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最強の番犬と黒き魔女  作者: しう
『招くもの』
45/160

2章 20 『掃き溜め』

ソクシュとシャンド、そしてゲオヤは『掃き溜め』と呼ばれる街外れの地区に向かっていた


サケオは冒険者ギルド内にある酒場で預かってもらい、今は3杯目のジュースを頼もうか悩んでいる


ゲオヤの案内で向かうと活気づいていた中心部と違い、路上に座るものや物乞いをするものが増え、着ている服も着古してるのかボロボロだった


空気すら淀んでいる印象を受けたソクシュは顔を歪め、街にこんな場所があったのかと衝撃を受ける


「こ、こちらです」


ゲオヤが青ざめた顔で指し示した建物は他のボロい家に比べてかなり大きくしっかりとした造りになっているのがクスカスの権力を物語っていた


ソクシュがゲオヤに頷くと建物の扉を開ける


すると中に居た者が入って来た3人を見て声をかけてくる


「あ?ゲオヤ?それに・・・噂の男女ちゃんじゃねえか」


男はゲオヤとソクシュを見るとそう言い、ジロジロと3人の姿を観察する。建物の中は2階に上がる階段が中央に、その左右に扉があり、構造から2階をメインに使用していると伺えた


「クスカスさんは・・・居るか?」


ゲオヤに聞かれた男は3人を注意深く観察しながら顎を2階に向けてクスカスが2階に居ることを教える。ゲオヤはフーと大きく息を吐き、2階へと向かう為に階段を上り始めた


ソクシュとシャンドもそれに続き階段を上るとすぐに大きな扉が目の前に。ゲオヤは慣れた手付きで両開きになっている扉を開けた


中には数名の男女がおり、1番奥の大きなソファーにパイプを吹かす男が横たわる。左右に立つ女性があられもない姿で団扇を扇ぎ、数名の男たちがテーブルを囲い談笑していた


「あ、あんた!」


団扇を扇ぐ1人の女性がゲオヤを見て驚きの表情を見せると、ソファーに横たわる男がニヤリと笑い口を開く


「ゲオヤか・・・金は出来たのか?それとも現物で払うつもりか?」


男は身体を起こしソファーに座るとふんぞり返り足を組む。そして、ゲオヤが連れてきたソクシュとシャンドを品定めするように見つめた


「あっ!クスカスさん、後ろの奴・・・魔のトライアングルの男女ですぜ!」


テーブルで談笑していた一人の男がソクシュを指差しソファーに座る男、クスカスに告げる。聞いたクスカスは目を見開き、ふんぞり返っていた身体を起こしてソクシュを凝視する


「ほう!あのラビットタイガー殺しの英雄か!ガキだが噂に違わねえ美しさ・・・となると借金の代わりに連れてきた訳じゃねえのか・・・何しに連れてきた?ゲオヤ」


「あ・・・いや・・・」


「借金の話は聞いた!みかじめ料など不当であり、請求する事自体が罪に問われる!よってゲオヤの妻の解放及び不当な金銭の要求の罪で貴様の身柄を拘束する!」


クスカスに睨まれて萎縮し言葉が出ないゲオヤに代わり、ソクシュが前に出て質問に答える。ソクシュの言葉を聞いてその場にいるもの達が一斉に笑い出すとクスカスが手を振ってその笑いを納めた


「えーっと・・・確かランスちゃんだっけ?名と同じく勇ましいのは結構だが、みかじめ料なんか取ってねえよ。そいつが俺に借金した・・・それだけだ」


「ランスは偽名だ。本名はソクシュ・イダーテだ」


「ほう・・・伯爵家か・・・しかも四天・・・」


ソクシュの名乗りを聞いてクスカスが目を細める。テーブルの男達は驚き互いの顔を見合わせていた


「ゲオヤより聞いている!洗えば余罪も出てくるであろう・・・貴様は終わりだ!クスカス!」


「それはそれは・・・ゲオヤに何を吹き込まれたか知りませんが、罪なき者を断罪し、犯罪者の片棒を担ぐのはどうなんですかね?そいつは旅人を騙して金を取る犯罪者ですよ?」


「貴様がやらせていたのだろう!大人しく罪を償え!」


「ちょっと待って下さいよ。どこに証拠が?まさかそいつの言葉だけで無実の俺を疑ってる・・・何て事はないですよね?」


「・・・では、借金の証文を見せてみろ!不当な請求では無い証明を・・・」


「なーに、生活に困っていたから貸した金ですよ。最近ラビットタイガーのせいで旅人が減ったらしくてね・・・稼げないから泣きついて来た・・・ゲオヤを信用して貸したんで口約束で貸したんですが・・・まあ、その信用をまさか裏切るとは思いもよりませんでしたが・・・」


