表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強の番犬と黒き魔女  作者: しう
『統べるもの』
110/160

4章 29 黒い花

魔の世ではクオン達が去った後、動き出した魔族達に応戦すべくマルネスを中心に陣形を組んでいた


一気に片付けてしまおうとするマルネスが魔力を溜め、魔力が溜め終わるまでエンシェントドラゴンであるステラ達がマルネス達を守る作戦だったが、数に押され早くも一角が崩れさろうとしていた


《やっぱ無理!限定的な戦いに向いてないんだよ!うわぁー!!》


「チーボウ!」


「僕が!!」


傷付き倒れそうになるチーボウを後ろから支え入れ替わるように前に出るレンド。複数の魔族が一気に雪崩込むが、レンドを守るテイラーが必死に耐え、その隙にチーボウが体勢を立て直しレンドと変わる


《ありがとう!兄貴!》


「誰が兄貴だ!」


一瞬チーボウがやられそうになった時に薄目を開けたマルネスであったが、立て直したのを見ると再び目を閉じ魔力を溜める為に集中し始める


両手を身体の前で向かい合わせ、体内にある魔力を一点に集中・・・魔力が膨れ上がり次第に周りから見ても分かるほどマルネスの身体から黒いモヤが立ち上る


あれを放たれたらまずいと感じた魔族達が更に攻勢を強めるが、他にも変化が見られた


エンシェントドラゴンに襲いかかる魔族を横から別の魔族が殴り掛かる。一瞬何が起きたか分からず見つめ合い、ようやく殴られた方が理解する


《てめえ!何しやがる!》《うるせえ!》《おい!どこ行くんだ!》《や、やってられるかよ!》


魔族の仲間割れ、そして、逃亡。マルネスの魔力に当てられて、このままでは殺されてしまうと考えた魔族の裏切りと逃亡。そこに目を付けたマルネスはマーナの肩に飛び乗ると全ての魔族に伝わるよう叫んだ


《妾はマルネス!原初の八魔、『黒』のマルネス・クロフィードだ!死にたくなければこの場より離れよ!死にたければ・・・黒き花びらと共に散るがよい!!》


マルネスは叫び終えると手を上にあげた。すると手の先から黒い花が咲き乱れる


「ちょ、ちょっと!マルネス様!?」


《しばらくそのまま辛抱しておれ。まだ殲滅するまでには至ってないが・・・致し方あるまい・・・》


黒い花を見て慌てて逃げる者もいたが、大半は残っていた。裏切りと逃亡者が出たのを好機と睨み、全てを倒せるだけの魔力を溜めないで能力を発動した事に若干の不安は残るもののもう後戻りは出来ない


《散れ・・・『黒花星章』》


マルネスが呟くと花は散り花びらが舞う


マルネス達を中心に黒き花びらはつむじ風に舞う花びらのように旋回し、次々と魔族を飲み込んでいった


切り刻むと言うより消し去る


花びらが触れた部分が消失し絶命していく魔族達。レンドとマーナはおろかエンシェントドラゴン達も動きを止めてその様子を固唾を呑んで見守っていた


「あの・・・前に見た時と違うんですけど・・・」


《ん?前に見せたか?・・・ああ、ジャイアントアントの時か。あれは技が発動した瞬間にジャイアントアントがすぐに消え去ってしまったからのう。花が弾け花びらが舞う・・・これが本来の姿だ・・・さて、残りはどう料理してくれようか》


溜めた魔力を使い切ったが、魔力切れを起こした訳では無い。魔族は半数ほどに減り、その者達を脅すように周囲を見渡し、ニヤリと笑いながら呟いた


ファストからマルネスは弱くなり原初の八魔を降りたと聞いていた魔族達。しかし、目の前で繰り広げられた魔法を見てマルネスを侮るものはもういない。ファストがジンドを操る事に集中している為、今現在魔族達はファストに操られてはいない。意志とは無関係に動かされる事に辟易しているものも多く、生き残った者達は混乱していた


《あの!・・・マルネス様の部下にして下さい!!》


マルネスの魔法で散る姿を見て一体の魔族が恐怖に勝てず跪き、声を張り上げる。その行動を見た他の魔族達も一体、更に一体と跪き始め、結局生き残った全ての魔族が戦意を喪失し、許しをこい軍門に下る事を望んだ


