冬の朝
僕は、にゃー。あーちゃんがつけてくれた名前。
あーちゃんは僕の飼い主一家のお姉ちゃん。あーちゃんは僕が大好きで、僕もあーちゃんが大好き。
僕は二歳の男の子。二歳って食べれないんだね。あーちゃんは、自分のことを十五歳って言ってたよ。
外が真っ暗になる頃にはとっても寒くなるんだよ。だから僕はこたつっていうあったかい所に入るんだ。
あーちゃんの膝の上に丸くなることもあるよ。そうするとね、あーちゃんは僕をなでなでしてくれるんだ。
「にゃーがいると、暖かいね」
あーちゃんが嬉しそうで、僕も嬉しいんだよ。
あーちゃんやすーくん、あとママさんやパパさんが寝ちゃう頃には、こたつって所も寒くなるんだ。人間がいる時しか、あったかくないんだよ。何でだろうね?
だから、僕はあーちゃんのとこに行くんだ。人間はね、布団っていうので寝てるんだよ。間にはさまって、ぽかぽか、ぬくぬく。
僕はあーちゃんの隣で、布団てやつの間にはさまってぬくぬく寝るんだ。とってもあったかいよ。
僕はいっつも、あーちゃんより早く目が覚めるんだ。ママさんたちも起きてないんだよ。僕、一番最初に起きるんだ。
布団の上で身づくろいをするんだよ。あーちゃん起きるまで暇だしね。
それから、トイレってやつにも行くんだ。おしっことかする時にね、そこですると、あーちゃんたちは喜ぶんだよ。
それでも、まだあーちゃんは起きないんだ。ようやくママさんが起きてくるんだよ。
ママさんはキッチンって所でご飯を作るんだよ。すっごく美味しそうな匂いがするの。今日は魚さんのおいしそうな匂い。
隅っこでママさんを見てたら、キッチンから追い出されちゃった。前にこっそり魚さんを食べようとしたの、まだ怒ってるのかな?
だって僕、おなかがすいてたんだよ。今もおなかぺこぺこ。誰か、僕にもご飯をくれないかな。
そう思ってあーちゃんのところに行ってみたけれど、やっぱりあーちゃんは寝てるの。すーくんもパパさんも寝てるの。
いっつもそうなんだよ。僕はご飯を待ってるのに。ママさんは皆のご飯を作ってるし、他の皆は寝てるし。全然ご飯がもらえないんだ。
だから、あーちゃんの顔の横で抗議するの。
「にゃ~~あ。ふにゃー。んにゃにゃー」
あーちゃん、起きてよ。お腹すいたよ。ご飯食べたいよ。
僕の口から出るのは、意味をなさない音だけ。あーちゃんに僕の言いたいことを伝えられないんだ。こんな時だって。
「ん~~? にゃー? もうちょっと、寝かせてよ……」
あーちゃんが、首を横に振って呟く。
やだよ。起きてよ。僕、おなかがすいたんだ。
「にゃーー。ふにゃん」
しかたないから、前足であーちゃんの顔を踏んでみる。もちろん優しく。でもやっぱり起きないんだ。
もう、僕はお腹がすいたんだ!
あーちゃんの顔を、ぺろぺろと舐めてみる。最初はそっと。でもあーちゃんはくすぐったそうにするだけ。
だから、しっかり舐めてみた。ザリザリ音がして痛いんだって。前にあーちゃんが言ってた。
しばらく続けると、あーちゃんが僕の体を押しのけようとした。それでもめげずに続けたんだ。
それでやっと、あーちゃんは起きてくれた。
「にゃー!」
ご飯! お腹すいたよー。
「お腹すいたの? まだ眠いのにー。すぐ用意するから待っててね」
意味をなさない音だけの、僕の声。こんな時はあーちゃんにも通じるんだ。すごいよね。嬉しいよね。
ご飯を食べる場所まで、あーちゃんについていく。あーちゃんがご飯を入れる横から、一生懸命食べ始めると、あーちゃんは楽しそうに笑ってた。
「食い意地はっちゃって」
どういう意味なんだろうね?
おなかがいっぱいになると、幸せ。あーちゃんの布団にもどって、また寝るんだ。まだ寒いんだもん。
あったかくなってきたら、今日はお外にお散歩に行くんだよ。
それまで、おやすみなさい。
夢の中、あーちゃんが「にゃーってばお腹いっぱいになったからって、寝るなんてズルイ」って言ってたよ。