クスカスが言葉終わりにゲオヤを睨み付けると目を逸らし震えていた


「くっ・・・ゲオヤの妻を借金のカタとして攫ったのは・・・」


「おいおい、伯爵様・・・人聞きの悪い事を言わないで下さいよ。ゲオヤの方から差し出してきたんですぜ。『借りた金はまだ返せない。その代わり返すまでの間、妻を預けるからもう少しだけ待ってくれ』ってね」


クスカスは言いながらゲオヤの妻、ジーニを抱き寄せると頬を長い舌でひと舐め・・・それに激昴したソクシュが1歩踏み出すがクスカスが手でそれを制した


「おっと伯爵様!証拠もないのに疑って・・・今度は暴力ですかい?」


「くっ・・・ぬけぬけと!」


「そう睨まないで下さいよ・・・街中で詐欺を働いている男の言葉と金に困ってる奴に善意で金を貸す男・・・どちらの言葉を信用なさるんですかね・・・伯爵様は」


ソクシュが睨み付けても余裕でパイプをふかすクスカス。ゲオヤが黙ってしまっている為、追求する手立てがなかった


「それにしてもなぜ伯爵様ともあろうお方が詐欺師の片棒を?もしかしてゲオヤの息子・・・サケオが目当てですか?確か伯爵様は小さい子がお好きだと聞いておりますが・・・」


優劣が決まり、再びふんぞり返ると街の噂を思い出しソクシュに尋ねる


ラビットタイガーを討伐後、そのメンバーであるクオン、マルネス、ソクシュには様々な噂が広がった。幼女であるマルネスがメンバー唯一の男の嫁宣言、そして、男と思われていたソクシュが実は女という事実が分かるとメンバーの事情を好き勝手に噂する。そうして完成したのが『魔のトライアングル』である


幼女は男が好き→男は男装女が好き→男装女は幼女が好きと見事なトライアングルを完成させ、『魔のトライアングル』と勝手にチーム名まで付けられていたのだ


ソクシュに至っては『男装してまで幼女を落とそうとしている』とまで言われ、街の英雄から一転、好奇な目で見られることが増えてしまう。それはソクシュが女性と分かった後に交際を申し込んで袖にされた男達の『声をかけたら冷たくされた!どうやら男女は男に興味ないんだ!決して俺に魅力がなかった訳じゃない!』というトンデモ理論で噂が加速された裏事情もある


「この・・・」


≪少し宜しいでしょうか?≫


ソクシュが顔を真っ赤にしてクスカスに掴みかかろうと足を踏み出すとこれまで静観していたシャンドが口を開く。ソクシュが伯爵であると聞いて、その執事であろうと判断していたクスカスは突然口を開いたシャンドに少しばかり警戒する


「主人の許しを得ないで出しゃばって良いのか?」


≪私の主人はソクシュ様ではありません。ところでクスカス様にお尋ねしたいのですが、ゲオヤ様の生活苦を憂いてお金をお貸ししたのは間違いありませんでしょうか?≫


主人がソクシュではないと聞き、更に警戒心を強めるクスカス。それじゃあなぜ執事がここに?と疑問が残るが、深くは追求せずに質問に答える


「ああ。間違いねえ」


≪そうですか。その事は周知の事実でしょうか?信用とは言え所詮は口約束・・・お互いだけで交わされた約束でしたら片方が否定すれば成立しないと思いますが≫


「はん!ここら一帯の奴らは全員知ってるさ。ゲオヤが生活苦で俺に泣きついて借金した事、金が返せねえから妻を俺に預けた事・・・延滞料金の代わりにちょっとばかし奉仕させてるが、お前にも味見させてやろうか?歳はくってるがいいもの持ってるぜ?」


クスカスはジーニの肩に手を回すと胸を揉み下卑た笑みを浮かべる。ジーニは苦悶の表情を浮かべ、ゲオヤは俯き震えていた


≪お答えありがとうございます。しばらくお待ち下さい≫


シャンドは礼をすると突然踵を返して部屋を出る。意味不明なシャンドの行動にソクシュも含めて全員がポカーンと口を開けたまま動きを止めた


しばらくしてシャンドが戻って来ると、その傍らには建物の1階に居た男が居た。首根っこを掴まれ、無理やり男を歩かせる


「こ・・・の!何しやがる!」


連れてこられた男が必死に抵抗するがビクともせず、部屋に入ってソクシュの隣まで進むとクスカスの方に向けて放り投げた


男は投げられ尻から落ちると、掴まれていた首と床に打ち付けた尻を抑えながら悶絶する


「おい!一体なんの真似だ?」


突如男を連れてきたシャンドを睨み付けながらクスカスが尋ねるとシャンドは悶絶する男を指差しながら説明する


≪その方にお聞きしましたところ、ゲオヤ様はみかじめ料を払えずに奥様を奪われたと。さて、これはどういう事でしょうか?≫


淡々と語るシャンドに笑みを消し目を細めるクスカス。しかし、すぐにまた笑みを浮かべると首を振った


「勘弁してくれよ。確かに全員知ってると言ったが、中には知らない奴もいるさ。そいつはたまたま知らないだけで適当な事を言ったんだ。疑うならここにいる連中に聞いてみな」


