4章 39 白い雪
ベルベットの命令で戦況の確認の為に王城を出たクラウ。住民達がパニックに陥っているさまを、さも楽しげに見つめ大通りを歩いていた
赤子や子供は泣き叫び、老人は立つことさえままならない
影響を受けていない者も存在するが、突然の出来事に慌てふためき、どうする事も出来ずに頭を抱えている
そんな状況の中を鼻歌交じりに軽くステップを踏んで歩く奇妙な化粧をした男に住民達は敵意のこもった目を向けていた
ファストの能力が発動された時、ちょうど見回りをしていた兵士が突然倒れた同僚を介抱していると歩いて来たクラウの姿を見つける
苦しむ住民や同僚の前を満面の笑みで通り過ぎようとするクラウに我慢が出来ず、兵士は立ち上がりクラウに向かっていった
「クラウ様!」
「・・・なーに?」
「不謹慎です!」
「不謹慎?」
兵士はクラウの怖さを知っている。それでも勇気を振り絞り震える身体を必死に抑えながら言い放つ
「は、はい!原因不明で苦しんでいる民の前で・・・」
「?・・・」
クラウは兵士に言われてキョロキョロと辺りを見渡し現状を確認するが、兵士の言わんとする事が理解出来ずに首を傾げる
そのクラウの様子に兵士がピクリと眉をひそめ詰め寄ろうとした時、クラウは真顔になり前蹴りで兵士を吹き飛ばした
訳も分からず吹き飛ばされた兵士は気を失い、突然の出来事に住民達がざわめく中、クラウは両手を広げてその場でクルリと回り声高に唱える
「君は一体ボクにどうして欲しいんだい?彼らを見て悲しめと?大人しく隅っこを歩けと?どうする事も出来ないならせめて・・・って?笑わせるな。無力さを慰め合って何になる?これは魔に染まり甘んじていたツケだろう?大人しく受け入れるが良い!!」
クラウの言葉は誰にも響かない。言葉の意味を理解出来ずに怪訝そうな表情を奇妙な男に向けていると、その男は不気味な笑みを浮かべて再び歩き出した。軽くステップを踏みながら・・・
一方、魔の世にてファストの本体を探すマルネス達
当てがあると言ってマルネスが向かった先はファストの居城。マーナ達やマルネス隊には他を探させカーラと共に真っ先に訪れた
城の前にカーラの扉でやって来た2人は立ち止まるとカーラがマルネスに話しかける
《どのようなお考えでこちらに来たかお聞きしても?》
《ふっ・・・奴の事だ、安全な場所は探すのではなく作ると踏んでな・・・それが出来るとしたら奴の作った建物が最も可能性が高かろう?》
《なるほど・・・となると隠し部屋ですか・・・どうお探しになるおつもりでしょうか?》
《はん!ちまちまと探すつもりはない。妾がこの城ごと無に帰してやる》
《・・・確かクオン様のお知り合いが囚われておられると聞いたのですが・・・》
《あっ・・・チリか・・・》
《それにクオン様の側仕えをしていた者のように人の世から連れてこられた者も多数います。ゴブリンなどの餌になっていなければどこかにいると思いますが、もし同じ場所にいるとしたらファスト様と同時に無に帰すこととなりますが、宜しいのでしょうか?》
《んなっ!・・・よろしく・・・ない》
カーラに指摘されてマルネスも思い出した。チリはもちろんの事、晩餐会で配膳していたのはサドニア帝国の人であった。姿が見受けられないのはどこかに幽閉されている可能性が高く、その場所を知らずに城ごと破壊するのは出来ない
勇んで来たはいいものの、いきなりの頓挫に頭を悩ますマルネス。その様子を見てカーラはため息をつくと城を指さした
《とりあえず中に入りませんか?・ルネス様》
《そ、そうだな!中に何かしらの手がかりがあるやもしれんしな!》
《はい。もしご指定のお部屋があればそこに繋ぎますが?・ルネス様》
《・・・お主さっきから妾の名を変に言うてないか?》
《失礼致しました。どうやらマが抜けていたようです》
