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最強の番犬と黒き魔女  作者: しう
『招くもの』
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2章 27 クオンとラフィス

ディートグリス王都ダムアイト近くの森の中、1人の古びた着流しのような服装の男が口に長い楊枝を咥えて気だるそうに歩いていた。右手を懐に突っ込み、左手は剣の柄に載せて歩く姿は異様に目立つ


歩く度に草履が地面に擦れ、蹴飛ばした石が転々と転がった先に少女が木陰にある大きな石の上で足をブラブラさせて涼んでいた


辺りを見ても保護者は居らず、王都に近いとは言え年の頃なら6~8才の女の子が外で1人でいる事にため息をつき近寄った


「嬢ちゃん・・・この辺は魔物が少ないとは言え出ないとも限らねえ。人攫いなんかも出るかも知れねえからお家に帰りな」


「確かに・・・目の前に居るな」


少女はブラブラしていた足を止め、目を細めて男を見つめると鼻で笑った


「おいおい・・・こんな男前を捕まえて人攫いたぁ言い過ぎじゃねえか?」


「良い方向に解釈し過ぎだ」


「良い方向って・・・俺は魔物の方かよ・・・けっ、どうなっても知らねえぞ?」


さすがに魔物扱いされた後にお節介をやく気にはなれず、男は王都を目指して再び歩き出す


少女は気にすること無く同じように足をブラブラし始めると、男は足を止め頭を無造作に掻いた


「あー・・・くそっ・・・いってえ何してんだ?」


「なんだ?興味津々か?妾には運命の相手がもうおる・・・他を当たってくれ」


少女の言葉を聞いてガクッと肩を落とすと、今度こそ知らないと言わんばかりに頭を振ってその場を離れる。こんな事なら話しかけるんじゃなかったと思っていると、少女が何かを言ったような気がして振り返った


