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最強の番犬と黒き魔女  作者: しう
『統べるもの』
102/160

4章 21 パレード③

サドニア帝国帝都センオント


正門から続く街道から少し離れた場所に3m程掘り下げられた広い空間が用意され、その中にサドニア帝国皇帝、ベルベット・サドニアが考え出した加点式評価の100点を超える者が収容されていた。その数は優に1000を越える


「これは・・・一体・・・」


サドニア帝国のタルニアという村のボーゲンは齢60の元兵士。突然村に兵士が押し寄せ、質問を重ねたかと思ったら他の者達と共に強制的にここに連れて来られた。有無も言わさぬ雰囲気に抵抗は疎か質問すら出来ずに馬車に揺られ、着いた矢先に窪地に追いやられる


周囲を見ると老年の男女が比較的多いが若者も存在し、集められた意図が不明であった。ただ若者は例外なく身体のどこかしらに封印の枷を巻いている


「チッ・・・そういう事かよ・・・」


近くにいた若い男が誰かを見て何かに気付いて呟いた。ボーゲンは何か分かったのかとその男に近付く


「もし・・・この集まりが何なのか分かったのかね?」


「あん?なんだよ爺さん」


「あいや、すまない。私はタルニア村のボーゲンと申す者・・・訳も分からず連れて来られて混乱しておるので、何か分かればと思い・・・」


「・・・爺さんは違うみたいだな・・・」


「違う?」


「チッ、じゃあなんだってんだ」


「すまないが、詳しく聞かせてもらっても?私が違うとは?」


「・・・あそことあそこ・・・おっと、あそこにも・・・名の知れた奴らが集まってやがる。俺はカーネって街で牢屋にぶち込まれていたが、そこの牢屋にいた奴らは全員ギフトを封じられてここに送り込まれた。そんで今言った3人・・・おそらく他にもいるだろうが他の街の捕まった奴らが集められてる・・・そう思ったんだがな」


男はウォントと名乗り自分が何をして捕まったか、捕まる前に隠した金をどこどこに隠したなど自慢げに話し始めた。ボーゲンはそれを聞き流しながら改めて周囲を見渡す


子供は居ない。若者は男性が多いが女性もチラホラ。年老いた者は男女比率は同じくらい。若者だけが封印の枷を付けている訳ではなく年老いた者でも付けているものもいる


「・・・私が違うとは犯罪者では無いって事ですかな?」


「へっ、そういうこった。爺さん真面目そうだしな・・・荒くれ者をまとめて処分でもすんのかと思ったけど違うみてえだ。まあ、俺も残りの刑期は長くねえ・・・殺される道理はねえしな」


「・・・処分・・・」


「おいおい爺さん、人の話聞いてっか?俺はもうすぐ・・・」


ウォントは眉間に皺を寄せて呟くボーゲンに対して言い寄っていると周囲がザワつく。見ると窪地を取り囲むように立っていた兵士達が少し離れ、代わりに一人の男が姿を現した


ボーゲンとウォント・・・他の者達もその男を見て言葉を失う


顔面を真っ白に染め、鼻と口を真っ赤に染めた奇妙な化粧をした男が身の丈程もある鎌を持ちこちらを見てにやけている


「うはっ、暑苦しい♪」


収容されている者達を眺めての第一声。その後右へ左へと動きながら値踏みするようにボーゲン達を見下ろしていた


「おい!変態野郎!こっから出せ!!」「何なんだよ!何の為に集めてんだ!」「家に・・・帰しておくれ」「おい!てめえちょっと降りてこい!」


一旦怒号が始まると次々と連鎖し収容されている者達の不満が爆発した。地面に落ちている石を投げる者、駆け上がり脱出しようとする者、叫び続ける者などで溢れかえり、場は混乱を極めた


男はと言うと、叫び声にウンウンと頷いたり、飛んできた石をコミカルに躱したりと忙しなく動き、場が治まるのを楽しげに眺めて待っていた


しばらく騒ぎ立てた後、収容されている者の中で一際身体の大きいスキンヘッドの男が騒ぎを治め、先頭に立って男に向き合った


「俺の名はジャンゴ!アンタに聞きたい!俺達はなんでココに集められた?ココで何をするつもりだ?」


ジャンゴはウォントが名の知れた者として挙げていた3人の内の一人であり、取り巻きと共に連れて来られたのか数人がジャンゴを護るように取り囲む


「ふーん・・・ボクはクラウ、君ら収容者の案内役さ。とりあえず静まったみたいだね・・・じゃあ・・・おめでとう!!」


突然クラウは拍手をして声を張り上げた。言われた者達は何が『おめでとう』なのか意味が分からず呆気に取られ、ジャンゴは望んだ答えではなかった為に頭に青筋を浮かべる


「はぁ?てめえ人の話聞いてんのか!?何が『おめでとう』だ!!」


「聞いているとも!ここに呼ばれた理由が知りたいんだろ?君らは親愛なる皇帝陛下の定めた基準を超え選ばれたんだよ!これがおめでとうと言わず何と言うのか・・・」


クラウの言葉に再び怒号が響き渡る。先程は頷いていたクラウ、今度は両耳に人差し指を刺して静まるまで聞こえないふりをし続けた。その様子が更に怒りを買ってしまい中々怒号は鳴り止まず・・・何とかジャンゴが強引に治めてクラウを睨みつける


「おい!!」


「・・・・・・?」


「このっ・・・指をどけろ!!」


「・・・・・・?」


「てめえ・・・舐め腐りやがって・・・」


ジャンゴが必死に指を外すジェスチャーをするが、クラウは不思議そうに首を傾げる


怒り狂うジャンゴを見てようやく意図に気付いたクラウは耳から指を外した


「ああ!ゴメンゴメン・・・あまりにもうるさくて、つい・・・で?なんだっけ?」


「・・・ココに!集めて!何をさせるつもりだ!!」


「何も」


「ああ!?」


「怒らないでよ、怖いなぁ・・・ん?ああ、ちょうど来たみたいだよ!さあ、主役達のお出ましだ!」


クラウが何かに気付き満面の笑みを浮かべると大袈裟に手を広げ後ろに振り返ると一礼する


掘り下げられた場所からではクラウが何を見て何に一礼したのか分からずに見上げているとジャンゴより遥か後方に居るもの達が騒ぎ始めた。叫び一様に反対の壁際に走り出す者達・・・その様子を振り返り見ていたジャンゴに影が差す


「あん?・・・っ・・・」


何かが陽を遮った・・・ジャンゴは再びクラウが居た方に振り返り見上げた瞬間息をするのを忘れる


見た事もない巨大な魔物・・・正確には魔獣なのだが、その巨体を覗かせジャンゴ達を見下ろしていた。荒れ狂う訳でも猛る訳でもなく淡々と


「・・・な・・・ん・・・」


「さぁさぁこちらですよ!線に沿ってお進み下さい!」


クラウは嬉嬉として魔獣達を先導し、掘り下げられた場所へと案内する。先頭の魔獣が下に降り立つと次から次へと下に降り、何とか逃れようと後ろに下がるジャンゴ達の間近に迫る勢いで増えていく


