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最強の番犬と黒き魔女  作者: しう
『操るもの』
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3章 11 魔物掃討作戦①

屋敷に戻って来たクオンにレンから緊急連絡が入った


なんでもディートグリスの王女がせっかく会いに来た?シャンドと会えなくて喚いているらしく、それを妨害した門番を処罰するというのだ。クオンは急ぎシャンドに王都に向かうように伝えると今後の予定が狂った事に頭を抱える


魔の世へは荷物を取りに行ったシャンドが戻って来次第行く予定だった。すぐという訳でもなかったが、なるべく早くに行かないとカーラとラフィスが何を仕掛けて来るか分からなかったからだ


どうしたもんかと屋敷の自室で悩んでいると、使用人からクオンを訪ねて来た客がいると知らされる


魔物討伐隊第3隊長タンデント・アンズ


玄関を通され居間に佇むその姿を見てクオンはため息をつく


「久しぶりだな、アンズ。とりあえず人の家に来るのにその格好はやめろよ・・・」


クオンが顔に手を当て項垂れる程の『その格好』・・・豊満で筋肉質な身体を惜しげもなく晒した下着の形をした鎧を着込み、後ろから見るとほぼ何も着けていないのではないように見える『その格好』。クオンにしてみれば防御力皆無であり、全く無駄な装備なのだが・・・


「これは第3部隊の正装だ!時にクオンよ、筆下ろしは済んだか?済んでないのなら今夜でもあたしは吝かではないが」


正装と言い切るアンズ。クオンに近付き人差し指でクオンの顎を押し上げるとニンマリと笑う。定番のからかい文句だが、ディートグリスでの経験がクオンを成長させたのか今までは顔を赤らめながら『冗談はやめろ!』と言っていたクオンもアンズの腰に手を回し抱き寄せると顔を近付けた


「ではお願いしようかな?」


「おお!?・・・ちょっ・・・なんだそのやり手な返しは・・・まさか・・・」


クオンの返しにアンズが戸惑っていると背後から強烈な殺気が。しまったと冷や汗をかきながら振り返るとやはりそこにはマルネスの姿があった


「子も出来ると言うのに・・・妾以外の女と白昼堂々と・・・」


クオンの脳裏に蘇るのはセガスでの一撃。急ぎアンズを離し態勢を整えようとするが、それよりも速くマルネスはクオンの懐に潜り込んだ


「くぉの浮気者ー!!」


人化しているとはいえマルネスの全力の一撃・・・クオンは咄嗟に特能を使おうとするがそれよりも速くクオンの横を影が通り過ぎ、マルネスの足を木の棒ですくい上げた


マルネスはそのまま地面に背中から落ち、強かに打つと息が出来ずにもんどりを打つ


「コラコラ、それは不味いだろ?マルネス。・・・てか?子供?」


マルネスをすくい上げた木の棒、棍を肩に乗せマルネスとクオンを交互に見るアンズ。後でマルネスに言い聞かせようと心に決め、クオンはアンズに経緯を説明した──────




「なるほどな。チリにも困ったものだ。ちょっとくらい外に出て自分で器の成長とやらをすれば良いのに」


「チリを外に出すのは難しいだろ。下手すりゃ1週間くらい寝ずに研究してるぞ?」


「確かにな!」


居間にあるソファーに座り、マルネスの発言の真意を聞いたアンズは納得し、引きこもりのチリの身を案じる。アンズとチリは同い歳の25歳で産まれた時から何かと比較されてきた。活発で男勝りな性格のアンズと内気であまり外に出ないチリ。そのまま変わることなく大人になり、今ではほとんど会わなくなってしまっていた


「俺も用事がなければ早々あそこには行かないからな・・・行っても相手にされないし」


「だろうな。昔からそうだ。まっ、チリらしいと言えばチリらしいが・・・」


ふと寂しそうな顔をするアンズ。クオンは前に聞いたことがあった。昔アンズとチリが森で遊んでいる時、数名の暴漢に襲われた事があった。子供ながらに発育の良かったアンズだけが襲われ、チリはただ怖くて震えているだけ・・・悲鳴を聞きつけた者によって未遂に終わったが、チリはその時の影響で外出をする事がほとんどなくなってしまった


