3章 幕間 メイドの日常
わたくしアビリット・メーナは副業としてケルベロス家のメイドをやらせて頂いております
本業は絵描きをやらせて頂いておりますが、皆様には伏せております
なぜなら描いてる本は国から発禁指定されてしまった俗に言う『薄い本』のは事でして、まだまだ白い目で見られてしまうのが現状でございます・・・いずれはある一定の年齢を過ぎた方にとってのバイブルのような扱いになればと思う所存でありますが・・・
さて、ではなぜそのようなわたくしが由緒ある名家であられるケルベロス家のメイドをやらせて頂いているかと申しますと、偏に取材の為でございます
シント国内に家を構え、城の地下にある結界を守る一族・・・なのにシント国民ではないとされ、どこの国にも属さない神秘の一族
更に他の血を入れない徹底ぶり・・・つまり・・・つまり・・・近親相姦!いやいや、それだけで脳汁が鼻から出るわ!・・・と、言う訳で次の物語を描く為にメイドとなった次第でございます
ただ単純に取材させて欲しいと言っても断られるでしょう。それに内部でしか知り得ない情報もあるでしょう
元々両親には厳しく躾られてきた身・・・活かせる時が来たのです。料理洗濯下の世話・・・何でもござれでございます
更に更に・・・天啓とも言うべき特殊能力、『聞耳』を授かりしわたくしに隙などございません
もちろん取材の対象は、ケルベロス家の問題・・・寵児であられるケルベロス・クオン様。将来の伴侶であられる妹君、サラ様がいらっしゃるというのに、事もあろうに魔族の幼女を侍らせていらっしゃると言うでは無いですか!非常にけしからん・・・もといネタの宝庫でいらっしゃいますクオン様・・・わたくしのような下女を粗雑に扱って頂けると尚捗るのですがはてさて・・・
流れ出るヨダレを抑えつつ、とうとう始まったメイド生活・・・しかし、わたくしとした事が抜かりました・・・クオン様は遠出中・・・取材対象のいない不毛な日々・・・ガッカリです
毎日のようにメイド長に怒られながら過ごす日々・・・やってられません・・・が、ようやく待望のクオン様がお帰りになられました・・・しかも新たな女性を引き連れて!
見た目普通の女性にちっこい少女・・・顔色悪い執事風の男性と普通の男性はこの際放っておきましょう。そっちのジャンルはわたくしには早すぎます
普通の女性はともかく少女・・・やはりクオン様はロリ・・・おっと、これ以上はわたくしが消されてしまいます
とにかくまずは情報収集・・・メイド業そっちのけで盗み聞きを敢行しておりますと大体の人間関係が見えてまいりました
結果、マーナ様はクオン様に惹かれている可能性がおありのようですが、アースリー様は残念ながら特に恋愛感情などはないように見受けられました
少し残念な展開ですが、流石に妹、幼女、少女という面子では薄い本では収まりきらず太い本となってしまいます。ここは妹と幼女の争いに普通の女性であられるマーナ様が如何に奮闘するかという方が世間様も喜ばれる事でしょう・・・なので、わたくしはマーナ様に大いなる期待を寄せたいと思います
クオン様も齢18の性欲お化け・・・さぞやギラギラとした視線で女性のお尻や胸を見つめていると思いきや、そのようなご様子もなく淡々とされております・・・ガッカリです
これでは次回作はわたくしの妄想力頼りになってしまいます・・・出来ればドロドロとした内情を見させて頂き、妄想の糧とさせて頂きたかったのですが・・・
そうこうしている内に衝撃の事実が!
