嘲笑う神様
ここは、どこだ?
僕は、誰なんだ。
一歩、踏み出す。
それだけで、足下の床は軋み嫌な音を立てた。
視界は、酷くおかしい。
まるで、自分の意思とはいえ違って動いている。
二つの目は互いの写す物を定め無いため、焦点が合わない。視界の四隅は、何を写しているかわからなかった。
僕の足は、どこかへ向かっている。
僕には、わからない。
どこへ向かい、何をするのか。
ただ、この景色を僕は知っている。
ここは聖堂だ。
神のまつられた聖堂だ。
そして、僕が向かっている場所がわかった。
それは、聖堂内のキリスト像が置かれた場所。
の前。
そう、あの人がいる場所。
あの人は、そこにいる。
ちゃんと、ちゃんと、
そこにいる。
けれど、それはあの人じゃない。
あの人だったもの。
あの人は、
アノヒトハ、アノヒトハ、アノヒトハ、アノヒトハ、アノヒトハ、アノヒトハ、アノヒトハ、アノヒトハ、アノヒトハ、アノヒトハ、アノヒトハ、アノヒトハ、アノヒトハ、アノヒトハ、アノヒトハ、アノヒトハ、アノヒトハ、アノヒトハ、アノヒトハ、アノヒトハ、アノヒトハ、アノヒトハ、アノヒトハァァアアアアアアアアアアアアアアアァアアアアアア
死んでいるんだ。
神の前で。
信じていた神の前で。
僕達を守ってくれる神の前で。
僕達が生きてきた聖堂の神様の前で。
キリスト像は動かない。
動くはずがない。
その頬に、返り血で涙を流すこともない。
むしろ、いつものように佇んでいる。
不変の姿で。