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最強の番犬と黒き魔女  作者: しう
『招くもの』
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2章 プロローグ

豪華絢爛な城の中衛兵に連れられて5人の男女が闊歩する


ディートグリス王都ダムアイトの中心部に位置する王城内に旅姿の5人はやけに目立つ。豪華に着飾った紳士淑女達が口を隠しながら5人を見てひそひそ話をしているのが鼻につく


それでも先導する衛兵に遅れまいと付いて行くと大きな扉の前で止まった


衛兵が敬礼をすると扉の前にいた2人の男が扉のノブを掴みゆっくりと手前に引く。厳かに開かれて行く扉の奥には赤い絨毯が引かれ、その奥には近衛兵に囲まれながら玉座に座る王と思われる壮年の男性が座っていた


ここまで案内した衛兵が中に進むように即すと5人はゆっくりと部屋の中央まで進み跪き頭を下げる。その後、数秒ほどで玉座の傍らにいる豪華な赤いドレスに身を包んだ女性が口を開く


「面を上げよ」


スっと頭を上げる先頭の女性が1段高い位置にある玉座の足元付近を見る。全員の視線がその女性に集まり、居心地悪そうに片目を瞑った


「名乗られよ」


再び赤いドレスの女性が跪く女性に声をかけると、澄んだ声で名乗りを上げる


「お目通り頂き真にありがとうございます。ディートグリス国王陛下。私はシント国の使者アカネ・フェワードと申します」


紅色の髪を高い位置で束ねキリッとした表情の女性、アカネは王に目を合わせることなく淡々と自分の名を告げた。シントからディートグリスの王への使者としての長い旅路がようやく実ったが、案内した衛兵から聞かれた事以外喋るなと言われ仕方なく名乗りだけで言葉を切る


「遠路はるばるよう来られた。して、何用だ?」


そっちは名乗らないのかよ!と舌打ちしそうになるも我慢して用件だけ伝えて帰ろうと心に誓うアカネ。偉そうな赤ドレスが何者か知らないが王は一言も口を聞いていない


「シント国王ウォール・シンより親書を預かっております。お改め下さい」


スっと懐から出した手紙を近衛兵が受け取り赤ドレスに渡す。赤ドレスはその場で開封すると中身を改めて王に耳打ちした


ピクリと王の眉が動くが、ほとんど表情を変えず親書の内容を聞き終えると目を閉じてしばらく考え事・・・そして、赤ドレスに耳打ちする


「この内容・・・間違いないか?」


「はっ!私も実際・・・」


「真意を聞いただけ。余計な事は言わずともよい」


アカネが言葉を続けようとするもピシャリと止められる。一瞬眉間にシワを寄せるも頭を下げ無言を貫いた


「にわかに信じ難いが・・・で、何が望みだ?」


「ディートグリス国内の調査の許可を。それともし宜しければ協力を仰ぎたいと存じます」


親書のに添った内容を口にするアカネ。本音で言うと協力など要らないから調べさせろ・・・だが


赤ドレスは王に近付き判断を仰ぐ。どうやら使者とは直接会話する気はサラサラないらしい。シントの国王のウォールなら歓迎の宴を開いて気軽に話すのに・・・と国の違いをまざまざと感じる


しばらく赤ドレスと王が話した後に赤ドレスがアカネに振り返り少し微笑む


「潔白を証明するには調査の許可を出す他あるまい。調査はそなたらだけか?」


「いえ、調査の許可を頂けましたらシントに連絡し増援を頼む予定です。数は未定ですが恐らく数十名・・・」


「大袈裟なことだ。期間は?」


「事が事なので・・・1年の猶予を頂きたいと思っております」


「長いな・・・優秀なシントの者ならすぐにでも終わるのではないか?」


「ディートグリス国の領地は広大です。大々的に調査しましてもそれくらいはかかるかと」


「物は言いようだな。こちらからは案内人と連絡要員を付けよう。我が国としても協力を惜しむつもりはないが、そちらはそちら、こちらはこちらで独自に調査した方が良かろう?」


「お心遣い感謝致します」


「案内人には通行許可証を出しておく。どこでも・・・とまではいかぬがほとんどの場所は出入り自由・・・存分に調査されるがよい。健闘を祈る」


「はっ!」


話は終わりとばかりに言葉を締める赤ドレス。否応なく終わった謁見は結局王の一声さえ聞けなかった



「これで・・・国ぐるみだったら許さぬぞ・・・ディートグリス国王・・・赤ドレスの女・・・絶対に見つけてやる・・・『招くもの』を────」


部屋を出た後、誰も聞こえないくらいの小さい声で呟くアカネ。その目は髪の色と同じ紅色に燃え上がっていた




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