[短編連作/連載中]『悪魔と孤児』――孤児となった少年と悪魔の、ゲームと出逢いの旅物語
もし、悪魔が現れてどんな願いでも叶えてくれると言ったら、あなたならなんと答えますか?
冗談じゃない? 一昨日来やがれ?
物の道理が分かっている人なら、きっとそう答えることでしょう。
でも、もしそれが、生きるか死ぬかの瀬戸際だったら?
これは、悪魔にゲームを挑んだ一人の賢い少年の、旅と出逢いの物語です。
親に捨てられ、荒野に置き去りにされてしまった少年。彼に救いの手を差し伸べたのは、事もあろうか悪魔でした。
悪魔は少年に、死後魂を渡すと契約するなら助けてあげよう、と持ちかけます。
しかし、少年は知っていました。悪魔と取引をするのは悪い事なのだと。
一方でこのままでは死んでしまうかも知れないよ、囁きかける悪魔の言葉も確かであり、そこで少年は一計を案じます。
それは、悪魔にゲームを挑むこと。
ゲームの勝敗がつくまでに、少年が死んでしまえば自動的に勝利は少年のものになります。そのため、悪魔は少年を生かし続けなければなりません。
こうして、孤児となった少年と悪魔の、ゲームと旅が始まったのです。
この話は、基本的には一話完結型の短編連作となっております。
少年は両親を捜しながら見知らぬ土地に足を運び、そこで様々な出逢いを得ます。
良い人に出会う事もあるし、悪い人に出会う事もあります。時には人でないものに出逢う事もあります。
旅の中で少年が見て、感じる様々な出逢いは、時に淡々としており、時に少し物悲しく、また予想外であったりとなかなかに興味深いものです。
こうした出逢いこそが、この物語の魅力のひとつである事は間違いないでしょう。
描かれる情景や、街並の描写。場面のひとつひとつも、派手さはなくむしろ落ち着いているのにも関わらず、不思議と印象深かったりいたします。
それはこの物語全体にも、言える事です。
またこまっしゃくれた少年と一筋縄では行かない悪魔とのやり取りも、どこか洒脱で愉快だったりします。
油断ならない癖にどこか人間臭く、かつ人間の事なんてちっとも分かっていないような悪魔とこまっしゃくれた少年の掛け合いは大変ユニークです。
ゲームをしながら旅をする二人が、その果てに何を見るのか。そしてゲームの結末がどうなるのか。
それも気になりますが、まずは二人の旅路をゆっくりと追っていきたいと思います。
静かで淡々とした、美しい短編連作。
なかなかのお勧めです。
『悪魔と孤児』/黒衛様
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