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最強の番犬と黒き魔女  作者: しう
『拒むもの』
17/160

~始まる~

シント国にある王城の謁見の間


その中央にクオンとマルネスは立たされていた


その2人を見つめるのは3人・・・向かって左側にクオンの父ケルベロス・モリトが立ち、中央の玉座にシント国国王ウォール・シン、右側にハガゼン・ジュウベエが並んでいた


「・・・『拒むもの』が受け入れてどうする・・・」


シンが頭を抱えながら呟くと、モリトがごもっともと頷く。2人は互いに40で同い歳。若かりし頃は2人で数々の無茶もこなしてきたが、目の前の15歳の少年は軽くそれらを越えてきた


「面倒は見ますのでどうか御容赦を」


「そんな拾って来た猫みたいに・・・人は人の世に、魔は魔の世に・・・そう定められた故に神扉は存在する。それを守るお主なら100も承知だろう?」


「陛下」


「殿だ」


「・・・殿、人の世にも魔は存在しております。今更1匹2匹増えたところで変わりますまい」


「確かに人の世に魔は存在する。だが、それは魔物であって魔族ではない。お主の横にいるのはとても魔物には見えないが?」


「魔物と魔族の違いをご存知で?人の世で言うと動物と人の違いと同じです。知性を得て言語を操り道具を使用、創り出す・・・動物が出来ないからと上から目線な勘違いなのが人です。魔族も同じです。その定義で言うとこれは魔族ではありません。魔物です。人の世で言うと・・・猿ってところですかね」


≪・・・ウホ≫


「それはゴリラだ。とにかく俺が保護して・・・」


「いい加減にせい・・・クオン。魔族であろうとなかろうと魔の世から来たのが問題なのだ。それも番人たるケルベロス家の手引きによってな。我らが代々魔族や魔物の侵入を防ぐ為にどれだけの努力をしてきたか知っておるだろう」


シンとクオンの会話に割り込んできたモリトの顔は真剣そのものだった。冗談が通じなさそうなので国王であるシンを丸め込もうとしていた目論見は失敗に終わる


今度はモリトを説得しようと考えるが、昔から頭は固く、取り付く島もない事は目に見えていた。無言で見つめ合う2人に痺れを切らしたのがジュウベエ。突然クオンの側まで一足飛びで近寄り、顔が触れるのかという所まで近付く


「ねぇ~殿ぉ~・・・ボクをここに呼んだのはここにいる魔族の排除の為?それともクオンの排除?」


「万が一の時の保険だ。何かをさせる予定ではない」


「ふぅん・・・でも、面倒だから殺しちゃった方が早くないですか~?この魔族~♪」


顔を近付けクオンを見つめながらマルネスを指さす。マルネスのこめかみに青スジが立つが、この部屋に入る前のクオンの言葉を思い出し踏みとどまる


『この世界に残りたければ俺に任せろ』


拳を握り唇を噛み締めてジュウベエを睨みつけるが、ジュウベエはマルネスを見ずクオンにどんどんと擦り寄っていく


「・・・他の者に示しがつかぬか・・・致し方あるま・・・」


「もし!」


シンが結論を出そうとした時、クオンが絡みつくジュウベエを無視してシンの言葉を遮った。そして、そのまま言葉を続ける


「もし殿がマルネスを殺せと言うなら、俺はその決定を拒みます」


「クオン!それがどういう意味だか分かっているのか!」


「もちろん・・・分かって言ってます、父上」


ジュウベエがクオンの横顔を見てトロンとした表情をしている最中、シンとモリトは苦虫を噛み潰したような表情でクオンを見つめる


「そうだよ・・・クオンはそうじゃなきゃ・・・番犬なんて言われて鎖で繋がれた君じゃなくて・・・あの傍若無人な君に・・・」


ハアハア言いながら興奮し呟くジュウベエを余所に無言になる3人。しばらくこの状態が続き、口火を切ったのは国王シンだった


「・・・クオン、確認の為に聞く・・・私がそこの魔族を始末するよう命じたら国と敵対する・・・それで間違いないな?」


≪!!≫


「相違ありません。魔族とはいえ無害のものを寄って集って(たかって)襲うような国など滅びた方がいい」


「まるでお主が勝つような言い方よな」


「・・・逆に聞きたいのですが、私に勝てるとでも?」


「クオン!!」


挑発的なクオンにモリトの叱責するような声が響くが、クオンは意に介さずシンを見つめた


その言葉と態度を受けてシンは目線を切るように頭を振ると玉座から立ち上がりクオンではなくマルネスに向けて歩き出す


マルネスの目の前で立ち止まり、見た目幼女の魔族を見下ろすと口を開いた


「居場所は?」


≪クオンのそば≫


「人は敵か?」


≪クオンの敵ならば≫


「クオンが死んだら?」


≪自然死ならば妾も果てよう。討たれたならば、相手を亡きものにして果てよう≫


「淀みなく答えるのだな」


≪決まりきった事だからな。淀む必要が無い≫


「なぜそこまで?魔族にとってクオンと過ごした日などほんの数秒にも満たないであろう」


≪そのほんの数秒が今までの千の刻を凌駕したから≫


「・・・一時の感情では?」


≪侮るな小僧。千の刻を超える想いが薄っぺらい感情とまごうと思うか?≫


「・・・えらいのに惚れられたな・・・クオン」


シンから見たマルネスの目は濁りなく澄みきっていた。まるで聖職者とでも話すような感覚に陥ったシンは冗談めかしにクオンをからかう


「・・・答えは?」


「ハア・・・認めよう。建前はお主を失いたくない。本音は・・・お主と()()()()を失いたくない」


「殿!?」


「モリトよ・・・見てみたくないか?人に好意を寄せる魔族がこの世に何をもたらすか」


()()ではない()()()()だ≫


「クオンも人だよ?魔族のお嬢ちゃん。そう言えば名前を聞いてなかったな・・・名は?」


≪・・・クロフィード・マルネス≫


「ふっ・・・近いようで遠いシント国にようこそ!クロフィード・マルネスよ!」


シンは笑顔で声高らかに叫び、モリトは手で顔を覆いため息をつき、ジュウベエはつまらなそうに舌打ちして部屋を出た


王に認められ、マルネスのシント国での生活が始まる────


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