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最強の番犬と黒き魔女  作者: しう
『嗤うもの』
151/160

5章 幕間 レンド教官①

目が覚めるとそこは長年見慣れた天井だった


横には可愛い娘が寝息を立てている・・・そう、ここは幼少期から与えられた自分の部屋・・・宿屋の2階を使わないからと自室に変えたこの世で最も安息出来る部屋だ


その部屋で目覚めると今日は何をしようかとワクワクしたものだが、今日は気が重い。それもそのはず今日はカダトースでの訓練2日目・・・実技だからだ


昨日マーナと共にカダトースに赴き、訓練を受ける人達と対面した


集まったのは4人・・・バリームさんにモリスさん・・・それとゲインさんを慕うカレツとスアンの4人だ


昨日はマーナお得意の『こじ開け』で器を暴走させ、魔力を出せるようにした・・・今日はその魔力の使い方・・・つまり僕の番だ


「・・・ハア・・・」


憂鬱だ。宿屋の息子で蟻の蜜をコソコソ集めるだけの男が経験豊富な年上の冒険者を相手に訓練をつけるなんて・・・カレツとスアンは僕と同い年らしいが、テンを連れてる僕を見てとても不安そうにしていたのが分かった


鋭い視線で僕を睨んでいたカレツはカトラスと言う少し刃が反っている形の武器を使う冒険者で、モリスさんが用事で居ない時にゲインさんが依頼に連れて行ったらしく、そこからゲインさんを慕うようになったらしい。ツンツン頭で目付きが悪く、僕の苦手なタイプだ


スアンはマーナ曰く『ギャル』と言う人種らしい。マーナが魔力暴走の説明している時もひたすら毛先を指でクルクルしていた。常にうつむき加減で時折その状態で視線を上げると上目遣いになり少しドキッとする。ただバリームさんから聞いたけど、冒険者ギルドでスアンを見ていた男がスアンの武器、レイピアで目を突かれて失明したらしい・・・何それ怖っ


とにかくそんな2人を含んだ合計4人に魔力の使い方を教えないといけない・・・正直受けなきゃ良かった


スヤスヤと眠るテンを起こして着替えさせ、1階の食堂で朝ご飯・・・最近まで客が全然いなかったけど、魔物が減った事を聞き付けた商人や旅人が少しづつ戻って来ており、お客さんもちらほらいる


「テンちゃんおはよう」


「マーアおあよー」


テンの成長が著しい。まだまだたどたどしいが、二言三言ならお手の物だ。マーナは僕の前に座るとテーブルに置いてあったパンを取って口に運ぶ・・・俺のパンなのに・・・


「今日はレンドの番だね。大丈夫?」


「せめてご飯の時くらい忘れさせてくれ・・・胃に来る・・・」


「だよねー・・・私も昨日は胃がシクシクしてたもん。器破壊しちゃったらどうしようとか・・・で、今日は何やるの?」


「・・・お前は人の話を聞いてるのか?・・・クオンさん達が僕達にやってくれたようにまずは魔力を感じれるようにしようかと・・・」


「・・・クオン()()ねえ・・・」


うっ、仕方ないだろう・・・どうしてもクオンさんを呼び捨てにするのは慣れなくてつい・・・ニヤニヤと笑うマーナからパンを取り上げると口に入れてコーヒーで一気に流し込む。マーナは文句を言おうとしたが、その前に母さんがマーナの分をテーブルに置いたので口を尖らせながら黙って自分の分を食べ始めた


「マーナも来るのか?今日・・・」


「そうね・・・暇だし」


「ステラ達はまだ?」


「うん・・・もう終わったから戻るとは言ってたけど、あの子達意外と寄り道好きだから・・・まあ、今日か明日には戻って来ると思うよ?」


クオンさんにステラ達を連れて行かれて暇を持て余しているマーナ・・・その暇潰しに来られても正直邪魔なんだが・・・


「なに?邪魔?」


「いや・・・テンの遊び相手してくれたら助かる。正直手探り状態でテンに構ってあげられる余裕が無いんだよな」


「ほーい。じゃあテンちゃん、今日はお姉さんとお山でも作ろう!」


「おやあーおやあー!」


うんうん、テンは土いじりが好きだからなー。また変な蟲を掘り起こさなきゃ良いけど・・・


さて、朝ご飯も食べ終えた事だし3階に上がるとするか


カーラさんが用意してくれたカダトースに繋がる扉・・・一瞬で訓練場に選んだ空き地近くの洞窟へと行けるから凄い便利だ


マーナも準備は終えたみたいだし、いざカダトースへ


「おや、もう行くのかい?だったらこれ持って行きな!3人分の弁当!」


「ピクニックじゃないんだから・・・」


「いいから持って行き!テンちゃんが腹空かしたらどうすんの!」


「別に食わせない訳じゃ・・・」


「いいから持って行き!」


強引に持たせられた弁当3つ・・・これみんなの前で食べたら絶対バカにされるやつだ・・・


「しっかりやり遂げるんよ!・・・テンちゃん行ってらっしゃいー♪」


声のトーンが全然違う・・・親バカならぬ孫バカだ


「バーバーバイバイ」


テンは笑顔で母さんに手を振る・・・天使か!


それはさておき、3階にある物置小屋に行くと部屋の中心に空間の歪みがあり、そこを慣れた感じですんなり通る。テンはマイブームのジャンプで扉をくぐり、マーナはその後を歩いて通って3人全員がカダトースへと到着した


明かりのない洞窟だが、出口から陽の光が差し込んでおり、そこを目指して歩いて行くとすぐに外に出られた


「おう!待ってたぜ」


出るとそこにはバリームさん達が待ち構えていた。1、2、3、4、5?っと人数を数えると1人多い・・・それもそのはず今日はサブマスターとなったゲインさんが居たからである


「ゲインさん・・・なんで?」


「今日は魔力操作をするんだろ?私はギフト持ちだからと気にした事がなかったが、レンドの戦いを見てそれが愚かだった事を痛感させられたよ。それと同時に嬉しくもあった・・・まだまだ私も強くなれるのだと・・・今日はサブマスターとしてではなく、一訓練生として学ばしてもらう」


・・・ハードルが一つ上がった。流石にゲインさんの願いを断る事も出来ず、5人に魔力操作を教える羽目に・・・胃・・・保つかな・・・


ゲインさんが居て少しだけ気になったのはカレツの態度が若干違っている事・・・オラオラだったのが、昨日より大人しく見える。どうやらゲインさんの前では地を出さないらしい


「そ、そうですか・・・では皆さん集まっているので早速始めたいと思います」


無事乗り切れるのだろうか・・・不安だらけの初日が今始まる──────



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