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最強の番犬と黒き魔女  作者: しう
『招くもの』
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2章 28 ラフィス再び

ダムアイトに戻ったクオンはハーネットの屋敷にて主要メンバーを集めてラフィスとの話し合いの内容を話した


3日後、再びラフィスは襲撃を宣言した事に聞くものは表情に陰を落とす


「その黒幕と思われるカーラとは?」


「アモンの従者をしておったものだ。魔と天の戦いのおり、行方知れずとなっておったが・・・時折魔族や魔獣が人の世に出現しておったのも彼奴のせいだろうて」


ハーネットは今まで出てこなかった名前に反応しクオンに聞くが、答えたのはマルネス。クオンの膝の上に座りご満悦顔だ


「そのアモンって上級魔族の能力をクオンが受け継いでいるのは分かったが、なぜそれが今回の騒動の引き金に?」


「カーラはアモンに心酔しておった。そのアモンがいなくなり、姿をくらませておったのだろうが、クオンの存在・・・アモンの能力が受け継がれている事を知り、アモンの遺志を実行しようと思い立ったのであろう」


「それが天使の排除と人と魔の共存・・・」


「天使の排除はカーラの仇討ちみたいなものだろうて・・・アモンは天使の排除なぞ望んではおらんだろうからな。まあ、魔と人が共存するのなら、天使は障害になりうると考えての行動やもしれんがな」


「しかし、それだと・・・カーラは10年前から計画を立てた事になる・・・そうなるとラフィスは何者なんだ?」


「カーラの能力を受け継いでおるにも関わらず人であると言うならば・・・カーラの息子・・・だろうのう」


「・・・たまたまカーラが人の世に現れて子を作り、魔の世でクオンの存在に気付いてラフィスを計画に組み込んだと?」


「言わんとしている事は分かるが・・・クオン」


ハーネットの畳み掛けるような質問攻めに顔を上げて助けを求めると、クオンはため息をついた


「最後まで説明しろよ・・・まあ、いい。俺が話した方が早そうだ・・・実際体験してるのは俺だけだからな」


「体験?」


「ああ。人の世と魔の世は時間の流れが違う。正確にどれくらい違うかは不明だが、こっちで過ごした一日は向こうの数日・・・もしくは十数日に値する」


「???」


ハーネット以下全ての者の頭の上に?が浮かぶのが見えたような気がしてクオンはげんなりすると、分かりやすいようにゆっくりと説明を始めた


10年前・・・クオンは魔の世にあるものを探しに行った。魔の世に行く事は禁じられていたのだが、どうしても行かなくてはならなかった


薄暗く、魔素が溢れかえった魔の世でクオンは必死にあるものを探し、体感で1年が過ぎようとしていた頃、クオンはあるものを見つける事が出来たのだが、時すでに遅くクオンの努力は徒労に終わった


失意の中、クオンが人の世に戻るとクオンを心配していた家族から衝撃の事実を知らされる


クオンが行方知れずとなって40日しか経っていないと


魔の世は常に薄暗く、陽の光など差し込まない。それ故に時間の感覚が狂ったのかとその時は思っていた


数年後、神扉の番をしているとマルネスがやって来た


マルネスと話している内にクオンは疑問に思っていた事を確かめようと考え、マルネスの協力を得て人の世と魔の世の時間の流れを調べる


落ちるのに一日かかる砂時計をマルネスに持たせ、魔の世に行かせ、全て落ちた時に戻って来るように言うと二時間半程で戻って来た


正確ではないにしろ魔の世は人の世より早く時が流れている事を知ったクオン。しかし、それを公表したところで意味はないと伏せていた


「・・・えっと・・・つまり、魔の世に長く居て、いざこっちに戻って来たら知り合いより歳をとってる事になるの?」


「そういう事だ」


「ヒィィ」


マーナが年齢の事を聞いて青ざめていると、他の女性陣もマルネス以外は顔をしかめる。魔の世で10年過ごして戻って来ると同年代だった人達は1年しか歳をとっておらず、自分だけ10年歳をとるなど考えたくもない


