コンコン
次の日、老人は亡くなりました。
少年は日が明けた頃に家に戻ってきました。寒さには慣れていたのですが、この季節の雪は身体とともに心も冷やしていくような気がしたからです。わびしさに、少年は独りでは耐えられませんでした。
家に着くと、老人は倒れていました。両手に手編みの小さな帽子を握りしめて。
翌日、少年は村へとおりて助けを求めました。しかし、老人はもう助からないとのことでした。
少年は泣きませんでした。人の死というものは悲しいものではなかったからです。
ですか、なぜか胸が重く感じました。それはとても辛いです。
家に独り、ぼーっとしていると、机の上に白い大きな袋が置いてありました。中をみてみると、手作りの色々なものと、一枚の用紙が入っていました。木の枝でできた剣、虫取り網、茎でできた指輪、そしてどんぐりでできた首飾り。数多くの玩具がそこにはあふれていました。
用紙には子どもの名前と住所。その横に欲しいものの名前。一番下には少年の名前とニット帽。
それをみたとき、少年は不思議な気持ちになりました。こう思ったのです。
このプレゼントを子どもたちに届けてやろう。
なぜそう思ったのかはわかりませんでした。ただ、そうしたいと思っただけです。老人の弔いの意があったのかもしれません。しかし、そういった意味合いでの思いつきなのかどうかは分かりませんでした。
その日の夜、少年は老人が握りしめていた帽子を被り、大袋を引きづりながら村へとむかいました。
村に着くころには深夜になっていました。用紙で場所を確認し、家へと向かいます。レンガを這い登って煙突を目指し、プレゼントを用意します。
悪魔は煙突から家へと潜入したそうですが、少年は戻ってこれなくなるだろうと思って煙突にプレゼントを放り投げました。もちろん、暖炉の火がついていないことを確認してからです。こうすれは、朝に火をつけようとしたときに誰かが気づくはずです。
それから次々と目的の家にむかっては這い登り、プレゼントを煙突から家へ落としました。壊れそうなものはなるべくそっと落としたり、煙突に腕を突っ込んでゆっくり落としたりしました。上半身を煙突にいれたこともあったので、ススだらけになってしまいました。
すべてのプレゼントが運び終わると、なんだかとても満足した気持ちになりました。達成感というものでしょうか。
空を見上げると、それはそれは綺麗な星空でした。無数の星々がきらきらと煌めいて輝いています。少年はおもわず見とれていました。
肌に寒さを感じ、ハっと我に返った少年は、空になった大袋を持ち上げ、帽子を被り直し、独り家へと帰りました。