「ああ、少し過剰かな。ちょいとお待ちを」


クラウは下の状況を見て突き進む魔獣の前を通り過ぎると魔獣は止まる。下に降り立ったのはおよそ30体、こちらも逃げ惑う収容者達を見下ろしながら動きを止めた


「おっ!あれは・・・」


その様子を満足気に見ていたクラウは何かに気付き、魔獣の発生源である隙間へと走り寄ると隙間の傍にいた魔族、ジンドが佇んでいた


「すいやせん、魔族の方とお見受けしますが・・・少し宜しいですか?」


《・・・》


魔獣を見ていたジンドがチラリとクラウに視線を移すが直ぐにまた魔獣を見つめる。視線を細かく動かし、魔獣がなぜ一列に並んで掘り下げられた場所へと向かっているのか探っているようだった


「あー、あればですね。ボクが事前に通り道を作ったから・・・んなんて事はどうでもいいですね。ちょいとお尋ねしますが、あの魔物・・・一体くれません?・・・あー、いや、ちょっとペットが欲しいなーって・・・」


《・・・》


「・・・沈黙は肯定・・・って、麗しき皇帝陛下が言ってました。てな訳でもらいマース!」


〘・・・〙


「ちなみにですね・・・実は貴方のご主人の言う国民の半数にちこっーと足りなくてですね・・・残りはまた今度という事で・・・良いですかぁー?」


〘・・・〙


「ありがとうございマース!それではごゆっくりー!」


クラウの言葉を無視するジンドに一方的に捲し立て、逃げるように持ち場に戻る。少しではなく1割にも満たない数で何とか誤魔化せたと確信するもジンドの無言の圧力に冷や汗をかきそれを手で拭う。すると化粧が落ちた為に焦って化粧を直し深呼吸をして再び魔獣と収容者達を見下ろした


「あんれま・・・物の見事に張り付いてるね・・・」


降り立った魔獣達は中心位の場所で立ち止まり、収容者達は否応なく壁際へと追いやられる。誰しも魔獣達から距離を開けたいと必死に壁際へと張り付いていた


クラウは反対側の壁に張り付く収容者達の元へと陽気に歩き、声の届く位置まで辿り着くと上から声を掛ける


「はい!注目!」


魔獣から必死に逃げようとしている収容者達。その上からクラウが叫ぶと

クラウに気付いた者達が罵り出した。するとまた指で耳を塞ぐクラウ・・・それでも喚き散らす収容者に業を煮やしたジャンゴが再び前に出る


「おや?君は・・・チ〇コ!」


「ジャンゴだ!くだらねぇ事言ってないで、さっさとここから出しやがれ!」


「?話聞いてたかな?君らは収容者・・・つまりここに収容されてるんだ。基準を超えた者達だけが集うこの場所・・・おお、選ばれし者達よ!」


「~~~!だったら!あの魔物はなんだ!!」


「さあ?」


「さあ・・・だと・・・」


「とにかく聡明なる皇帝陛下が基準を設け、それを超えた者をここに集めただけ・・・特に他に意味はないよ。まあ、たまたま魔物が来て、たまたま君らが食われるとしても・・・そこに関してはボクは知らない」


「なっ!!・・・てめえ!!」


ジャンゴが叫ぶと周囲からも怒号が鳴り響く。しばらくクラウは耳を塞いでいたのだが、何かに気付き怪しげに笑うとそこを指さした


「ほうら、始まるよ!ここでボクから君らへのプレゼント!何と!封印の枷を外すカギだ!・・・じゃあ、上手くやってね!」


クラウは言うと1つのカギを取り出し掘り下げられた場所の中心部分へと投げ入れた。収容者達の視線は自然とカギを追いかけ、カギの落ちた位置・・・魔獣達の足元へと移る


そして、そこで気付いた


今まで動いていなかった魔獣が動き出した事に




──────蹂躙が始まる──────




動き出した魔獣は今まで歩いて来た速度とは比べ物にならない速度で動き出す。きっかけがクラウの投げ入れたカギなのか時間なのかは不明だが、完全に狩りの動き・・・近くに居た者から手当り次第に貪り食らう


逃げようにも3mの壁に阻まれ、魔力を使えない為に容易に追い付かれ千切られる。魔獣の一撫は巨大な鉄槌で叩かれたと同様に身体は砕かれ一瞬で絶命に至る。30体の魔獣が動き度に人は為す術なく命を落とした


阿鼻叫喚の地獄絵図


その様子をクラウはしゃがんでニコニコと眺めていた


「頑張れー!カギを取れば魔力が使えるぞー!逃げてるだけじゃチャンスを失うぞー!」


収容者達にはクラウの言葉は届かない


必死に逃げ、捕まっては殺される


次第に誰かを犠牲にしようと突き飛ばす者や諦めて死んだフリをする者など逃げる以外の行動を取る者も出て来てはいたが少しだけ・・・ほんの少しだけ長生き出来る程度だった


「うーん、腹一杯なのかな?」


巨大な狼のような魔獣は収容者の身体を一飲みし咀嚼して吐き出す。他の魔獣も食らうも言うよりは破壊していた


「食べたら不味かったとか?・・・まあいいか。あの魔物が良いなー。でもやっぱり1番強い魔物が・・・」


「おい!・・・頼む!助けてくれ!!」


「おお!?ジャンボ君!まだ生きてたの?」


「うっせぇ!・・・金なら幾らでも払う!ここから出してくれ!」


クラウが魔獣の品評をしている所にジャンゴが下から叫ぶ。何とか他の収容者を押しのけて生き延びたはいいが魔力を封じられどうする事も出来なく上にいるクラウに縋る他なかった。取り巻きらしき者達もジャンゴに続いて懇願するがクラウはケタケタと笑いカギを投げ入れた場所を指さした


「ほらほらー、こうしてる間にカギを見失っちゃうよー!君らのギフトを信じなよー・・・ワンチャンあるかもよ?」


「ぐっ・・・くそっ!」


ジャンゴは振り返りカギが落ちた場所を見つめる。しかし、魔獣に踏み荒らせれ既に何処にあるか分からない


「探せ!俺のギフトがあれば・・・あっ」


取り巻きに命令している最中、一体の魔獣と目が合う。絵本に出て来るような1つ目のサイクロプス・・・その1つの目がジャンゴの両目を捉えていた


ゆっくりと動き出すサイクロプス・・・しかし、その1歩は人の数倍の距離を稼ぐ。一瞬でジャンゴとの距離を詰め、サイクロプスはニタリと笑う


「はっ・・・がっ・・・おい!お前ら・・・」


取り巻きに命令するが、居たはずの数名の取り巻きはいつの間にか逃げ去っていた。逃げ遅れたジャンゴは一人サイクロプスの前に残され、ゆっくり取り巻き上げる腕を眺める


「きゃー!ハゲゴー!逃げてー!!」


「俺の・・・名前は・・・ジャンボッ!」


「・・・あーあ、やっぱり名前、ジャンボじゃん」


クラウの応援虚しく振り下ろされた一撃を食らったジャンゴ。サイクロプスが腕を上げるとジャンゴは跡形もなく潰れていた。面白そうなオモチャがなくなってつまらなそうにクラウは辺りを見渡した


