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婚約破棄から幸せへ  作者: 某某
本編
2/11

きっと偽り、でもそれが真の愛なら。

ブクマ21件だと・・・・?

ジャンル別日間79位だし、何が起きたんでしょうか(困惑)

とにかく、読んでいただきありがとうございます。

その後の投稿で評価だだ下がりしそうで怖いです。いかんせん心理描写も文章もめちゃくちゃな僕なので。

 その後、結婚の話はスムーズに進みました。式の日時は三か月後。てきぱき事が進みます。

 あまりに早すぎて、前々から計画されていたかのようでした。現在、私はイミラウス様のお屋敷でお世話になっています。至れり尽くせりで、自分が公爵夫人になるなど、まるで夢でも見ているかのよう。

 少し、怖くなりました。


「あの、やっぱり私・・・・」


「逃がしませんよ。もうあなたは、私のものだ」


 テーブルを挟み、向かい合う私たち。互いの目の前には、温かな紅茶が置かれていました。そんなカップを持ちながら、ニコリと、目が笑っていない笑みをイミラウス様は浮かべました。すごく、綺麗でした。

 やはり、何かしら私を利用しなければいけない事情があるのでしょう。でなければ、こんな子爵令嬢を娶って、今のような独占するような発言、するはずがありません。


「私、あなたが何を考えているかわからないんです」


「それは私も同じです。だから、表情から何か読み取れないかと、あなたを見つめてしまいます」


「っ・・・・!」


 この人はぷれいぼーいというやつなのでしょうか。このような恥ずかしいセリフ、よくもまあヌケヌケと言えたものです。社交辞令なのに、少し照れてしまいます。それと同時に、少し呆れも。

 それにしてもこの人、いつまで私を眺めているつもりなのでしょう。何か変なものでもついているのでしょうか。


「あの、私の顔、何かついてますでしょうか?」


「その髪はサラサラと見るものを引き付ける漆黒の色。美しい藍の瞳。愛らしさにあふれた唇、鼻。色だけでなく、形もいい優しげな目。どれをとっても、本当に素晴らしく・・・・」


「も、もう結構です!それ以上言わないでくださいっ!」


 こ、この人、口説き慣れてる・・・・!

 今までどれほどの女性を相手取ってきたのでしょう。ディードリッヒ様とはまた別の、武人の気迫のようなものを感じます。


「・・・・ほかの男のことを、考えていらっしゃる」


「えっ!?なぜわかったのです?」


「なんとなく、です。あなたを愛するが故の直感ですよ」


 目が笑っていないのに、あまりに爽やかな笑みでした。だって、しょうがないじゃないですか。ついこの間まで、婚約していた人に、急に別れをつげられて、


「・・・・うぅっ・・・・ひっぐ」


 不意に、何故か目から熱いものがこみ上げてきました。


「!?どうしました!?イルミアナ!」


「あ、あれっ・・・・すみません、つい・・・・嫌なことを思い出してしまって。平気ですから、どうか御気になさらず・・・・」


「―――――そんなこと、できるわけがないでしょう」


 言うが早いか、彼に抱きしめられました。


「私と結婚するのが、それほど嫌なのでしょうか?」


「ちがっ・・・・違います!」


 つい声を荒げてしまいました。驚かせてしまったでしょうか。


「ただ、彼を愛そうと、尽くそうとしたのに・・・・それを受け入れてもらえなかったのが、いまさらのように悔しくて、悲しくて・・・・ただ、それだけなんです。ディードリッヒ様には、もうほとんど未練はありません」


「悔しいというのに、未練はほとんどないという。言っていることがめちゃくちゃだ」


「・・・・すみません」


「責めているのではありません。むしろ、あの無駄にプライドの高い戦闘マニアが、あなたの魅力に気づかなくてよかったと、心底ほっとしているのです」


 それは、どういう・・・・?

 疑問を口にすることは許されず、そのまま苦しいくらいに強く抱きしめられました。


「私は、あなたを手放したりしません。あなたの努力を、否定したりしません。あなたのことが好きなのです。愛しています。だから、イルミアナ。あなたの心に、その思いが届くように、私も努力します。逃げようとしても、絶対逃がしませんよ。血反吐吐いてでも、あなたを捕まえます」