「何か・・・言ったか?」


「気の所為だ。さっさと行ったらどうだ?」


少女のその答えにまた頭を掻くと男は王都へと再び歩き出す


それを横目で見た少女が小声で呟く


「ふん・・・痴れ者が」


少女の呟きは風に流され、男の耳に届く事はなかった────




ハーネットの屋敷


ディートグリス国王ゼーネストとの謁見が終わり、昼食を食べ終えた後、シンはシントに帰ることを皆に告げた


シント国では国王不在で大騒ぎ・・・にはなっていないが、レンが『レン話』で国に居るものに確認したら、2名ほど角を生やしているという


1人はモリト・ケルベロス


クオンの父であり、シンの親友。シント国では国王であるシンに忌憚なく意見出来る唯一の人物。クオンと同じく臣下扱いではなく、相談役としての立場をとっている


もう1人はファーラ・ウォール


シンの妻。よく泣く王妃として有名だが怒ると手が付けられない事でも有名


その2人が角を生やしていると聞いて青ざめたシンはすぐに出発すると言い始めて今に至る


街中でいきなり飛び上がると目立つので、街の外まで一旦出てから飛び上がると言うのでシントの面々は見送る為に共に街の外へ


約1日の滞在ではあったが、シン本人は成果を上げたとご満悦・・・クオンにフォロ救出を託し、颯爽と飛び上がる


一応見えなくなるまで見送くろうと見つめていると、飛び始めてすぐの時にクオンらを振り返り、手を振ったと思ったらそのまま飛び去って行った


「・・・一体何しに来たんだろう?」


「大方フォロを救出しに来たんだろうよ。謝罪はそのついでだな」


「助けてないわよ?」


「俺が昨日の夜に伝えたからな。『余計な事するとフォロが殺されてしまいますよ』ってな」


「・・・なるほどね。明日か・・・頼むわよ」


「どっちをだ?」


「決まってるでしょ?・・・フォロをよ」


アカネはクオンとの会話を切り上げると、両手を頭の後ろで組んで街の中へと戻って行く


他の者達もそれに続いて戻って行き、クオンも続こうとした時、マルネスがクオンの服の裾を掴んだ


「ん?なんだ?」


「伝え忘れておった。この場所に来て、それを思い出したわい」


「何を・・・」


「ラフィス・トルセンの能力とあやつが魔の世に行ける理由・・・恐らく・・・いや、まず間違いなくあやつは────」


マルネスから語られる言葉に耳を傾けながらクオンは目を細め、これまで知り得た情報とマルネスの言葉を照らし合わせる


そして・・・


「なるほどね・・・やっと合点がいった」


「そうであろう?そうであろう?ならば・・・」


マルネスはクオンの感想を聞いて目を輝かせてクオンを見つめる。マルネスに尻尾が生えていたら全力で振られているだろうなとクオンは苦笑しマルネスの頭に手を乗っける


「フォロを無事救出したらな」


「お、おう。そうだのう・・・き、昨日の続きだぞ!今度こそ待っておくのだぞ!」


「・・・その前に服のサイズを考えてくれ」


幼女を連れ歩くのはもちろん、痴女を連れ歩くのも勘弁して欲しいクオンであった────



翌日、クオンはシャンドに元モコズビッチ家の別荘近くへと送ってもらい、1人で屋敷に向かい辿り着く


ラフィスから指定してきた割には出迎えなど一切なく、クオンはそのまま屋敷の扉を開け、中へと入った


がらんどうとした屋敷の中に入ると大きめの玄関にラフィス達がクオンを待ち構えていた


「ようこそ、僕の屋敷に・・・と言っても勝手に頂いたものですがね」


「盗人猛々しいとはまさにお前の事だな・・・で、フォロはどこだ?」


その場に居たのはラフィスを中心にヴァネス、ワット、ガドラス、ジニア達だけであり、フォロの姿はどこにも見当たらなかった


「人質を奪い返されたら話も聞いてくれなさそうで・・・心配しなくとも丁重に扱っております」


「そんな事はないぞ?1度じっくり話してみたかったし・・・だが、フォロの無事を確認出来なければその気もおきない」


「・・・いいでしょう」


ラフィスは言うと目の前に1本の線を引いた。その線が左右に拡がると猿轡をされ、拘束されたフォロの姿が現れた


しかし、引かれた線はほんの30cmほど・・・その隙間を通って助ける事も出来ず、クオンは顔を歪める


「フォロ!」


クオンはフォロに向けて手を伸ばすが、フォロは目を見開きクオンを見ると激しく首を振る。まるで自分を見捨てろと言わんばかりに・・・


「待ってろ!必ず助ける!」


「おっと・・・そろそろいいですかね?」


一歩踏み出したクオンを見て、ラフィスは咄嗟に隙間を閉じる。あの大きさでは何も出来ないとは分かっていても、相手はクオンという事もあり、警戒を怠る事はしなかった


「・・・あの場所はどこだ?」


「教えると思いますか?教えた途端、使役している魔族に連絡して助けに向かわせる・・・そんな手には引っかかりませんよ。無事も確認出来た事ですし、そろそろお話でも・・・」


「フォロの能力は・・・いや、器はどうした?」


レンとの『レン話』が出来ない理由・・・レンは相手の器を記憶し、どんな遠くても交信が出来る。その交信が出来なくなった理由は考えられるとしたら、器を奪われたか、殺されたか・・・生きてる事を確認した今、理由はひとつしかなかった


「安心して下さい・・・傷付けずに抜き取っただけです」


胸に穴を開け強引に抜き取る以外知らないクオンにとって、器を奪われたとしたら、ラフィスの言う無事という言葉が当てはまらないと考えていたが、ラフィスはそれを察して先んじて説明する