「ん?おお?」


見渡しているとある一団に目を付けた


10名ほどの一団は巧みに魔獣から逃げ続ける。他にも逃げ続けている者達はいるのだが、ほとんどは個々に逃げており、目を付けた一団のように固まって動いている者達はほとんどいない


その一団を指揮するのは老年の元兵士、ボーゲン。同郷の者とウォントを引き連れて魔獣達から逃げ続ける


「爺さん・・・あんた何者だ?」


「しがないジジイですよ。ただ昔取った杵柄ってやつですかね・・・身体は覚えてるもんです・・・さあ、無駄話は索敵の敵ってね・・・行きますよ!」


元兵士、そして、元斥候としての経験を遺憾無く発揮し魔獣の動きを感知し逃げる方向を決めるボーゲン。広い敷地に放たれた魔獣は30体。そして、魔獣は近くの獲物を狙う・・・そうなると単純に距離を取るだけで狙われるリスクはグンと下がる。冷静に考えれば当たり前の事なのだが、突然の魔獣の襲来に閉鎖的な空間、そびえ立つ高い壁が思考を停止させ、逃げるイコール反対側に進む・・・ほとんどの人が同じ行動を取るために自ずと魔獣はその方向を目指し結果追い詰められ死んでいった


ボーゲンは先ずは魔獣を観察し、動きの速さ、間合い、思考を理解する。そして、逃げる為のルートを選択し仲間を導く。斥候として魔物の探索で培った経験を活かし、追う側ではなく追われる側の立場で考える


「魔物は近くの者を手当り次第・・・歩く方向もほぼ同じです。その方向は人の多さ・・・つまり人気のない、視界に入らない、一定の距離を保つ・・・それを守れば逃げられます」


「なあ・・・逃げるのには賛成だが・・・後はどうすんだ?魔物が疲れるまで逃げ続けるってのは賛成しかねるぞ?」


「・・・アレです」


ウォントの言葉にボーゲンはある場所を指さした。その場所は掘り下げられた場所の中心部・・・僅かだがキラリと光る物がウォントの目に映る


「カギ・・・か。・・・おいおい、俺のギフトを当てにしてるのか?」


ウォントはボーゲンが連れている者達を見回し、誰も枷を付けてないことに気付く。カギを必要としているのは唯一枷を付けているウォントだけであった


「私の勘は良く当たる・・・どうですかな?」


「・・・ケッ、食えねえ爺さんだ。俺のギフトは部分強化・・・特に逃げ足には自信がある」


「高い壁があっても?」


「・・・ああ、これくらいならひとっ飛びだ。俺だけならな」


流石に全員を抱えて飛び上がる事は出来ない。それでもボーゲンは僅かに微笑んだ


「重畳、重畳。私がカギを取り、貴方が壁を飛び越えてロープを垂らしてくれれば逃げられます」


「はっ、俺が壁を越えた後に戻って来ると?ロープを探してまでわざわざ?」


「ええ。貴方はそうせざるを得ない。何故なら貴方1人で壁を越えても周囲にいる兵士、もしくは魔物に殺されるでしょう。しかし、私達を連れて行けば逃げれる可能性はかなり高くなります」


「囮って訳か?」


「はい。厳密に言えば私1人が囮になります」


「死ぬ気か?」


「まさか!これでも孫煩悩でして・・・可愛い孫の成長をまだまだ見ていたい年頃ですよ。私は隠していましたがギフトを持ってまして・・・ただ戦闘では役に立ちませんので使い所は難しいのですが・・・簡単に言えば『気配を消す』能力です。もちろん身体は消えませんから見られれば終わりですが、魔物や獣には絶大な効力を発揮します。どうやら匂いも消えてるみたいで使用している時は近くに居ても気付かずに済んで命拾いした事が何度もありまして・・・なのでギフトを使いカギを取り、貴方がギフトを使い壁を飛び越え私達を脱出させ、私が囮になり兵士や魔物を引き付けた後にギフトを使用し逃げる・・・という算段です」


「・・・」


ウォントは頭の中で計算する。確かにボーゲンの言う通りたとえ壁を越えたとしても逃げ切れる可能性は低い。だが、ボーゲンが囮になれば逃げ切れる可能性はグッと上がる


「・・・兵士の数は分からねえが、爺さんが囮になったとしても引き付けられる保証はねえよな?」


「その辺は考えてますよ。カギを取り、貴方が飛び越えるべき壁はあちらです」


「・・・正気か?」


ボーゲンの指した方向は魔獣が降りて来た場所・・・つまり、上には降りなかった魔獣が待機している場所でもある


「ここからは憶測になりますが・・・彼は魔物を使役してる訳ではなく、何らかの方法で操ってるのではないかと」


「彼?あの変態野郎か?だけどよ・・・あの野郎魔物の動きを止めてたぞ?」


「ええ。確かに止めてました。()()()()()()()()ね。それに彼は言いました。『魔物が来ても知らない』と・・・彼の印象からすると、もし彼が使役しているのであればそれを大々的にアピールしそうじゃないですかね?『ボクの魔物がお前らを襲うぞ』とかね」


「・・・確かに・・・」


ジャンゴとのやり取りを聞いていてクラウは魔物に関しては一貫して知らないと言っていた。それにボーゲンの言う通りクラウなら自分が使役しているのであれば自慢する可能性が非常に高い


「ふざけた風貌ですが、圧倒的な立ち位置から嘘をつくメリットは皆無・・・そうなると彼は横切る行動・・・またはそれに準ずる行動をしなければ魔物を操れない・・・そして、今は魔物とは対岸にいる・・・」


「上にいる魔物を動かすにも時間が掛かるか・・・それに魔物を恐れて兵士も寄ってきにくい・・・なるほどな」


「もし離れていても操れたら最初の犠牲は貴方・・・という事になりますが・・・」


「おいおい、やる気を削ぐなよ。せっかくやる気になってきたのに・・・」


「すみません・・・ですがこのままではジリ貧・・・やる価値は充分あると思いますがね」


ボーゲンとウォントは視線を交し探り合う


ウォントにとっては枷が外れれば逃げる事は可能であると判断していた。壁を越えロープを探しボーゲンに兵士や魔物を引き付けさせるのも悪い提案ではない。しかし、問題はボーゲン以外の者達。ボーゲンの同郷の者がついて来てるのだが、いずれも老年の者達・・・はっきり言って足でまといにしかならない。恐らくボーゲンは他の者達をロープで上げた後、最後に自分が上がって来るだろう。そうなると時間が掛かりすぎる。その点がいまいち踏み切れない点であった


方やボーゲンはウォントの人物像を探る。提案に乗ったとしても最後の最後に裏切られれば終わり・・・カギがあったとしてもそこから新たな協力者を探す時間は無い。自ら犯罪者と名乗ったのだ、何らかしらの罪は犯しているはず・・・ただもうすぐ刑期を終えるという言葉とウォントの年齢から見てさほど重い罪では無いのでは?とボーゲンは考える。罪の重い軽いが人物像に影響するかと聞かれれば甚だ疑問だが、それでもこの場では判断材料になる


