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最強の番犬と黒き魔女  作者: しう
『操るもの』
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3章 エピローグ

「今朝旅立ったらしいね」


「ああ、マルネスと2人でな。俺は寝てたし番はリナだった・・・見送りはクオンが連れて来た連中とチリとアカネ・・・それにサラだけだ」


「らしいと言えばらしいかな。でも、せめて私には一声かけて欲しかったけどね」


「アイツにとっちゃ散歩みたいなもんさ・・・行ってから数時間経つ・・・下手するともう帰って来るかも知れないぞ?」


「流石にそれは・・・いや、魔の世は時間の流れが違うのだったな。クオンとマルネス・・・シント・・・いや、人の世で最強と目される2人がダメなら人の世は終わる。簡単にはいかないだろうが無事に帰って来てもらわねば・・・」


「最強?マルネスはどうか知らないがクオンは最強ではないな」


「まだまだ父親は超えさせないって事かい?」


「いや・・・剣の腕はミン以下、特能の制御もイマイチだ。二つ合わさりゃなんとかってところだが、最強を名乗るには程遠い」


「の割には心配していないように見えるが?」


「そうだな・・・アイツは・・・タイミングが良い」


「ん?タイミング?」


「生来のものなのか考えてやってるのか分からねえが、後から考えるとアイツが居なかったら大惨事になってた事が山ほどある。まるでアイツがトラブルを引き寄せてるようにも見えるが、思い返してみると逆だった・・・アイツが居なけりゃトラブルなんてかわいいもんじゃ済まねえ事態が多々あった」


「なるほど・・・天のお導きってやつか。ならば今回の件も天啓なのかな」


「今回の件?」


「ああ。バースヘイム王国から打診があって相談したい事があるらしい。誰も信用出来なく水晶玉での会話は論外・・・心苦しいが私に王国に来て欲しいと」


「はあ?こんな時期に行くのか?」


「こんな時期だからこそだよ。で、さっき言ったクオンのお導きってやつさ」


「それのどこが導きなんだよ」


「クオンが余計な事をファーラに吹き込んだせいで、ファーラも行く気満々だ。そうすると1人でひとっ飛びって訳にはいかないだろう?護衛や従者を連れて行かなくてはならない・・・それが何かの天啓だとしたら?」


「バースヘイムで何かが起こる?もしくはシントで?」


「どうだろうね。ただのこじつけなんだけど、モリトの言葉を聞いているとあながちバカには出来ないと思ってね・・・クオンのタイミングの良さは」


城の執務室で穏やかに話すシンとモリト。いつ魔族や魔物が襲って来るか分からない状況の中で唯一心許せる友と語り合う時間はモリトが夜に神扉の番をするまで続いた──────




その頃、シント国領内に1組の男女が突如として姿を現した


「ん~、なんだか門番多いな~」


「人は臆病ですからね。何かに怯えているのでしょう」


女が街を遠目で見ると、兵士が何十人も立っていた。普段の街の入口の様子を知る女としては様相の違いに首を捻る。すると兵士が多い理由を知る男がニヤリと笑い女に告げた


「そういう君も今は人なんじゃ~?」


「そうですね。ですからひどく臆病になってしまいます。本当にここでよろしいので?なんでしたら中までお送り致しますが?」


男は手を差し伸べるが、女はそれを拒否する。そして、街を見つめ警備の穴を探っていた


「怖いな~。それっていつでも街の中に行けるよって事でしょ~?・・・まっ、どうでも良いけど~。でも、大丈夫・・・街の壁くらいなら誰にも気付かれずに越えられるし、寄りたい所もあるし、行くなら堂々とアソコを通って行きたいし~」