「・・・『門』か・・・」


「!?・・・バレてましたか・・・」


クオンの呟きにラフィスは一瞬驚きの表情を見せるが、すぐに表情を戻し、微笑む


「隠すつもりはなかったのですが・・・こちらから明かす前に言い当てられるとは思いませんでしたね・・・」


「その能力を知ってる奴が居てな・・・だいぶ昔に見た事があったらしいが、なかなかそいつとお前が結びつかなかったらしい。性別も・・・種族も違かったらからな」


「・・・そうですか。まあ、知られて困る能力でもありませんし、僕の出来ることを知ってもらった方が話もスムーズになるでしょう────」


ラフィスはそう言うと自分の能力について語り出す


ギフト『門』────行きたい先をイメージして門を創り出し、そこを通る事によりイメージした場所に行ける事が出来る能力。門の大きさは任意で、通すものによって変える。門が開いている時間は込めた魔力によって変わり、途中で閉める事も可能・・・


「『門』が退化した能力が『開閉』・・・あらゆるものを開いたり閉じたり出来る・・・身体を傷付けずに胸を開き器を取り出したり・・・花を強引に開いたり・・・ね」


「なるほどね・・・あながち俺の推理も間違ってなかった訳か・・・俺はてっきり『開く』って能力と思ってたからな」


「あれだけの情報でそこに到れるとは・・・流石は『原初の八魔』の一人の流れを汲むものってところですか・・・」


ラフィスの言葉に反応したのはクオンではなく、ヴァネス達であった。ラフィスを見て一様に驚愕の表情を浮かべる


「主・・・何を・・・『原初の八魔』は古い言い方・・・今は『七長老』・・・いや、一人欠けて『六長老』と・・・」


「その『六長老』の中に入っていないので・・・彼、クオン・ケルベロスのギフト『禁』の始祖・・・アモン・デムート様はね」


ラフィスの言葉に魔族達が一瞬固まった。上級となった今でも雲の上の存在である『六長老』。その前の呼び名『原初の八魔』の1人であるアモンの名前に驚かずにはいられなかった


「なあああぁ!?アモン様ですと!?バカな・・・アモン様は天使との戦いでお亡くなりに・・・まさか・・・その前に?」


「その通りです、ヴァネス。人と結ばれる事無く亡くなったとされていたアモン様は密かに人と契りを交わしていた・・・その唯一の一族がケルベロス家・・・クオンさんの一族です」


≪マ・・・マジかよ・・・≫


「ひぇー、そりゃあワット達が適わない訳だよ・・・ん?だとしたら、ウチら争う必要全くないんじゃ?」


「ええ・・・そうですよね?クオンさん」


ジニアの言葉に頷き、ラフィスはクオンを見つめた。ヴァネスら魔族も同じようにクオンを見つめると、クオンはため息をついて首を振る


「どうしてそうなる?」


「どうしてって・・・クオンさんはとうに我らの目的にお気付きでしょう?我らの目的はこの世に現存する天使を滅す事・・・そして、本来あるべき姿・・・人と魔の共存を成す事。それらは全てアモン様の悲願」


「俺はアモンじゃない。クオンだ。それに人と魔の共存と言っておいてアカネの部下を殺したり、この屋敷の持ち主を殺したり・・・言ってることとやってることがチグハグ過ぎはしないか?」


「・・・僕に力があれば誰も傷付けずに達成出来るかも知れません・・・しかし、僕は弱い・・・力を貸してくれる魔族達はいるけれど、圧倒的な戦力差を埋める事は出来ない・・・よく言うでしょ?弱い犬ほどよく吠えるってね」


「・・・だから、殺したと?」


「ええ・・・だって、怖いでしょ?僕を調べたり、反抗されたりしたら・・・放っておいて枕を高くして眠れるほど僕は強くはないんですよ・・・でも貴方は違う・・・貴方となら犠牲を出さずに目的を・・・人と魔の共存する世界を再び!」


「だから、俺はアモンじゃない・・・いつから俺の目的が人と魔の共存になったんだ?」


「神扉の番犬・・・貴方は何から何を守ってるのですか?」


「・・・」


「貴方の役目は他国にも知れ渡っています・・・神扉の前に立ち、万が一神扉を抜けて来た魔族が居たらそれを滅するのを生業にしていると・・・しかし、それはデタラメです。なにせ魔族は神扉から出る事が出来ない・・・出てこれない魔族を警戒して毎日その場に居る意味がありますか?ないですよね?では、何故貴方はその場に居続けるのです?」