「あっ・・・あいつ!レンド!ほら、あいつは・・・」


「ああっ!あの時の!」


マーナが初めに跪いた魔族を指さしレンドに振り返ると、レンドも気付いて声を上げる。初めに跪いた魔族、ダンクはへへっと愛想笑いしながら顔を上げた


《なんだ?知り合いか?》


「知り合いなんて!ここに来た時にコイツのせいで僕らはバラバラに・・・」


ダンクに見つかりギャザッツと戦闘になった経緯を話すとマルネスはチラリとダンクを見た


《・・・消すか》


《ちょちょ・・・マルネス様!俺の事覚えてねぇですか!?ほら、前にファスト様の城でガキを捕まえて来たダンクですよ!》


《・・・消すか》


《ええ!!?》


ダンクに言われて思い出す。子供の頃のクオンを殴って気絶させ、ファストの城に連れて来た魔族こそ目の前のダンクであると。当時の事を思い出し、怒りが込み上げてきたマルネスが指先に魔力を溜め、放とうとした瞬間にマーナがマルネスの服の裾を引っ張り指を指す


「マ、マルネス様・・・あれってジュウベエ・・・さん?」


《・・・あやつめ・・・》


マーナの問いかけに視線を動かし、離れた場所でシューネと戦うジュウベエを見て歯噛みする。マルネスが見た時、2人の戦いはちょうど決着を迎えていた──────




魔族達がマルネスの軍門に下る少し前、ジュウベエは一方的にシューネに攻められていた


ジュウベエの大剣は空を切り、シューネの攻撃は四方八方より迫り来る


時間が経つにつれてジュウベエの傷は増える一方であり、気を抜けば致命傷を受けてしまうという緊張感が精神を蝕み、攻撃が当たらないという現実が疲れを倍増させる


普段ならば何時間でも剣を振ってられるはずが、たかだか数分で息が上がる始末だった


「・・・」


《何をブツブツとさっきから・・・いい加減沈んでおしまい!》


シューネの両手が霧散する。『霧化』そして『分離』


目に見えないほど細かい粒子となったシューネの手が分離しジュウベエに襲いかかる。攻撃をする時は『霧化』は解除されるが、ジュウベエが斬りかかると再び『霧化』して躱す


攻撃は例に漏れず少しだけジュウベエを傷付けるに留まり、両手を戻して攻め方を変えるかどうか悩んでいると右手に痛みを感じた


《・・・え?・・・》


『霧化』が遅れて傷でもついたのかと思ったが、外傷はない。しかし、確実に斬られたような痛みがシューネに疑問と焦りを抱かせる


霧状態で斬られた?


視線をジュウベエに移す。すると俯き呟いていたジュウベエの声が少しずつ大きくなっている事に気付いた。ついにはボソボソとしか聞こえなかった声がようやくシューネの耳に届く


「・・・出した・・・思い出した思い出した思い出した思い出した思い出した思い出した思い出した思い出した思い出した思い出した思い出した思い出した思い出した思い出した思い出した思い出した思い出した思い出した」


ユラユラと動きながら呟くジュウベエを見て背筋が凍り思考が停止する


今、シューネの目に映るのはされるがままのか弱き人ではなく、正体不明の歪な存在


《な、なんなんだ!お前は!!》


シューネが声を上ずらせながら叫ぶと俯いていたジュウベエが顔を上げた


首を傾げ、焦点の合わない目をシューネに向けるとケタケタと笑い出す


《くっ!・・・化け物が!》


シューネは一旦この場を離れる事を決意する


本能的に感じていた・・・今のジュウベエは主であるファストより()()


背を向け走り去ろうとした瞬間、ズブリと嫌な音が聞こえ、腹部を見ると大剣の剣先が見えた


《ぐああああああああぁぁぁ》


『霧化』は無意識で発動するはずだった。レッタロッタより受け継いだ時から魔力が尽きるまで物理攻撃に対して無敵となったはずだった。しかし、今、背後から大剣を突き立てられている。混乱する中、逃げなくてはと足を動かすが力が入らない


