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最強の番犬と黒き魔女  作者: しう
『統べるもの』
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4章 38 魔人王

戦いの最中、ファストが突然クオンに手のひらを向けたかと思うと、その手を握るように閉じた。するとクオンは身体全体を何かに掴まれたように動けなくなってしまった


まずいと直感的に感じたクオンがファストを見ると、同じように手のひらをクオンに向けていた


魔力が来る


指先から魔力が手のひらに集中し、それはクオン目掛けて放たれた


動く事の出来ないクオン


ファストの魔力は真っ直ぐにクオン目掛けて飛んで来る


先程までいいようにやられていたファストの口元が緩んだ。動きを封じ、魔力の放出にてトドメを刺す・・・原初の八魔相手にも有効だった手段は当然クオンにも有効である・・・はずだった


核を壊さないで、容易に避けられない・・・そして、致命傷となる場所として狙った場所は腹部。魔力はクオンの腹部に吸い寄せられるように飛んで行きクオンに命中し腹部に風穴を空けるはずが、その手前で魔力は綺麗さっぱりと消え去った


《・・・アモン・・・》


つい口に出してしまった名前。似ても似つかない風貌にも関わらず、クオンの雰囲気が唯一の友を思い出させる


《なんだ、もうバレたか》


頭を掻きながらそう呟く目の前の男に更にドクンと体内の血流が激しく高鳴るのを感じた。求めたものがそこにある・・・近付こうとするファストは次の言葉で目が覚めた


《アモンと対とか言ってるんだから、そりゃあ気付くか》


()()()・・・か》


雰囲気が似ている男の口から不意に出た名前・・・その名前が出た瞬間にファストは現実に引き戻される。目の前の男はクオン・ケルベロス。決してアモン・デムートではない、と


一度冷めた感情は反動で怒りを生み出す。目の前のアモンの偽物を早く処理しなくてはとファストは動き始めた


《死して屍を無様に晒せ。その屍から核を抜き去ってくれよう!》


全身に魔力を巡らせ巨大化するファスト。しかし、今度の巨大化は雲に届くばかりの巨大さではなく、元の身長の3倍ほどだった


《・・・少し賢くなったか・・・》


クオンは片方の眉を上げると一旦ファストから距離を取る為に飛び退いた。巨大化は大きければ大きいほど破壊力が増す。しかし、その増した破壊力も当たらなければ意味が無い。先程の大きさではクオンに攻撃を当てるのは難しいと判断したファストが考えた結果が今の大きさだった


飛び退いたクオンに数歩で近付き拳を払う


仰け反りながら躱すクオンにもう一方の腕を振り下ろした


慌てて後転するクオンに対し、ファストは更に腕を伸ばし身体の自由を奪う


《ゲッ!・・・マジか!?》


動きを封じられたクオンにトドメとばかりにファストは前蹴りを放ち、その巨大な足はクオンを捉え吹き飛ばす。吹き飛ばされながら意識を失いかけるも歯を食いしばり地面に足を打ちつけて勢いを殺し何とか踏みとどまる