≪ここにいる方々は話を聞いているので参考にはなりません。そうですね・・・事情を知らない方の何名かにお聞きして、本当かどうか確認致しましょう≫


「おい・・・温厚な俺でもあんまり目の前で跳ねられると手が出るぜ?」


≪しかし、私はゲオヤ様を信じてここまで来たのです。貴方の仰ることを信じたいのはやまやまですが、信じた矢先に言われていた事と違う証言を聞いてしまうと貴方を疑わざるを得ません≫


「なるほど・・・要は喧嘩売ってる訳だな?」


≪どうしてそうなるのでしょうか?貴方はここら一帯の者は全員知っていると仰ったので確認したまでの事。貴方が嘘を言っていないと言うなら確認されても困る事はないはずですが?≫


「同感だな。やましい事がなければ確認されても構うまい?それとも・・・確認されたら何かまずいことでもあるのか?」


やっとシャンドの行動の意図が分かり、それに乗じてソクシュもクスカスを追い詰める。クスカスは訳の分からない執事だけならまだしも、伯爵であるソクシュも相手取るとなったら力技での解決は厳しいと歯噛みした


「あー、伯爵様?さっきのここら一帯の連中は知っているって言うのは少し言い過ぎました。生活苦って事だと世間体が悪いんでね。ゲオヤの借金の事を知ってる連中が何の借金か分からねえからみかじめ料が払えないって噂を流しただけじゃないですかね?」


「そのみかじめ料がないと言っていたのに、なぜ何の借金か分からない連中からみかじめ料何て言葉が出てくる?噂するにしてもおかしいだろ?」


「さあ?それは噂していた奴らに聞いてくださいよ。伯爵様も街の連中の根も葉もない噂話に苦労されてるでしょう?噂なんてそんなもんですよ」


苦しい言い訳だが調べようがないと思って強気な発言をするクスカス。ソクシュは噂の事で確かに色々言われているために言葉を失った


≪そうなると誰が本当の事を言っているか分からなくなりますね。仕方ありませんので私なりの確かめ方でやらせていただきます≫


「あ?私なりのやり方?」


クスカスが聞き返した瞬間、シャンドの姿が消える。そして、ジーニの肩に回していた腕が突然何者かに掴まれ、後ろを振り向くとそこには先程まで部屋の中央にいたシャンドが立っていた


「なっ・・・いつの間に!」


≪さて・・・人は痛みに弱いと聞きます。4本失くしても嘘ではないと言い切るのであれば信じましょう≫


シャンドは言うと掴んだクスカスの右腕を握り潰した。グシャッと音が鳴り、腕が床に落ちると大量の血が残された腕の部分から噴き出し絶叫をあげるクスカス。横に居たジーニもクスカスの血を浴びて悲鳴をあげた


何が起こったか分からずに動けない周囲をよそに、シャンドは血を噴き出す腕に手を当てると炎を出し切断面を焼いて止血する。痛みで叫びながら暴れるクスカスの首根っこを掴むと耳元で囁いた


≪後3本です・・・貴方は嘘をついていますか、いませんか?≫


痛みで正常な判断が出来ない中、クスカスはようやくシャンドの言っていることを理解する。シャンドは4本と最初に言った。そして、腕を落として残り3本と・・・つまりは腕が残り1本と残りは足?と考えゾッとする


「お、お前ら!早くコイツを・・・」


焼かれた右腕を抑えながら指示するが、後ろから左腕を掴まれ背筋が凍りつく


「待て!待ってくれ!頼む!・・・嘘だ!嘘をついた!みかじめ料をゲオヤから取っていた!だから頼む!もう・・・やめてくれ!!」


振り返った時に見たシャンドの顔があまりにも平然としていた為に恐怖が倍増したクスカスは畳み掛けるように嘘をついたと告白する。ほんの数秒でも告白が遅れれば左腕すら失うと咄嗟に判断しての早業だった


一部始終見ていたはずの者達もあまりの展開に頭がついて行かずに、未だにテーブルの席に腰掛けたまま動けなかった。突然部屋の中央から奥まで移動し、クスカスの右腕を握り潰したと思ったら炎を出して焼く・・・とても人間業とは思えない所業に恐れおののく


