1章 11 ゴーレム
タラットの街に向けて馬車と馬で移動している
立場上フォーとデラスが馬車での移動、残り3人は馬、マルネスはクオンの腰に差さり、ステラは定位置のクオンの頭上で丸まっていた
馬車を操る行者はダルシン家の執事がしており、他の者は連れ立っていなかった
お見合いと言ってもただの顔合わせ。婚礼の打ち合わせと言っても過言ではない。それでも緊張の面持ちでいるフォーの胸中はギフト関連の話をどう切り出すかでいっぱいだった
髪の操作は物を掴み、持ち上げて離すという単純な作業を習得するに留まり、それ以上は習得出来ずにいた為、説得の仕方次第では相手を怒らせてしまう可能性もある。ダルシン家の家長代理から家長へとなった初めての大きな仕事が大失敗となってしまうのは避けたかった
馬車の中でブツブツと独り言を呟くフォーに呆れたデラスはクオンの頭上で寝ているステラでも観察しようと馬車の外を見ると・・・
「誰だね?そいつらは・・・」
「盗賊だな。豪華な馬車に釣られて襲って来た・・・いるか?」
「いらんいらん」
馬車の外でいつの間にかクオンがロープに数人繋いで遊んでいた。遊んでいたと言っても繋がれている盗賊達は必死な形相で転ばないように全速力で走っていたのだが
フォーの乗っている馬車は領主専用の馬車で装飾など豪華な造りとなっている。馬車だけでも相当高額で売れそうな上に乗ってる人物も要人とみた盗賊達が襲って来ていたのだがクオン達に呆気なく撃退され罰を受けていた
「引っ張られたらクオンが落馬しそうだが・・・」
「引っ張られたら離すさ。その時は全員あの世行きだけどな」
「・・・頑張れよ。生きて罪を償えば何かある」
デラスが必死に走る盗賊達に声をかけて馬車の窓にあるカーテンを閉めると行者をしている執事に馬車の速度を落とすように伝える。特に盗賊を助けたいと思った訳では無いが、必死に走る姿を見て少しだけ心が痛んだ
タラットの街に無事到着し、門番に盗賊達を引き渡す。本来なら報奨金が出るのだが、フォーが自分がクオン達に払うので牢屋に入れるだけで良いと告げた
門番にセガスの領主である事を告げると同行を申し出て来たが断り、そのまま馬車でタラットの領主であるデビット家の屋敷へと向かった
時間通り昼食前に到着し、屋敷の中へ入るのはフォーとクオン、それにデラスのみ。残りの2人と1匹は執事と共に留守番する事になった。理由はステラの存在。さすがに他領の領主の屋敷にドラゴンを連れていく訳にはいかなかった為
3人はデビット家の使用人にそのまま屋敷の応接間へと案内された
応接間にはデラスと同い年くらいの男、デビット家家長でありタラットの領主イーノッド・デビットとその息子エムラ・デビットがいた
クオン達が部屋に入ると2人は立ち上がり、少し太めの身体を揺らしながらフォーに近付くと手を差し出し握手を求めた
「お待ちしておりました、ダルシン卿。タラット領主を務めております、イーノッド・デビットと申します。こちらは息子のエムラ・デビット」
「お招きありがとうございます、デビット卿。フォー・ダルシンです。此度は無理なお願いを聞き届けて頂き誠にありがとうございます」
フォーとイーノッドは初対面。通常隣接する街は貴族同士の交流も盛んに行われるのだが、ツーが表に出るのを拒んでいた為にダルシン家は他貴族と交流は行っていなかった。なのでダルシン家としては久々の他貴族との交流・・・しかも、嫁取りという事でフォーはかなり緊張していた
挨拶もそこそこにフォーは応接間のソファーに座るよう勧められ素直に座り、ソファーの後ろにクオンとデラスが立つ。デラスは貴族階級でこの中でトップなのだが本人たっての希望で身分は伏せている。探求者にとって身分は枷にしかならないと豪語していた
お互いソファーに座りしばし歓談する
イーノッドは穏やかな顔でフォーと相対してるのだが、息子のエムラは笑顔でこそあれ、少しフォーを小馬鹿にしたような笑みを浮かべて見ていた
くだらない話から街の経営に至るまで一通り話した後、イーノッドはとうとう待望のフォーの相手を呼んだ
少しばかり緊張するフォーに対して、終始小馬鹿にした笑いを浮かべていたエムラはソファーにもたれ掛かり小指で鼻をほじる始末
