4章 幕間 新人メイドの拷問地獄
※タイトル詐欺です
わたくしアビリット・メーナは副業としてケルベロス家のメイドをやらせて頂いております
今現在わたくしはケルベロス家の屋敷の地下牢に捕らえられ、裸にひん剥かれ・・・ることも無く、手錠で自由を奪われ・・・ることも無く、冷たい石畳の上で寝食を・・・すること無く、メイド服のまま自由にふっかふかの布団で寝て、三食今まで通り頂いております。通常営業です
もしかしたらこれからとてつもない事をされる前触れでは・・・そんな期待・・・ではなく不安を抱きつつ過ごしておりますと、とうとうやって来ました・・・地獄よりの使者、赤いドレスの・・・お嬢様?
見た目から分かる育ちの良さ・・・髪を上品に上で束ね、首には上品な首飾り、しなやかで上品な腰、スラリと伸びた上品な足・・・にしては少々下品・・・ゲフンゲフン・・・な赤色のドレス
その後ろには今回見事成し遂げられたマルネス様と憎きメイド長の姿が・・・もしやコレは・・・地下牢に閉じ込めたにも関わらず何もしないと見せかけてからの赤いドレスの登場・・・実はその赤いドレスはとある貴族の娘で変態願望があった!
『誰かの苦しむ姿が見たい!』
その要望に応えるべく用意された新人メイド、メーナ
熱した鉄棒を押し付けられ叫ぶメーナを見て恍惚の表情を浮かべる赤いドレスのお嬢様
メーナに初体験を聞かれ恥ずかしい思いをしたマルネスは同じ思いをさせてやると次々と男を送り込み陵辱させる
それを見てほくそ笑むメイド長
果たして新人メイドに希望の光は差し込むのか!?
『新人メイドの拷問地獄』──────now on sale
「なんだか・・・寒気がするのだが・・・」
《地下だからであろう・・・それよりもさっさと済ませ・・・なさいませ》
「お召し物を準備致します。彼女には封印の布を巻いているので魔力は使えない状態ですが、念の為拘束致します」
「いや、それには及ばぬ。一瞬寒気がしただけだ。それよりもさっさと始めよう・・・他にいくつか用事が出来たのでな」
赤いドレスのお嬢様はギロりとマルネス様を睨まれています。なかなか興味深いのですが、どうやらわたくしはここまでのようです。お父様、お母様、先立つ不幸をお許し下さい。出来れば出版の為にお金が足りなかった時、ヘソクリを盗んだ事もついでにお許し下さい
わたくしが懺悔をしていると、いつの間にかメイド長がわたくしの前に立ち、目を細めてわたくしを見つめて質問されてきました
「では、私が・・・あなたはアビリット・メーナで間違いないですね?」
何を今更な質問をされるメイド長・・・あっ、目が怖い
「はい・・・間違いないです」
「よろしい・・・では、あなたが先日、2階の空き部屋に居たのは間違いないですね?」
「はい・・・間違いないです」
「・・・その時、特殊能力『聞耳』を使用していたのは?」
「はい・・・間違いないです」
「・・・そこで仕入れた情報をどうするつもりでしたか?」
「それは・・・」
これはもう正直に話す他ありません。メイド長が質問し、わたくしが答える度に赤いドレスのお嬢様をチラチラと見ているのが気になりますが、今はそれどころではありません
わたくしは洗いざらい話しました
発禁となった薄い本を書いているという事
そのネタを求めてケルベロス家のメイドとなった事
そして今回のネタを薄い本にしようとしていた事
「・・・」
メイド長は無言で目頭を押さえています・・・感動したのでしょうか?
《まあ、妾は構わぬがな。どうせなら実名で売ったらどうだ?妾とクオンの仲を広く喧伝出来よう》
マルネス様、それは薄い本の意に反します。薄い本はあくまでも創作なのですから・・・
「そ、その薄い本とやらは今持っていないのか?」
赤いドレス・・・興味津々か!
さて、メイド長の無言のプレッシャーで押し潰されそうになっている今日この頃・・・如何なる処遇になろうとも守るべきものがございます
「わたくしの利き腕は左手です!もし書けないようにするのなら、どうぞ左手をお潰しください!」
まあ、右利きなのですが・・・これで万が一メイド長が『利き腕を潰して書けなくしてやんな!』と仰っても利き腕は守れる事でしょう
「ハア・・・メーナ、遅れましたが紹介します。この方はディートグリス王国侯爵であられるニーナ・クリストファー様・・・かの有名な『法の番人』と呼ばれてる方です」
大変申し訳ございませんが、存じ上げません
「・・・特能・・・いえ、あちらではギフトと呼ばれる能力『審判』をお使いになられ、人の嘘を見抜く事が出来るとの事です」
それは素晴らしい・・・って、え?