「だが・・・考えようによっては魔の世にいれば10倍の時間が得られる・・・強くなるには・・・超えたい相手がいるのならうってつけだな」


「相手より修行する時間は得られるな。寿命を犠牲にしてみたいなところはあるが」


ハーネットの言葉にクオンが頷くと、それを見ていたマーナがハッとした表情でクオンを見た


「だからクオンは・・・」


「俺が居たのは1年だけだ。老け顔で悪かったな」


「あ、いや・・・あははは」


同い歳に見えない問題が解決したと思ったが、1年の違いではさほど変わりはしないとクオンはマーナを見返した。それもそうかとマーナは慌てて笑って誤魔化す


「ねえ・・・もしかしてラフィスってこっちの年齢だと10歳って事なのかな?」


「恐らくな。カーラが俺の存在に気付いてから動き出したのなら、ラフィスは10歳・・・ただその間に魔の世にどれくらい行っていたかによって実年齢は変わってくると思うが」


「あんのクソガキ・・・」


「ガキって・・・人の世では10歳かもしれんが、もしかしたら100歳を越えてるかも知れないんだぞ?」


「さすがにそれはないでしょ。私と同じくらいにしか見えなかったわよ?」


アカネが色々騙されていた事を思い出し呟くとクオンがとんでもない事を言い出した。ラフィスと共に1番長く居たアカネが否定するが、クオンは首を振る


「魔族と人の子は寿命が長いからな。あの見た目でも100歳って可能性はあるぞ?なあ、黒丸」


「うむ。魔と人が共存していた頃は魔と人の間の子、魔人が沢山おった。個体差もあるが今の人よりは大分長生きだったのう」


「・・・」


可能性の段階ではあるが、同い歳くらいと思っていた相手が実は遥かに歳上である可能性に言葉を失う


「魔の世は常に薄暗く、明確に一日経過したっていうのが分かりにくい。だから、ラフィス自身も実際何年魔の世に居たかなんていうのは分からないだろうな。俺みたいに魔の世に行ってから人の世でどれくらい経過していたか分かれば話は別だが・・・」


この場では確認しようもない事であり、全ては憶測に過ぎない。しかし、ラフィスと話し、今までの経緯を省みると恐らくはラフィスはカーラの子であり、魔人だろうと確信していた


しばらく無言になり、それぞれが考えていると、ふとハーネットが顔を上げる


「なあ、クオン・・・もしかして、ラフィスの傍にいる魔族達は魔の世で修行しているとか?」


「恐らくな。今日会ってきた奴らは前回戦った奴らとは既に別物だったよ・・・更に強くなると思ってた方がいいかもな」


ゴクリと誰かが喉を鳴らす。相手は自分らのタイミングで王都を襲い、片やハーネット達はいつ襲撃に合うか分からない為に常に警戒し、鍛える時間もない


クオンからの情報で有益だったのは3日後という襲撃の日を知れた事のみ・・・それを全面的に信じて王都を開けることは出来ないにしろ、少しばかり心に余裕は生まれていた


「率直に言ってくれ・・・クオンは我らに手を貸してくれるのか?」


「・・・フォロを見捨てる事は出来ない」


「だろうな・・・」


ハーネットはクオンの返答を目を閉じて聞いていた。想像通りの返答に少し口元を緩めると立ち上がる


「屋敷は自由に使ってもらって構わない。今から王城に向かい三日後の襲撃に備えるので戻って来ないと思う・・・無事撃退に成功した暁にはこの場で再び相見えよう」


ハーネットは笑顔で言うと足早にこの場を去って行く。それに付き従うソフィア、ガトー、ジゼン。ソクシュも立ち上がり、一瞬クオンを見たが何も言わずにハーネットの後を追った


残されたシント及びクオンについて来た者達は何とも言い難い表情になり、誰も言葉を発すること無く時だけが過ぎていく


「ボクちょっと外に出て来る~」


「あっ、それなら僕も!」


この場の空気に耐えられなくなったジュウベエが席を立つと慌ててレンドがその後を追い、残された者達も次々に部屋を去って行く


残ったのはアカネとマルネスとクオン


「クオン・・・なんでカーラは自分でやらずに、子供に・・・ラフィスにやらせてるんだろ?」


「さあな・・・だが、ラフィスだからこそ・・・王都に侵入出来た。恐らくカーラは擬態は行わない。人も殺さないし、もちろん同族もな」


「なんでそんな事が分かるの?」


「アモンが禁じたから・・・だろ?黒丸」


「うむ。アモンは強大な力を持っていくつかの禁忌を定めた。それはアモン亡き後も効果を発揮しており、そのお陰で魔族同士の抗争はないと言ってよい。我らが擬態を忌み嫌うのもそのせいだろうな。そして、カーラは決してアモンの言いつけを違える事はない・・・それだけアモンに傾倒しているのは有名な話だ」