いい加減鼻につく態度にクオンが細めた目で睨みを利かせていると応接間のドアが開き、1人の毛むくじゃらが入って来た
腰に届きそうなくらい長い綺麗な茶髪は顔全体を覆い、見えるのは顔の一部分と腰から下の部分のみ。無言で迎える3人に一礼してイーノッドの隣に腰掛けた
「この子がアースリー・デビット。どうも生来恥ずかしがり屋気質でして、あまり素顔を見せないのですが・・・」
恥ずかしがり屋と紹介されるも、3人のイメージはただの『毛』。毛が歩き礼をしてソファーに座った・・・そんな印象しかなかった
アースリーはイーノッドから挨拶しろと言われるも頭を少し下げただけに終わり、フォーはそれを見て苦笑い・・・もしかしたらフォーの髪調整のギフトを揶揄しているとも思えたのだが、全て自分の髪の毛らしく偶然らしい
「親父・・・そろそろ本題に入ろうぜ」
エムラが痺れを切らしたのかソファーにもたれ掛かっていた体を起こしながら言う。イーノッドはそれを受けてハンカチで汗を脱ぎながらフォーにある事を告げて来た
それは娘をやる代わりに街の収益を一部寄越せというもの
「馬鹿な!街同士の収益譲渡は国から禁止されています。それにまるで人身売買ではないですか!そのような事をしたら!」
「いや、それは・・・」
「人聞きが悪いですな。貴重なギフトを持った妹を嫁にやるんだ。それぐらいの誠意があっても良いのでは?しかも、永続的ではなく妹が生きてる内のみ・・・かなり良心的と思ってるのですがね」
イーノッドが言い淀むと代わりにエムラが言葉を続けた。譲渡ではなく街の支出の中に新たな項目を作り、その金を回せと・・・要は裏金作りである
「項目はそうだな・・・ギフト開発費なんてどうです?子作りも開発みたいなもんでしょう?」
下卑た笑いを見せるエムラに怒りで震えるフォー。足下を見て断れないと踏んでいるのか強気な発言が続く
「アリーはまだ15になったばかり・・・もちろん生娘ですよ。髪を今まで切った事がなくてこんな風貌ですが・・・髪調整のギフト持ちの卿とならお似合いではないですか?それに・・・」
「あー、ちょっと失礼」
エムラの言葉を遮り、クオンが突然応接間から出て行く。従者のくせにとエムラが毒づくと話の続きをしようとフォーに向き直るとすぐにクオンが戻って来た為にまたも話の腰を折られクオンを睨み付けた
「おい、お前!・・・って誰だそいつは・・・」
≪口を閉ざせ、下郎め。妾は・・・≫
「ただのメイドだ」
≪ただのメイドだ・・・って、おい≫
戻って来たクオンの後ろには何時ぞやかに着ていたメイド服に身を包んだマルネスがいた。さすがにこの場で魔族である事を告げるのははばかられ、ちょうどメイド服を着ていたのでダルシン家のメイドとしての立場をとる
「さっき言ったはずだが?」
≪ぐぬぬ・・・≫
「おい!先程からゴチャゴチャと・・・メイドが何の用だ!」
≪先程からゴチャゴチャと言うておるのはそっちだろうて。クオンがおらねばその素っ首叩き落としてやったものを≫
「差し上げたものを」
≪差し上げたものを≫
一応メイドという役割上クオンが語尾を修正するが、言葉の内容自体が不敬極まりないのであまり意味をなさなかった
エムラは立ち上がり顔を真っ赤にしているが、マルネスは何処吹く風。フォーは頭を抱え、デラスが事の成り行きを爛々とした目で見届けていた
「ダルシン卿!これは何の冗談ですかな!?メイド風情がいきなりしゃしゃり出て、デビット家次期家長である俺様の首を叩き落とすだと!?」
「エ、エムラ殿・・・これには深い訳が・・・」
≪何が深い訳だ!お主が言われて我慢するのは別に良い・・・しかし、嫁にもらおうとする女子がぞんざいに扱われ黙っているとは何事だ!恥を知れ!≫
「・・・」
フォーは相手に無理を言ってこぎつけた見合いの為、何を言われても我慢していた。しかし、マルネスに言われてその我慢が相手を増長させてしまっていたことに気付く
「この場に居なかった貴様が聞いたふうな口を叩くな!」
≪何を言うか。妾はずっと・・・≫
エムラにツッコまれ、部屋に居た事を告げようとするが寸でのところで口を閉ざす
