一日目〔会合〕後編
僕達は二つに分かれて行動することにした。
一つは僕と蘭と遥さんの三人が死体のあった食堂を、他の四人が建物全体を探ることになった。
まぁ、当然の人選だろう。
「君も物好きというか、勇気があるねぇ。俺が逆の立場だったらそんな役はやらないよ。」
遥さんは、わざとらしく笑った。
「あのメンツじゃ一番の危険人物は俺だし。いくら証拠隠滅の可能性があるとしてもさ。殺人鬼みたいなやつと死体なんてみたがらないんじゃない?」
遥さんはテーブルに手をかける。だがそれだけでこれといった行動はない。
「僕はあなたが気になった。あなたは楽しそうにしているが、それでも僕達の中で一番冷静だ。」
いって僕は死体を見回してみた。無論動くはずもない。
「君のほうが冷静だよ。そして、“一番人を信じていない”。俺の予想が正しければ、君だけが掴んでいる情報がある。そもそも、俺達に規則性が本当に無いと思うかい。」
そういって、遥さんは死体の懐やポケットを探り始める。
「まず君達の名前は、鈴波蘭と箭内健。そしてジャージの人が白浜結、臆病なサラリーマンが諏訪学。制服きた青年が日向望。白衣の先生が新田桜で俺は月島遥。そして、」
遥さんは死体のポケットにあった免許証らしきものを取り出した。それを一度確認したあと、こちらに向かって放り投げた。僕はそれを取り、蘭と一緒に見る。
「この男は鬼木翼。馬鹿らしいっちゃあ馬鹿らしいけど、偶然にしちゃあ妙な規則性だろ。それを君が否定したってことは、君がこれを偶然じゃないと知っているからだ。」
遥さんは指を立てた。
「別に、ここで無理して喋れなんて無粋なことはしないさ。逆に警告しておくよ。君は人を信じすぎている。隣にいる子の話を疑わないのもそうだし、記憶喪失なんてデメリットをこんな状況でばらすなんて迂闊すぎじゃないか?先ほどの言葉とは矛盾して聞こえるだろうから付け足しておくけど、君は“他人の狡猾さや賢さを一切信じず、逆に自分を悟ったり疑ったりできないと信じている”。」
そういって、遥さんは死体の周辺を探し始めた。死体の検死は終わったのだろう。
「あなたは私が箭内君を騙していると思ってるんですか・・・。」
沈黙を貫いていた蘭が口を開いた。
「あくまで、可能性だ。それに、君が嘘をついていないであろう証拠を彼は握っている。じゃなきゃ彼は君を信じていないんじゃないかな。」
僕達はその後、わかった情報をまとめた。
まず現場でわかったことは、
{なにかしらの刃物で鬼木さんは首と手首を切りつけられた。どちらも遥さんが言うには、違った刃物らしい。特に首は刃物ではなくワイヤーかもしれないらしい。もがいた際に自らの皮膚を傷付けた跡があった。その周辺には凶器らしきものは見当たらない。テーブルや椅子は動かした跡がない。それは事件前後においてである。}この程度だ。明日探せば、また何か見つかるかも知れない。
建物全体としては、
{この建物は一階に食堂、書斎、礼拝堂、二階に部屋が4っつ程ある本館。渡り廊下で繋がった建物が三つある。なかでも僕達が気絶した場所だけが改装されていない。各建物は3つ個室があり、食堂近くの廊下につながった僕達の部屋。書斎に近い、遥さん、学さんのいた部屋。礼拝堂に近い、結さん、新田さん、望さんのいた部屋に分かれている。また、食堂で豊富な非常食をみつけ、水道や電気もあることから生き残るには支障がなさそうだ。}この程度だ。
まだ探しきれていないことや、そもそも互いを把握しきれていない。
僕達は一度床に就くことにした。