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最強の番犬と黒き魔女  作者: しう
『操るもの』
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3章 9 晩餐会③

クオンは夢を見ていた


フェイスンを庇ってその身でクオンの力を受けたレイナ。そのレイナの言葉が何度も繰り返される


『あなたのせいじゃない』


どう考えても自分のせい・・・レイナ先生には人に使うなと言われていたのに怒りに任せて能力を使ったから・・・


『あなたのせいじゃない』


違う!俺のせいだ!だから俺はレイナ先生を背負って生きていく!生き返らせる!


『あなたのせい・・・?』


そうだ!俺のせいでレイナ先生は死んだ!


『なら私があの時、グレイス先生を庇わなかったらどうなってた?』


それは・・・アイツが死んでた・・・死んで当然だ・・・あんな奴!


『そうね。あなたに酷いことを言ったもんね』


そうだ!アイツは親父と母さんを・・・サラを侮辱して・・・


『なら私も同罪。私はあなたを区別した。他の生徒と差別したのよ』


違う!レイナ先生は・・・俺の為に・・・!


『違うの。全部私の為。生徒達を守るという理由を付けてあなたに目隠しをさせて、能力を使うなと言ってしまった』


違う!目隠しは親父が・・・能力だって上手く使いこなせないから・・・


『目隠しをして来た生徒に外しても良いと言えなかった。上手く使いこなせていたのに恐れて使わせないようにした。もし私にあなたを導く力があれば、あなたは力を制御していた。それを出来なくしたのは私』


そうじゃない!俺は家に帰ってから親父や母さんに教わってた!この力は特殊だから・・・


『特殊な能力だから特能。みんな同じよ?あなただけが特殊な訳では無いわ。他の生徒には使わせて、あなたには使わせなかった・・・酷い先生ね』


違う違う違う!レイナ先生は1つも悪くない!


『正直言うとね・・・私があなたとグレイス先生の間に入った理由は・・・あなたが不祥事を起こしたら私の評価が下がるからなのよ。最低でしょ?全部そう・・・目隠しを取らせなかったのも、能力を使わせなかったのも、グレイス先生を庇ったのも・・・全部私の保身の為よ』


そんな訳ない!だって!俺がアイツを・・・マルネスを庇った時・・・俺は・・・俺は────



目が覚める


今まで会話していたレイナの姿は当然なく、目に入ってくる見慣れない風景に現実かどうか分からなくなり身体を起こした


胸に鋭い痛みが走り、否応なしにここが現実だと知らせてくるが、起き上がって目に入ったものに疑問が残る


≪・・・誰だお前?≫


≪辛辣ぅ!こんな美女を忘れるとは頭も打ったか?≫


≪・・・マルネス・・・なのか?≫


≪どこからどう見てもマルネス・クロフィード様じゃろがい!≫


≪いや・・・そうでもないぞ?≫


見知らぬベッドの上で起き上がると傍らには心配そうに覗き込む初見の幼女。確かにマルネスの面影はあるが、どちらかと言うと・・・


≪マルネスの子供?≫


≪未婚だ未婚!そもそも・・・いや、お子様にはまだ早いか・・・≫


≪どっちがお子様だよ・・・本人なのか?≫


≪さっきから言うておるだろう!≫


≪なんで幼女の姿を?趣味か?≫


≪趣味な訳あるか!それは・・・その・・・≫


ごにょごにょと言うマルネス。よくよく聞くとどうやら小さくなったのはクオンの為であった


胸を貫かれたクオン、致命傷であり、核が傷付いているのに気付いたマルネスはどうにか助けようと取った手段が自らの核をクオンに分け与えること


核は傷付くと魔力が流れ出てしまう。修復する術が思い付かずマルネスは自らの核を2つに分け、一方をクオンの身体に埋め込んだ


≪埋め込んだって・・・それに2つに分けたって・・・≫


≪仕方なかったのだ。核は魔力が空になった状態が続くと砕け散ってしまう。いくら魔素を吸収しようとも流れ出る量を上回る事がなければいずれ・・・考えている時間はなかったからのう・・・≫


核を分ける事が出来るのは知っていた。実践したものが間近にいたのだ。しかし、その分けた核を人に対して使った事がなく上手くいく可能性は低いと思っていたが、今のクオンを見て成功したとほっと胸を撫で下ろす


