運命の歯車
逃走経路も確保してることだし、団員連中は俺を留守番させてしばらく帰ってこない。
ふぅ…、なんて完璧なんだ。
時々自分が恐ろしく感じる。
ドゴオオォォォォォォォォンンンッ!!!
!? なんだ今の爆発音は!?
そういえば……、出掛ける前に他の下っ端が『勇者一行がすぐそばの街まで来てるらしい』とかなんとか言って騒いでいたような………。
くっ、間違いなくそれだ!! 街の住民に依頼されたか、もしくはばったり鉢合わせして盗賊の存在を知られたか。だからあれほど慎重に行動しろと言ったのにポンコツ共……!!
でも今はそんなことどうでもいい!! さっさとおさらばしないと、モタついてたら勇者に捕まる!!
ああああああああもったいないぃ~!!!!
団長の自室から出たら後は一本道しかなく、その突き当りに宴や食事の際に使用する大きな空間が広がっている。
そこは必ず通らなければならない所であり、俺は丁度そこに辿り着いた。
勇者一行だ。勇者一行がいる。
そしてさっきご紹介しました大きな空間、ぽっかりと外に続くそれはそれは大きな穴ができており、ボロボロに仕上がっております。日光が身に染みるぜ……。
穴から見える外には、見張りをしてた盗賊団員が数人ボロ雑巾になって伸びていた。
おいおい、人数的に、留守番組が俺以外全滅なんだが……!?
つうかなんで知らせないんだオマエらぁぁ!?
せめてもうちょっと早目に非常事態を知らせてくれれば………、いや、違うな。
勇者一行が疾く強すぎた・ってやつだ。
なんて制圧力してやがる……!!
さて、どうするかな。
出口に続く道は見えてる。で、その前に勇者一行がいるわけだ。
う~ん、取り合えず隠れて熟考する「そこのオマエ」……え、見つかった?
いや、自意識過剰になっちゃダメだ。俺の後ろにいるヤツかもしれないし。この勘違いは恥ずかしいからな。
「どうやら生き残りがいたらしいね……」
勇者が剣を抜きながらこっちにゆっくり迫ってくる。
あらら、勘違いじゃなかったみたい……。
こいつらと敵対しても得することは何も無いからいっそ逃げたいが、あちらさんはどうも闘う気満々なご様子。
そうだよな。敵がダメなら味方になればいいだけの話、それじゃあちょっと頑張りますか。