攻撃手段は拙いながらも連携が取れてきている。身体の自由を奪う能力を何とかしないとジリ貧だと考えていると再びファストが迫って来る


息もつかせぬ連続攻撃


そして、また手のひらをクオンに向けて握る仕草をした瞬間にクオンの動きは封じられた


《死ね》


《死んでたまるか!》


クオンは魔力を両腕に込めてファストの能力を強引に振り払うと、振り下ろされる拳を避けた


ドンと音を立てて地面が揺れるほどの衝撃。食らえば一撃で意識を刈りとるであろう打撃を見てクオンの額から冷や汗が滲み出る





《・・・掌握》


《しょう・・・なんだって?》


《掌握です。恐らくファスト様がお使いになられている魔技の名前です。あまり記憶にありませんが、その魔技を持つ者と戦った事がありまして・・・》


《おまえ・・・まあ、いい。で、対処法は?戦った事があるなら、なんかあんだろ?》


《ありませんね。強いて言えば、掌握されても転移すれば抜け出せますが》


《それおまえだけだろ・・・出来るの・・・》


シャンドが過去を思い出して答えるが、ラージはあまりにも限定的な対処法に呆れて肩を落とす


《・・・そろそろですかね・・・》


《ようやく手伝う気になったか?》


《いえ、私はどこかの覗き女として違って主の命令を完璧にこなす事こそ従者の務めと心得ておりますので、主が命令されない限り動きません》


《どこかの覗き女って・・・じゃあ、そろそろってのは?》


《五つの核を持っていると言っても、原初の八魔の方々と戦い、続けざまにあれだけの魔技を使用していれば・・・》


シャンドが言い終わる頃、クオンを攻め続けていたファストに異変が訪れる。突然動きを止めて身体を震わせ始めた


《魔力切れか!》


《ええ。魔素を濃くしたとはいえあれだけ魔技を使っていれば魔力の回復量より多くなります。戦闘経験の差が出ましたね》


《戦闘経験って・・・まあ、ファストの奴は直接戦わずに操って戦わせる事がほとんどだから、そういった意味では経験不足か。更に人の世となると更に・・・》


《少ない魔力量で戦ってきた人と余りある魔力を自由に使って来た魔族の差・・・魔力切れなんて初めての経験でしょうね・・・ファスト様は》


《もしかして俺らってこの為に戦わされたのか?》


《・・・途中からはそうなりますね・・・》


《なるほど・・・途中からおまえが抜けたのはそういう事か・・・》


ラージは座りながらシャンドを睨みつけた。初めは協力していたシャンドは突然いなくなり、少しの間一人で戦っていた。それはラージでは・・・もしかしたら原初の八魔が四体揃ってもファストには敵わないと踏んでいたかも知れない


《皆さんは人の世では十分な力は発揮出来ないでしょう?魔素が色濃く浸透した魔の世と最近魔素に晒されるようになった土では威力が違う・・・他の皆さんも同じように魔の世とでは発揮出来る力が違う》


《まあな・・・良い土には違いねえが、硬さに至ってはあっちの土に比べたらスポンジだぜ?でも、だったらそう説明してくれりゃあ戦い方も・・・》


《私が?原初の八魔の方々に?ファスト様の魔力切れを誘発して下さいと?》


《・・・すまん、今ならともかく、やられる前に聞いてるとは思えんな・・・俺を含め全員・・・》


シャンドに向けていた視線をファストに移し、思い返しながらラージはシャンドに謝った。自分はもちろん、他の三人もそんな消極的な案に素直に従うとはとても思えなかった


ラージが見るとファストは巨大化を解き、元の大きさに戻っていた。これで不明な魔技を合わせて残り四つ・・・全ての核の魔力が切れれば裸同然となる


《しかし、まだ厄介なのが残ってやがるな・・・特に『掌握』は破れるとはいえ一瞬動きが止められちまう・・・ファストの奴も戦い方に慣れてきてる節がある・・・下手すりゃその一瞬が致命的になるぜ?》


《そうですね・・・止められないようにするにはどうすれば・・・》





《なるほど・・・そういう事か》


巨大化が解け、クオンの思惑を理解したファストが自らの身体を見た後にクオンを見つめた


《そういう事だ。さあ、続けようか!》


《その前に・・・》


《あん?》


クオンが動こうとした時、ファストは手を突き出してその動きを止めた


《君の実力を評価しよう。狙いも理にかなっている。惜しむらくは人である事か・・・。にしても、君とアモンを重ねた事は恥じなければならないな・・・全く違うというのに・・・》


「勝手に重ねて、勝手に違うと言われる俺の身にもなってくれ」


クオンは左目を閉じながらため息をついた。会話をし始めたファストの狙いが魔力を回復する為の時間稼ぎとも思ったが、そうではなく、ただ純粋に会話を楽しみたいという気持ちが伝わってきた


《・・・そう言えばお礼がまだだったな。ジンドの魔技は五つ・・・『巨大化』『復元』『集束』『掌握』『隠形』》


「・・・おい、どうした?」


《更に言うなら、『巨大化』は言わずもがな。『復元』に至っては君の言う通り()を元通りにする魔技。『集束』は集めまとめる魔技で、『掌握 』は対象を意のままに操る魔技。『隠形』に関しては対天使用の魔技と思ってくれたまえ》