そして、アンズは手も足も出なかった事を悔やみ修行に明け暮れて魔物討伐隊の第3部隊の隊長まで上り詰める。一方のチリは・・・


「完全無欠のゴーレムか・・・あのバカ・・・」


アンズは自らの肉体を鍛える事を選び、チリはゴーレムを創る事を選んだ。2人が共通するのは暴漢に襲われた時の無力感。だが、選んだ道は全く違っていた


「アンズ・・・もしかしてお前のその格好は・・・」


「ああ、暑いからな」


「・・・そうか」


もしかしたら何か意図があってと聞いたクオンだったが、聞かなきゃ良かったと激しく後悔する。その後、クオンとアンズは近況を報告しあい、アンズが訪ねてきた理由を話す


「まあ、久しぶりだから顔見せもあるが、少し頼まれて欲しい事があってな。お前らが『招くもの』を撃退したのは聞いていた。しかし、まだ招かれたものの残滓なのか以前魔物・・・いや、魔獣が数多く出没している。ゼンと共に狩ってはいるのだがなかなかな・・・」


「ジュウベエか?」


「ああ。主力である第1部隊がいないからな。単独で魔獣を相手に出来るのはあたしとゼンくらい・・・隊員達は捜索のみだから時間がかかっている。1番懸念してるのは新種の誕生だ」


魔物討伐隊第1部隊隊長ハガゼン・ジュウベエ


魔物討伐隊第2部隊隊長ウォール・ゼン


魔物討伐隊第3部隊隊長タンデント・アンズ


この3部隊で近くの森に出る魔物の討伐を行っている。第1部隊以外は約20名の手練を率いているが、それでも魔獣の強さは別格であり、思うように討伐は進んでいなかった


そして、セガスでも起きたような魔獣と魔物の子が生まれるとアンズの言っていた新種の誕生となってしまう。その新種の魔物が掛け合わせによっては魔獣をも超える可能がある為に速やかな魔獣の討伐が望まれてはいるのだが主力とも言えるジュウベエが居ないために滞っているのが現状であった


「ジュウベエ1人いないだけで情けないのう。何が魔物討伐隊だ片腹痛いわ」


「転んで背中打ってもんどり打ってたチビ助には言われたくないな。さっさと起きたらどうだ?」


「煩い。今はクオンの膝を堪能・・・ではなく、倒されて背中が痛いのだ。痴女め」


「チビ助の最近までの痴女っぷりには負けるよ。にしても弱くなったか?あの程度ではピクリともしないと思ってたが・・・」


クオンの膝枕を堪能しているマルネスに対して違和感を感じているアンズ。下着姿の痴女幼女マルネスと何度か手合わせした事はあるが、その実力は身に染みていた


「そうかもしれんのう。妾はお主のような筋肉ダルマと違い、か弱き乙女・・・クオンに守られる存在だからのう」


「どの口が言うのやら・・・だが、マルネスの力も当てにしていたのは確か・・・本当に弱くなったのか?」


「そんな訳ないだろ?今は人化してるだけだ。それよりも新種の誕生の兆候なんかはあるのか?」


「残念ながら・・・ある」


アンズが言うには見た事の無い獣に遭遇したという報告がいくつか上がってきているという。もちろんその遭遇した者が知らないだけで今まで存在していた魔物か魔獣なのかも知れないのだが、日に日に増える報告に上層部は頭を悩ましていた


「殿は何も言ってなかったがな」


「流石に『招くもの』退治を終えたばかりのクオンを頼るのも・・・な。ジュウベエさえいてくれたら問題はなかったのだが」


「ゼンがいるだろ?もちろんお前も」


「あたしとゼンで追いつかないから恥を忍んで来ている。ゼンは近い内に掃討作戦を決行するつもりだ。ジュウベエが戻る前にな。恐らく第1部隊がジュウベエというのも気に食わないのだろう・・・功を焦り討伐隊が全滅となっては笑うに笑えん」


「なぜ功を焦る必要がある?」


「身に覚えがあるだろう?他ならぬお前が功を上げたからだ・・・クオン」


「・・・相変わらずか」


「早々人は変わらない。第1部隊がジュウベエであり、クオンが功を上げたとなれば焦るのも無理はない・・・が、それはあくまでも個人の感情。あたしが何度諌めても聞く耳持たないとなれば、こちらもそれ相応の手段を取らざる得ない」