「私の質問に答えたあなたの真偽を見抜いて頂きました。結果・・・あなたの嫌疑は晴れたのです」
「うむ。最後の利き腕の件以外は全て真実を言っているのは明白・・・間者ではない事は私が保証しよう」
そ、そんな!拷問して吐かせるものかと期待・・・いや、不安になっていたのは無駄だったと?
「何故に落胆しているのですか?クオン様があなたの嫌疑を晴らす為にわざわざ侯爵であられるニーナ様を遠路はるばるお呼びになったのに・・・不服ですか?」
「い、いえ!滅相もございません!・・・ただ一介のメイド如きの為に侯爵様・・・しかも他国の方をお呼びするなんて・・・」
「・・・私もそうお伝えしたのですが、クオン様は『人一人を助ける為に惜しむものなどないだろ?』と。本来ならば疑わしきは罰せよとなるはずですが」
一気に身体の力が抜けたような気がしました。拷問を望む反面、やはり怖かったようです。取材の為に命を賭ける所存ではありましたが、どうやら覚悟が足りないようです・・・とわたくしが反省をしていると部屋のドアが荒々しく開かれ、先輩メイドが見事なまでの一礼を披露してメイド長へと駆け寄り耳打ちをしております
「・・・分かりました。ニーナ様、内々のゴタゴタに御協力頂き感謝の言葉もございません。申し訳ありませんが主に呼ばれてます故一時席を外したいと思いますが、御二方は・・・」
「クオンから頼まれれば断る謂れわない。・・・少々このメイドに聞きたい事があるので、しばらくここに居よう」
《わら・・・ワタクシは客人をもてなそう・・・わよ》
2人の返事を聞いたメイド長は表情を変えることなく先輩メイドを遥かに超える一礼を披露して部屋を出ていかれました。なんだか空気が軽くなった気が致します
残されたのは3人・・・非処女の幼女と処女の淑女と処女の腐女子。何かの濃度が高すぎて逆に妄想が止まってしまうシュチュエーション・・・ここで触手でも出ようものなら脳がパンクしてしまいそうです
「では、聞こうか。先程から言っている言葉の真意を」
へ?てっきりわたくしに聞きたい事があるとドギマギしていたのですが、赤いドレスことニーナ様は振り返り、マルネス様を見て言われております・・・これは・・・先日の情事の詳細が聞ける展開では!
《真意も何も・・・クオンと契りを交し子を成した・・・ただそれだけの事》
勝ち誇るマルネス様!しかし、ニーナ様は冷静だ!
「おかしな事を言うでは無いか。例え契ったとしても、そう早くに子を成したと分かるとは思えぬ・・・その自信はどこから来る?」
そうそう・・・わたくしもそこが疑問でした。数日で妊娠が分かるなんて聞いた事がございません。魔族は特別なのでしょうか?
《何を言う。精を注がれ子を成すのは自然の流れ・・・そんな事も知らぬのか?》
んん?やはり魔族は特別?
「た、確かにそれは分かる・・・しかし・・・その・・・確実とは言えぬはず・・・」
《カッカッ、何を言いおる。精を注がれ出来ぬ事などあるものか。なんの為の精だと思っておるのだ》
いや、気持ちは分かりますが・・・それはどうかと・・・
「くっ・・・では本当に・・・」
《何度も言わせるでない。妾とクオンは結ばれ子を成した・・・ただそれだけの事よ》
「・・・そんな・・・」
「あの・・・」
ああ、打ちひしがれてるニーナ様を見て思わず声が・・・お2人がこちらを見つめてる・・・クセになりそうです
《どうした?》
「・・・なんだ?」
ニーナ様、八つ当たりはおやめ下さい・・・視線が痛いです
「その・・・具体的に『精を注がれた』と言うのはどのような行為でしょうか?」
聞いてしまった!先程から妙に気になるフレーズだったのでつい・・・まあ、半分興味本位ですが!
《そんなのは決まっておろう。部屋で2人・・・》
おお!メモメモ・・・ない!くそっ!脳内に刻むしか・・・
《明かりを落とし・・・》
ふむふむ
《見つめ合う2人・・・》
いやいや、導入部分長くないですか!?わたくしとしましてはその後の挿入部分を・・・
《精を注がれた》
んんん?ちょっと・・・端折りすぎではございませんか?ニーナ様もこんな内容で耳を塞がなくても・・・
「あの・・・ですから、その『精を注がれた』部分を細かく・・・」
ふう、やれやれ・・・そんな言葉が聞こえてきそうな感じでマルネス様はため息をつくとお腹に手を当てニヤリと笑う
《未経験者はこれだから・・・良いか?こう子が出来る部分に手を当ててだな・・・こう一気にドバっと・・・注ぐのだ》
んんんん?手?
「あの・・・マルネス様、先程から何の話を・・・」
《だから!子を成す義を聞いてきたのはお主であろう・・・何度も言わすでないわ!》
頭の上で?が乱舞しております。やはり魔族は特別・・・んな訳あるか!