《そうかそうか・・・マがのう・・・カーラ、あまり調子に乗るなよ?クオンの従者でなければとうに消滅しておるぞ?》
《ご安心を。クオン様の従者でなければ言っておりませんので》
《ぐぎぎ・・・ま、まあ、妾とクオンの仲を嫉妬しておるのだろう・・・だが、少々慎め》
《嫉妬ですか?とても仲の良い親子関係に見えましたが?》
《おやっ・・・どこがだ!妾とクオンは歴とした恋人関係だ!なにせチ・・・チスもしたしのう・・・その事をゆめゆめ忘れるなよ!?》
《チス?人の世では魔力譲渡をチスと言うのですか?それは初耳です。今度魔力が切れそうになったらお願いしてみます・・・そのチスとやらを》
《はあ?そんなものダメに決まっておるだろうが!って、おい待て、1人でさっさと行くな!聞いておるのか?ダメなものはダメだぞ!こら、待てカーラ!》
話は終わりとばかりにスタスタと城に入って行くカーラをマルネスが追いかけながら叫ぶ
それを無視してもはやもぬけの殻となった城内を迷うこと無く進んで行き、辿り着いたのはファストが1人でいる時によく使っていた部屋。まるはクオンと出会う前はここでよくファストと会っていた。会っていたと言ってもアモンの代わりにファストを監視する為であったが・・・
部屋に入り一通り物色してみたが、隠し部屋に繋がるものは発見出来ない。いっそう見える範囲で破壊し尽くしてやろうかと思ったその時、物陰から何が飛び出して来た
《クーネ!》
ゴブリンの巣での出来事の後、いつの間にかはぐれてしまっていたクーネがいた。マルネスの周りをひとしきり飛び回ると最後に肩に止まりくちばしで毛ずくろいを始める
《それは確か・・・》
《うむ。妾とクオンの子だ》
《なんと・・・マルネス様は鳥類でしたか》
《誰が鳥類だ・・・お主も知っておろう。このクーネはチリが創った・・・》
〘マルの字、急いでいるのではないのか?〙
《誰がマルの字だ!・・・って、チリか!?》
カーラが言ったと勘違いして怒鳴るも、声と呼び方ですぐに肩に乗ったクーネを通してチリが喋っている事に気付いた。それもゴブリンの巣で喋った時よりも鮮明に聞こえる
〘同じ場所にいると声も聞こえるな。で、クーネを探していた訳でもないのに、この部屋に訪れたという事はファストとやらを探しているのでは無いのか?〙
《あ、ああ。お主は今どこにおる?その場所にファストもおるのか?》
〘いる・・・のだろうな。私のいる場所とは少し離れているようだが、この付近にいるのは間違いない。ここに訪れるのは決まってファストとやらのみだからな。先程気配を感じたからまず間違いないだろう〙
《そこはどこだ?お主は何を・・・》
〘ひたすらファストとやらのゴーレムを創ってる。つまらん作業だが、何もしないよりはマシではあるし、創らねば飯ももらえん。それにアンジー達が人質のようなものだ・・・言う事を聞く他ないだろう。で、この場所との事だが・・・正直分からないな〙
《そ、そうか・・・》
チリの傍にファストがいる・・・光明が見えたのも束の間、チリが場所を知っていなければ何の進展もないとマルネスが肩を落とす。その様子を見てクーネが首を傾げると再び口を開いた
〘この場所は分からないが、この場所への行き方なら分かるぞ?〙
《それを早う言わんか!ガッカリして損したわ!・・・で、どうやって行くのだ?》
〘ふむ・・・言葉では説明しにくいな。クーネを連れてひとまず部屋を出ろ。道順はその都度案内する〙
《おお!では早速・・・》
《マルネス様・・・申し訳ありませんが急な用事が出来た為に私はここで失礼します。ファスト様の事・・・よろしくお願い致します》
《んなっ!?急な用事って・・・いや、そうか・・・お主の事だから・・・》
カーラの突然の申し出に驚いたマルネスだったが、すぐに思い直して思案顔となる
《うむ。道案内もおるので構わん。用事を済ませてくるが良い》