「・・・やり過ぎだろ・・・」


ポツリとソクシュが呟いた時には少し落ち着いたクスカスがようやく痛みを感じ始めて床を転げ回っている頃だった────



ジーニはようやく解放され、夫であるゲオヤの元に戻ると2人して涙する。ジーニが血だらけな事に若干腰の引けてたゲオヤだったが、何とか抱き締める事に成功した


クスカスは右腕に包帯を巻いてもらい、痛みを堪えながらシャンドとソクシュの質問に答えていた


ここら一帯に住む者にはみかじめ料として月に一度クスカスに支払わなければならなかった。その金額は貢献度によって様々で、言ってみればクスカスの気分次第で変えられていた


以前からジーニに目を付けていたクスカスはゲオヤの貢献度が低いと言いゲオヤへのみかじめ料を増額し続け、払えなくなったらジーニを貰い受けようと算段するも、強面のゲオヤの詐欺行為は思いの外順調であり、思い通りにならない日々が続いた


しかし、ラビットタイガーのせいで旅人が激減し、みかじめ料が払えなくなると、ここぞとばかりにクスカスはジーニを要求した


「クズだな・・・もう1本奪っとくか・・・」


≪カスですね。人望が厚ければ誰か食べさせてくれるでしょう・・・両腕が失ったとしても≫


「ままま、待ってくれ!俺だって上から言われてるだけなんだ!ここを・・・この『掃き溜め』を残したいなら金を払えと・・・」


「なに?」


≪でしょうね≫


残った左腕を見つめながら話すソクシュとシャンドに恐怖を感じて慌てるクスカス。黒幕の存在をほのめかすと2人はそれぞれ反応を示した


クスカスは『掃き溜め』の誕生から現在に至るまでを話した


元々『掃き溜め』は貧困層が集まり助け合う区画であった。様々な理由で真っ当な職につけない者達が集まり助け合う・・・だが、ある時を境に助け合いから罵り合い、蹴落とし合う場へと変貌してしまった


それは街の方針でこの場を整理し、街をキレイにしようとするいわゆる浄化作戦が練られ、実行されそうになっていたからだった


この区画に住む者達を追い出し、建物を全て撤去。整地して新たな区画として甦らせる・・・追い出される者達は行き場を失うのは目に見えていた為に反対するも、聞き入れられず着々と浄化作戦は進行していた


何度かの交渉の末、代表として矢面に立っていたクスカスに提案されたのが区画を守る為のみかじめ料の支払いだった


元々働きたくても働けない訳アリの者達の集まりにとても払えそうもない額を言い渡され、クスカスは首を振るも言い渡して来た人物から信じられないアドバイスを受けた


『街の住民に手を出さなければ罪には問わない。旅人をカモにし金を奪え。女が体を売る場所を作ってやる。その情報を他の街に流せばスケベな男がこの街にやって来て金を落として行く。更にそいつらから金を奪うようにすればいい』


クスカスのいるこの建物より更に奥に娼館がある。『掃き溜め』の中を通り進んで行くと、まるで蜘蛛の糸のようにかかる獲物を待ち構えるように


こうしてただの貧困街が『掃き溜め』と呼ばれるまでに至り、交渉に当たっていたクスカスが代表の座につくこととなった


「なるほどね・・・馬鹿な男はたとえお金を取られたとしても口を噤む・・・なぜならこの場所に来たのか聞かれたら娼館目的なのがバレるから・・・中にはバレても構わないって男が警備兵に訴えたとしても、所詮は旅人・・・のろりくらりと調査中ですとか言っておけばいずれ元の街に帰らざるを得ない・・・理には適ってるわね・・・馬鹿げてるけど」


「そう・・・だ。だがしかし・・・ラビットタイガーの出現により上手く回っていたのに、狂いが生じた・・・みかじめ料が足りず、またここを壊すと・・・」


「焦ったあなたは娼館以外で稼ぎのいいゲオヤに狙いを定めた。身なりのいい旅人に狙いを絞り、大金をせしめさせ支払いをしてしまおうと・・・でも運がなかったわね・・・クオンやシャンド・・・1番手を出してはいけない人物に手を出すなんて」


「まったくだ・・・お陰で俺の腕が・・・」


クスカスは失った腕があった部分を眺め、消え入りそうな声で呟く。ソクシュはそれを見て自業自得だとため息をつくと重要な部分を確かめる為に口を開く


「街の開発の話をし、警備兵に言う事を聞かせられる人物なんて1人しか思い浮かばないわね・・・本当は聞きたくないけど・・・」


「ああ・・・子爵であり、街の領主・・・ウォックド・ジバス様だ────」




ソクシュとシャンドはその足で領主の屋敷へと向かっていた


屋敷が見え、門番の姿を確認するとシャンドが突然足を止める


「・・・どうしたの?」


≪そろそろ買い出しの者達が待ち合わせの場所に来る時間です。私はここでお暇させて頂きます≫


「ちょ、ちょっと!ここまで来てそれはないんじゃない!?」


≪?そうでしょうか?ここからはこの国の貴族同士のお話し・・・私が付け入るところはないと思われますが・・・それとも腕をもぐ必要がおありで?≫


「・・・いや、ないわ。そうね・・・これは我が国の恥部・・・幕引きは私がやるわ。子爵の腕をもいだらそれこそ国際問題に発展しそうだし・・・」


ソクシュはシャンドがクオンと同郷のシントの者と思っている。シントの者がディートグリスの貴族に対して暴力行為など行ったら、相手がたとえ悪巧みをしていようとも関係なく戦争になりかねない。ソクシュは考えてこれまで付き合ってもらったことに感謝の言葉を述べるとシャンドと別れた