「待って・・・マルネスやシャンドは擬態してるじゃない」


「アモンの能力は人の世まで及んではおらん。ただ無意識に擬態は禁忌と刷り込まれているのは確かだ・・・妾はクオンの為に・・・シャンドも同じだろう・・・魔の世ではクオンが願ってもアモンの能力に邪魔されて出来ぬかもしれん。要は人の世ではアモンの影響を受けず、本来なら自由に出来るのだが、本人の気持ち次第ってところか」


「つまり・・・カーラはアモンの言いつけを守り、擬態をする事や人や魔族を傷付ける事をしないと?」


「恐らくな。人を傷付ける事は魔の世でも禁忌ではないのだが、アモンが望んでいた魔と人が共存するという思いを汲んで傷付けるのを躊躇うだろう。だから、自分の能力を持ち、実行出来る者を生み出す必要があった」


「自分がやらないでも、他がやってたら同じ事じゃない!」


「妾に言うな。カーラにとってはやりたい事を出来ない中で考えた苦肉の策だろうのう。よう考えついたものだ」


「やりたい事・・・天使を排除して、人と魔の世を創り出す・・・」


「妾としては大歓迎な案だが・・・のう?クオン」


「誰も傷付けないやり方なら賛成だけどな・・・」


クオンとしても魔族と共存する事に関しては賛成だったのだが、ラフィス達は計画を進めていく中で人を殺し過ぎた。そして、現段階においてもフォロを拉致しているので、とても賛同する気にはなれない


従者達をを殺されたアカネも頷くが、フォロが捕らわれている状況では手も足も出ず、悔しさを滲ませる


「後はハーネット達の頑張り次第・・・か」


クオンは椅子に背中を預け、仰け反るようにして目を閉じ呟く。絶望的とも言える戦力差を前にしても祈るしか手段がない事に歯噛みする


後3日・・・再びラフィス達が来るのをただ待つ事しか出来なかった────




ハーネットとソクシュはクオンが仕入れた情報をランスとシードに伝えた


4人は雪辱に燃え、何とか対抗する手段を模索する


残された日数は少ない・・・と、なると自分達が強くなるのは難しいと判断し、今ある力で対抗する手段を取る事にした


それは連携


1対1で適わなくとも、上手く連携すれば活路は見い出せると判断した4人は国王ゼーネストが呼び寄せたAAランク冒険者、クゼン・クロームに師事を仰いだ


次の日────


「なるほど・・・悪かぁねえ。だけど、まだまだ拙さが目立つな」


クオン達も良く使うダムアイト前の森の中、開けた場所でハーネット達4人はクゼンに挑むも軽くいなされる。腰に差した剣も抜かずに着流しの懐に右手を入れたまま、躱され続け、結局傷一つ付けられずにいた


クゼンは左手を顎に当て、それぞれの寸評を言い始める


「ハーネット・・・お前さんは飛び上がり戦況を見つつ皆に指示するのは良いが、折角の4対1を活かしきれてねえ。指示するだけじゃなくて、自分も攻撃に参加出来るように3人を動かせ」


「は、はい!」


「ランス・・・お前さんは威勢は良いが、事戦闘になると途端に臆病になりやがる。一撃必殺の力を活かしきれてねえ・・・仲間を信じて突っ切ろ!ごちゃごちゃ考えんな」


「くっ!」


「シード・・・お前さんは盾の能力に頼りすぎだ。お前さんが守りを固めたら、必然的に周りが狙われる。必要な時に必要な守りをしねえといざって時に守れねえぞ?」


「・・・はい」


「ソクシュ・・・嬢ちゃんは一番自分の役割を理解してる・・・が、撹乱に重きを置きすぎて、いずれ相手にされなくなるぞ?たまには強力な一撃を叩き込むつもりでないとな」


「うっ・・・はい」


「じゃあ、もう一度・・・って言いてえところだが、相手の数を考えたら4対1ってのは無理があるぞ?相手が4体なら、俺が2体でお前らも2体相手にしねえと・・・まさか俺に3体任せるつもりじゃあるめえな?」