2人の探り合いは魔獣の雄叫びと人の断末魔により急かされ結論に至る


「チッ・・・さっさと取って来い」


「・・・感謝します」


ウォントは半ば考えるのを諦め、その場その場で決めようと覚悟し、ボーゲンは自分の目を信じようと覚悟する


すぐさまボーゲンはギフトを使用すると気配が薄らぐ。目の前で見ていたウォントでさえそこに居るのか不安になる程に


「すぐ戻ります!」


ボーゲンはウォントにそう言い残すと中心部へと走り出す


魔獣は人を追い中心部にはいない。しかし、離れているとは言え振り向き数歩戻れば手に届く範囲にカギは落ちていた


気配を消しているとはいえ、魔獣がどう行動するかは完全には分からない。突然予告無く振り向き、ボーゲンを目で捉えれば襲って来る可能性も充分あった


重い足を無理やり動かし、ようやく到着した時には大した距離ではないにも関わらず息切れする。それでも何とかカギを手に入れるとウォント達が待つ位置に振り返る



──────首筋に生臭い風が吹く



獣の唸るような声


振り向いた際のウォント達の表情が全てを物語る


ボーゲンはギュッと目を閉じ大きく息を吸うと振りかぶりカギを投げた


カギが放物線を描きウォント達の元へと落ちるのを確認すると肺に溜まった息を全て吐き、全てを受け入れる


振り返る度胸はない。ただ痛いのは勘弁して欲しいと一撃で絶命する事だけを願った


「・・・?」


待てど暮らせど来ない一撃に、ボーゲンは既に死んでしまったのかと自らの身体を見回す。どこにも怪我らしきものは無い。来るべき一撃も来ない。ふと視線を上げてウォント達を見るとボーゲンの後ろを見ていた


恐る恐るボーゲンが振り返ると、そこには鎌を肩に担ぐクラウが鬼の形相でボーゲンを見下ろす。その背後には身体を真っ二つにされた魔獣がゆっくりとその身体を2つに分けて左右同時に倒れ込む


「・・・嘘つきめ・・・」


「なっ・・・がっ!!」


クラウは呟きボーゲンの腹に鎌の柄の部分を当て、そのまま持ち上げた


鎌だけですらかなりの重量がありそうなのに大の大人を軽々持ち上げるクラウに痛みよりも不気味な恐ろしさを感じる。更に飄々とした表情から一転して憤怒の表情なのが更に不気味さを増幅させた


クラウはボーゲンを持ち上げたままウォント達の元へ歩くと鎌を振り下ろしボーゲンを投げ落とす。慌ててウォントがボーゲンを受け取るが勢い余って2人とも地面に倒れ込んだ


「興醒めだよ!興・醒・め!君らは崇高なる皇帝陛下の選定に泥を塗った!もうこれは罪だよ罪!・・・ん?って事は100点超える?・・・・・・コングラチュレーション!!」


憤怒の表情から突然何かを考え始め、最終的にはボーゲン達に向けて笑顔で拍手するクラウ。その変化についていけず呆然としているとクラウは言葉を続けた


「君らはボクの与えたチャンスを物にした!すこーし不正があったけど、まあ細かい事はこの際気にしないでおこう・・・で、だ。スペシャルクラウチャーンス!」


「・・・チャン・・・ス?」


「そう!ボクの与えたミッション・・・カギゲット大作戦を見事成し遂げた君らに生き残るチャンスをあげる・・・と、その前に」


クラウは鎌の柄部分を地面に打ち付けるとそのままボーゲン達の周りを走り出した。地面は抉られ、円を描くとクラウは汗をかいていないのに額を拭う仕草をしてやり遂げた感を演出する


「これでココは安全っと・・・じゃあ、もう残りはいいかな?」


クラウはひと息つくと全体を見渡すと1人納得したように呟き、飛び上がり軽々と壁を越えた


「よいしょ、よいしょ・・・さあ、お待たせしました!存分に暴れちゃって下さい!」


壁の上で下の魔獣達が動き出してから暴れていた魔獣達・・・クラウが壁の上のその魔獣の前を横切ると狂ったように突き進み、次々と降り立つ


「うはー、壮観壮観・・・100体はいるかな?」


クラウの言う通り30・・・厳密に言うとクラウが仕留めた魔獣を一体除いた29体の魔獣に加えておよそ100体の魔獣が追加される。辛うじて逃げていた収容者達もその様子を見て大半が諦め、足を止めた


「おい!俺様をこの中に入れろ!おい!!」


「彼は確か・・・」


「ああ、傭兵崩れのバトス・・・」


ジャンゴと同様にウォントの知る有名な犯罪者、バトス。そのバトスが目敏く動かないボーゲン達を見つけて近付き、クラウが描いた円の外から空間を叩く。まるで見えない壁が目の前にあるようにその円の中に侵入出来ず、必死に叩くがボーゲン達にはどうする事も出来ずにいるとクラウが壁の上から降りて来た


「ん?何をしてるのかな?」


「この中に入れろ!ココは安全地帯なんだろ!?」


「んー、だとしても君を入れる理由にはならないな・・・裸で踊ってみる?それが面白かったら入れてあげるよ?」


「ふざっ・・・!おい、そのカギを寄越せ!コイツをぶちのめしてやる!!」


バトスはウォントの持つカギに気付き、それを投げて寄越すように要求する。まだ自分の枷も外していない・・・それにカギを渡してバトスがギフトを使用したとしても、とてもクラウには勝てるとは思えなかった


「おい!さっさとしろ!ノロマ!!」


「チッ・・・」


ウォントは急いで自分の枷を外し、カギを抜くとそのままバトスに向けて投げた


「さっさとすればいいんだ・・・よ?」


カギはバトスに届く前に何も無い空間に当たり、虚しく地面へと落ちる。受け取る寸前、僅かばかりの希望が目の前に落ちた事にバトスは狂ったように叫ぶ


「ふざけんなよ!!!なんだこれは!!」


「人が通れないのに物は通ると思ったの?プッ」


「クソ野郎がぁ!!!」


クラウの煽りに耐えきれず、バトスはクラウを睨みつけ殴り掛かる。それを余裕の表情で待ち構えていたクラウはヒョイと円の内側に飛び込んだ。バトスの拳は見えない壁に阻まれ、痛みで身体をくねらせる


「君バカ?」


「ふーふーふー・・・殺す・・・絶てぇ殺す!」


「ねえ?裸で踊ったら入れてくれるのかい?」


バトスが興奮しクラウを睨みつけているとその背後から一人の女性が現れた。この女性もウォントがボーゲンに説明していた3人の内の一人、エネマ。盗賊団の頭目だった者だ


「ん?・・・そうだね。裸で踊りながら『入れて下さい』ってお願いしたら入れてあげるよ♪」


クラウが言うとエネマは躊躇なく服を全て脱ぎ去り、その場で踊り始めた


「どうか・・・入れて下さい」


「いいね!最高だよ、君!恥も外聞もなく見事な脱ぎっぷり!バカじゃないの?」


クラウにバカにされ、ピクリと眉を動かすが、それ以上は表情を変えずに踊り続ける。するとクラウは呆れたように息を吐き、手を振ってエネマを招き入れる仕草をした


「ハア・・・仕方ない・・・ボクは嘘が嫌いだ・・・特別に入れてあげるよ」


エネマはその言葉に目を光らせ、服を持つと一気に走り出す。見えない壁はエネマを拒まずすんなりと円の中に入る事に成功・・・それを見たバトスが更に激昴する


「俺様も・・・入れやがれ!!」


「はあ?君はボクの言ったことをやってないだろ?えーっと、自分の腕をもいで食べろ・・・だっけ?」


「『裸で踊れ』だ!・・・くそっ・・・くそっ・・・」


バトスは苦渋に満ちた顔で服を脱ぎ始める。後ろからは人の破壊される音が生々しく耳に届く。振り返りはしないがもう時間がないのは理解出来た。恥を忍んでバトスは全裸になるとクネクネと踊り出した