1人になった心細さを感じるが、悪事を働く貴族を許さない心がソクシュを奮い立たせ、門の前にいる警備兵へと歩み寄る


「あれ?君は確か魔のトライ・・・」


「我が名はソクシュ・イダーテ!伯爵様に名を連ねるイダーテ家の者!こちらにいるウォックド・ジバス卿と面会したい!これがイダーテ家の証だ!」


門番をする警備兵がソクシュを見て話しかけるとソクシュが言葉を遮り名乗りをあげる。証を差し出された門番は目を見開き、その証を確認すると慌てて礼をして屋敷へと駆けて行く


しばらくすると先程の門番と共に屋敷の主人であるウォックド・ジバスが出て来た


「これはこれは・・・まさか噂のラビットタイガーを退治されたのがイダーテ卿だったとは・・・名乗り遅れました、私がノーズ領主のウォックド・ジバスと申します。この度は・・・」


「世辞はよい。少し貴公に聞きたいことがあってな。『掃き溜め』についてだ」


「それはそれは・・・では、屋敷の中へ。狭苦しいとは存じますが、外で立ち話よりは幾分ましでしょう。ささ、どうぞ」


一瞬『掃き溜め』という言葉に鋭い視線を見せたウォックドだが、その後は笑顔でソクシュを屋敷へと案内する。ソクシュはその案内に従い屋敷の中へと入る事にした


屋敷の応接室へと通されるとメイドがお茶を運びそれを口にする。そう言えば昼も食べてないなと乾いた喉を潤すと早速本題に入った


「忙しい時にすまぬな。実はこの街で私の友人が詐欺にあいそうになってな・・・よくよく聞くとこの街には『掃き溜め』と呼ばれる場所があって、そこの者達が詐欺行為を旅人に対して行っていると聞いたのだが・・・貴公は存じているか?」


「もちろんです。あそこの連中には困ったもので・・・近々大規模な掃討作戦を決行するつもりだったのですが、(くだん)のラビットタイガーの影響で遅れておりまして・・・あっ、ラビットタイガーの件、誠にありがとうございます」


「礼はいらぬ。私も一冒険者として狩りに参加したまで・・・。それよりも『掃き溜め』の件なのだが、妙な噂を耳にしてな。どうやらクスカスという男が『掃き溜め』と呼ばれる区画に住む者達からみかじめ料として金を要求しているらしいのだ。法律で認められておらぬ金銭の要求は禁じられておる。その事を貴公は存じているか?」


「禁じられているのは存じていますが、そのクスカスという者が不当な要求を住民にしていたのは存じませんでした。早急に調べあげ・・・」


「更に!その徴収したみかじめ料はどこかに支払われていると言うのだが・・・存じているか?」


「みかじめ料自体が初耳でして、今の段階でそこまでは・・・」


ここまではソクシュの想定通り。先程のクスカスに口で負けた為にシラを切られたらどうするか考えていた。腕をもがずに相手を出し抜く為に考えたのは・・・


「ならば外部機関の調査が必要だな。我がイダーテ家の手の者によってみかじめ料がどこに支払われていたか調査しよう」


「・・・それは些か越権行為では?私共で調査し報告致しますので・・・」


「支払われていた先がどこであるか不明な分、貴公も疑惑の範疇におる。それゆえ外部機関に委ねる他あるまい」


「・・・だとしてもイダーテ卿はお門違いでは?然るべき調査機関にお願いするのが筋というもの」


「私は既にこの件に関わっている。我が家が調査しても何ら問題はあるまい」


「関わっているからこそ、他の外部機関にお願いしてみては?感情的になられると冷静な判断は出来ますまい」


表情を崩さず対応するウォックドを見て、ソクシュは国の調査機関にまで手を伸ばしている可能性があると睨んだ。恐らくみかじめ料として得た金銭の一部を調査機関に渡し、このような時に融通を効かせてもらう腹積もりだろうと


こんな事ならシャンドに無理矢理にでもついてきてもらい、腕の1本でももいでもらった方が楽だったと歯噛みしていると応接室の扉が開かれ乱入者が現れる。扉を開けたその人物は決してここにいるはずのない人物だった為にソクシュが驚きの声を上げた