エムラの物言いに腹を立て、木刀の身でありながらクオンに訴え続けた。部屋を出たクオンは封印の布を解き、マルネスを出させるがその時に言った言葉が「魔族としては連れて行かない。メイドになれ」だった
渋々承諾して部屋に戻って来たのだが、ここでずっと聞いていたと答えたらおかしな話になってしまう。返答に窮して散々悩んだ挙句に出た言葉が
≪き、聞こえたんだもん≫
だった。さすがにクオンもフォローする事が出来ず、言った本人も冷や汗ダラダラ。ただエムラはそれよりも他の事に気を取られていた
「それよりも先程からメイド風情が俺様に対してなぜそのような口をきいている?ダルシン家ではメイドの教育も出来ないのか!ダルシン卿!」
問題点が変わり、ほっとひと息のマルネス。代わりに今度はフォーが慌て出す
「いや、その・・・これはですね・・・」
「やれやれ・・・家名を出すのは野暮だと思い黙っていたが仕方あるまい」
フォーがしどろもどろの状態になり、それを見たデラスが溜息をつきながら呟く
「なんだ今度は?貴様らは一体・・・」
「黙れ小僧が。我が名はデラス・ガクノース。子爵家に名を連ねるガクノース家の者だ。その我の前で不正の強要をするのとメイドがたかが男爵家の次期家長に対して言葉遣いを間違う事・・・どちらが罪が重いと思うとる」
「は?・・・ガクノース家?」
これまで黙っていたイーノッドがフォーを見て真意を問う。フォーはそれを受けて頷き立ち上がり、改めてデラスを紹介する
「・・・縁あって共に行動していますガクノース閣下です。故あって身分を隠されていましたのでご紹介が遅れましたが・・・」
「故も何も、ただ家督は息子に継がせた隠居の身であるから伏せただけ。しかし、これでも身を粉にして王家に捧げたという自負がある。その王家に対して不義理をしようとするのは放ってはおけんな」
実際は王家に対する不義理などどうでも良くて、マルネスに助け舟を出して今後の関係を良好に・・・という邪な気持ちが彼を動かしていた
家督を譲ろうが譲ってなかろうが子爵家の家長としての実績、そして、男爵家よりも階級が上の子爵家の者に対して今までの行為は死罪と言われてもおかしくない。知らなかったとは言え自分らは座り、立たせたままにした事然り、街の収益の譲渡は禁止されているにも関わらず強要する事も言語道断であった
「い、いえ・・・先程のは冗談で・・・」
事の重大さに気付いたエムラも取り繕うが、冗談で済まされる問題では無いことも重々承知している。デラスの一声でデビット家は取り潰しになる可能性は充分にあった。デビット家の命運は幼女を隈無く調べたい変態の手に握られていた
「・・・我も歳のせいか耳が遠くてのう・・・マル・・・このメイドの言葉遣いを見逃し、話を聞くなら我の耳は先程の言葉が聞こえなかったとする。もしそれが出来ぬのであれば・・・覚悟しておけ」
イーノッドとエムラには選択の余地はなく、デラスの言葉に頷いた。それを確認したデラスがバチコーンとマルネスにウインクするが、マルネスは顔を逸らしたながら分かった分かったと手を振った
≪・・・で、だ。話は大分逸れてしもうたが、貴様の物言いには些か不快な部分がある。妹を・・・家族を嫁に送り出すのに相手に対価を求めるとは何事だ≫
「ちっ・・・こっちは頼まれて出すんだ・・・ギフト「土」をな。対価を求めるのは当然だろう」
エムラは一瞬マルネスに苛立ちを覚えたが、デラスを見て仕方なく会話をすることにした。男爵家の次期家長がなぜ・・・という気持ちを抑えつつ
≪ギフトか・・・結婚するのは人同士であってギフトではなかろう。ギフトなぞおまけみたいなものだ。それに『土』などありふれたギフトならなおのこと≫
「ありふれただと!?貴様よくも・・・」
≪ありふれておろう。こやつの家の『炎』もお主らの言う『土』も元々は四大元素であり、魔法の基礎だ。『火』『水』『風』『地』の特性の一部を受け継いだに過ぎん。それを誇らしげに言われてものう≫
「知ったげに!メイド風情に何が分かる!?」
≪メイド風情に分かるものも分からんのか?能力を受け継ぎ昇華させるのならまだしも、受け継いだ能力を知りもせずただ闇雲に使用するなど猿でも出来る≫