≪・・・つまりいずれ元々あった核は砕け散り、マルネスの核だけになると?≫


≪いや、核の傷口に妾の核をくっ付けた。傷は治せぬが、くっ付けるのは得意なのだ≫


エッヘンと胸を張るマルネスに詳しい説明を求めるクオン。マルネスが言うにはマルネスの能力『黒』で傷口をなかった事にし、更にその部分とマルネスの核を引き寄せ合うようにすると自然と2つはくっ付くのだという


≪『黒』は引き寄せる力を持つ。もちろんただ互いを引き寄せただけではいずれ離れてしまう為に、まず下地処理を行い、その後に・・・ううむ・・・まあ、強制的に合うように凸凹を創り、はめ込むと思うてくれ≫


≪諦めたな・・・まあ大体分かった。で、どうすれば核を返せる?そもそも核の傷って治るのか?≫


≪治る・・・はず。ただ人の核はどうか分からんのが正直な話だ。それに・・・クオンよ、何か変わりないか?≫


≪変わり?いや、特には・・・≫


≪そうか・・・自身では気付いておらぬかもしれんが言葉に魔力がこもっておる。恐らくは妾の核が原因だと思うが・・・≫


≪げ!?それって俺が魔族になったって事?≫


≪いや、どうだろうのう・・・元々クオンは核を有する人だから魔人に分類されると思う・・・だから、今妾の核を入れた状態は魔人魔?≫


≪間抜けな名前だな・・・でも、確かに言われてみれば俺が俺じゃないみたいだ≫


クオンは自分の身体を改めて眺めて今までとの違いを確認する。確かに力が漲る感じがする。それがよく寝たからのかマルネスの核が埋め込まれたからなのかわからない程度だが


≪直に慣れれば妾の力も使えるようになろう・・・それよりも早く核が治るやもしれんが≫


≪治る保証もなければ、治る時間も分からんわな・・・お前に返せる日はいつになるやら・・・≫


≪さあのう・・・気長に待つとするか≫


≪魔族は長命だったか?まっ、俺が死ぬまで待ったとしても一瞬か≫


≪・・・長命というよりは不老だのう・・・核は歳は取らんからな。それよりも・・・お主に聞きたいことがある≫


≪なんだよ改まって・・・≫


≪なぜ妾を助けた?あのような雑魚の一撃・・・多少は傷付くかもしれんが妾ならば防げると思わんかったか?お主は人・・・不老でもなければ頑強でもない。お主の言うように妾ならばにとってはお主の生涯など刹那よ・・・なのになぜ命を投げ打つ?命が惜しくないのか?≫


≪もしかしてそれが気になって眠れなかったか?≫


≪茶化すでない。どうなのだ?≫


≪ハァ・・・勝手に身体が動いたんだよ≫


≪なに?≫


≪だから・・・咄嗟に身体が動いたの!マルネスが強いとか、マルネスなら大丈夫とか・・・そんな事考えてる暇もなく、守りたいと思った奴がやられそうなら守るだろ?レイナ先生だって・・・≫


≪妾を守りたい?・・・クックックッ・・・カッカッカ!≫


≪笑うなよ!仕方ないだろ!!≫


≪ようやく話し方が戻って来たのう。背伸びは良くないぞ?まあ、妾の核の影響だろうが・・・≫


≪背伸びはお互い様だろ!?俺よりチビじゃないか!≫


≪背のことではなく・・・まあ良い。ところで先程言いかけたレイナ先生とはクオンの話してくれた人か≫


≪・・・俺を庇って死んだ先生・・・俺がカッときて思わず力をある奴に使おうとした時、間に入ってそいつの代わりに俺の力を受けて・・・≫


クオンがうつむき加減に言うとマルネスは何かを察したように目を細める。そして、クオンには残酷な真実を告げた


≪お主・・・『白』を探してるのはその者を生き返らせる為か?ならば無駄だぞ?≫


≪なぜ!?≫


≪記憶の保有は脳。魂の記憶の保有は核が成す。死して数刻ならば蘇生も可能だろうが、機能を停止した脳は数刻もすれば復元が不可能になる。反面核は数日は持つであろう。しかし、脳が失われた後に身体を復元してもそれは全く別の人格・・・ただ魂の記憶を有する別のものとなる≫