「クオン!どうして?」


つい数日前に別れたばかりのクオンが何の前触れもなくノーズに来ている事に驚き、本物かどうか疑ってしまう。シャンドの話ではゲオヤ達に関わるなとも言っていたクオンがなぜと疑問ばかりが頭に浮かんだ


「どうしてもこうしても・・・面倒事に巻き込んだのはお前だろ?人の執事を連れ回しといて」


「元はと言えばオタクの執事がゲオヤに絡まれていたのが原因なんだけど?」


「そうなったら警備兵に突き出せと言ったのに、強引に事を進めたのはどこの伯爵だよ?」


「うるさい!あのまま放置できるか!」


軽口を叩き合う2人。ソクシュはまだウォックドを追い詰めきれていないが、クオンの登場によりそれも時間の問題だろうと考える。一日やそこらしか共に行動していないが、なぜかそう思えてしまうのが不思議ではあったが


「貴方は一体・・・?警備の者は何を・・・」


「警備兵ならソクシュの知り合いって伝えたらここに案内してくれたぞ?」


突然乱入して来たクオンとクオンの後ろにいるローブ姿の者に警戒を強めるウォックド。ソクシュだけなら何とか言いくるめる事が可能だと思っていたが、素性の知らないクオン達が加わることによって予測不能な状態になるのは避けたかった


「今はイダーテ卿と会談中です。後日約束を・・・」


「その話の内容に関わるから入らせてもらった。どうも俺の執事がこの街で詐欺の被害にあったみたいでね。たまたまこの街にいるソクシュに相談しようと思ったらここに居ると聞かされてね」


ソクシュはクオンの言葉を聞いて白々しいと呆れながらふとクオンの後ろにいる人物に目をやる。ローブ姿で顔などは見えないが、背格好からどうやらマルネスではないらしい。誰だろうと注意深く観察するも、ローブの奥にある顔は見えなかった


そうしている間にもクオンとウォックドの会話は続いていた


「それは災難でしたね。警備の者に言って必ずや捕まえさせましょう。・・・ところでお名前を頂いても?」


ソクシュを呼び捨て、執事がいるという会話の内容からクオンは貴族であると考え尋ねると思いもよらぬ答えが返ってきた


「これは失礼。お・・・私の名はクオン・イダーテ。そこのソクシュの夫となるものです」


「へ?」


「なんと!?・・・それは知りませんでした。イダーテ卿、おめでとうございます」


クオンの言葉にソクシュが間の抜けた声を出し、ウォックドは大仰に驚き、ソクシュに祝辞を述べた。クオンの後ろにいるローブ姿もビクッと身体を震わす


「まだ公開してないのでご内密に・・・ソクシュ、悪かったな・・・突然押しかけたりして。婚約者が男と2人で密室に居ると聞いて居てもたってもおれずにな。それと・・・ああ、そう言えばお名前を聞いても?」


「これは失礼しました。私はノーズ領主のウォックド・ジバスと申します。ソクシュ・イダーテ卿の婚約者様とは露知らずご無礼を」


「いえ、こちらこそジバス卿に変な疑いをかけて申し訳ありません。ところでもうお話はお済みで?」


「え、ええ。もう話は・・・」


「どんな話をしたかお聞きしても?ご無礼かとは存じますが、婚約者が密室でどんな話をしていたのかどうにも気になってしまう小心者でして」


「いや、他愛もない話です。お恥ずかしい話ですが街の外れに『掃き溜め』と呼ばれている場所がありまして、そこの者が悪さをしているとソクシュ・イダーテ卿からお教え頂いていた次第です」


「ほう・・・具体的には?」


「あ、いや、それは街の恥部となりますゆえ細かくは・・・」


「なるほど・・・ジバス卿は我らの婚姻に反対と・・・」


「なぜそうなるのです!?」


「言ったはずです、私は小心者であると。密室で2人で話した内容を濁されてしまうと、実は他の会話がされていたのではないかと疑ってしまうのです。ですので、話していた内容を細かく聞く他ないのです」


なんだこの面倒な男はと内心思いながら、ソクシュの手前、話を改変してする訳にもいかず、ウォックドは話した内容を全てクオンに伝える


「そういう事でしたか。てっきり私は・・・いや、お恥ずかしい。ところで重ねてお尋ねしますが、ジバス卿はその『掃き溜め』と呼ばれる場所に住む者達から金銭の授受はされてないと?」


「ええ。私は金銭の授受はもちろん、クスカスという者さえ知りません」


「だとよ・・・どうだ?」


いきなり話し方を変えたクオンが後ろを振り返りながら言うと、ローブ姿の者が頭に被せていたローブを剥ぎ取った


「どうもこうもないわ。突然茶番を始めるからいつ終わるかと思ったら・・・言質は取れたわ。後は任せて・・・本当に・・・年下だからって甘えて仕方ないんだから・・・」


「いや、甘えてないぞ」


「ニーナ様!?」


ローブを取ったニーナが顔を出し、クオンにブツブツと文句を言っていると、やっと我に返ったソクシュが名を叫ぶ。その名を聞いたウォックドは立ち上がり一気に青ざめるとマジマジとニーナの顔を覗き込んだ


