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最強の番犬と黒き魔女  作者: しう
『拒むもの』
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~出会い~

シント国王城地下


そこには人の世と魔の世を繋ぐ道がある


人の世と魔の世の隔たりは神が創り出したたった1枚の壁


人はその壁を神の扉『神扉(しんと)』と呼び、見護っていた


神扉を護りし一族であるケルベロス家の長男ケルベロス・クオンは今日も神扉の前で不測の事態に備える


もう何百年も起こっていない不測の事態・・・ただひとたび不測の事態が起きれば人類は滅亡するとさえ言われている為、毎日欠かさず24時間交替しながら神扉を見護っていた


ある日、クオンが見護っていると神扉の向こう側に1人の魔族が現れた


神扉近くまで来る魔族は珍しくなく、いつもの事だと相手にしてなかったが、魔族はそんなクオンをじっと見つめていた


次の日も、その次の日も


交替した父や母に聞くもそんな魔族は居ないという。たまにお務めをする妹も見ていない。クオンが居る時だけ現れる魔族。何する訳でもなくじっとこちらを見つめるだけの魔族・・・


いい加減に目障りに感じたクオンが神扉に近付き、体育座りをしている魔族に対して口を開いた


「なんか用か?」


話しかけられビクッと反応する魔族は恐る恐るといった感じで見下ろすクオンを見つめ返す


≪邪魔か?≫


「要件があるなら早く言え。こうも毎日居られると少々目障りだ」


≪・・・要件は・・・ない≫


「ならばさっさと去れ」


≪ま、待て!やっぱりある!≫


クオンが踵を返して元の位置に戻ろうとすると、慌てたように魔族が呼び止める


「・・・さっさと言え」


≪その・・・話をしたい≫


「話ならそっちの世界の者としろよ。わざわざ俺とする必要はないだろ?」


≪そっちの!・・・そっちの世界の話が聞きたいのだ≫


「人の世の?」


≪そうだ!人の世の・・・人の話を聞きたい≫


「・・・」


クオンは答えず、そのまま奥へと消え去った。残された魔族が顔を伏せ、指で地面を弄っていると急に冷たいものが頬に触れる


≪ヒャイ!≫


「ほれ、飲め」


奥に去ったと思ったクオンが戻って来ており、その手には2つのコップが握られていた。魔族の頬に触れたのはそのコップの1つであった


≪この結界・・・越えれるのだな≫


クオンからコップを受け取りながら神扉をマジマジと見る


透明の膜のようなものが一面に広がり、来るものを拒むように佇む神扉。触れなくても分かる・・・それが如何に強大な力か


「魔族や魔物以外は越えれる。そういうもんだ」


≪・・・行ってしまったと思ったぞ≫


「喉が乾いただけだ。それに・・・話をするのに飲み物は必要だろ?」


クオンの言葉を聞き、曇っていた表情が明るくなる。そして、それからクオンと・・・魔族であるクロフィード・マルネスの交流が始まった────


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