「うは!?マジか!!この状況で!?・・・くぅ・・・死ねる・・・」


ケタケタと笑い、笑い過ぎて涙を流すクラウ。バトスは顔を真っ赤に染め、全裸のまま見えない壁を両手で叩く


「もう良いだろ!!さっさと中に・・・」


「はあ?『裸で踊れ』って言ったのは殴り掛かる前の話でしょ?ボクに殴り掛かったペナルティ分が入ってないよ・・・そうだな・・・おっ、ねえ、今そこで逆立ちしてよ!ほら、ここの通せんぼを使っても良いからさ!早く!」


「ぐっ!・・・くそっ!」


クラウは通せんぼと言い見えない壁を指す。バトスはイラつきながらもそんな事で済むのならと素直に逆立ちした。地面に両手をつき、足をはね上げて見えない壁に寄りかかる。壁がなければ出来なかったとこの時ばかりは見えない壁に感謝するが、逆立ちが完成した瞬間に視界に見えてはいけないものが入り込む


「あ゛っ」


巨大な顔をバトスの顔に近付け、興味深く覗くその目は巨大な顔に比べて酷く小さい。しかし、目は無数にあり、その目が一様にバトスを覗き込む


長い手足を器用に操り、顔だけを地面スレスレにあるバトスの顔に近付けて様子を伺う魔獣はしばらくバトスと目が合った後に顔を上げた


「お、おい!逆立ちしたぞ!は、早く!!」


「え?なんて?」


「て・・・てめぇグボラギボッ」


魔獣は手にあたる部分を尖らせ振り上げ、逆立ちするバトスの肛門から一気に貫いた。バトスは逆立ち状態から真っ二つとなりあえなく絶命する


「惜しい!正解は『中に入れて下さい』だよ。『中に・・・早く』じゃ意味わかんないよね?普通」


クラウはしゃがみ込み、絶命したバトスを見下ろしながら呟く。そして、立ち上がると状況を確認した


「んー、もういいかな?・・・ではお次は魔物大戦争!!頑張って1番を目指して下さい!!」


クラウの叫びが掘り下げられた場所全てに行き渡る。パンパンと手を叩き、腕を広げて叫んだその声を聞いた魔獣達はそれまで全くなかった同士討ちを開始する


人にとっては広い場所も魔獣にはさほど広くはない。5mを超える巨体もいれば、全長だけで言うと10mを超す魔獣もいる。その100を超える巨大な魔獣が互いにぶつかり合うには狭過ぎた


「・・・蠱毒・・・」


エネマが円の中でいそいそと服を着る中、ボーゲンは魔獣達の共食いのような状態を見て呟く


「あん?・・・こどく?」


「禁忌の為に詳細は知りませんが、毒のある魔物や獣を1箇所に集め、共食いさせて・・・」


「そそ。本来は毒の製法なんだけどね。だからこんな広場でやらずに壺の中に小さい毒を持った虫とかを入れるんだ。流石にバカでかい壺はないし、毒が欲しい訳でもない・・・ちゃんと生き残ってもらわないと・・・そうそう、君の名前は?」


ボーゲンとウォントの会話に割り込んで来てボーゲンに顔を近づけるクラウ。兵士の頃より反応速度は遅くなったと言えあまりにもすんなりと懐に入られ恐怖を感じる


「・・・ボーゲン・・・ボーゲン・エラテナ・・・」


「ふーん・・・出身は?なんでギフトを隠してたの?」


「・・・タルニア村・・・です。その・・・隠してたと言うか・・・なぜ調査に年齢とギフトの有無が必要なのか気になりまして・・・」


タルニア村に突然兵士が訪れ、調査という名目で村人全員に年齢とギフトの有無を聞いて回る。詳細などは一切話さず2つに分けられる村人達・・・当然不審に思ったボーゲンはわざとギフト無しと申告してここに連れて来られていた


「なるほど・・・偉大なる皇帝陛下の選定基準に疑問を持ち、あまつさえ嘘の申告をしてこの場に居る・・・と。君はこの中で断トツにトップだね・・・基準値を遥かに超えている・・・おしおきが必要だね・・・」


ゾッとする笑み・・・その笑みがボーゲンには向けられ思考は停止する。クラウはそのまま何も言わずに壁へと向かいフワリと飛び上がると壁の奥へと消えて行く


息をするのも忘れていたボーゲンがやっと息をしていない事を思い出し息をすると酷く生臭い空気が肺を支配する


「うっ・・・くぁ・・・これは・・・」


咳き込み辺りを見渡すと円の中にいる者達が全員口に手を当てて咳き込んでいた。倒された魔獣の異臭が周囲を包み空気を汚染している。まるで空気に色を付けるのではないかと思う程の濃い匂いは鼻を刺激し肺は取り込むのを拒絶する


しばらく魔獣達の争いは続き、微かに聞こえる生き残ってたであろう人の声が脳裏に響く


決して魔獣が近付かない安全地帯に居て、何も出来ない自分らの無力さを呪った


「お待たせ♪んー、そろそろかな?出来ればカッコイイのがいいけど・・・」


クラウが円の中に降り立ち、額の上に手を当てて生き残ってる魔獣を品定めする。すると、気に入った魔獣がいたのか動きを止めて凝視し、ニンマリと笑い駆け出した


「あの中に・・・なんなんだアイツは・・・」


「さあね。なんであろうとアタイは絶対に生き残る・・・それよりもあんたら・・・アタイの裸を見たんだから生きて帰ったら金払いな」


ウォントが絞り出すように声を出し呟くと、エネマが答え、その後で全員を睨みつける。見たのではなく見せられた・・・なんて言える勇気のある者はおらず、殺伐とした雰囲気の中、微妙な空気が流れた


その中の老女が私も払わねばならぬのだろうかと悩んでいる頃、とうとう最後の一体が決定する。ボーゲンは皆の話には加わらず、ずっとクラウのではないかと動きを見ていた。何をしたのか分からないが、クラウが向かった先は生き残った一体・・・恐らく何らかしらの手助けをして自分の気に入った魔獣を残したのだろうと推測する


満面の笑みで残った魔獣にまたがり戻って来るクラウ。残ったのは狼のような風貌の魔獣・・・クラウが最初に目を付けていた魔獣であった


「やあやあ、お待たせ!これで魔物もいなくなったし、収容者も君らだけとなったね。さて!じゃあ、お待ちかねのチャンスタイム!生か死か・・・生き残るのは果たして誰!?・・・と、その前に・・・」