《あ・・・あ・・・》


「それ!強制『分離』~」


シューネの魔技『分離』


身体の一部分を切り離す事が出来るのだが、ジュウベエに()()()に分離させられた


シューネは理解する。離れた場所で佇む下半身はもう別物であると


《ウグゥ・・・ヒィ・・・》


ジュウベエに背を向け、上半身だけになっても必死に地面を掻き毟りこの場を離れようとする。斬られた場所から何かがズルリと抜け落ちる感覚に全身の血の気が引き、吐血した


それでも地面に爪を立て、必死にジュウベエから離れようとするシューネの背中に再び大剣が突き立てられ、地面に固定されてしまった


「痛いよね~苦しいよね~辛いよね~楽になりたいよね~・・・安心して~・・・あの下半身はゴブリンの巣に投げてあげる~。ゴブリンなら下半身だけでも喜ぶんじゃな~い?ね?」


《~~~~~~~!!!》


血が溢れ出し、声にならない叫び声を上げるシューネ。その様子を楽しげに見つめ、大剣を抜いては別の所に刺す


もう何度繰り返されただろうか・・・シューネがピクリとも動かなくなったのを見てジュウベエはうつ伏せであったシューネをひっくり返すと再び大剣を突き刺し始めた





「マ、マルネス様・・・あれってジュウベエ・・・さん?」


《・・・あやつめ・・・》


猟奇的とも言える行動は遠目に見ても確認出来た。上半身だけとなったシューネを執拗に突き刺すジュウベエ・・・その姿は今まで共に居たジュウベエの姿と重なりはしなかった


ようやく飽きたのかゆらりと身体を揺らし、マルネス達に顔を向ける。返り血で真っ赤になった顔と子供のような笑顔が不気味さを増幅させ、マーナが腰を抜かし倒れそうになるとマルネスはマーナの肩から飛び降りた


《カカッ・・・どうやら妾を敵と認識しておるのう》


「えっ!?」


マルネスはジャバとステラを押しのけ前に出ると呟く。聞き間違えかと思ったレンドがジュウベエとマルネスを交互に見るが、マルネスは冗談を言っているようには思えなかった


《・・・来るぞ!》


マルネスが叫ぶと同時にジュウベエは走り出す・・・敵意を剥き出しにマルネスの元へと


奇声を上げ迫り来る姿にレンドは身動きひとつ取れず、マーナは顔を引きつらせて後退る


「ヒャ~ヒャヒャヒャッ!!死ねよ~死んじゃえよ~ヒャッアハッハッアァァァァ・ァァ・・・ァ・・・・・」


《ムッ?》「は?」「え?」


迫るジュウベエが突然地面に()()()。マルネスは眉をしかめ、レンドとマーナは目を見開き呆然と落ちた穴を見つめる


《クオン様が努力されている時にお戯れを・・・して、アレは何だったのです?》


《知りもせず落とすな、カーラ。味方だったらどうする?》


マルネスは背後から現れたカーラにため息をつきながら文句を言う。ダーフォンを再び人の世に送り届け、クオンからの伝言を伝えにマルネスの元へ戻って来ていた


「ク、クロフィード様!ジュウベエさんは味方ですよ!」


《ほう?あのジュウベエを見て味方と言えるか・・・随分肝っ玉が大きくなったものだ》


「うっ・・・でも・・・」


今思い返してもジュウベエの表情は常軌を逸していた。しかし、それでも一度は惚れた女性・・・拳を握り食い下がろうとする


《この世にいない者の話をしても仕方ないでしょう・・・それよりもクオン様の・・・》


「ちょ、ちょっと待って下さい!『この世にいない』って・・・」


《ええ、あの者はあの世です》


「そ、そんな・・・」


《これこれ、あまりからかうでないぞ、カーラ。『この世』は魔の世で『あの世』とは人の世の事だろう?なあ、カーラ?》


《・・・・・・はい》


《なんだその嫌な間は・・・》


ジュウベエを心配するレンドを余所に、カーラは与えられた任務を果たすべく話を強引に変える


《現在五魔将ジンドを操るファスト様と原初の八魔で在られるベリス様、ダーフォン様、シーフ様、ラージ様が交戦中です。クオン様と・・ジャンドはまだ戦っておりませんが、いずれ戦う事になるとのことです》