まるで自分が言われているかのようにショックを受けて項垂れる猿フォー。しかし、エムラはその言葉を理解しない
「いい加減にしろ!能力を知らないだと?貴様こそ知らないではないか!」
≪知らんな。貴様の土遊びなど興味もないわ。それを後生大事にしておるのを見ていると心底笑いが出る≫
「ぐっ・・・良いだろう・・・見せてやる!貴様の身体に嫌という程な!」
≪ほう・・・話するのも飽いていたところだ。土遊び・・・見せてもらおうか≫
マルネスにとっては想定通りに事が進んでいるのかニヤリと笑いその申し出を受けた
屋敷の庭に出て離れて対峙すると異変に気付いたレンドとマーナが馬車から出て来てクオンの傍に行く
「クオン・・・どうなってるの?なんでクロフィード様が・・・」
「どうやらデビット家のギフトを披露してくれるらしい」
「いや、何をするかじゃなくて、どうしてそうなったか聞いたんだけど・・・」
「成り行き?」
「なぜ疑問系なのよ」
マーナは呆れて対峙する2人を見た。マルネスに万が一などあるはずもないが、それでも相手のギフトはどんな攻撃なのか分からない。マーナが心配そうに見つめる中、フォーは混乱し、デラスはウキウキし、レンドはいつ飛び出そうか身構えた
「我がギフトの深淵・・・見せてやろう」
≪カカッ・・・深淵ときたか。存分にやるがよい≫
「大口を叩けるのも今の内だ・・・しかし、よく見ると・・・この勝負、俺様がギフトを出して貴様が屈服すれば命までは取るまい。だが、その場合俺様のものとなれ」
≪おーおー・・・欲情が渦巻いとるのう。よく見ないでも分かるものを・・・だが、この超絶美少女の妾は既にクオンのもの。屈服する事はありえんが、賭けには出来ぬ≫
「無理矢理にでも奪ってやる!いでよ!ゴーレム!」
マルネスの容姿の良さに今更ながら気付き欲情したエムラが叫ぶと庭の土が盛り上がり五体のゴーレムが姿を現す
≪・・・≫
「言葉も出ないか・・・無理もない。親父すら4体が限度。俺様は余力を残してこの数だ!」
「ゴ・・・ゴーレム・・・」
「若いのにやりおるわい・・・国の軍幹部ですら10体出せるかどうか・・・」
「クロフィード様!下がって下さい!後は僕が!」
マーナが呟き、デラスは感心したように唸った。レンドは剣を抜きマルネスの前に立つとゴーレムに向けて構える
「もう遅い・・・これは貴様が望んだ・・・」
≪して、いつゴーレムは完成する?≫
「・・・なに?」
≪確かに妾が望んだが、貴様は深淵を見せてくれるのだろう?・・・まさかその児戯にも等しい土人形が深淵とやらか?≫
「・・・何を言っている?ひとたびゴーレムに命令すれば貴様なぞ・・・」
≪おい・・・冗談であろう?命令?起動式も組み込まずこの中途半端な土人形をゴーレムと申しておるのか?≫
「起動式?」
≪ク、クオン・・・話が違うぞ・・・人は勤勉で努力家・・・妾の思いもよらぬ魔技を用いると言ってたではないか≫
「他国は知らん。あれはあくまでシントの話だ」
≪なっ・・・いや、薄々気付いておった・・・この国に来てからというものまともな使い手を見た事がない・・・炎の玉を出すだけ、剣魔を飛ばすだけ、遠くを見るだけに巨大化も巨大と言いつつひどく小さい・・・果ては髪を伸ばして縮めて土人形とは・・・≫
果てと言われたフォーが落ち込み、鑑定に触れられなかったデラスが胸を撫で下ろす
≪お主安心しておるが、見れぬ鑑定などクソの役にも立たんぞ?今言った中に入らないほど下の下だ≫
「ぐはぁ!」
安心しきっていたところへの痛恨の一撃。デラスは片膝をつき項垂れた
「さっきから何を言っている!」
無視されて激昴するエムラに対してため息をつくとマルネスがどこから取り出したのか眼鏡をかける。そして、何か呟くとマルネスの目の前の土が盛り上がり土人形が姿を現した
「き、貴様もギフト『土』を!?」
≪たわけが・・・1度しか言わぬからよう聞け。貴様が創り出したゴーレムという名の土人形・・・これはゴーレムの基礎だ。言わば創っている途中の状態。ゴーレムは元々単純な命令を術者がおらんでも遂行できる番人として創られたのがきっかけだ。で、その為には核を創り、起動式を刻む。例えば・・・≫