クラウが指をパチンと鳴らすとタイミングを見計らっていたように壁の上からスルスルと物資が降りてくる。テーブル、何かが入った箱が数個に、椅子などが目に入る


何が行われるのか警戒するボーゲン達だったが、クラウはその降りて来た物に近付くと手を振って全員を呼び寄せる


「おーい!早く来なよ!準備に時間がかかりそうだから用意させた食事だよ!腹が減っては戦ができぬ・・・ってね」


確かにここに収容された時点で小腹は空いており、普通なら食事をとってもおかしくない時間なのだろう。しかし、状況が食欲をどこかに吹き飛ばしていた。人の死、魔獣への恐怖、そして、何よりも匂い・・・とてもでは無いが食事をする環境ではないとしり込みしていとクラウはヤレヤレと手を上げて指を再びパチンと鳴らす


「えっ・・・嘘・・・」


エネマが思わず呟いた。クラウが指を鳴らすと同時に周囲から悪臭が消え、清々しい空気が辺りを包む。まるで森林の奥深くで深呼吸している気分だ


「さぁさぁ、これが最後の晩餐になるかも知れないよ?遠慮なく食べなよ」


いそいそとテーブルと椅子を準備して、テーブルクロスまでかけるクラウ。食事も並べ、場にそぐわない食事の用意が終わった


渋々と全員が席に着くが、飲み物に手を出すのが数名、その他は飲み物すら手を出さず無言で椅子に腰かけていた


「・・・情けない・・・アタイは頂くよ」


喉を潤したエネマがフォークを手に取り、並べられた食事の中の肉に突き刺し口に運ぶ。ウォントもそれを見て喉を鳴らすと近くにあったパンを手で掴み無理やり口に運んだ


ボーゲン他老年の者達は食事を見るのも嫌という雰囲気で目を閉じじっと時が過ぎるのを待つ。これから何が起こるのか・・・精神はこれまでの事で擦り切れ、限界を超えていた


「あれ?食べないの?まあいいけど・・・ねえ、少し話を聞きたいんだけど・・・特に君・・・えっとバーボン?」


「・・・ボーゲンです・・・話とは?」


「ああ、そうそう・・・ボーゲンね。今まで何してたの?家族は?生き残ったら何したい?」


ボーゲンは聞かれるがまま素直に答えた。元兵士であったこと、タルニア村に息子夫婦と孫がいる事、生き残れたら村で静かに余生を過ごしたいという事・・・


「ふーん・・・タルニアだっけ?その村がここから近くて助かったよ。遠かったらここでキャンプする羽目になるとこだった」


「えっ?」


クラウの言葉の意味が理解出来ずに聞き返すがクラウは目を細めて笑うだけで答えてはくれない。その笑みに底知れぬ恐怖を感じ固まっていると横からエネマが口を挟む


「ぶっちゃけた話、ここから何人生き残れるんだい?」


「ん?ボクの気分次第かな・・・あっ、ちなみにあの爆笑全裸ダンスは効かないよ!一回見たからね」


「くっ・・・二度とするか!・・・今度は一体何をさせるつもりだい?」


「爆笑全裸ダンス以外」


「・・・」


まともに答える気がないのが分かったのか、エネマは舌打ちをして再び食事に戻る。ウォントも食べながらクラウを細かく観察し、ボーゲンはクラウの言葉の意味を考える


2時間くらい経っただろうか・・・ほとんど食事は残り、エネマはテーブルに足を乗せてくつろぎ、ウォントはテーブルに突っ伏し体力を回復させていた。ボーゲンは何度も最悪の事態を考えては打ち消し、眉間に深くシワを作り出す


「・・・来た♪」


椅子から立ち上がり、口の両端をこれでもかと上げると壁の上へと飛んで行く。ボーゲンは高鳴る心臓を抑え、どうか思い違いであってくれと神に祈った・・・その祈りは無情にも打ち砕かれる


壁の上からタラップが降り、そのタラップを使って降りてくるのはボーゲンの息子夫婦・・・そして・・・


「爺ちゃん!」


孫のビートが壁の上でクラウに抱っこされボーゲンを見つけて叫んでいた


想像した最悪の事態・・・この最悪の状況に息子夫婦と孫を巻き込んでしまった事の後悔の念がボーゲンを押し潰す。孫の顔など見れるはずもなく、俯き、激しく動く心臓を握り潰さんと手に力を込める


「おやおや?感動の再会と言うのにどうしたのかな?」


クラウはビートを抱っこしたまま下に飛び降り、タラップを降りた息子夫婦にビートを預けると3人を囲うように円を描く


「お、お願いします・・・どうか・・・どうか・・・」


「何をお願いしてるのか分からないけど・・・役者も揃った事だし始めよっか♪ジャーン!スペシャルクラウチャーンス!!」


椅子から滑るように落ち、地面に頭を擦り付けるボーゲンを横目に、クラウは陽気に鎌を持ち上げる


「これからルールを説明するね♪題して『おじいちゃまは殺人鬼』・・・ルールは簡単♪ボーゲンが他の収容者を殺せばボーゲンの勝ち・・・家族と共に村に帰れるよ!ボーゲンが殺されたら・・・家族はボクのペットの餌になりマース♪そして、生き残ったみんなは生きて帰れるよ♪つまり、ボーゲン家族VS収容者って構図だね♪ちなみに多勢に無勢の為に特別ルール!ギフトは使用不可、使ったらボクが殺すからね。あと・・・」


クラウが指を鳴らす。すると壁の上からひと振りの剣が投げ入れられ、ボーゲンの近くに突き刺さる


「ボーゲンのみ武器の使用が可能♪奪っちゃダメだからね!最後に場所はこの円の中限定・・・まあ、どっちにしろこの円からは逃げられないけど・・・さあ、立った立った!テーブルは邪魔だから退かすからね!」


思考を停止させていた全員、クラウが鎌を振り上げた瞬間に慌てて動き出す。全員がテーブルから離れたのを見計らい、クラウは鎌を振り下ろしテーブルを円の外へと吹き飛ばす。テーブルは見えない壁に阻まれる事無く円の外へと吹き飛び、円の中は収容者達が使っていた椅子だけが残った


その椅子をいそいそと円の外へと運ぶとようやく円の中は空っぽとなる・・・収容者達を除いて


「すまない・・・ボレス・・・エルカさん・・・ビート・・・」


ボーゲンは絞り出すように掠れた声を出す。囲まれた円の中で何が起こっているのか分からずに見えない壁を叩く息子のボレス、我が子を抱き締め恐怖に怯えるエルカ、せっかく会えた祖父の元へ行きたくて手を伸ばすビート・・・その光景が涙でぼやける