「それが俺への協力要請か。揉める未来しか見えないな。その掃討作戦はいつになりそうなんだ?」


「明日はないとしても、明後日か明明後日・・・厳密な日時は明日の朝礼で発表される可能性が高い」


「なら、明日の内に俺が全て片付けた場合・・・」


「それは止めておけ。完全な越権行為だ・・・当事者同士の揉め事では済まなくなるぞ?あくまで第3部隊のサポートに徹してくれたらあたしも間に入れる」


「まるで俺が進んで掃討作戦に関わりたいような言い方だな」


「違うのか?シントの番犬」


「ちげえよ。『残光』隊長」


「・・・日時が決まり次第報せに来る」


アンズは立ち上がるとそのまま出口へと向かう。クオンは出て行くアンズの後ろ姿を見ながら声を掛けた


「おい・・・行くとは言ってないぞ?」


「目を見れば分かる。目は口ほどに物を言うと言うからな」


「ほぼ閉じてたんだがな・・・いつから透視能力を身に付けた?」


「心眼だ」


アンズが話は終わったとばかりに再び歩き出すと、クオンはため息をついてそれを見送った。ちょうどその時、外に出ていたレンド達が戻って来てアンズと鉢合わせになる


「うおっ・・・す、すみま・・・せんっ!」


アンズとぶつかりそうになったレンドは謝り、頭をあげるとアンズの格好に気付き思わず声を裏返してしまう


「おい、何止まってんだよ!・・・って、うわっ、すげぇ格好!」


レンドの後ろにいたエリオットが急に止まったレンドに文句を言う為に前に出るとアンズの存在に気付き驚く。そして思わず露出しているお腹を触るった──────




エリオット・ナルシス・・・伯爵家の4男に生まれナルシス家のギフト『飛翔剣』を受け継ぐも先に生まれた兄弟ももれなくギフトを受け継いでおりナルシス家の当主になる可能性は極めて低かった


エリオットは早々に家督を受け継ぐ事を諦めて冒険者の道を歩み出す


剣の才能があり、ギフトのお陰で順調にランクを上げ、とうとうAランク冒険者となる


順調に歩んでた冒険者生活に陰りを落とし始めたのは小遣い稼ぎと思い何気なく受けたセガスの領主の依頼から。ドラゴンの調査依頼を国から要請されて、その待ち時間にサクッと終わらせようと考えていたのだが、クオンに手も足も出ずやられ、マルネスに一撃で気絶させられた


当時は名も無き冒険者にやられ、幼い少女にすら適わず落ち込み自暴自棄になった。受けていたドラゴン調査の依頼の事などすっかり忘れ近くの森の中で1人悩み続け、出た答えは復讐。己の強さにかまけ、修行を怠ったのが負けた要因と判断しひたすら剣を振るう


そこでまたしても完膚なきまでにやられてしまう


相手はジュウベエ


頬に大きな十字傷を代償に、新たな道標『千の剣』を得た


『千の剣』は単純にエリオットが使っていた技の複合・・・剣を振った後に魔力の剣を影に潜ませて追い討ちをかける『追撃』と魔力の剣を相手に飛ばす『飛翔剣』・・・この2つを組み合わせ、なおかつ複数同時に操るのが『千の剣』


だが、理屈は分かったとしても同時に何本も操るのは難しく、最初は1本が限界だった


その後魔物に試すべく森の中を散策し、使ってみるとその強さに驚く。相手に近付く事無く自由自在に切り刻む。流石に1本しか出せないのに『千の剣』と名乗るのは恥ずかしかった為に『剣の舞』と名付け、これならばクオンに対抗出来ると踏んでセガスへと向かった


しかし、セガスには既にクオンは居らず、代わりにそのクオンから救援依頼が来てる事を知る。その救援依頼に乗っかればクオンに会えると考えたエリオットは同行を申し出てエイトと共にラメスへと向かった


しかし、ラメスでもクオンには会えずその代わりに西に向かった仲間の救援を頼むと言伝が・・・ここまで来て断る訳にもいかずに西には2つの街がある為にエイトと二手に分かれて救援に向かった


ナムリに到着したエリオットは騒がしい方向に向かうと女性が襲われていた


とりあえず声をかけて対象の相手か確認を取ると相手は自分を知っていて、エリオット自身も見覚えがあった。なので新技『剣の舞』で他の者達を撃退・・・人に使ったのは初めてであったが、確かな手応えを感じた


