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【原因究明】

 晴夏とは13時半に昨日と同じ戸塚駅の下の改札で待ち合わせていた。久野が10分前に着くと、昨日と同じようにコインロッカーの前で晴夏が待っていた。


 久野は「光智さん!」と晴夏の肩を叩いた。晴夏は振り返ると「久野さん!今日も早いですね」と言った。久野は「一応これでも社会人なんで10分前行動を心がけてます」と敬礼しておちゃらけながら言った。久野が「晴夏さんこそ、今日も俺より早いじゃないですか」と言うと、晴夏は「私も一応社会人なんで、昨日から仕事さぼってますけど……」と苦笑いした。


 2人は昨日と同じように改札を抜けると右手のエスカレーターでホームへと上がると、ホーム左手には新宿湘南ラインが止まっていた。晴夏は「この電車で良いんですかね?」と聞くと、久野は「この電車は新宿方面に行ってしまうので駄目ですね」と言った。晴夏は「じゃぁ〜 昨日と同じ反対側の東海道線に並んでいれば良いですね」と言って反対側へと歩き出した。久野は慌てて「馬喰町だと、この次の横須賀線で1本なんで!」と晴夏を引き止めた。


 晴夏が「東京駅で総武快速線に乗り換えなくて良いんですか?」と言うと、久野は「横須賀線と総武快速線は直通なんで……」と言った。2人は次に来た横須賀線に乗り、Σソフトサービスのある馬喰町へと向かった。戸塚から登りの横須賀線に乗って50分ほどで馬喰町の駅に到着した。


 駅のホームから階段を上がると、更に上へと乗る長いエスカレーターで改札まで上がった。改札の前は地下通路になっていて、地上に出るには更に階段を上った。晴夏は「地下鉄でもないのに、かなり地下ですよね?」と言った。久野は「あの改札までのエスカレーターが無かったら地獄ですね」と言った。


 地上に出て、洋服の問屋街を5分ほど歩くとΣソフトサービスのあるビルに到着した。エスカレーターに乗り2階の受付の前まで行くと、晴夏が「慶福さんと15時のお約束で伺ったのですが…… 光智と申します」と受付の女性に言うと、「慶福より承っております、3番の応接室になりますので、ご案内します」と言って応接室に案内してくれた。


 2人は受け付けの女性に案内され応接室に通ると、高級そうな皮のソファーに座り5分ほど待っただろうか、ドアをコンコンと2回ノックされ、晴夏が緊張気味に「はい!」と言うとドアが開き、先ほどの受け付けの女性がコーヒーをテーブルに置きながら「慶福はただいま参りますので、もう少々お待ちください」と言うと、お盆を持って応接室を出て行った。


 久野も落ち着かない様子で、壁に飾ってある絵などをキョロキョロと見ていると再びドアをノックする音がした。晴夏が「はい!」と返事をするまでも無く、ドアを開けて男性が入って来た。2人が急いで立ち上がると、その男性は「慶福です」と名乗り黒い名刺入れから名刺を取り出すと、晴夏に手渡した。


 晴夏が頭を下げ「頂戴します」と受け取った名刺には、常務取締役 慶福豊英よしとみとみひでとあった。名刺に目をやると『やっぱりお偉いさんだ』と晴夏は思い、心なしか緊張した面持ちで「お忙しいところすみません」とお辞儀した。慶福は「私は付き添いで来ただけなんで」と言う久野に対しても丁寧に「慶福と申します」と言って名刺を渡し「どうぞ掛けてください」と言った。


 ソファーに座ると、慶福は「お父さんの容体は如何かな? 今日は私に何か聞きたい事があるとか……」と言った。晴夏が「連絡が遅れて申し訳ないのですが、意識を取り戻すには取り戻したんですが、行方不明で……」と言うと、それを聞いて動揺した様子で「いま何て……?」と言う慶福の顔からみるみるうちに血の気が引いていくのが解った。


 慶福はボソっと「何でもっと早く……」それから1度大きく深呼吸をすると「いま光智の所在は解らないんですね?」と聞き直した。


 晴夏が「2日前に病院から姿が消して行方が解らなくて……」それを確認すると慶福は急に立ち上がり「急用の電話があるので、暫らく待っていて頂けますか? 戻り次第詳しく話しを聞かせてください」そう言って慌てて応接室を出て行ってしまった。


 久野と晴夏は何がなんだか解らず、お互いの顔を見合わせた。応接室の外からは慶福の怒鳴るような声が時折り聞こえてくる。「何をしてたんだ……」とか、「犬との連絡は……」とか「手遅れの場合……」だの、声を聞く限り、かなりの怒りと焦りが感じられる。


 晴夏がひそひそと「父には会社に連絡するよう言われてたんですが、退院してからでも遅くないと思ったんで、そんなに不味かったですかね……」と言った。久野も釣られてひそひそと「普通そこまで大事とは思えないけど……」と答えた。


 そこでドアが開き顔を赤くした慶福が入って来て「お待たせして申し訳ない」と言った。


 ソファーに腰掛け、深呼吸をしてから「それでお話しと言うのは……」と冷静を装い慶福が言った。 晴夏が済まなそうに「父の事、連絡が遅くなって申し訳ありません、退院出来るようになってからでも遅くないと思ったもので……」と改めて謝った。


 すると慶福は顔がまたみるみる赤くなり「それでは遅すぎるんです!」と思わず怒鳴ってしまった。2人の身体はビクっとなった。


 慶福はハッとした表情を見せ冷静を装うとしたが、そこへ「やはり光智さんの自殺と失踪は何か関係があるんですね?」と久野が聞いた。この久野が言った自殺の一言が慶福の冷静さを失わせたのか、慶福は光智が娘に自殺の経緯を話したんだと思い込んだのだろう「やはり入院した時点で、ご家族には全て話しておけばこんな事には……」と言った。


 「知っているなら全て話してください!」と晴夏が懇願こんがんすると、慶福は「何から話せば良いものか……」と言った。


 それから一拍置いて「まず私達の祖先の話しから……私達の祖先は、今で言う超能力を持っていました」と言った。


 慶福の突拍子もない話しに晴夏は『超能力と父の自殺に何の関係が?』と思い「はぁ? 超能力?」と思わず口に出てしまった。


 久野が口の前で人差し指を立てながら「とりあえず最後まで聞きましょう」と言うと、慶福は久野に「ありがとう」と言ってから「とにかく祖先が超能力を持っていたと思ってください」と言った。


 そこから改めて「私達の祖先は、仲間以外の前で超能力を無闇に使う事を禁じていました。力の無い人間とは離れた場所で生活していましたが、次第に力の無い人間に紛れて生活する者も増えていきました」と慶福は語り始めた……


 慶福は「長い歴史の中で、掟を破り普通の人間の前で力を使った者は、時には魔女や悪魔、時には鬼、時には化物と呼ばれ酷い仕打ちを受けました。やがて人間を憎み、脳力者が全てを支配するべきだと考える者が出てきました」と言った。


 更に「しかし人間を憎む者達は、今まで何の行動も起こさなかった、と言うよりむしろ起こせなかったと言った方が正しいかもしれません。脳力者を率いる者の証として、代々伝わるトリニティと呼ばれるものがあります。トリニティは掟を守る者達によって、引き継がれてきました。そのトリニティにどのような力があるか私には解りませんが、トリニティが掟を守る者達の手にある限り、人間を憎む者達が行動を起すことは無いと聞いてます」と続けた。


 晴夏は『何の話し?』といった顔で話しを聞いている。久野は『誤魔化すにしても超能力は無いだろ……』と思っていた。


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