「いえ・・・クゼンさんには2体お願い出来れば・・・私達が1体、残りは私達の仲間に・・・」


「よせよせ。時間稼ぎにもなりゃしない。ギフト持ちだろうがなんだろうが、ただでさえ魔素がない状態で戦うんだ・・・かなりの魔力を持ってないと一瞬で魔力切れだぜ?」


「それでは・・・」


「お前らが4対2で踏ん張るしかねえ・・・粘れば相手の魔力切れを狙える。だから、やられない為の連携を組むんだ。そうすりゃあ、勝機もあらあ」


消極的な作戦にはなるが背に腹はかえられない。何としても守らねばならないという気持ちが4人にはあり、普段なら決して受け入れられない作戦も素直に受け入れる


「しっかし、出来れば4対1じゃなくて、4対2の訓練をしたかったが・・・」


「なんならボクが手伝おうか~?」


「あん?」


「ジュウベエさん!」


クゼンが頭を掻いてボヤくと、木の陰からジュウベエが現れた


ジュウベエを知らないクゼンが頭を捻ると後ろからハーネットがジュウベエの名を呼ぶ


「手を出せないって分かって昨日からむしゃくしゃしてたんだ~今なら特別に手を貸すよ~・・・本当はそこのオジサンとやりたいんだけどね~」


ジュウベエがクゼンを見て妖しく微笑むと、クゼンは助けを求めるようにハーネットに振り返る。最近女難の相が出てるのではないかと本気で思い始めた


「ジュウベエさんは強いですよ・・・シント国の剣聖を名乗るほどに・・・」


「あん?シント国の剣聖?・・・まさかあのジュウベエか!」


「あれ~?オジサン知ってるの?」


「知らいでか・・・人よりちょっぴり長生きしてるからな。否が応でも耳には入ってくるさ。にしても・・・ふーん」


クゼンは顎に手を当ててジュウベエを上から下まで眺める。見た目は20代前後にも関わらず国一番の剣士の称号を持つジュウベエに興味を持つが、ジュウベエはジト目でクゼンを見返した


「オジサン・・・目、ほじくり出すよ?」


「おおい!物騒だな!ちょっと見ただけじゃねえかよ・・・剣聖を継ぐものならありがてえ・・・手伝ってくれるか?」


「いいよ~。報酬は全て終わったらオジサンとの一騎打ちで~」


「はっ、俺も剣士の端くれだ。今代の剣聖と戦えるなんてこっちからお願いしたいくらいだぜ・・・勝利の美酒の他にとんだデザートが付いたもんだ」


クゼンはおもむろに剣を抜くと振り返りハーネット達を見つめる。ジュウベエはクゼンの横に並び立つとマジマジとクゼンが持つ剣を見つめた


「片刃・・・刀か~」


「おっ、さすがシント国の剣聖・・・刀を知ってるたぁな」


「当たり前~・・・耐久性はないが、斬る事に特化した剣・・・未熟な者が振るうと刃が欠け、相手の剣を受けるとすぐ折れる。でも、達人が持つと無類の強さを発揮する・・・オジサン扱えるの~?」


「何とかな・・・」


「ふ~ん。ますますオジサンと戦いたくなっちゃった~・・・お願いだから死なないでね?」


「・・・善処しよう」


「ふふ・・・久しぶりに今日は良く眠れそうだよ~・・・君達も気を抜かないでね?あまり腑抜けた攻撃して来たら・・・殺すよ?」


訓練ですよー!と心の中で叫びながらジュウベエとクゼンに対峙する4人。先程までに比べて緊張感が格段に跳ね上がる


実践さながらの緊張感に望むところと意気込む反面、ソフィアが活躍する姿が目に浮かぶハーネットであった────




クオンがラフィスと会ってから三日目の朝、ハーネット達は王城内4階にある一室の前でラフィスの襲撃に備えていた


今日が宣告されていた襲撃の日。目的はゼナ・クルセイド王女の器。そして、ラフィスが前回の襲撃の時にここまで来ていた為に、恐らくはココに来るであろうと待ち構えていた


「うー、いつ来るか分からない敵を待つのがこれほど苦痛とは・・・」


「それでも日にちが分かってただけありがたいね。もし分かってなかったら、この苦痛を延々と味わう事になってたよ」


「ランス、シード・・・気ぃ抜くなよ?まずは俺が相手の力量を見極めっから、そこで二手に分かれる・・・いいな?」


「どうやって力量を?」


「んなもんは勘だ勘・・・ハーネットだって強い相手の前に立ったら分かるだろ?なんかこう・・・ゾワッとする感じが」


「あー、私もこの前経験したかも・・・言っても味方の技にでしたけど・・・」


「し、四天様!クゼン様!」


ソクシュがマルネスの出した技を思い出し身震いしていると、階段を駆け上がりながら叫ぶ兵士。ラフィスはココに直接来ると思っていたハーネット達が何事かと尋ねると、兵士は上がった息を落ち着かせるように胸を押さえながら言い放つ