≪・・・そんな・・・≫


≪すまぬな・・・お主が『白』を求めていると聞いた時に理由を聞いておれば・・・≫


マルネスにとってクオンが『白』を求める理由などどうでもよかった。ファストの戦力を削る口実、それと自分の暇潰しさえ達成出来ればそれで・・・しかし、今は本気で悔いていた


≪魂の記憶・・・核があればレイナ先生は!?≫


≪言うたであろう?核は保って数日・・・今から戻ったとしても手遅れよ・・・それに魂の記憶とはお主に預けた妾の核にも刻まれておる・・・お主はその核の記憶が読めるか?≫


≪・・・≫


≪読めないであろう?核に刻まれたものはその者が成長した証・・・誰かを思い出すとか経験した事とかの記憶とは違い、ただ核の成長を指す・・・核が無事だとて全くの別物よ・・・お主がアモンでないようにな≫


クオンはシーツをギュッと掴むと身体を震わせた。8歳の子供が一縷の望みに賭けて魔の世に単身赴き、死にかけながらも手にしようとした能力は、全くの無駄と聞かされたのだ。クオンの心中を察しマルネスは言葉を続ける


≪お主がまだ『白』を求めるなら付き合おう。姿形が似ているものなら『白』は創造出来るはず・・・≫


≪・・・いい≫


≪そうか・・・そうだな≫


答えは分かっていた。クオンが生き返らせたいのはあくまでレイナ。レイナに似て非なるものではないのだから


≪俺は・・・どうすれば・・・≫


会って謝りたかった。まだまだ教えてもらいたかった。それが叶わないと知り、クオンが目を閉じるとマルネスが立ち上がる


≪何を言うておるのか・・・お主がさっき答えを言うておったろう?お主は妾を助けた事を後悔しておるか?≫


≪・・・いや≫


≪レイナとやらも同じだろうて。咄嗟に身を呈して庇うよりも、何もせず事の成り行きを見届ける方が何倍も後悔する・・・そう思うたから間に入ったのであろう。気に病むなとは言わん・・・が、いつまでも引きずって欲しいとは思わんだろ?・・・お主が妾を守りたいと思ったように、レイナとやらはお主を守りたいと思った。その結果、お主は生きてレイナとやらは死んだ・・・ただそれだけだ≫