《はっ、言われずとも》
《・・・この件が済んだら覚えておれ》
《はい。クオン様がどちらの味方になられるか楽しみです》
《・・・覚えておれ・・・》
あっけらかんとしているカーラに念を押すように同じ言葉を繰り返すマルネス。その鋭い視線から逃れるようにカーラは扉を開き、何処へと消えて行った
残されたマルネスはフンと鼻を鳴らすと部屋を出てクーネの案内で目指した・・・ファストの本体がある場所へ──────
一方その頃、暴走したジンドの身体を操るファストはこれまでとは違う動きを見せていた
直線的な動きだけではなく足を使い回り込み、右拳を放ったかと思えば寸止めし左拳を放つなどフェイントも混ぜながらクオンを翻弄する
ただでさえ身体を2倍ほどに巨大化させて破壊力も増しているファストが、そのような動きをすればクオンには為す術もない。辛うじて致命傷は避けてはいるが、防戦一方となる
《おまえの主も頑張ったがここまでだ。勝てる見込みは0・・・たとえ俺らが魔力満タンで参戦したとしても・・・な》
《・・・》
《加えて言うなら、ここが魔の世だとしてもだ》
戦況を見ていたラージは乾いた地面に爪を立て呟いた
今までのファストにならば勝てる見込みはあった
クオンの予想外の実力、原初の八魔のラージらがいる事、シャンド・ラフポースの存在・・・この三つの要素があれば勝てるはずだった
しかし今のファストを見て、ラージは悟る
どう足掻いても勝てないと・・・
《素早さに加え破壊力・・・魔技も混ぜれば完全無欠・・・魔技を使わないのは余裕の現れでしょうか?》
《だろうな。で、おまえはなんで冷静でいられる?》
《・・・なぜでしょうね・・・ファスト様の相手をしているのが・・・クオン・ケルベロス様だからでしょうか・・・》
役割を与えられた訳では無い。ただ最善を尽くせと言われてシャンドはつぶさに戦いの行方を見つめている。決してその時を見逃さないように・・・
《なるほど・・・少しコツが掴めてきた。魔力に強弱を付けることにより手加減が出来るのだな。あまり強くしすぎて核ごと君を潰してしまっては今までの苦労が水の泡だからな》
亀のように防御を固めるクオンに対して、ファストはジンドの操り方の向上に満足して呟いた
喋り方も暴走した当初より流暢になり、余裕の笑みを見せるファスト。クオンは構えの隙間からその様子を伺いながら大きく息を吐き態勢を整える
「自分の身体で出来るようになったら楽しいぞ?」
《楽しい・・・か。戦いとは目的ではなく、目的の為の手段に過ぎない。楽しさなど必要ない》
「戦いを目的としてる奴もいる。それに手段が楽しければそれにこしたことはないだろ?」
《楽しむ暇すらないのにどう楽しめと?君は勘違いしていないか?君は善戦しているのではなく、生かされているだけだ。その核がなければ君は一瞬で終わっている・・・それももうすぐだがな》
「そいつは困った。だけど裏を返せばお前は核以外の所を狙わないといけないわけか」
《白々しい・・・とうに気付いているだろうに》
ファストは核のある胸付近の攻撃を避け、クオンは胸以外の急所を守る。そうでなければファストの言う通り決着は早々についていただろう
「器が胸にあるとは限らないぞ?」
《そうだな。君の事だ・・・核の場所を変えてるやも知れない・・・が、私が核を壊してしまうのを恐れると同等・・・いや、それ以上に君も壊されるのを恐れているはず。ならば変えていたとしても・・・頭くらいだろう》
「胸か頭・・・攻撃されたら死んでしまう場所に器を置き、万が一攻撃されたら器諸共・・・か。なんだか俺が性格悪いみたいじゃないか」
《軽口を叩く割には随分と余裕がないようだな。その目が能力の発動条件か?片目を閉じると黒い魔力が消え去る・・・私が攻撃すると目を開けて、攻撃が止むと目を閉じる・・・随分と忙しないものだな》