「洗いざらいとまあ・・・自分の能力をペラペラと喋る場合と言えば、嘘をついて混乱させる場合かもしくは・・・勝てる算段がついた時・・・」


《違うな。単なる『冥土の土産』だ》


ファストは口元を緩めると両手を上に上げた。警戒し、刀の柄に手をかけるクオンに見向きもせず、全身から何かしらの能力を発動させた


「?・・・なんだ?」


ファストから発せられる能力は、クオンを、シャンド達を、そして、全てを包み込むように広がっていく。触れても痛みもない能力・・・しかし、自然と身体がその能力を拒絶する


《貸していたもの・・・返してもらおうか》





サドニア帝国帝都センオント


巨大な門の柱の陰でクラウは相変わらずの化粧の状態で状況を伺っていた


巨大な魔族が何者かと戦っている様子を興奮しながら見ていたが、突如血相を変え王城へと向かった


街中で奇妙な格好と化粧をした男が必死の形相で走っている様を見て、不安に怯えていた街の住民達もその滑稽な姿を見て失笑するが、クラウが走り去った後に突然具合が悪くなり次々に膝をつく


街の異変に狼狽える兵士達。その兵士達の中でも嘔吐する者や立っていられなくなる者が続出した


壁でファスト達の姿は見えていなかったが、異様なほど頻発する地響きに怯えていた住民達。今度は倒れていく、そして、自らの体調の変化により完全なパニック状態に陥った──────