「んー?どうしたの?早く剣を取って孫にカッコイイ姿を見せなよ?それとも・・・諦める?」


「・・・悪魔・・・め・・・」


「ショック!うそぉ?酷くない?嘘つきボーゲンにこれだけ大きなチャンスを与えたボクが悪魔?うそでしょ!?」


「私に孫の前で人を殺させるのが!・・・私が死んだら家族を殺すというのが!・・・それのどこがチャンスと言うんだ!!」


「え?嘘つくからでしょ?」


「う・・・そ?」


「そう、う・そ。君はボクの大嫌いな嘘をついた。更に許せないのが麗しき皇帝陛下のお考えを冒涜した。皇帝陛下の考えた選定で嘘をつき、完璧な策に泥を塗った・・・要らないものを廃棄ではなく、国の礎となる役割を与えると言う崇高なお考えに・・・君は唾をかけたのだ・・・ああ、許せない許せない許せない・・・だけど皇帝陛下は寛大なお方・・・決して怒りはしないだろう・・・だが、皇帝陛下ならただ許すのではなく、罰を与える訳でもなく・・・試練を与える。そう、皇帝陛下は罪を憎んで人を憎まず・・・罪を犯した者には罰ではなく試練を与えるのだよ!そう・・・試練・・・さあ、戦い給え!君は戦い勝ち取るしかないのだ!自由を!平和を!家族を!!」


目は泳ぎ、どこを見ているのか分からない状態で叫ぶクラウ。両手を広げ絶頂したように身体をびくつかせる


「・・・お、お願いし・・・」


「戦え!さもなくば死ね!」


ボーゲンの懇願を遮り低い声で言い放つ。クラウの目は正気とは思えず、何を言っても無駄だと悟った


地面に刺さる剣の柄を握り、ゆっくりと立ち上がる・・・顔を上げたボーゲンに迷いはなかった


家族を守る為に殺し、家族の無事を見届けたら死のう・・・そう覚悟を決めた


剣に付いた土を振り払い、クラウを通り過ぎると周囲を見渡す。同郷の者たちは狼狽し、ウォントとエネマは後ろに下がりボーゲンの出方を伺う


「苦しまぬよう一振で断つ」


ボーゲンは全員に自分の覚悟を示す。殺人鬼となる事を選んだと


「冗談じゃないね・・・全力で抵抗するよ」


「爺さん・・・悪いが俺も死にたくねえ・・・」


エネマとウォントは構え、他の者達は未だ放心状態。ボーゲンは目を閉じると息を吐き、構えているエネマとウォントへと駆け出した


「へっ、正直だな!」


足でまといとなりうるにも関わらずボーゲンは村の者を見捨てなかった。それを踏まえると最初に狙うのは出会って日が浅いウォントかエネマになる。ウォントは身構え、ボーゲンを返り討ちにしようとしたがその前をエネマが立ち塞がった


「退きな!このジジイはアタイがやる!」


エネマは上着を脱ぐと両手で引っ張り、ボーゲンが振る剣を絡めとる


「ぐっ!」


「観念しな!アタイはこんなとこで死ぬ気は無い!」


服をもう一巻すると一気に引っ張り上げ、唯一の武器である剣を取り上げた。エネマが剣の柄を握るとシュルシュルと服は解け形勢は逆転した


「アンタにゃ罪はないがアタイの為に死にな!」


剣を奪われた勢いで尻もちをつくボーゲンに対してエネマは剣を振り上げると間髪を入れずに振り下ろす。これでボーゲンと家族の命は・・・そう誰もが思った瞬間、剣は無情にも弾かれた


「ぶっぶー!ボクは言ったよね?ボーゲンの武器を奪っちゃダメって・・・ルール違反者には手痛い罰則がありマース♪」


いつの間にかボーゲンとエネマの間に入っていたクラウは鎌でエネマの剣を弾き、そのまま柄の部分をエネマの鳩尾に当てるとヒョイっと持ち上げた。エネマが抵抗する間もなく放り投げられ、円の外へと飛び出した


「なんっ!・・・くっ!」


エネマは辛うじて回転して足から地面に降り立ったが、一瞬の事だったので今自分が何処にいるのか分からなくなる。服を全て脱ぎ去り、恥を忍んで踊ってまで入った円の中ではない事に気付いたのは魔獣の存在に気付いた時だった


「ヒィア!・・・ちょっと!!まっ・・・」


魔獣の一撫で頭部が吹き飛ぶ


魔獣は予めクラウに命令されていた。円の外に出たものを処分しろと


魔獣は忠実にその命令を守り、円の外へ出たエネマを処分する


頭部を吹き飛ばされた身体は血を吹き出し、しばらくすると地面に倒れ込んだ


「・・・かはっ・・・はっ・・・はっ・・・」


呼吸を忘れ、急激に肺が空気を欲してむせ返る。そして、ウォントの視線はエネマの頭部からボーゲンへと移りゆく


「・・・クソッタレ!!」


殺されると思い、寸でのところで助けられ放心状態のボーゲンにウォントが襲いかかり馬乗りになる。首を絞め、何度も何度も地面に頭を打ち付けた


「死ね!死ね!死んでくれ!!」


抵抗はない。少しばかりの呻き声が微かに聞こえる程度・・・このままならウォントは容易くボーゲンの命を奪えるだろう。それは同時にボーゲンの家族の命をも・・・それでもウォントは手を緩めない。首を絞める手に力を込め、体重をかけてボーゲンを絞め落とそうとしていた


「・・・爺さん・・・聞いてくれ・・・」


体重をかけた際に顔をボーゲンに近付け、クラウに聞こえないように囁く。傍から見れば力を振り絞り息の根を止めようとしているように見えるが、実際は締める力はほとんどかけていなかった


「俺も死にたくねえ・・・だが・・・爺さんも・・・その家族も殺したくねえ・・・提案だ──────」


ウォントが身体を一瞬起こすと、ボーゲンは身体を捻り馬乗り状態から逃れる。そして、エネマの手から弾かれ、地面に落ちていた剣を手に取るとウォントに対して両手で構えた


ボーゲンの背後にはクラウ。その位置取りを確認するとウォントは剣を持つボーゲンへと駆け寄り、剣を持つ手を掴んだ


「うおおおおぉ!!」


ウォントは力づくでボーゲンの両手を左右に振る。それはボーゲンの手を捻り、剣の刃をボーゲンに突き刺そうとしてるように見えた。クラウにとってはルール上限りなくグレーだが、剣を奪った訳では無いので止めずに様子を伺っていた


ボーゲンはさせじとウォントが捻る方向に身体を動かし、何とか刃が身体にくい込むのを避ける


そうした攻防が続き、少しずつ・・・少しずつだがクラウに近付いていた


一瞬、ウォントはボーゲンに目配せをする。するとボーゲンは僅かに首を縦に動かし、力を一気に緩めた。ウォントに押されていた力を上手く身体を反転して逃がし、そのままの勢いで後ろにいたクラウに斬り掛かる。ウォントも部分強化を使いクラウの背後に回ると拳にありったけの魔力を込めて殴り掛かった


ウォントが提案しボーゲンが乗った、最後の賭け


油断しているであろうクラウに更にボーゲンはギフトを使い気配を消す。もちろん見られているのは百も承知。しかし、気配を消したのは自らの身体ではなく剣の方・・・ただでさえ背後から見ていたクラウには剣が見えづらかったはず。そこにボーゲンのギフトを被せれば剣の出処は掴めず、当たる可能性は飛躍的に上がると判断した