《あやつらがファストと?戦況は?》


《芳しくないとの事です。クオン様は現在魔技の習得を目指し、・・シャンドは四魔の方々のフォローをしていると》


《・・・お主シャンドの前に何を付けておる?》


《マルネス様のお耳汚しになるかと小声で言っておりましたが・・・『クソ』と》


《そ、そうか。して妾達はこれからクオンらの救援に行けば良いのだな?》


《いえ・・・クオン様は別の事を頼みたいと・・・クオン様より言伝です。『ファストの本体を探せ』と》


《!・・・なるほどのう。確かにその方が手っ取り早い・・・場所は?》


《知りません》


《は?》


《耳の穴かっぽじってお聞きください。クオン様は『ファストの本体を()()』と仰りました》


《・・・お主は時々不敬よのう・・・探せか・・・用心深くて小心者のファストがマルネス隊に知らせてるとは思えんしのう・・・》


未だ跪き頭を垂れる魔族達を見ながらため息をつくマルネスに腰を抜かしていたマーナが突然立ち上がる


「ちょっと待って!マルネス隊って?」


《ん?こやつらの俗称だ。名が無いと不便であろう》


「ダサっ」


《なんだと?》


「そういう俗称ってのは仮と思っててもいつの間にか本決まりになっちゃうんです!せめて、キラキラ魔族隊とか・・・」


「いや、キラキラしてないだろ!恐怖の魔族隊とかだとインパクトがあって・・・」


《隊の名前など何でも良いかと・・・あえて付けるとしたら、アモンクオン苦悶隊でよろしいかと》


《いや、最後苦しんでおるぞ・・・カーラ。まあ、確かに名などどうでも良いな・・・して、そこにおるのは誰ぞ?》


マルネスが何も無い所を見て言うと薄らと人影が浮かび上がりマーナどうレンドは驚き凝視した


「あ・・・テン?」


姿を現したのはメイド姿の少女、ミーニャとそのミーニャに手を繋がれたテン


テンはレンドの声を聞くと堪らず両手を広げレンドに駆け寄った


「え?なに?・・・誰?」


突然現れたミーニャとテンに驚きを隠せず2人を交互に見るマーナ。幼い少女と更に幼い幼女・・・魔の世にそぐわない組み合わせだけならまだしも、片方の幼女が双子の兄に抱きついたのだ・・・『パパ』と泣き叫びながら




レンドがマーナに事情を説明している間、ミーニャはマルネスとカーラ2人と話していた


《・・・つまり、二重間者をしておったと?》


「は、はい・・・そういう言い方になるのかは分かりませんが、魔族ファストのギフトにより、言われるがままにクオン様の監視をしていましたが、クオン様の能力によってファストのギフトが解けてそれからは・・・」


ただファストの能力が解けるのはクオンの部屋にいる時限定だった。クオンが『禁』の能力を持っている事がバレないようにする為とミーニャが操られていると思わせ続ける為。ゆえにクオンの部屋を出るとミーニャはファストにクオンの様子を報告していた。禁じられた事以外を


《なるほどのう。ファストは自分が操っている者が言うのだから間違いないと思うだろうしのう》


《流石クオン様です》


《姿を消してたのはお主の能力かえ?》


「はい。父が『隠形』母が『気配を消す』ギフトを持ってまして・・・その・・・私は・・・2人の・・・」


サドニア帝国に間者として入り込んだバロは姿を消す能力『隠形』を持っており、ミーニャの母は『気配を消す』能力を持っていた。互いに同じような能力であり、それがきっかけで意気投合し結婚に至る。ミーニャはバロの『隠形』を引き継いだが、ミーニャの中では2人の能力を引き継いでいると思っている


涙を溜めて俯くと雫となって地面を濡らす。幼い少女が1人残され必死に生きてきた心情を察し、マルネスは泣き止むまで静かに待った


「・・・すみません・・・もう、大丈夫です・・・クオン様に言われてクオン様の部屋でジュウベエ様達を待つようにと・・・」


待つ事数時間、ジュウベエとレンド、それにテンが現れクオンからの言伝を伝えた


『ここで待っててくれ』それがクオンの言葉だったが、堪え性のないジュウベエが探しに行くと言い出した。流石に1人にさせるのはまずいと思い、付いて行こうとするレンド。しかし、傍らには幼いテンが居る。魔族と遭遇して危険な目に合わせたくないと悩んでいるとミーニャがテンを預かると言い、レンドは断腸の思いで腕の中でスヤスヤと眠るテンをミーニャに預けた