「お前と違って人様から奪ったり出来ないからな・・・余裕がないんじゃなくて工夫と言ってくれ」
《・・・このまま攻撃を受け続けても勝てる見込みはない。なのにシャンド・ラフポースに頼らない・・・何を企んでいる?》
「これでもシャンドの主でね・・・頼りっぱなしだと示しがつかないだろ?それにこれでも反撃の機会は伺ってるんだがな・・・」
《そう易々と明かさぬか・・・ならば明かしたくなるよう、もう少々痛め付けるか・・・》
「おい・・・聞いてるか?まるで俺が嘘つきのように・・・!」
クオンが喋り終える前にファストが動き出す
巨体を一気にクオンの懐に滑り込ませると、下から思いっきり拳を突き上げた
クオンは両腕をクロスさせその拳を受け止めるも勢いは殺せず身体は上空へと舞い上がる
「くっ・・・」
身体が舞い上がる程の威力は魔力を込めたとはいえ衝撃は大きく、クオンは痛みで顔を歪める。そして、息付く暇もなく背後に気配を感じ、視線を地上に向けるがファストの姿は見当たらない。ゾクリと背筋に冷たいものが走り、咄嗟に空中で身体を丸めた
《終わりだ》
いつの間にか飛んでクオンの背後に回っていたファスト。両手を組み、そのままクオンの首筋に振り下ろした
辛うじて手を首筋に回し直撃は避けたものの身体は勢い良く落下し、意識は飛びそうになる。歯を噛み締め、地面を睨みつけると身体を反転させ勢いそのままに足から着地した
「うっ・・・くっ!」
足をタイミング良く曲げる事により衝撃を緩和させたが、ダメージが大きく身動きが取れない。顔を上げファストを見ると薄ら笑いを浮かべて手のひらをクオンへと向けていた
落下しながら指先から手のひらに魔力を集束し、クオン目掛けて解き放つ
狙いは身動きの取れないクオンの腹部
魔力の塊は一直線に光の帯を作りながら飛んで来る
躱せない!
クオンは食らうのを覚悟して腹部を中心に魔力を込めると突然目の前が暗くなる
《主・・・ここはお任せを》
「おい」
シャンドの声。ファストの魔力は既に眼前まで迫り再び転移する暇はない。ファストが地上に降りた時には2人を貫通した魔力が大地を抉り轟音と共に土煙が舞い視界を遮った
《余計な事を・・・》
ファストは身動きの取れないクオンの腹部を狙ったつもりだったがシャンドが割り込んで来たせいで狙いがズレた可能性に歯噛みする。核を撃ち抜いていないか目を細め土煙が晴れるのを見つめていると、その考えが杞憂である事が分かる。クオン・・・それにシャンドすら傷一つ付いていなかった
《勘弁して欲しいわ・・・クオン様を御守りするつもりが、自称従者を守る形になるなんて・・・》
《私としては貴女が余計な事をしなくてもクオン様を守れると証明出来る機会を奪われた形ですがね・・・第二従者殿》
《カーラ・・・キューブリック!》
シャンドの目の前に空間の歪みが出来ており、クオンの背後にも同じような歪みが出来ていた。扉の入口と出口・・・ファストの魔力はその扉から入り出て行った為に2人を傷付ける事無く魔力は地面に激突した
ファストは声のする方に振り向き、カーラの姿を見つけると忌々しげにその名を口にする
「・・・間に合ったか」
《間に合った?君が守りに徹していたのは、まさかカーラ・キューブリックを待っていた?クックック・・・ハーハッハッハ!滑稽だね・・・カーラが加わったぐらいで戦況がひっくり返るとでも?》
「ああ、ひっくり返るさ。戦況も・・・状況も、な」
《状況?一体何を・・・!?》
言いかけた時、ファストは何かに気付き空を見上げた。先程自身が掌握し、集束した時と・・・いや、それ以上のモノが空に浮かんでいた
季節外れの雪が降る
白い白い雪が降る
無数の真っ白い玉が雪のように降り注ぐ。フワフワと舞い、地面に落ちると跡形もなく消えていく
ファストはその1つを手に取り見つめた
《・・・これは・・・核?・・・》