「あまり人の顔をジロジロ見るでない、ウォックド・ジバスよ。お主の言葉はしかとこのニーナ・クリストファーが聞いておった。嘘もそこまで並べられるのは大したものよ」


「なっ・・・なぜクリストファー侯爵閣下がこのような場所に・・・」


「年下のクオンに頼まれて致し方なくな。さて、ウォックド・ジバス、私のギフトは存じておろうな?」


ニーナのギフト『審判』。その詳細は知られてはいないが彼女の言はどんな証文よりも重く、優先される。その為、クリストファー家が嘘をつき発覚した場合は死よりも恐ろしい罰が待ってるとされている。それだけの責任をニーナは背負っていた


「うくっ・・・侯爵閣下違うのです・・・これは・・・」


「あまりベラベラ喋らぬ方が良いぞ?貴様の言葉に価値はなくとも罪はある。これ以上重ねれば爵位の剥奪では済まされぬ。家族を無駄死にさせるな」


「あ・・・ああ・・・」


法の番人の権限により、ウォックドはこの場にて爵位を剥奪された。ニーナは言外にこのまま何もしなければ、これ以上の罪には問わないと伝えた為にウォックドは諦め、手で顔を覆い膝から崩れ落ちる


ニーナは崩れ落ちたウォックドを見下ろした後、久しぶりに会う妹分の顔を見て微笑んだ


「久しいな、ソクシュ。息災であったか?」


「はい!・・・って、ニーナ様・・・なぜここに?」


「先程ウォックドに言うた通りだ。年下のクオンに甘えられてな。貴族同士の話し合い・・・拗れる可能性が高いと踏んで法の番人である私を巻き込みおった。まあ、他の誰でもない年下のクオンの頼みだし、ソクシュが絡んであるとあらば出るしか他あるまい」


「そんなにショックだったのか?」


「ん?何がだ?」


年下を連呼するニーナに尋ねるが何のことだかさっぱり分からないと誤魔化す。項垂れるウォックドを横目にそのやり取りを聞いていたソクシュは全てクオンの手の平の上で踊らされた気分になりクオンを睨みつけた


「クオン・・・君はいつからウォックドが怪しいと?」


「ん?昼にシャンドから連絡を受けた時」


「昼?つまりゲオヤの話を聞いて?」


「だな。みかじめ料による借金、反抗すれば次の日には街中で死体になるってところか」


「ウソよ!その時はクスカスが・・・」


「本当に悪い奴ってのは姿が見えないもんさ。クスカスってのは姿が見えすぎる。そんな奴がみかじめ料を集めるなんて大きな事は出来ない。街中で死体が発見されたのも、クスカスにとっては反抗すればこうなると見せしめの意図があったかも知れないが、普通なら警備に見つかれば捜査の手が及ぶかも知れないと考えて死体を晒したりしない。クスカスには捕まらないって自信があった・・・そう考えると裏で誰かと繋がってると考えるのが普通だろ?」


「そ、そうは言いきれないじゃない・・・クスカスが仲間を使って殺したのならクスカスは捕まらないで済むし・・・」


「そうだな。でも、そうなると『掃き溜め』をいつまでも放置している意味が分からなくなる。旅人を狙った詐欺行為・・・街の評判を落とすには充分過ぎる案件を放置する意味はなんだ?俺がゲオヤに絡まれた時、警備兵はゲオヤの名前と繰り返し騒ぎを起こしている事を知っていた。『またお前か』何て言っていたからな。繰り返し行われる悪行を知って見逃してる奴がいる。警備を掌握し、『掃き溜め』と呼ばれる場所を放置している人物・・・そうなると領主以外思い付かないのは俺だけか?」


「・・・なんでそこまで分かってて・・・」


「俺には俺のやるべき事がある。ラビットタイガーの討伐は俺の追ってる奴の仕業の可能性があったから手伝っただけだ。それに・・・面倒な事になるしな」


「面倒って・・・」


「ウォックドが爵位が剥奪された今、領主不在となった街はどうなる?」


「それは新しい領主が来るまで・・・あっ!」


「そうだ。領主不在はまずいからな・・・新しい領主が来るまで代理の領主が必要だと思わないか?ソクシュ・イダーテ伯爵?」


「まさか・・・君は・・・」


「ディートグリスの懐事情は知らないが、新しい領主が来るまで代理・・・もしくは代理の代理が必要だろ?さて、ニーナ・・・この場合は誰がうってつけだ?」


「・・・領主は爵位を持ったものに限る・・・私は公正の立場ゆえ領主にはなれぬし、クオンは論外・・・となると1人しかおるまい」


「・・・謀ったな・・・クオン!」


「アホか・・・面倒な事になるって言ったろ?」


「それでも・・・見過ごす訳には・・・子供のこともあるし・・・」


「ゲオヤを牢屋にぶち込んで、サケオを保護し、然るべき調査機関に依頼する・・・それこそ伯爵の権力を使い初めからお前の息のかかった者達に調べさせれば良かっただろうに・・・適材適所って言葉を知らないのか?」