マルネスは手の上に魔力で出来た玉を創り出し、その玉に何かを吹き込む。そして、その玉を創り出した土人形に埋め込み、更に何かを唱えると地面から土ではなく石が土人形の体を覆っていく
≪中身を土にする事で動きをしやすく、外側を石で固めることで強度を増す。核を埋め込み、その核には命令したい事を式にして刻むと・・・ほれ、これがゴーレムだ≫
完成したのはエムラが創り出した土人形より一回り大きい石人形。その出来た石人形に手を当てて魔力を流し込んだ
≪核に魔力を流すと刻んだ命令を遂行する。今回は妾を守れと刻んだ為・・・どれ、その土人形で妾を攻撃してみろ≫
自分より立派なものを創られて呆けていたエムラは、何かの間違いだと心に言い聞かせ、土人形達に命令を出す。一体・・・また一体がのそりのそりと動き出し、マルネス目がけて向かって行く
≪引いておれ≫
マルネスの前にいたレンドを下がらせ、向かい来る土人形を待ち構えていると突然マルネスの石人形が動き出し、エムラの土人形を壊していく
「ああ・・・」
無慈悲に壊される渾身の土人形達。その光景を目にしてエムラは認めざるを得なかった・・・マルネスの実力を・・・格の違いを
「先生!」
≪誰が先生だ≫
「その核ってどうやって創るんですか?」
≪・・・マイペースだのう・・・お主≫
エムラが膝から崩れ落ち項垂れていると、手を上げて質問してきたのは今まで無口だったアースリー。毛の中からか細い手を上げてマルネスに質問した
≪核は魔力を溜め込む器。イメージで創り出すやり方と実際の器を用いて創るやり方がある。お主らは実物の方がいいのう・・・イメージで創り出すには寿命の桁を増やさねばならん≫
「器・・・お皿とかですか?」
≪出来れば底が深いコップのような形のような物がよい。あまり浅いと魔力は零れてしまう。後は口は開いてないと魔素が取り込めぬからな・・・注意が必要だ≫
「なるほど・・・で、どうやってその核に起動式を刻むんですか?」
≪グ、グイグイくるのう・・・まあ良い。それはのう────≫
先生と呼ばれて内心喜んだマルネスはアースリーに細かく説明してあげた。エムラとイーノッドもつられて耳を傾ける
≪起動式を刻むとは、魔力を流しながら念じる・・・ただそれだけだ。しかし、簡単ゆえ単純な命令しか刻めん。例えば今回妾が刻んだ起動式は『妾に近付くものを排除せよ』なのだが、これだけで3つの起動式を刻んだ事となる。まず『妾』これは自分をイメージして、『近付くもの』これは寄ってくる距離をイメージ、最後に『排除』は攻撃をイメージしながら刻む。逆を言えば『排除』と刻んでもイメージが照れるとかだったら妾に誰か近付いて来てもゴーレムは照れるだけになるのう≫
「じゃあ、仲間が近付いても攻撃してくるんですか?」
≪無論。なので仲間が攻撃されたくない場合は『妾と仲間を』と刻み自分と仲間をイメージする必要がある。その場合、起動式は増え、魔力の消費も増えるがのう≫
「じゃあじゃあ・・・」
「あー、待ってくれないか。決着はどうなったんだ?昼を食べてないから腹が減ったんだが」
朝からセガスを発ち、それから何も食べていないクオンがアースリーの言葉を遮る。その言葉を聞いて全員がエムラの顔を見た
「・・・降参・・・降参だ。彼女が俺さ・・・俺より高い次元にいるのは一目瞭然・・・土人形の数が増えれば強いと思っていた自分を呪いたくなる。ダルシン卿・・・この通りだ」
「い、いえ・・・始まりは私が無理を言ったことからなので・・・」
エムラはフォーに向かって頭を下げた。態度が180度違うエムラに戸惑いながらもフォーは頭を上げてくれと頼む
「そして・・・メイドではないのだろう?名を聞かせてはもらえないか?」
≪当たり前だ。こんな超絶美少女のメイドがおると思うか。クロ・・・マルネス・クロフィード。上級魔族だ。クロフィード様と・・・あっ≫
「上級・・・魔族?」
「黒丸・・・」
≪じょ、上級マゾ君だ!・・・痛ぶってね☆≫
時が止まり、からっ風に晒される全員に何か冷たいものが背中を這う。マルネスはピースした手を顔に当て、ウインクしながら片足を上げる変な姿勢を2分間続けるのであった────