ラフィス達が王城の庭に出現したと────


街から王城へと向かう際、背の高い門をくぐり抜けると開けた庭園が眼前に広がる。その庭園には様々な花などが育てられ、初見のものが目を奪われてフラフラしていると迷子になってしまうほどの広さを誇っていた


その庭園に現れたラフィス達・・・5人は急ぎ庭園へと向かった


「陽動の可能性は?ラフィスは『門』で一瞬で移動出来ますよ!?」


「少しの間なら時間は稼げる・・・その間に戻ればいい!」


走りながら声をかけてきたハーネットに対して、クゼンはある人物を思い浮かべながら答える


どっちにしろ現れたラフィス達を放置する訳にはいかないと、顔をしかめながら走る5人はようやく王城から出て、ラフィス達を目のあたりにする


「こりゃあ・・・想定外だ・・・」


ラフィスを中心に4体の魔族が左右に2体ずつ並ぶ。その内の1体を見てクゼンが目を細めた


「想定外って・・・」


「力量に差がありやがる・・・あの隻腕の奴がやべぇ・・・後はお前らでどうにか出来る・・・計画は変更だ・・・俺が隻腕を・・・」


「久しぶりです、四天の方々。それと・・・貴方は誰ですか?クオンさんの手の者でなければ良いのですが・・・」


クゼンがハーネット達に小声で指示を出していると、出て来た5人を見て笑顔になってラフィスが話しかける


周囲には兵士達がラフィス達を取り囲むが、決して手を出したりはしない。事前に手を出さないようにと通達済みであった


「ハーネット様!」


外に居たガトー達がハーネットの後ろに周り、ソフィアを守るようにガトーとジゼンが身構える。王城内での戦闘になれば手狭になり、少数同士の決戦を予定していたが、万が一王城の外での戦闘になった場合、後方支援としてガトー達が加わる事を計画していた


加わったガトー達を見てハーネットは頷くとラフィスへと向き直る


「クゼン・クロームってもんだ。クオン何某とは関係ねえ・・・陛下子飼いの冒険者って感じだな」


「ふーん、ならいいか。で、こんな所に居て良いのかな?僕の能力を知らないのかな?」


「こっちが聞きてえな。あんたの能力を使えば目的地まで行けたんじゃねえのか?庭に現れた意味・・・聞かせて欲しいもんだ」


「・・・どこに現れても邪魔するよね?あの場所で罠でも仕掛けられていたら嫌だったから、どうせなら広い場所で排除してから、悠々自適に目的を達成しようと思っただけ・・・」


「その戦力でか?」


「ああ・・・魔力が勿体ないからとそのままだったんだね。もういいよ。さっさと倒して目的を達成しよう。四天・・・特にハーネット様とソクシュ様はなるべく殺さないように・・・クオンさんの機嫌はなるべく損なわないようにしたい」


「ハッ!」


ラフィスが言うとヴァネスが返事をして人化を解く。それに続き、ガドラスとジニアも人化を解いた


「・・・おい・・・ギフトを得たばかりの若造上級魔族って話だよな?」


「え、ええ・・・そのはずです・・・」


「なら・・・なんなんだコイツら・・・1体やべぇのが混じってる・・・それに他の2体も隻腕並だ・・・くそっ・・・シャレになんねえぞ!」


「なっ・・・」


「俺が1番ヤバい奴をやる!お前らは二手に分かれて何とか1体ずつ引き止めろ!」


「それだとラフィスともう1体残りますが・・・」


「・・・ラフィスともう1体は中に任せるしかねえ・・・それ以上はどうしようもねえ・・・初っ端から全力を出せ!1体片付けたら、他のフォローに回れ!」


クゼンは歯を食いしばり剣を引き抜くと最もヤバいと感じた魔族へと斬り掛かる


残されたハーネット達は予定のない組み分けを瞬時に行う


「1体は『白銀の翼』が受け持つ!3人はクゼンさんの言う通り1体を!負傷したらソフィアが回復する!・・・何とか・・・何とか持ち堪えるぞ!」


「ハーネット・・・ちっ!それしかないか・・・俺らで速攻で片付けるぞ!シード!ソクシュ!」


「ああ!誰一人・・・死なせはしない!」


「・・・ハーネット・・・気を付けて!」


組み分けが速やかに終わると、各々が魔族1体と対峙する。予定は崩され、連携の訓練は無駄になるが、ハーネット達は長く組んだパーティと、ランス達はハーネットが抜けたとはいえ3対1で戦える事に微かな望みを持っていた


戦いが始まるまでは────


王都庭園でのハーネット達の戦いが始まる────


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