その後屋根の上から登場したマルネスに一目惚れ・・・いや、二目惚れする。自分を一撃で気絶させた幼女にときめいてしまったのだ


それからダムアイトに戻り謹慎処分になっても考えるのはマルネスの事ばかり。それを振り払うように家にある道場で剣技を磨いた


上級魔族との死闘、セガスでの魔獣との死闘を経て訪れたシント国・・・そこで惚れた相手の馴れ初めを聞かされ、自分の入る余地などないと感じていた


共にシントに訪れたレンドとマーナに付き合わされシントを見て回るが気は晴れない・・・そのままクオンの屋敷に戻ると露出の激しい女性が目の前に


冗談のつもりで指でお腹を突っついた瞬間に意識が途絶えた


目が覚めたエリオットは身体を起こそうとするが全身に激痛が走る。なぜなのか思い出せずにいると誰かが部屋から出て、その後直ぐにまた部屋に入って来た音が聞こえた


目を開けてるはずなのに見えない・・・暗闇の中話しかけて来たのはクオンだった


「すまんな、止めるのが遅れた」


目は見えないが声は聞こえる。だが、言葉の意味は理解出来ずに問いただそうとするが声出そうとすると喉にも激痛が走った


「無理をするな。アンズの奴にあれだけやられたんだ・・・しばらくは安静にしていろ」


クオンが言うにはあの時・・・アンズに触れた瞬間にエリオットは棍による連撃を食らっていた。はじめに顎を突かれ、その一撃でエリオットは気を失うがそれでもアンズはエリオットを滅多打ちにする。クオンが制止する声も届かず、仕方なくクオンはエリオットとアンズを離すためにエリオットに蹴りを放った


なぜアンズの方に蹴りを放たなかったのか・・・疑問に思うエリオットに気付いたのかクオンは告げる


「突然女性の肌に触れるお前が悪い。アンズは知らない奴に触れられるのを極度に嫌う・・・殺されなかっただけありがたいと思うんだな」


そんなの知らねえよ!と言いたかったが喉が潰れているのか上手く言葉に出来なかった


目が見えない理由は顔がパンパンに腫れている為に目が塞がっているのだと言う。油断していたとは言え抵抗する暇もなく一方的にやられた事実にエリオットの目からは涙が零れ落ち、それを見たクオンが気を使って部屋の外へと出て行った


連戦連敗・・・一時は強さに自惚れていた時期もあった。そのエリオットのプライドはバキバキにへし折られ、何も考えたくないとベッドに身を預ける


この日を境にエリオットはクオン達の前から姿を消した──────





「そんな・・・とても部屋を抜け出せるような状態じゃなかったでしょう?」


「アンズも本気で打ってた訳では無いが・・・確かに抜け出せる状態ではなかったな。だが、部屋の窓が開いていたらしいから、抜け出したとしか思えん・・・どういうつもりか分からないがな」


部屋がもぬけの殻になっているのを聞いたクオン達はエリオットを心配して捜しに行く相談をするが、それをマーナは反対した


自業自得の面もあるが、自分から離れたのには理由があり、無理に追うのは良くないと


エリオットの気持ち・・・マルネスに好意を持っている事に気付いていたマーナは、マルネスの前でボコボコにされたエリオットの気持ちを汲んでの発言だったが、当の本人からは辛辣な言葉が告げられた


「はっきり言って着いてくる理由もよく分からんかったからな。別に仲間という訳でもなし・・・放っておくのが1番だろうて」


マーナはマルネスにエリオットの気持ちを伝えようとするがぐっと堪えてマルネスの発言を流した


クオンとレンドも気持ちに気付いていないようで、マルネスの言葉に頷くと捜索などせずに好きにさせておこうという結論に至った


ちょうどその結論に至ったタイミングでアンズが屋敷を訪ねてきて使用人によって居間に通される。アンズは入った瞬間に部屋中を見渡すとエリオットが居ないことに気付いた


「・・・昨日の少年は大丈夫か?・・・その・・・やり過ぎた・・・から謝罪しようかと・・・」


「・・・気にするな。それよりも掃討作戦の日は決まったのか?」


「うん?・・・ああ、明日に決まった。今日は明日の為に休暇になったから訓練もない・・・本当に大丈夫なのか?正直言うと殴ってる時を覚えてないので力の加減が出来ていたかどうか・・・クオンが蹴り飛ばさなければどうなってたやら・・・」