「そうですか・・・では、私はあちら側でお待ちしております」


「うん~、それじゃぁ~」


女は男に手を振ると勢い良く走り出し、瞬く間に壁を登り街の中へと消えて行く。男はそれを見届けた後、静かにその場から姿を消した




街の中に入った女が向かった先は武具屋。店に入ると女に気付いたバイアンが笑顔で手を振った


「おー、久しぶりじゃねえか!たまには顔出せよ!」


「久しぶり~。早速で悪いんだけど至急研いでもらえるかな~?」


女は挨拶もそこそこに背中に背負っていた剣をバイアンに差し出した。受け取ったバイアンは穴が空くほど受け取った剣を見つめ二つ返事で依頼を受ける


「お安い御用だ・・・って、えらく使い込んだな・・・少し時間かかるぞ?」


「どれくらい~?」


「簡易研磨ならすぐ出来るが、本格的にやると1週間は預からねえと無理だな。幸い今暇だから優先的にやってやるが・・・」


「簡単なのでいいよ~、用事あるから~」


「そっか・・・まあ、その用事が終わったら本格的にやってやるから持って来いよ!」


「うん~」


バイアンは女から受け取った剣を持って奥の工房へと消えて行った


残された女はひとしきり陳列されている武器を見るが、食指は動かない。女の手に馴染む最上の剣だった




「おいおい、どこで寝てるんだよ」


研ぎ終えた剣を持ち店に戻ってきたバイアンが目にしたのは店のど真ん中で寝る女。バイアンの声で飛び起きて目を輝かせて出来栄えを期待する


「安心しろ・・・その用事とやらがなんだか知らねえがよっぽどの事がない限りは斬れ味が落ちたりしないようにしっかり研いでおいた。大事にしろよ」


「ありがとう~代金は家に請求しといて~」


「おう!その用事とやらが終わったら持って来るんだぞ!・・・って、もう行っちまいやがった。・・・いつの間にか外は暗くなってたんだな・・・さーて、店じまい店じまいっと」


女を追って外に出たバイアンはすっかり日が落ちた街並みを見て片付けを開始しようとするが、ふと女の言っていた用事というのが気になり女が立ち去った方向を見た


「用事ってクオンの・・・まさかな」


既に女の姿は見えない。今更追いかけて聞くことも出来ず、バイアンは1人つぶやき首を振り、片付けを再開した




バイアンの店から出た女は一直線に目的地へと向かう


その途中、気配を感じて立ち止まると、街の外で別れた男の声が聞こえ、女は目を見開く


全ての言葉を聞い終えた後、再び足を動かし目的地へと急いだ


途中、警備兵に止められそうになるが一撃で気絶させ、日の落ちた外よりも暗い地下に辿り着くとロウソクの拙い明かりは大きな背中を照らしていた


「ジュウベエ・・・戻っていたか」


男性が声をかけるも女、ジュウベエは反応せず、ただ佇んでいた


不審に思った男性が近付こうとした瞬間、ジュウベエが動き剣の柄を男性の鳩尾にめり込ませる


「がっ・・・何を・・・」


「ごめんね~モリトのオジサン・・・ちょっと通るね~」


モリトがうずくまっている横を通り過ぎ、ジュウベエは真っ直ぐ神扉へと向かった


特に何の影響もなく神扉を通り抜け、しばらく歩くと空気が徐々に変化する


魔素の濃さを肌で感じ、武者震いするジュウベエ。明かりが無いために岩肌の壁に触れながら歩いていくと奥から明かりが差し込んでくる


結界とはまた違う光の渦がそこにはあった


ジュウベエは迷うこと無くその光の渦へと進み、耳鳴りと吐き気の嫌悪感に耐え切ると、とうとう魔の世へと辿り着いた


「ふう~気持ち悪っ!・・・さ~て、囚われのお姫様でもからかいに行くとしますか~・・・ボクの愛しのお姫様に~」


ジュウベエは頭の後ろで両手を組み、あっけらかんとした表情で道無き道を突き進む。しばらくして、街の外で別れたはずの男が現れ、ジュウベエと男は闇に溶け込むようにして消え去った


この日より1ヶ月・・・人類は最も過酷な日々を迎える事となる──────




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