「オーホッホッホッ!抜かったわね、マルネス!」
なんと!リアルお嬢様風高笑い!使いこなす方が実在するとは!
《む?どう言う意味だ!》
「どうもこうも・・・あなたはクオンに騙されている。子を成す義とはそんなものではないわ!」
《何を・・・ならばどんなものと言うのだ!》
「それは・・・」
ええ!?ここでわたくしを見つめられても・・・いや、わたくしは愛の伝道師・・・ここは未通ではございますが、著書の為に調べ尽くした知識を披露するべきと判断・・・御二方にありとあらゆる知識をぶちまけます──────
《バカな!裂けてしまうわ!》
いやいや、自分のお股を覗き込まない!
「その・・・『爺』と言うのはどのように・・・」
字が違う!そんな使用人みたいに・・・
と、このように性に興味がある3人の女子が集まると必然的に話はディープな方向に・・・興奮し目を輝かせる御二方にわたくしも全力でお応え致しました。ええ、それはもう楽しいお時間でした・・・
ふと顔を上げるとそこには鬼・・・いえ、メイド長がいつの間にか佇んでおりました・・・どうやら話に夢中になり過ぎて気付けなかったようです。ちなみに御二方は未だ気付いておらず、メイド長の眉間のシワを作るのに貢献しておられます
卑猥な話で盛り上がる御二方・・・咳払いをするメイド長・・・ああ、わたくしも空き部屋の時はこんな状態だったのですね
「・・・マイナス49点」
メイド長が冷たく言い放つとギギギと音が鳴らしながらマルネス様は振り向き、ようやくメイド長の存在に気付きました。ニーナ様もメイド長の存在に気付くと佇まいを直されドレスに付いたホコリを払う仕草をされておりますが、時すでに遅しでございます。全て聞かれております
《いつからそこに!?・・・それよりもさっきからその点数は何なのだ!》
「・・・『裂けてしまうわ』辺りでしょうか・・・ちなみに点数はまんまマルネス様の評価点です。人を点数で計るのは失礼かと思いますが、小さな頃よりご成長を見届けてきたクオン様のお相手・・・それもサラ様を差し置いてともあれば評価せざるを得ません。サラ様を基準にマルネス様を評価するべく急遽導入した次第です」
《・・・サラは何点だ?》
「もちろん100点です」
《わ、妾は?》
「今までの行いは評価基準から外しております。なので、先程からの評価で言いますと・・・マイナス50点となります」
《んなー!ちょっと厳し過ぎではないか!?》
流石ケルベロス家の生き字引とも言われるメイド長・・・マルネス様もタジタジでございます。横でニーナ様が『私は?私はどうなのだ?』と言っておりますが、これもまた見事なスルースキル・・・聞こえないふりでございます
ややするとマルネス様からわたくしへとターゲット変更・・・スっとわたくしの前で仁王立ちでございます
「先程は話の途中でしたが、メーナ・・・あなたの嫌疑は晴れました。ですが、それはあくまで間者ではないという事。主のご子息の部屋を盗み聞きした事に変わりはありません。それでもクオン様から間者でなければ無罪放免と言われているので、特に罪には問わないのですが・・・あなたはどうしますか?」
「どう・・・とは?」
「このままケルベロス家に仕えるか否かです」
「・・・続けても良いのですか?」
「クオン様が不問と仰っているのです。何の問題もないでしょう・・・ただし」
「ただし?」
「続けるにしても辞めるにしても・・・執筆したものについては検閲させてもらいます」
「ええ!?」
「当然でしょう?国が発売禁止と指定したものをケルベロス家から出す訳にはいきません。ただでさえケルベロス家はシント国において微妙な立場・・・それはあなたも知っているでしょう?」
ええ、ええ、知ってますとも。あまりの力に利用される事を恐れて国に属さないとされていると聞いております。それだからこそ薄い本となれば価値がグーンと上がると思っておりましたが・・・検閲は不味うございます
「あの・・・辞めた場合は・・・」
「ケルベロス家のメイドをしていた身・・・何か不都合のある事を書かれていないか見る必要があります。よって、辞めた場合でも検閲させてもらいます」
オワタ・・・これもう書けんやつや・・・
「・・・これまで通り遠慮することなく書いて持って来なさい」
メイド長の目がキランと光る・・・コレは・・・どっちの意味でございましょうか・・・まさか!
新人メイドに卑猥な絵を書かせるメイド長。それはこれから始まる壮大な物語の始まりに過ぎなかった・・・『こんなもの?あなたの描きたかったものは』挑発するメイド長・・・更に過激に、更に大胆に表現するもその場で破り捨てられる。『どうやらあなたは本当の快楽を知らないようね』そう言うとメイド長は新人メイドの顎を上げ──────メイド長による新人メイドの裏教育。果たして新人メイドはメイド長の甘美な世界から抜け出せるのか!?『新人メイドの裏メニュー~メイド長は眠らない~』coming soon・・・乞うご期待下さいませ──────




