんだよう!」

「なにさ!」

田中家では今日も懲りずに夫婦喧嘩していた。

こどもがわんわん泣いてるのに放ったらかしだよ?

夫婦共通の意見として、伴侶の顔を見飽きた、というのがあった。

ピンポーン!

ドアチャイムが鳴った。

「なんですか?」

怒気を孕んだ声で妻が応対に出る。

「田中さん。田中さんに今ピッタリの商品をお持ちしました」

社会人になったばっかりで営業に回されたような男が懸命にセールストークする。

「VRをご存知ですか?ゴーグルをつけて、映像を見ながらいろんな体験ができます」

「知ってるけど興味ないわ」

「そう言わずに!田中さんに本当に必要な機能がつきました」

「うちに必要な機能???」

夫がなかなか戻ってこない妻の様子を見に来たついでに話に加わる。

「本当に?」

「本当だろうな?」

「無料で試用期間がつきます。ぜひお試しください!」


「俺の好みは沢田口やすこ」

夫がそう言いながらインターネットで女優の沢田口さんの画像を大量に収集してAIに記録した。

それをVRの装置に接続して、準備完了。

鼻歌混じりにゴーグルを装着する。

「あなた」

妻の声に振り向くと、妻の姿が沢田口さんの姿に取って代わっていた。

「なんだい?」

思わず鼻の下をのばす夫。心なしか当たりが柔らかくなっている。

「悠介と遊んであげて」

「おお。いいぞ」

悠介も今テレビで人気子役の悠太郎君の姿だ。

「かわいいなぁ」

仕草の一つ一つが可愛らしい。自分の子どもには見向きもしなかった夫が心を入れ替えて猫可愛がりしている。

「なんて幸せなの?」

妻も自分のVRのゴーグルをはめている。夫は手の届かない俳優のキリリとした容姿だ。

これが本当の仮面夫婦(?)

VRの力で田中夫妻は仲睦まじくなった。


試用期間が過ぎたある日。

先日のセールスマンがやってきた。

「いかがでしたか?」

田中夫妻はゴーグルをつけていなかった。

「せっかくだけど、うちはこれいらないわ」

妻がVR装置一式突き返した。

「なんでですか?」

セールスマンが慌てて聞くと、

「飽きちゃった」

とのこと。

「そんなぁ…」

すごすごと帰っていく男。

その後、田中家の夫婦仲は良くなったり悪くなったりしたそうだが、飽きっぽいのは人間の性かもしれない。


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― 新着の感想 ―
[良い点] わはははw 美男美女も、見慣れりゃ見飽きるというわけですなぁ(笑)
2019/06/13 19:14 退会済み
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