剣は的確にクラウの心臓を捉え、更に背後からウォントが渾身の一撃を放ち剣先は確実に心臓を貫く・・・はずだった


「ひどいなぁ・・・痛いじゃないか」


剣先は確実にクラウの心臓を捉えている。老いたとは言え死に物狂いの一撃・・・更に背後からウォントが殴る事で更に剣先はクラウの肉体を貫き絶命させる・・・作戦に抜かりはない・・・普通ならボーゲンの一撃で、それを乗り越えたとしてもウォントの一撃で大抵の者は絶命する・・・大抵の者は・・・


「あ・・・が・・・」


感触からボーゲンの剣は1ミリもクラウを傷付けてはいない。まるで硬い岩に剣を突き立てたような感触が両手を震えさせた


クラウはボーゲンの顔の前に手を突き出し、中指と親指をくっ付けて見せた。それは何度か見た指を鳴らす時の形・・・そして、その指が弾かれると・・・


「まっ!」


言葉が出ない。待ってくれと叫ぼうとした口はただ開け放たれ最初の一音を出すのみに終わる。ゆっくりと・・・ゆっくりと指は弾かれ、ボーゲンの耳にパチンと言う音が響き渡る


五感が全てクラウの指へと集中した。その他は一切遮断し、ただただ弾かれた指を凝視する


目は指を、耳は指が鳴らした音を、剣を持つ手は感覚を失い、鼻は匂いを感じない。そして、喉が潤いを求め、唾が喉を鳴らすと不快な音が耳を支配する


視線はようやく指から外れ、導かれるように横にズレていく


まずは魔獣が目に入り、その足元に黒い塊


脳はあらゆる可能性を否定した。自らを守る為に


「ああ、アレ?君の家族だったものだよ♪」


「~~~~~!!!!」


クラウの言葉で脳が動きを再開しボーゲンは・・・壊れた


膝から崩れ落ち、声なき声をあげるボーゲン


その様子を満足気に見下ろすとクラウは振り返り固まるウォントを見た


「ダメだって言ったじゃないかー、ギフトを使っちゃ・・・でも、今回は大目に見てあげよう♪さあ、チャンス到来!彼を殴り殺せばミッションコンプリート!晴れて君らは自由の身だ!」


「・・・え?・・・」


ウォントは見ていた。クラウが指を鳴らした瞬間、魔獣はボーゲンの家族へと駆け寄り一気に3人を飲み込んだ。そのまま食らうのかと思いきや咀嚼し、まるで不味いとでも言わんばかりに足元へ吐き出した。ウォントの耳には子供の泣き叫ぶ声が未だに離れない。そんな凄惨な光景を見た後で・・・そんな仕打ちを受け精神が崩壊したであろう老人を殴り殺せとクラウは言う。耳を疑うレベルではない・・・言葉の意味が全く理解出来なかった


「ほらほらー、しっかりしないと!君の手には彼らの命運もかかってる!さあ、勇気を出して殺しちゃいなよ!・・・大丈夫、彼はもう壊れてるから♪」


何が大丈夫なのか・・・考えても永久に理解出来ない事だけは理解出来た。停止していた思考がゆっくりと動き出すと違和感を感じる。足が意図せずボーゲンに向かっていたのだ。生存本能か恐怖なのかは分からない。ただ足はゆっくりとだが確実にボーゲンへと突き進む


ボーゲンまで後数歩のところで不意に肩を叩かれた。振り向くとこれまでボーゲンに付き従っていたタルニアの村人達・・・振り向いたウォントと目が合うと微笑み、首を横に振る


肩に置かれた手から温もりを感じ、微笑みから正気へと戻される。ウォントは一度目を閉じてから開くと、瞳は完全に元のウォントへと戻っていた


「へっ・・・本当にどうしようもねえ・・・」


自分が何をしようとしていたのか理解すると頭を掻き照れたように笑った。次の瞬間、ボーゲンに駆け寄ると落ちていた剣を拾い上げ叫んだ


「クソ変態野郎がぁ!!!!」






「爺さん・・・俺・・・最後にギフトの正しい使い方・・・出来たかな?・・・なあ・・・爺さん・・・」


虚空を見つめるボーゲンにウォントは笑顔で話しかける。そして、ボーゲンの肩へと手を乗せようと動いた瞬間に身体は耐え切れず左右へと分かれて倒れた


タルニアの村人達はその様子を見て泣き崩れ、最後にパチンという音を聞きその生涯を終えた


「んー、消化不良だけどこんなもんか・・・ペット2匹目ゲット♪さて!」


魔獣が処理を終えるのを見届け、クラウは飛び上がり壁を越えた。それに魔獣も従い飛び上がり、上に居た兵士達が腰を抜かす


「大丈夫大丈夫♪ボクのペットだよ!見てなかった?」


目の前で腰を抜かす兵士に声をかけると、兵士は必死に首を振る。それがどっちの意味なのかいまいち理解出来なかったクラウは思いついたように魔獣を呼び寄せた


「ほら♪これで怖くないでしょ?」


魔獣は近寄り頭を下げるとクラウはその額に手を当てた。すると魔獣は一気に身体を縮め、小さい子犬ぐらいの大きさへと変化する


「ね?」


クラウが魔獣を抱き上げ笑顔で言うと兵士は何度も首を縦に振る。その様子を見て満足したのかクラウはそのまま帝都まで陽気にステップを開始する


「ク、クラウ様!あの魔族は・・・」


兵士の中で隊長クラスと思わしき人物が立ち去ろうとするクラウを呼び止め、隙間近くに佇むジンドを指さした。魔獣はいなくなったが、ジンドは相も変わらずその場に立ち尽くしていた


「んー・・・あれはボクでもヤケドじゃ済まないかな?ほっといて良いじゃない?」


「ほっとくって・・・」


「あっ!あと下のボーゲンは後でボクの部屋に連れて来て!」


「下の・・・ですか?」


「うん♪このボーゲンはボクが今から綺麗にするから♪このままじゃあ、臭くて皇帝陛下にお見せできないよ!」


「えっ?・・・この魔物も・・・ボーゲン?」


「うん♪ボク名前を覚えるの下手でさぁ・・・何となくボーゲンだったら覚えられたからこの子もボーゲンにしようと思って♪」


「お、同じ名では・・・その・・・」


「え?同じペットじゃん!名前なんてどうでもいいよ!じゃ、よろくし頼むね♪」


クラウは上機嫌に再びステップを開始して帝都に向かう。惨状を遠巻きながら見ていた兵士の1人がその後ろ姿を見て思わず呟いた


「・・・悪魔・・・」


「ばっ!」


隣の兵士が慌てて呟いた兵士の口を手で塞ぐ。風に乗って万が一クラウに聞かれたらとばっちりで殺されかねない・・・口を押さえながら横目で去りゆくクラウを見ると変わらずステップを踏みながら歩く姿を見て安堵した


現場に居た兵士達には『クラウには絶対に逆らってはいけない』と言う共通認識が芽生えていた


思わず呟いてしまった兵士もようやく自分のしてしまった事に気付き青ざめる


兵士達はクラウが帝都に入るのを最後まで見送ると隊長の指示の元動き出した


クラウの言いつけを守る為に・・・惨状の後片付けをする為に──────

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