 その言葉は、おそらくは偽り。でも、その仕草は、やけに感情がこもっているように見えました。まったく、演技と口説きが、お得意な方です。

 その中に、ほんの少しでも、本音が入っているといいなと、私は思ってしまいました。すでに、彼に落とされかかっているのやもしれません。


「・・・・ありがとう、旦那様」


 自然、そんな言葉が漏れました。







「ああ・・・・本当にいいところ」


 つい、そんな言葉が口から出てきます。緑に溢れる庭、その中央には、噴水とそれを囲む大きな花壇。手入れが行き届いて、無駄がありません。見たこともない花が咲き乱れています。

 ああ、あの赤くてトゲトゲしている花は何でしょう。綺麗です。素晴らしいです。私、明らかにこの場において浮いてますよね・・・・。

 せっかく美しい庭なのに、私がいては雰囲気が壊れてしまいます。


「どうなさいました?奥様」


「お、奥様?」


「はい。イルミアナ様は、半年後に旦那様とご結婚なさるお方です。ですから、奥様です」


 ああ、恐れ多い。

 そんなことを言えば、何故かイミラウス様は不機嫌になるので、本人の前で口にすることができませんが。


「ご体調が優れませんか?屋敷に戻りますか?」


 配慮の籠った声です。ただの主従関係では、ここまで感情移入してくださらないでしょう。この使用人さんも優しい人です。この屋敷は、本当にいい人ばかりで。夢の世界のようで。ですから、私は、


「いえ。違うんです。私はただ・・・・」


「はい」


「・・・・このような場には、分不相応ではないかと」


 瞬間、彼の表情から感情が消失したように見えました。


「本気で仰っているのでしょうか?」


 この方は、怒っているのだとわかりました。でも、その理由の方はわかりませんでした。


「だって、私は子爵の娘です。公爵様とでは、釣り合いませんし・・・・」


 第一、イミラウス様は私を真に愛してはいないでしょう。やけに感情の籠った目で私に愛を囁いてくださいますが、それはきっと偽り。演技でしょう。私の実家に何か用があるのでしょう。そうに違いありません。政略結婚なのですから。


「旦那様は、奥様を愛してらっしゃいますよ」


 そういって、私に笑いかけてくださる使用人さんは、嘘を言っているようには見えませんでした。



















 イミラウス様は、本当に優しい人のようでした。それからの三か月間は、本当に夢のような日々でした。主人と通じ合っているかのように、使用人たちも、皆思いやりにあふれたいい人たちばかりです。

 そのようなわけで、私はこの場には釣り合わないのではないかと思ってしまいます。劣等感のようなものは、この三か月の間つねに胸中で蠢いていました。


「またそのようなことを仰っているのですか?奥様」


 そうなのです。式を挙げたら正式に、私は公爵夫人となるのです。きっと、令嬢たちは私に嫉妬と怨嗟と多大なる殺意の籠った目を向けてきます。

 それほどの方なのです。レイダス・イミラウス公爵様は。

だからこそ、彼が私に求婚した目的はいったい何なのだろうかと、考えても一向に出てこない頭で、必死に考えました。それでもわからず、何か知っていないかと、使用人の方々にも聞いて回りました。


「わたしは、奥様のような方が、旦那様に嫁いでくださって、よかったと思っています」


「本当に社交辞令の上手い方々です。もう、騙されません」


「本当ですとも。あの方は、奥手で今までに女性とお付き合いしたこともないような方なんです。それが、目を付けた一人目で奥様のような方と巡り合えるだなんて。旦那様は幸せ者です。あ、旦那様には秘密ですよ?」


 え?そんな馬鹿な。あれほど飄々と嘯いていた口説き文句も、今まで言ったことがないというのでしょうか?

 私が、初めて・・・・?


「お二人の関係は見ていて本当に微笑ましい。旦那様など特にです。隠れて必死に書を読み漁って、必死に女性の口説き方を学ぼうとしていました」


「え?そのようなことをなさるお方なのですか?」


 意外でした。もっと涼しい顔をして、女性を丸め込むタイプの人だとばかり。


「むしろ、足りないところは偏った知識を蓄えてカバーしようとする困ったお方です。見ていて面白いのなんの」


 本来、使用人が主人にこのようなことを言ったら、即刻解雇されるでしょう。けれども、あの公爵様は、自分からそういう口調を推奨しているようで。なんでも、お金と立場だけで左右されない人間関係を築きたいと考えてらっしゃるのだとか。

 斬新な発想でした。不思議と、嫌だとは思いませんでした。

 だからこそ、この屋敷にいる方は、強いきずなで結ばれた温かい人ばかりなのでしょう。


「一年ほど前から、恋愛小説に首ったけでしたが・・・・奥様を狙っていたようですね。無事、ご結婚までこぎつけたようで、使用人一同も、嬉しい限りですよ」


 一年前。それは、初めてイミラウス様と話した時期と一致します。つまりは、初対面から、私のことを・・・・?