「グッ・・・」


「さて、俺らはこれで別荘に帰る。・・・健闘を祈る」


「この・・・薄情者ー!」


「あっ、あとラビットタイガーの報酬の俺らの取り分はサケオにあげてくれ。割ってしまった酒代としてな」


「・・・君は・・・本当に・・・」


呆れるソクシュに微笑み返してクオンとニーナは部屋から出て行く。残されたソクシュは身動きひとつしないウォックドを睨みつけた後、天井を仰ぎため息をついた。これからやるべきことを考えるととてもすぐには動く気にはなれなかった────




「どうして教えてあげない?もう手配はしているのだろう?」


屋敷を出てシャンドと合流すべく街の外へと向かっている最中にニーナはクオンに尋ねた


クオンがノーズに来たのはシャンドの瞬間移動を利用してだが、その後シャンドにはもう1つ行ってもらっていた。それは王都のハーネットの屋敷。ハーネットに今回の件を手紙で伝え、代理の領主を送ってもらうように手配していた


さすがに即日代理を送れはしないだろうが、ソクシュが1人で領主代理をこなす期間は極端に短縮されるだろう


「ニーナが言えば良かったじゃないか」


「・・・ソクシュは何でも1人でやろうとするきらいがある。今回の件もラビットタイガーの件も下手すればどうなっていたか分からん・・・灸を据えるにはちょうど良いと思うてな。だが、お主はどうなのだ?」


「同じようなもんだ。人の忠告を効かないと痛い目見るぞってな」


「・・・なぜあの時ソクシュの婚約者などと名乗った?」


「ニーナの存在に気付かれたら喋らないかもしれないし、1から話させるには理由が必要だろ?だから、なるべく俺に注目を集めさせ、なおかつ喋らなきゃならない理由を作る為に・・・だ」


「本当か?ソクシュが可愛くて年が近いからではないのか?」


「なぜそこで年が出てくる・・・気にし過ぎだろ」


「うるさい!良いか!いずれ年上の魅力を存分に味合わせてやる!」


ニーナは声を荒らげるとクオンを置いてズンズンと先を行く。その姿を見てため息をついたクオンがボソリと呟く


「・・・年上なら間に合ってるけどな・・・うーんと離れてる・・・」


「何か言ったか!?」


振り返りまた声を荒らげるニーナに苦笑しながら、ウォックドの屋敷を振り返り、ソクシュの健闘を祈るクオンであった────



────後日


「ほれ、クオンから頼まれていた1()0()0()()ゴルドだ」


「クオン・・・様?」


「お前が絡み、剣を溶かした幼女と共に居た男だ。そいつはシャンドの主でな・・・割ってしまった酒代としてお前・・・いやサケオに渡しといてくれと頼まれた」


王都から領主代理として来た男爵に領主の引き継ぎを済ませ、街の外にある通称『掃き溜め』に赴いたソクシュはゲオヤ一家を探し出しラビットタイガーの報酬を全て渡す


「そんな・・・あの中味は・・・」


「幻の酒『クインチュ』だろ?相場で1本50万・・・2本でちょうど100万だ。ただしあくまでサケオにだ・・・その金で美味しいものでも食わしてやれ」


「・・・は、ははっ!ありがとう・・・ありがとうございます!」


「礼ならクオンにしろ。私では・・・お前ら家族を本当の意味で救えなかったかも知れないからな・・・」


『掃き溜め』は生まれ変わろうとしていた。私腹を肥やしていたウォックドの失脚によりみかじめ料はなくなり、警備のルートも改善された。娼館を潰し、ウォックドが貯め込んだ資金を使い新たな商売を始めようと模索している


ゲオヤとジーニは立ち去るソクシュに頭を下げ、傍で遊んでいたサケオはソクシュの背中に手を振って叫んだ


「お姉ちゃーん!またジュース奢ってねー!」


「こ、こら、サケオ!」


ソクシュの身分を知るゲオヤが慌ててサケオの口を塞ぎ頭を下げさせる。ソクシュは振り返り、その光景を見て微笑む


「ああ。もう酒瓶は割るなよ?」


「うん!」


詐欺行為をしていた頃は大人びた印象を受けたが、返事をしたサケオの顔をひどく幼く見えた。恐らくその顔こそが本来のサケオの顔なのだろうと思いソクシュは『掃き溜め』と呼ばれていた場所を後にした────


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