「お前にどうこう言われる筋合いは・・・」


「天使から魔族を守る為ですよね?」


クオンの言葉を遮りラフィスが言い放った言葉に衝撃を受けたのはクオンではなくラフィスの傍にいた魔族達。人が魔族を守る為に扉の前に立つ・・・番犬の名の通りではあるが、信じ難い言葉であった


≪ちょ・・・主・・・それはどうかと・・・≫


「ワット・・・アモン様は人と魔の共存を強く願っていた。誰よりも・・・異端者と言われようとね。そのアモン様の力を受け継ぎ、神扉の前に番犬として立つケルベロス家・・・アモン様の遺志を継いでるとは思えないかい?」


「主は我らが守られる存在だと?」


「ヴァネスの言いたい事も分かる。魔族は人より遥かに強い。だが・・・天使はその魔族をも凌駕する・・・当時最強と目されていたアモン様を倒す程に・・・強い」


「まるで見てきたかのような言い方だな?ラフィス・トルセン」


「・・・茶化さないで下さい、クオンさん。貴方は力と共に受け継がれているはずです・・・アモン様の遺志を。故にケルベロス家は人の地位に就かない。それはそうですよね・・・魔族側の人なのですから・・・」


「なるほどな・・・アモンの遺志を継いでる俺ならばお前らのやってる事に賛同する事はあっても否定する事はないと・・・共に天使を倒そう・・・ってか」


「そうです!共に天使を・・・」


「何度言えば分かる?俺はアモンじゃない。それにアモンは天使とすら共存を望んでいた・・・それは聞いてないのか?」


「バカな!!平穏な世を乱し、アモン様を殺した天使となど共存出来るか!!」


「・・・そうかもな。俺にもよく分からない・・・今言ったのはあくまでも受け継がれている遺志・・・それをアモンの口から聞いた訳でも無いから真意など知らない・・・ただ『魔と人と天の共存を』・・・それがアモンの遺した言葉だ」


「・・・!」


ラフィスは激昴するが、クオンの言葉を聞いて冷静さを取り戻す。しばらく見つめ合うと深く息を吐き、首を振った


「その御遺志は理解出来ません・・・お互い分からない話をしても意味はないでしょう・・・なのでお聞きします。クオン・ケルベロス・・・貴方は私に賛同しますか?それとも・・・拒みますか?」


「・・・・・・フォロを助けるのが最優先だ。だが、その為にハーネット達を殺すのは違う・・・」


「ハーネット様達を殺す気は毛頭ありません。我らの狙いはあくまでも天使・・・ゼーネスト・クルセイドの娘であるゼナ・クルセイドの能力のみ・・・もちろん邪魔をされれば排除しますが、貴方が味方してくれるのであれば、彼女の能力だけを取ることが充分可能だと思っております」


「・・・『頭』か・・・」


「ええ・・・僕は再び人と魔の共存する世界を創ります。その時に邪魔になるのは天使・・・ですが、ハーネット様の屋敷で過ごした何日間でハーネット様が魔族を毛嫌いしている訳では無いと知りました。つまり、天人とはいえ思考は人寄り・・・なので、僕の目標はただ1人・・・天使の5つに別れた魂の1つ・・・『頭』の部分を受け継いでいるゼナ・クルセイドの能力のみです」


「俺が協力して他の者達を抑えている間に王女の居る場所・・・恐らくは王城の4階に赴き、お前の能力で王女の器を奪う・・・誰も犠牲にならず、天使の脅威は去り、人と魔の共存が可能になる・・・か。逆に俺が協力しなければ、フォロは死に、お前らは強引に王女の能力を奪おうとする為に被害が拡がり、死人が出る可能性が高いと」