冷たいようだが現実を突きつけるマルネス。クオンが悔しがる姿を見てマルネスの胸にもチクリという痛みが走る


≪・・・残念な知らせがもう1つある。お主は『白』をもう探さないと決めた。つまり人の世に帰るということで間違いないな?≫


≪・・・うん≫


≪なればこの世にいた時の記憶を消させてもらおう≫


≪なんで!?≫


≪人の世に知られたくないこともある。妾はこの世を守る為に・・・出来る限りの事をせんといかん。分かるな?≫


≪誰にも話さない!それにマルネスの核だって返さないといけないし・・・≫


≪核はいずれ取りに行く。それにお主が話そうが話すまいが記憶を探る魔技も存在する・・・≫


≪そんな・・・マルネスの事を忘れるって言うのか!?≫


≪そうなるな。短い間だったが・・・≫


≪ふざけるな!だったら俺は魔の世に残る!残って・・・≫


クオンは怒鳴りながらマルネスの顔を見て言葉を失った


寂しそうに微笑む顔に心を奪われる


≪安心せい・・・妾は忘れん。共に過ごした日々もお主が妾を守ろうとした事も・・・お主が忘れようとも妾はお主と共にある・・・お主の命が尽きるまで・・・共に・・・≫


マルネスがクオンの額に手を当てる。クオンは咄嗟に身体を動かして拒否しようとするが、身体はいつの間にか拘束されていた


そして、手のひらから黒いモヤが浮き出てきてクオンの頭を包み込む・・・必死で首を振り、黒いモヤを振り払おうとするが抵抗虚しくクオンは意識を失った


≪さよなら・・・クオン≫


マルネスは意識を失ったクオンを抱え人の世へとひた走る


『白』を探していた時のような迷いはなく、一直線にひたすら・・・


程なくして辿り着いた魔の世と人の世を繋ぐ場所


マルネスはクオンを抱き抱えたまま通り抜けると人の世へと辿り着いた


神扉と呼ばれる結界のすぐ傍にクオンを置き、そっと頬に口づけするとしばらくクオンの顔を見て立ち上がる


そして未だ意識のないクオンを見つめて呟いた


≪ここ最近の記憶だけではなく、ある程度の記憶を消した。妾の事も・・・レイナとやらも覚えてはおるまい。他から聞かされる事もあるだろう・・・だが、強く生きよ≫


クオンと共に旅をしている時に聞いていたレイナの話。出会いは最近だと聞いていた。なので魔の世の記憶と共にもう少し遡りレイナの記憶をも消し去った。魔の世に知られたくないことなどない。ただクオンの中のレイナの記憶を消す口実・・・クオンがレイナの事で苦しむ姿が見てられなかったマルネスのわがまま


自分は忘れられてもいい。クオンが苦しまなければそれで・・・クオンに知られれば怒られる・・・いや、絶交されるなと1人笑うとマルネスはその場を去っていった






しばらくして意識を取り戻したクオンは周囲を見渡す。岩に囲まれた通路・・・ひんやりとした空気がクオンの頬をくすぐる


立ち上がると身体の節々に痛みが走り、顔を歪めながら神扉まで歩いて行く。神扉に近付くと人が騒ぐのが聞こえる。恐らくは父と母が心配して騒いでいるのであろうと懐かしみ笑った


そして、神扉を抜ける前に魔の世の方向に振り返る


≪残念だったな・・・俺は覚えてるぞ・・・()()()()


クオンはその後左目をつぶり神扉を抜けた。心配した家族からの抱擁の中、自分がなぜ家族に泣かれているのか思い出せずにいた────







「ん?つまり、クオンは覚えてたの?覚えてなかったの?」


マーナが眉をひそめてクオンに聞くとクオンは苦笑しながら答える


「俺・は覚えていなかった。記憶を消されたからな。でも・・・」


「妾が記憶を消そうとした時、器用にも核に記憶を刻みおった。脳に記憶されたものを全てな。脳の記憶は消している為に普段は消された状態だが、核に記憶を刻んだ両目のクオンは記憶を保持出来ていた・・・」


「???えっと・・・脳の記憶を核に写した?で、それなら覚えてるって事?」


「3つの人格の話は聞いているか?黒丸なんかはウオン、サオン、クオンとか言っていたが、ウオンは俺が本来持っていた核・・・アモンの核を主体にする人格、サオンはマルネスの核、そして、クオンはアモンとマルネスの核を合わせた人格ってところだ。魔族や魔獣、魔物と人の中にある核は成長する。成長するって事は経験するって事だ。その経験は核に刻まれ人格に影響を及ぼす・・・例えばマーナの核を抜いてレンドの核を入れるとレンドの人格のマーナが誕生するみたいな・・・な 」


「気持ち悪っ!」


「おい!」


「メインの核が人格に及ぼすのであって、通常核を追加しても人格には及ぼさない。例えばマーナの核がある状態でレンドの核を入れても変化はない。でも、俺の場合は核の傷を塞ぐ為にマルネスの核と融合した事により人格に変化が現れた。2つの核・・・アモンの核とマルネスの核を上手く操れるのは両目のクオンだけ・・・なので核に刻んだ記憶は両目のクオンのみが知る事が出来た」


「じゃあウオンとサオンは・・・」


「覚えていなかった。魔の世での出来事も・・・レイナ先生の事もな」


「そんな・・・」


「・・・基本はウオン・・・元の人格でいることがほとんどだ。命を賭して俺を守ってくれたレイナ先生の事や行方不明になった時の事を全く覚えていない俺は糾弾されたよ・・・でも、今は感謝している。もし幼い俺がレイナ先生の事を覚えていたら苦しみ・・・精神が崩壊していたかもしれない」


「・・・恨んでないのか?」


「恨んでなんかいない。それにシャンドと戦ってる時に両目のクオンは核に刻まれた記憶を思い出した。その思い出した記憶が脳に刻まれウオンとサオンも消された記憶を取り戻した・・・だから今は全部覚えてる。だからあの時のマルネスがなぜ俺の記憶を消したのか・・・今は分かる」