なんと戻られたばかりのクオン様がまたもや屋敷を離れる事に・・・これではなんの為にメイドとなったか分かりません
気落ちしておりますと何やら2組が怪しい動きを・・・1組は普通の男性、レンド様とマーナ様・・・確か2人は双子・・・もう1組はクオン様と金髪ロリことマルネス様・・・旅立ち前夜、2組の怪しい動きがわたくしの妄想を駆り立てます
どうやらマーナ様はレンド様のお部屋に、マルネス様はクオン様のお部屋に行かれるようなのですが、なんと都合良くレンド様とクオン様の間のお部屋は空き部屋となっておりました。すかさずその空き部屋へと入り、掃除をしているフリをして待ち構えます
・・・どうやらマーナ様がレンド様のお部屋に到着したようです
では、特能をば
『バタバタして聞きそびれてたけど、家を継ぐの無理ってどういう事よ!』
これは・・・あまり好ましくない展開ですね
『その・・・あの晩宴会の席でしこたま飲まされた後の記憶がなくて・・・気付いたら朝だったんだけど・・・その・・・』
どうでも良くなってきました
『ハッキリしなさいよ!』
『裸だったんだ』
『は?』
ムムッ
『だから!朝起きたら何故か裸で・・・それに布団の上には赤いシミが・・・マツさんは『あなた』とか呼ぶし、バイアンさんには『婿』だなんて言われて・・・』
なんと!これは予想外です。マツ様と言えば言わずと知れた鍛冶界の女王様!あの少しキツめの瞳で射尽くされれば大抵の男はまな板の鯉ならぬ金床の鉄!そのマツ様に美味しく召し上がられたと!?
『な、何よそれ!?いつの間にそんな・・・』
『多分、僕がギフト無しだからだと思う・・・ほら、前にクオンさんが言っていただろ?ギフト無しはモテモテだって・・・国から報奨金が出るからとか』
『そ、その制度ってシント国の制度でしょ?だったらレンドは関係ないんじゃ・・・』
『だから・・・ほら・・・バイアンさんの『婿』っていうのが・・・』
『つまり・・・婿養子にしてレンドをシント国の国民にするって事!?そこまでして・・・』
んー、途端に色気ない話となりました。どうもお金が絡むと心の奥底に萌たぎってたものが冷めていくような・・・これは少し脚色せねばなりませんね
フラリと異国の地に訪れた普通の・・・イケメン剣士。旅の途中で代々伝わる剣が折れた為に修復を依頼するも頑固親父に断られてしまう。途方に暮れるイケメン剣士・・・そこに現れたのは妖艶な天才鍛治職人、マツ・・・マッツ!マッツは私なら修復出来ると言うが条件を出して来た!私を抱きな!・・・だが、イケメン剣士には将来を約束した王国の姫が待っている!しかし、剣を修復しなければその王国には帰れない!イケメン剣士は返事を保留にするが、その夜ふと目を覚ますとイケメン剣士はベッドに縛れてしまった!襲い来るマッツ!何とか逃げようとするが下半身は正直だ!どうするイケメン剣士!めくるめく行われるベッドでの攻防!果たしてイケメン剣士は無事に王国へ帰れるのだろうか!?イケメン剣士と天才鍛治職人の熱き戦い!
『天才鍛治職人の夜のレシピ~狙われた性剣~』
・・・本命の付録としては良いかも知れません・・・ムッ!どうやら本命の方に動きが!
わたくしは急いでレンド様側の壁からクオン様側の壁へと移動・・・別に壁際に来なくとも聞くことは出来るのですが、何となく・・・
聞くとどうやら魔の世での作戦をお話に・・・これはまさかのガッカリ展開!?
『・・・死ぬ・・・ザザ・・・気はない』
んー、たまに特能を使っていると入るノイズは何なのでしょうか?先程までは何ともなかったのですが・・・っと、そんな事を考えている間に話は好ましい方向へと進んでいるようでございます
『ダ・・・ダメだ!・・・ザザ・・・人の身体では・・・その・・・』
またノイズが・・・それにしてもまさかマルネス様が拒否られるとは・・・てっきり奥手のクオン様が攻めきれないとばかり思っておりましたが・・・ん?・・・!!!?