「察しが良くて助かります。僕も事を荒立てる気はないのです。クオンさん・・・断る理由・・・ありますか?」


「ない・・・と、言いたいところだが、1つ質問していいか?」


「なんなりと」


「なぜ今なんだ?」


「・・・貴方が原因ですよ・・・クオン・ケルベロス・・・アモン様の能力を受け継ぐ貴方の出現が・・・」


「・・・なるほどね。・・・1週間、時間をくれないか?それまでに結論を出す」


「長過ぎます・・・3日・・・3日後に我らは再び王都を襲います。その時に我らに協力してくれるのか、何もしないのか、拒むのか・・・何もしなくてもフォロさんは殺しません。ただ邪魔する者は排除します・・・その中に貴方の知人が居ようともね」


「決行の日を俺に言って良かったのか?」


「僕の『扉』は行ったことある場所ならどこでも開けます。戦闘では厳しいですが、事奇襲に関しては右に出るものなど居ないと自負しておりますので、日にちが知られたところで特に困る事はありませんよ」


「・・・分かった。その間、フォロを頼む」


「もちろん。フカフカのベッドに暖かい食事・・・丁重にもてなします・・・邪魔するまでは」


「肝に銘じておくよ・・・カーラ・キューブリックによろしくな」


「・・・」


クオンは話は終わったと踵を返すと、去り際にラフィスに右手を上げて言った


ラフィスはその言葉を受けて眉をひそめながら出て行くクオンを見送る


クオンが出て行くと屋敷は静寂に包まれ、その場に残ったラフィス達は各々が今の話し合いで得られた情報を整理する


「まさか・・・アモン様の魔技を受け継ぐものがいたとは・・・」


「隠してて悪かったね・・・天使との戦いに決着がついた後に御迎えに上がる予定だったんだけど、まさかディートグリスに来てるとは・・・」


「では・・・存在自体は以前から?」


「ああ。10年前の魔の世で開かれた『晩餐会』・・・彼が主賓だよ」


「!?・・・通りで・・・」


≪姐さんの名前を知ってましたが、やはり接触を?≫


「いや、僕の能力がバレた時点で察したんだろうね・・・彼は聡いし、周囲には上級魔族もいる・・・」


「味方になって・・・くれるでしょうか?」


「ならざるを得まい・・・彼の味方の命がかかっているのだからね」


ラフィスは既に屋敷を出たクオンの後ろ姿を思い浮かべ呟く


それを聞いてヴァネスは頷き、ワットは苦虫を噛み潰したよう顔をした


「そろそろ食事の時間だ・・・味方になった後の彼の機嫌を損なわない為にもおもてなしをするとしよう」


ラフィスはおもむろに『扉』を開き、フォロが居る場所へと移動する。その後にヴァネス達が続き、屋敷はもぬけの殻となった────




屋敷を出たクオンは事前に打ち合わせていた場所へ辿り着くと立ち止まった


「シャンドいるか?」


「ここに」


クオンの呼び掛けに即座に木陰から出て来るシャンド。新調した執事服は夏仕様で少し薄い生地を使っている


「急ぎダムアイトのハーネットの屋敷に送ってくれ。その後にやってもらいたい事がある」


「かしこまりました。彼の者との話し合いは・・・」


「話し合いと言うかお互いの確認作業みたいなもんだ。きっかけが俺って言うのは意外だったがな」


「主が?」


「10年前の『晩餐会』・・・そこでアモンの能力を受け継ぐものがいることを知ったカーラが黒幕だ。度々出来る『隙間』もカーラの仕業だったのだろう」


「カーラ・キューブリック・・・アモン様の従者ですか。確か彼女の魔技は・・・」


「『門』・・・ラフィスが魔の世に行ける理由もこれで解消って訳だ。今回の騒動も10歳児の反抗期と考えると可愛げが・・・ないか」


「やはり主は私の見込んだ通りの御方・・・」


「どんな見込みだ?」


「ダムアイトに飛びます」


「・・・おい」


クオンの言葉に答えずシャンドはクオンの身体を触り、『瞬間移動』を使う。後には何も残されず、ただ木々が鬱蒼と茂るだけであった────



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