 でも当時は、私にはまだ婚約者がいて・・・・。


「私は、イミラウス様に愛されているのでしょうか?」


 不意に湧いた疑問を口にします。すると、使用人にして、この屋敷でできた最初の友人、フレデリカさんは、一瞬呆けた顔をして、次の瞬間にはぶふっと吹き出しました。


「な、なんで笑うんですか!私は真剣に知りたいんです!」


「こ、これは失礼しました・・・・見当はずれな質問がきたもので、つい・・・・」


「・・・・あんまりです」


「ああ、拗ねないで。でも、なぜそのようなことを奥様はわたしに聞くのでしょう?」


「・・・・旦那様は、私にいつも愛している、好きですなどと仰います」


「はい。そのようですね」


「旦那様が、偽りを言っているのかどうか、わからなくなってしまったんです。旦那様が私のようなものを娶ったのはきっと、何か打算があるに違いないんです!私を、利用しようとしているに違いないんです。でも、真意は別にあるのではないかと、最近考えてしまうんです」


 私は、旦那様にすっかり落とされてしまいました。彼は、あまりに優しくて。彼が言う口説き文句は、きっと嘘偽りで塗り固められているのに、他に真意が、本当は、その言葉通り、私を愛してくれているのではないかと、期待してしまうのです。でも、期待して、尽くそうとして。また、報われずになかったことにされるのは、嫌なのです。

 わからないのです。旦那様が何を考えているのか・・・・わからないのです。


「奥様は、旦那様の愛を疑うというのでしょうか?」


「で、でも・・・・!愛なんて、端からっ・・・・!」


「気になるのなら。ご自分で確かめてはいかがでしょうか?」


「怖いんです。あなたのことなど、まったく愛していないと、そう言われるのが。最初は罪悪感でいっぱいだったこの胸は、気づけば別の温かな感情で埋め尽くされていました。きっと私は、彼のことを愛し始めているのです」


「その言葉はきっと、何より旦那様がお喜びになる言葉です。わたしが言っては台無しですから、どうか、旦那様に直接言って差し上げて。あの方の真意は、その際にお聞きすればいいのです」


 優しく諭されて、私はしばらく悩みました。悩んで、悩んで。悩みつくしました。その間も、彼女は隣で待ってくれます。

 そして、決心しました。彼に、私の愛を。例え、それが喜ばれないものだったとしても、伝えようと。


「旦那様の書斎へ向かいます。フレデリカさん、ありがとうございました」


「いえいえ。我々使用人一同、お二人の幸せを切に願っていますから」


 そうして浮かべられたフレデリカさんの笑みは、私に勇気をくださいました。


















 コンコン、コンコンと、書斎の扉を叩く。


「旦那様。お話があります」


少し間をおいて、


「どうぞ。そこではなんですし、中へお入りください」


「失礼します」


 相手には見えませんが、敬意を表し、一礼してから、扉に手をかけます。あるいは、この先の出来事を、少しでも先延ばしするための、緊張感から来る動作だったのかもしれません。


「ちょうど休憩していたところなのです。仕事の合間にあなたを見ることができるなんて、ああ、私はなんて幸せ者なんでしょう」


 大袈裟に言ってみせる夫に、最大級の笑顔を向けて、彼のいる机の前へ向かいます。


「お時間、よろしいでしょうか」


「はい。あなたのためなら、時間などいくらでも使います」


 ・・・・これも小説から学んだ知識を行使しての言葉なんでしょうか?途端に、微笑ましく思えてくるのが不思議でした。


「私は・・・・」


「はい」


「私は、あなたのことを愛しています。例え、あなたが真に私を愛していなくても」


「・・・・!」


 私が部屋に入ってから、一切崩れる気配のなかった微笑みが、一瞬で崩れ去りました。すぐさま表情を取り繕うとして、思うように顔の筋肉が動かせないでいる彼の様子に、思わず笑いが込み上げそうでした。

 でもそれは、嫌悪感から来るものかもしれないのです。気を引き締めなおさなくてはなりません。彼の返事を待ちました。

 言い放って数十秒。なんとか表情を直すことに成功したらしい旦那様は、言いました。


「なんだ、そんなことですか」


 表情は微笑んでいるのに、あまりに無機質で、感情を感じさせない声でした。そんな彼は、初めて見ました。


「そんな、こと・・・・?」


 掠れた声が、喉を伝ってきました。

安定の駄文で申し訳ない。


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