サドニア帝国王城内執務室


そのドアが乱暴に開けられ、汗で化粧の落ちかけているクラウが飛び出す


「敬愛するベルベット皇帝陛下はご無事でしょうかー!!」


「・・・クラウ殿・・・」


飛び出して来たクラウと目が合った皇帝補佐官テグニ・ユーヤードが冷たい視線を向けて呟く


執務室の奥には椅子に深く腰掛けた皇帝ベルベット・サドニアとその傍らに宮廷魔術師ハリーナ・コナリアが佇んでいた


「クラウか。何用だ?」


「はれ?陛下御無事で?・・・良かったー」


ベルベットの顔を見て、しなだれるクラウ。その様子を見てベルベットは微笑み、ハリーナは嫌悪感を顕にした


「陛下のいらっしゃる執務室に駆け込んで来るなんてどうかしてるわ。陛下から貴方の話を聞いてなければ溶かしてるところよ」


「そうですよ、クラウ殿。たとえ危急の際であろうとも・・・」


「はいはい・・・て言うか陛下ー、聞いて下さいよー!」


「・・・」


「くっ・・・」


クラウはテグニとハリーナを袖にして、ベルベットの前にある机に腰掛けると見てきた街の状況を説明した


「ほう・・・そんな事になっていたか。ともなると疫病でも撒き散らしたか・・・」


「陛下!ご冗談でもそのような発言はお控え下さい!」


「発言を控えたところで状況が好転する訳でもあるまい。クラウ、街を見てきたのはお前だけだ。率直な意見を述べよ」


「・・・能力自体は分かりませんが、目的は分かりましたよー」


「ほう・・・申せ」


「ここです」


クラウは身体を捻りベルベットの正面を向くと親指で胸の辺りを指した


「命・・・ではなく、器か」


「さっすが聡明な皇帝陛下!道端でゲーゲー吐いてるオッサンが黒い玉・・・器を吐いてました・・・昨日の晩飯が黒玉盛合せじゃなければ、器でしょうねー」


「器を・・・吐く?貴方の器は胃にあるのかしら?」


「あるかもね。覗いてみる?」


ハリーナの挑発とも受け取れる物言いにクラウは服をはだけさせて舌を出す。顔を歪ませるハリーナと薄ら笑うクラウの間に入りベルベットはため息をついた


「くだらん言い争いはよせ。・・・テグニ、街に行ってその黒い玉を持ってまいれ」


「・・・吐瀉物の中からでしょうか?」


「そうなるな」


「・・・・・・・・・はっ」


「嫌そうだな」


「・・・決して」


ベルベットが明らかに嫌そうな顔をして否定するテグニをニヤニヤしながら見ていると、執務室の窓の外に何か見えたのかクラウが立ち上がり窓の側へと歩き出す


「陛下ー・・・手遅れですわ」


「手遅れ?」


クラウが肩を竦めてチョイチョイと窓の外を指さした。ベルベットは立ち上がり窓際に立つ


「これは・・・クラウ!もう一度魔族の元に行き状況を確認せよ!テグニ!街の状況を速やかにまとめて報告せよ!」


「はいな!」


「は、はっ!」


ベルベットは窓の外の光景を見て表情を変え、2人に指示を出す。ハリーナがベルベットの傍らに立ち、窓の外を見て呟いた


「・・・何なのよ・・・これ・・・」


「こっちの水は・・・甘くなかったか・・・」


ハリーナが手で口を押さえ、ベルベットは眉間に皺を寄せてそれぞれ呟く。2人の瞳には街の上空に浮かぶ黒と白の玉が映っていた──────





五魔将ジンドの身体を操るファストは放った魔技の結果に満足しほくそ笑む。サドニア帝国王都センオント、そして、周辺から続々と集まる玉。それが何なのか理解したクオンが顔を歪める


《まだ魔力がほとんど溜まってない物もあるな・・・魔技を奪う時によく見た色だ》


ほとんどが黒く、中にちらほらと白い玉が混じる。その白い玉の意味をクオンは知っていた


「・・・お前・・・やりやがったな」


《君はマルネスの番犬と言ったな・・・それはこのような結果になると分かってて言ったのだろう?弱き人を見捨て、強き魔族であるマルネスを選んだのは非常に合理的だ・・・思考がまるで我ら魔族だ》


「魔族が合理的?笑わせるなよ。お前らは良く言えば純粋、悪く言えば幼稚で単純なだけだ」


《それが生物だろう?複雑な思考が出来るからと言って履き違えるな。生きる意味を持たぬ人が複雑に生きたとて何の意味がある?》


「理解出来ないものを複雑で片付けるなよ。生きる意味なんて持ってねえよ。誰かの為に生きてる訳じゃない・・・死ぬまで生きてんだ」




《おまえの主・・・何言ってんだ?》


《・・・黙って聞いてなさい》


《はい・・・って、俺、原初の八魔!》




《死ぬまで生きる?生きる為に生きるとどう違う?》


「一緒にするなよ。生きる為じゃなくて死ぬまでにどう生きるか、だ」


《理解に苦しむな。刹那の生の中でどう生きると言うのだ?何を成せると言うのだ?》


「どう生きようが何を成そうが勝手だろ?そこに共通認識なんてない」


《・・・そうか・・・ならば人に生きる価値などないな》


「魔族にはあるって言うのか?生まれてきた意味が」


《ない。だから私が作る事にした。私が魔の世と人の世を意味のある世界に変えてみせる・・・その中に人の居場所などないと知れ・・・》


「人を・・・滅ぼすと?」


《いや・・・選別してやる。生きとし生けるもの全て・・・この私が!》


「・・・・・・・・・」


《何をブツブツと言っている?・・・まあいい。君は最初の選別では生き残った価値ある者・・・大人しく従えば生をまっとうさせてやろう。なんならマルネスもくれてやる。その胸にある核を寄越すのであればな》


「・・・選別・・・どんな手品を使ったかと思ったら『掌握』か」


《ご名答・・・広範囲に使った故に能力の低いモノにしか効かないがな。それ故の選別でもあるが・・・》


「弱い能力にも抵抗出来ない者には用はないと・・・それがお前の選別か・・・」


《能力の低いモノなど生きてる価値などあるまい・・・いや、溜めた魔力を献上するだけの価値はあるか・・・》


「中には魔力をほとんど溜めていない・・・産まれたばかりの赤子の器が入ってる・・・その赤子がお前の言う価値のない人になるとなぜ言える?育てばお前すら凌駕する可能性を持った子だぞ?」