雪のような白い玉・・・それは魔力を帯びていない核であった。触れると地面に落ちた時と同じようにスーと消えていく様は本物の雪のようであった
「500年ほど前・・・同じ事が起きたらしいぞ?器を持たない人々が苦しむ中、季節外れの雪が降り、それに触れると楽になったとか・・・」
《・・・レーネか!!》
ファストは叫び、見回して発生源である人物を探す。そして、少し離れた小高い崖の上で両手を広げるレーネとその傍らにいる少女を見つけた
《お主の仲間がおるようじゃのう・・・ここに残るか?》
「いえ・・・わたしは師と共に・・・」
《この世界とあちらの世界では時の流れが違う。仲間を・・・家族を置いていくことになるぞ・・・それでも構わぬか?》
「はい・・・偏にムキムキマッチョメンの為に・・・」
《・・・お主もぶれぬのう・・・では行くか》
「はい」
用は済んだとばかりにレーネは少女を従えてカーラの創り出していた門に向かって歩き、そのまま門をくぐり抜けると同時に門は跡形もなく消え去った
「白い髪のマルネスってとこか・・・にしてもアースリーの奴一緒に帰っちまったぞ?」
《あの者は知り合いでしたか。なんでもレーネ様に弟子入りしたとか・・・》
「意外と節操ないな・・・黒丸にチリにレーネか・・・」
カーラの答えにクオンはアースリーの歴代師匠を思い浮かべる。師匠が変わる度に驚くべき才能を開花させていくアースリーに感心しているとレーネが居た方向を見ていたファストが振り返る
《何故だ!・・・何故レーネが・・・》
「お前が周りから器を奪うからだろ?取り返したところで元に戻すのに手間がかかる・・・だから取り返すのを諦めて新しい器を配ってもらった。まさかあんな風にするとは思ってもみなかったがな」
《配ってもらっただと?いつだ!いつ・・・》
「お前が『人に生きる価値がない』とかご高説を垂れてる時だよ。あの時カーラに頼んだんだ・・・レーネを連れて来てくれってな」
クオンは立ち上がり服に付いた埃を払い身体をほぐす
《・・・君は何をしている?確かに君は人々を救ったかもしれない・・・しかし、君の言う状況が好転したとしても戦況は変わりはしない・・・それとも本当にカーラ如きが加わったから変わるとでも?》
「散々カーラにしてやられていたのにえらい言い草だな。・・・ただ戦況をひっくり返すのはカーラじゃない・・・俺だ》
クオンが左目を開けると身体を黒いモヤが包み込む
両目を開けたクオンを見てファストは一瞬キョトンとした顔をするが、意味が分かると徐々にその顔を変貌させ薄ら笑いを浮かべた
《気は確かか?君は今まで手も足も出なかった・・・それを忘れたとでも言うのか?》
《手も足も出なかったんじゃない・・・出さなかったんだ》
《それをなんと言うか知っているか?・・・強がりだ》
《・・・お前の言うアモンならもう少し上手く出来たのかもしれないな・・・》
《なに?》
《俺が出来るのはカーラに頼んで、レーネに核を配ってもらい、その間はなるべく魔素が濃くならないように気を付けるだけ・・・》
《・・・まさか・・・》
《ただでさえゴブリンやら魔獣やらの影響で魔素が濃くなってんだ・・・お前のような大量の魔力を含んだ奴を倒したらどれだけ濃くなるのやら・・・》
《・・・き、君はその為に・・・わざと攻撃を・・・私の攻撃を受け続けるだけに徹したと?》
《それ以外に理由があるか?さて、さっさと終わらせよう・・・じゃないと負けちまうからな》
《・・・訳の分からぬことを・・・終わらせる?いいだろう・・・楽しむのは終わりだ・・・全力で終わらせてやる!》
クオンが刀を抜くとそれに呼応するようにファストの身体から魔力が噴出する
互いに構えを取らず、立ったままで対峙する
カーラとシャンドはその場から少し離れ、2人の戦いの行く末をじっと見守る──────