今・・・今・・・クオン様の性癖が全開に!!
確かにわたくしは聞きました!注ぐ時に元の姿に戻れば良いと言うクオン様の言葉を!
つまり・・・つまり金髪ロリマルネス様ではクオン様が受け入れられない・・・大きさ的に!だから大人マルネス様で受け入れるのだが、それではクオン様の性癖的に満足出来ない!なので大人マルネス様で受け入れた後に金髪ロリマルネス様に戻る事によりクオン様は結果的に金髪ロリマルネス様を!!!
いけません!これはいけませんよ!薄い本が辞書並みに太くなってしまいます!立ちます!机の上で立つ薄い本などあるでしょうか!?どんな強風が来ても倒れない薄い本など前代未聞!・・・いや、ここは10部構成くらいで・・・全10巻・・・城建ちますね・・・金髪ロリ御殿が!
「ゴホン!」
タイトルはどう致しましょう・・・キャッチーな方が手に取りやすいでしょうか・・・
「ウォホン!」
確かケルベロス家の方は『神扉の番人』ですが、ケルベロスとかけて『番犬』と揶揄されていますとか・・・マルネス様は『黒魔法』をお使いになられる・・・『発情期の番犬と黒い魔族』・・・誰も手に取って下さいませんね
「ンン!!」
発情期はちょっと直接的過ぎでございます。超絶美女をわざわざ幼女へと変身させる・・・わたくしが描いた中でも最強・・・そう正に最強の主人公!そして、シントでは魔族=マルネス様と言って良いくらいの有名人・・・魔族はバレバレなので・・・魔族の女性・・・魔女!
『最強の番犬と黒き魔女』!!
「メーナ」
手に取りやすく、手に取って開いた者を甘美な世界に誘う歪な性癖の世界!特殊な性癖に悩む若者、クオ・・・クオーンは言い寄る女性をことごとく振っていた。そこに異界から現れた魔女、マル・・・マルマルはなんと幼女の姿に変身できるのだ!とうとう合法ロリを見つけたクオーン!しかし、そうはさせじとクオーンとマルマルの邪魔をする実妹や露出女達!なんとか猛攻を切り抜け、とうとうひとつになろうとした時!またしても試練が待ち受ける!!果たしてクオーンとマルマルはこの試練を打ち破り、色んな意味で破れるのか!?クオーンの起死回生の秘策とは!?
『最強の番犬と黒き魔女』
別冊付録『天才鍛治職人の夜のレシピ~狙われた性剣~』
「・・・バカ売れ」
「何がですか?アビリット・メーナ」
「そんなの決まって・・・・・・メイド長?」
「はい・・・で、何が『バカ売れ』なのですか?」
「バ、バカに熟れた果物が置いてあると思ったのですが、ただの玉でございました」
「・・・質問を変えましょう。貴女はなぜここにいるのですか?」
「そ、掃除です」
「なるほど・・・貴女は食事の後片付けもせず、誰も使う予定のない空き部屋を誰から指示された訳でもなくて一心不乱に掃除していたと言うのですね?しかも私が何度咳払いしても気付かずに」
「は、はい」
「なるほど・・・では、最後の質問です。貴女のは特能は『聞耳』で間違いないですね?」
「ま、待って下さい!何か勘違いを・・・」
も、もしかしてわたくしはスパイと勘違いされて?・・・あっ、今隣の部屋から微かにギシッとベッドの軋む音が・・・ああ・・・そんな・・・ここまできて・・・
「勘違いかどうかは確かめてから私が判断します。よもや逆らうなんて愚かな行為はしませんよね?」
ううっ、確かメイド長はメイドのくせに戦闘系特能と記憶しております・・・まさかクライマックスはわたくしの妄想力に頼るしかないとは・・・それにしてもわたくしはこれからどうなるのでしょうか・・・『新人メイドの拷問地獄』と言う本が発行される予感が致します・・・乞うご期待下さいませ──────