《運が悪かった・・・それだけだ》


「選別の日に赤子でいることが運が悪い・・・か。どうやらお前の作る世界は住みにくそうだな・・・遠慮しとくよ」


《そうか・・・残念だ》


ファストは頭上に集まった玉・・・核に向けて手をかざす。すると核は互いにぶつかり合い、粉々になると中に入っていた魔力が溢れ出す


《クオン様・・・よろしいので?》


「一手遅れた・・・出させられた器を戻す術があったとしても、時間が無い・・・誰がどの器かなんて分からないからな・・・」


シャンドがクオンの背後に立ち囁くとクオンは首を振りながら答えた。センオントだけでは無い。近隣の村や森に住む動物、魔物からも奪ったであろう核はファストの手によって粉々に砕かれた。そして、その魔力をファストはどんどんと吸収していく


《フハハハハ!・・・気分が良いぞ!クオン・ケルベロス!!満たされていく・・・どうした?足掻かないのか?今なら傷一つくらいならつけれるやも知れぬぞ?それとも早くも絶望したか?》


数千個はあったであろう核の魔力がファストに注がれていく。クオンはその様子を黙って眺めていた


《クオン様、御命令頂ければ私が・・・》


「いや・・・俺がやられたら頼む」


《クオン様!》


「2人同時にかかればファストも本気になるだろ?そしたら瞬殺だ瞬殺。これくらいの実力差が今はちょうどいい・・・なあ?ファスト」


《・・・》


クオンが話を振るもファストからは返事は来なかった


それもそのはず、少し前までの余裕の表情だったのが、今では白目をむき、身体を小刻みに震わせていた


《やはり・・・》


「ああ・・・暴走だ」


核の許容範囲を超えて魔力を摂取すると起こる現象。人でも稀に起こる現象は、魔族も例外なく起こってしまう。ただ、魔族は存在するだけで魔力を消費している為に暴走する事はほとんどなかった。その暴走をファストは周囲から奪い去った核から魔力を摂取する事により意図的に起こしたのだ


核の量、それに伴う魔力の量を見てクオンとシャンドは暴走する事を予見していた。更に、本来ならば暴走すると制御出来ない状態になるのだが、目の前にいるファストは制御出来る事を


《・・・これが・・・暴走か・・・君にまんまと騙された時に感じた高揚感・・・それに匹敵する程の力を感じる・・・今度は・・・紛れもなく本当の力だ・・・》


「そいつは良かったな」


《・・・君には・・・騙されてばかりだ・・・てっきりマルネスの番犬と言いつつも・・・人を助ける為に・・・もう少し足掻くかと思ったが・・・》


「もちろん足掻くさ」


《バカが・・・核を抜かれた人が・・・魔素の中で生き続けられると?それとも・・・君も弱き人には興味ないと?》


「だから一緒にするなって。産まれたばかりの赤子や能力の低い人や動物だって・・・生きる価値がある事を教えてやるよ!」


《見殺しにしといてよく言う・・・君がその気なら掌握を防げたはず・・・たとえ防げなかったとしても奪い取った核を見て取り返そうとしたはず・・・だが君は動かなかった・・・君が本当に生きる価値があると思っているなら、必死に取り戻そうとするのではないか?》


「・・・」


《はっ・・・結局はそんなものだ・・・私がどうかしていたのだ・・・君みたいなものにアモンを重ねるなんて・・・》


「まだ言って・・・」


《もう・・・終わりにしよう・・・君から核を奪い・・・天族を根絶やしにすれば・・・私が魔の世と人の世を統べる魔人王となる!》


「・・・魔人王ねえ・・・頑張れ」


ファストは再び巨大化する。元の大きさに比べて約2倍ほど大きさになったファストを見てクオンは内心歯噛みし構えた


おそらく体内にある全ての核が暴走状態にあるファストに対し、クオンは温存している場合ではないと両方の目を開けた


シャンドがラージの近くに転移し戻った瞬間、2人は同時に動き出した──────

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