「クオン様は部屋に魔族が入れないようにしていました。クオン様は禁じたと言っておられましたが・・・しかし、テンが目を覚ますとレンド様を探して泣き叫んでしまいましたのでつい・・・」


《『隠形』を使えば見つからないと判断した訳か・・・確かに姿だけではなく気配すらも薄かった・・・上級魔族でも見つけるのは困難かもしれんのう》


《マルネス様・・・そろそろ・・・》


《うむ。カーラよ、3人を人の世に送ってくれんか?》


《3人とは?》


《無論ミーニャとテン・・・それにレンドだ》


「えっ!?」


テンを抱きながらマーナに説明していたレンドが驚き振り返る。それを見てマルネスが首を振った


《お主は幼き子を連れ回す気か?人の世も今は安全とは言えぬが、ファストの居る場所でなければここよりマシであろう。帰り吉報を待つがいい》


「うっ・・・」


マルネスの言葉に返す言葉がなく、更に離れまいと小さい手に力を込めるテンを見つめレンドは素直に頷いた


「あの・・・カーラさん、もし良ければセガスに送ってもらえませんか?」


クオンがいない状態でクオンの屋敷に厄介になるのも気が引けるしセガスの状況も知りたい・・・そう思いカーラに聞くと、カーラはすんなりと頷いた


《しばらくクオン様が滞在されてた街ですね。大丈夫です・・・()()()()()ので》


《怖いわ!ミーニャはどうする?サドニア帝国は今決戦の地となっておる・・・妾は会うた事がないのだが、お主の父は元々シントの・・・》


「いえ・・・出来ればサドニア帝国に・・・」


《ふむ・・・まあ、ファストはクオンが何とかするであろうから、問題ないか・・・カーラ》


《はい。ではディートグリスのセガスとサドニア帝国の帝都に繋げます。他はよろしいので?》


《マーナとステラ・・・それに他のエンシェントドラゴンにはファスト本体探しに役立ってもらおう。ここにいる奴ら以外にもファストの手下はおるやもしれんが、こやつらなら問題なかろう》


《承知致しました。それで・・・どうお探しになるおつもりで?》


《手当り次第・・・と言いたい所だが、当てはある。外れた場合を考えて地上からマルネス隊、空からマーナ達に怪しい所を探させるつもりだ》


マルネスは言い終えた後、遥か彼方を見るように目を細める。探した後にどうするか・・・決まりきっている事なのだがすぐには割り切れていなかった──────



魔の世では慌ただしく時が流れる中、緩やかに流れる人の世では数分前とは打って変わって静けさが辺りを包んでいた


佇む巨人・・・五魔将ジンドの身体を操るファストはほくそ笑む


懸念していた相手、原初の八魔の四体を同時に相手して圧倒したのだ


最初にシーフを力でねじ伏せ、その後にダーフォンに氷漬けにされるも巨大化し氷から抜け出すと後は一方的な展開・・・最後にベリスが全身を燃やし突っ込んで来たが、腕を犠牲にしながら叩き落とし勝敗は決した。戦っている最中に最も厄介だったのがラージ。魔法を駆使して拘束、足場を揺らす、仲間の足場を作るなどサポートに回った為に余計に時間がかかった。しかし、ラージを先に倒した事により次々と倒れ、最後のベリスが倒れた事によりファストの勝利は確定した


後は核を抜き取るまで・・・そう判断し動き出した時に現れる・・・最後に相応しい相手が


《本当によろしいので?》


「ああ・・・離せ!」


『瞬間移動』でファストの頭の上に転移してきたシャンドとクオン。シャンドが手を離すと重力に引かれファストの頭へと落ちて行く


《来たか・・・クオン・ケルベロス!》


「さあ・・・終わりにしようか!」


まるで旧友に会ったかのように笑い合う2人


ファストはふと思う・・・こんな日が来るのを予見していたのではないかと。あの日・・・アモンと別れたその日から──────


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