「まだ無理なのか?」


異性が触ると暴れるのは今に始まった事ではない。何度か事件になり有名になった事からアンズに触れる男は居なくなった


「知り合いでも我慢すれば何とかってレベルだ。なぜだかクオンは平気だがな」


「しれっと何を言っておる!クオンも拒否せぬか!」


「・・・触れた瞬間にボコボコにされるのは勘弁だが・・・」


「触れなければ良かろう!と言うか触れられて暴れるのならなぜその格好をしておるのだ!罠か!」


「人の格好を蜘蛛の巣のように言うな。趣味だ」


「・・・昨日は暑いからって言ってなかったか?」


「趣味と実益を兼ねている」


エッヘンと胸を張るアンズ。レンドは恐ろしさのあまりに居間の隅っこでガタガタと震えているが気にせずに話を続けた


「明日の朝、日が昇り次第東門から魔獣討伐に向けて進行する。2部隊が並列に東の最果てまで向かうのだが・・・」


「最果てか・・・ジュウベエの大好きな場所だな。それなら少数精鋭で行った方がいいんじゃないか?死人が出るぞ?」


「あくまで掃討作戦だ。人が多い方が討ち漏らしが少ない」


「リスク無視かよ・・・横並びに進んで行き見つけ次第排除か・・・大した作戦だ」


「そう言ってやるな。奴も焦ってなければこんな事はしない。で、クオンとマルネスには我が隊に加わって助力願いたい。報酬はあたしの身体を・・・」


「断るぞ?」


「固いな。それだから未だにマルネスの貫通に至らぬのだ。マルネス程の美少女を侍らせておいて手を付けぬなど不能と思われても仕方ないぞ?だからあたしで筆を下ろし存分にマルネスを愛でてやるがいい。あたしは何も妻にしろと言ってる訳では無いのだ。ただ経験を・・・」


「もういい、喋るな・・・報酬はここのレンドとマーナ、それにステラの同行許可でいい。朝っぱらから飛ばし過ぎだ」


横目でマルネスを見ると何かに葛藤している姿があった。ブツブツと『別の女と・・・いや、それでクオンが・・・いやいや、しかし・・・』と呟くマルネスを無視してクオンはマーナとレンドを見る


「シントは冒険者ギルドがない。魔物の討伐は討伐隊の領分だし、他にも専門の職があって何でも屋みたいな冒険者を必要としていないんだ。シントで何か買い物したいなら参加した方がいいぞ?安全は保証する」


「是非!剣を買ったら文無しになりそうなので!」


「私も色々服が欲しい!」


「だ、そうだ」


「ふむ・・・クオンとマルネスが2人の同行許可で、2人は報酬として金子か。構わぬ・・・そこな犬もか?」


「ああ。マーナの使役してるドラゴンだ。今は擬態して犬の姿だがな」


「ドラゴン!・・・それはお見逸れした。こちらから頼みたいくらいだ。金子は後に交渉して支払う事を約束しよう」


まさかクオンの一言でステラがドラゴンである事を信じると思わずマーナが驚いていると、それに気付いたアンズがクスリと笑いなぜ信じたのかマーナに説明する


「この世で唯一信用している男の言、疑うのは無粋と言うものだ。それにクオンは嘘はつくが人を傷つける嘘はつかん」


結局信用しているのかしてないのか分からない物言いに苦笑するマーナ


アンズはクオン達の参加が決まった事に満足したのか明日の準備があると言って屋敷を後にした


「さて、俺らも明日の準備をしないとな。レンドの剣に俺と黒丸のフード付きのローブ。それとチリの所にも行かないと・・・」


「フード付きのローブ?」


「ああ。ゼンって奴に見つかると面倒な事になる。なるべく正体を隠して終わらせたいが・・・」


「そのゼンって人と仲悪いの?」


「ウォール・ゼン・・・第2魔物討伐隊の隊長にしてウォール・シンの息子。要はそっちで言う王子ってやつだ」


「ええ!」


「ちなみに前に城で会ったシズクの婚約者でもある」


「ええ!?」


「何かと俺に対抗意識を燃やしてな・・・関わるとろくなことが無い。なあ、黒丸」


「ん?ああ。クオンは童貞だから妾を襲わぬのか?だったらアンズと・・・いや、それは看過出来ぬし・・・」


「えっえええ!?」


マーナとレンドは生まれて初めてアッパーカットで人が天井付近まで飛ばされるのを見るのであった──────



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