「クオン・・・」


「・・・」


「ウォッホン!なんだか分からないけど分かったわ!つまりマルネス様の核がクオンに悪影響を与えてるって事ね!」


見つめ合うクオンとマルネスの邪魔をするように咳払いしたマーナがギロりとマルネスを睨み言うとマルネスは怪訝そうな顔をして首を傾げる


「どうしてそうなる?」


「マルネス様は言いましたよね?『右は社交的で朗らかで優しくて頼りになる人格。左は面倒臭がりでぶっきらぼうでやや好戦的で直情的な人格。3つ目は左右は一言で言うと傍若無人な人格』って。元の人格が右なら・・・もう後は言わずとも分かりまよね?」


「?」


「分からんのかい!」「どうかしてますわ!お兄様を返して!」


「ちょ、ちょっと待て!どこが悪影響なんだ!?」


マーナの言ってる事が理解出来ず首を傾げるが、マーナとサラの剣幕の剣幕に思わずたじろぎクオンに助けを求める


「いや、俺に聞かれても・・・そうなのか、レンド?」


「物凄い答えにくいのですが!!」


女性同士のバトルに巻き込まれてなるものかと気配を消していたにも関わらず話を振られて狼狽えるレンド。エリオットはつまらなそうに欠伸をしながら事前に案内されていた部屋へと立ち去り、ステラは寝たフリをする。アースリーは元々寝ており、シャンドは・・・


「シャ、シャンドさんはどう・・・」


「主はレンド様にお尋ねしております。主がマルネス様の核を受け入れた事によりどのような悪影響を受けたのかと」


やぶ蛇だった。もはや退路は絶たれ、答える以外に道はない。マルネス、クオン、マーナやサラさえ期待を込めた目でレンドを見つめている


「・・・ちょっとお行儀が悪くなった?」


「はあ?何ヒヨってるのよ!ハッキリ言いなさいよ!」「初めまして。サラと申します。それはないと思いますわ」


マーナに怒られ、サラに初会話で否定される。踏んだり蹴ったりのレンドがクオンに助けを求めるとクオンは苦笑して助け舟を出す


「俺は左の性格も左右の性格も気に入ってるけどな」


クオンのその言葉に顔を真っ赤にするマルネス。マルネスの性格が気に入ってるという意味ではないのだが、少なからずマルネスの核が影響している性格を気に入ってると言われたのだ。嬉しくない訳はなく、照れて頬を触りながらクネクネする。その様子を見て面白くないのはマーナとサラ。ブスっとした表情で照れるマルネスを見つめていた


「ほら、もう寝るぞ。マーナ、アースリーを起こしてくれ」


終わらなさそうな不毛な戦いに終止符を打つべくクオンが言うとマーナは仕方なさそうに立ち上がりテーブルにうつ伏して寝ているアースリーを起こした


「明日はアースリーお待ちかねのチリに会いにいく。その前にちょっと野暮用を済ませてくるから起きたら朝食を取って待っててくれ。チリに興味がなかったら自由に行動していいがくれぐれも迷子にならないようにな。まあ迷ったらケルベロスの屋敷と言えば案内してくれると思うが・・・」


「1番不安なエリオットさんが既にいないけど・・・」


「・・・明日の朝に言っておく・・・」


マーナの指摘にクオンも確かにと思い答えると全員2階の各部屋へと戻って行く。マーナとレンド、アースリーとシャンドも一人一部屋あてがわれ、ステラはマーナの部屋に。マルネスは勝手知ったるディートグリスに行く前に使ってた部屋に・・・行くと思いきやクオンの部屋へと向かった


「ちょっと!マルネス様!何しれっとクオンの部屋に行こうとしてるのよ!」


「チッ・・・いや、明日の事でクオンに話がのう・・・」


「堂々と嘘をつかないで下さい痴女チビ」


「・・・勝手にやってろ。俺は寝るぞ」


クオンがまたやり合ってる3人を見て呆れながら自室へと入るとドアを閉じた。その様子を見た3人は互いに目を合わせてフンと鼻を鳴らしてそれぞれの部屋へと戻って行く


マルネスは自室のドアノブに手をかけ捻りながら思い起こす。長きにわたり過ごしていた彼の地を


「ファスト・・・レーネ・・・」


マルネスはドアを開けると懐かしの部屋に入り、埃っぽいベッドへと身を預けて深い眠りにつくのであった──────


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