日向ぼっこ
「にゃふにゃふ? 寒くなったら肉がぷにぷに。毛がもふもふ。肉球はいつもぷにぷに。かわいー!」
そう言って、むしろ叫んで、日向ぼっこしてた僕を抱き上げたのは、あーちゃん。僕の飼い主一家のお姉ちゃん。
僕? 僕は、この家で飼われてるネコ。男の子。あーちゃんが言うには、僕は二歳なんだって。二歳って、何? 食べ物?
あーちゃんは僕が大好き。僕もあーちゃんが大好き。
でもね、日向ぼっこの邪魔はイヤ。
寒いのよ。だから風が吹かないけど、お日さまぽかぽかなここで寝てたのに。
「ふにゃ」
一応、抗議の声をあげてみる。でもあーちゃんは知らんぷり。
僕はあーちゃんの言ってることがわかるのに、あーちゃんは僕の言ってることがわかんないんだ。悲しいね。僕も、あーちゃんみたいに喋れたらいいのに。
だからこっそり練習してみたんだよ。あーちゃんとお喋りしたいんだもん。
でも頑張っても出てくる音は「にゃ」とか「ふにゃ」とか、そんなのばっかり。
しばらく大人しくしてたけど、あーちゃんてば僕を抱き締めたまま、いっぱい触るからくすぐったいんだ。
体を伸ばしてスルリとあーちゃんの腕から逃げると、また同じ場所で日向ぼっこ。
ぽかぽか気持ちいー。
目を閉じてぽかぽかしてたら、あーちゃんが動く気配。そっと片目を開けたら、あーちゃんの顔が目の前にあった。
前足を伸ばしたら、あーちゃんの手がのびてきた。
「ぷにぷに。にゃーの肉球は気持ちいーね」
にこにこ幸せそうにあーちゃんは言うんだよ。足の裏を触られるとね、本当はちょっとくすぐったいけど、あーちゃんが嬉しそうだから我慢。
「頭、あったかいね。お日さま当たってるもんね、ここ」
今度は、アゴの下に手が伸びてくる。優しくなでられて、グルグルと咽がなっちゃう。
幸せそうなあーちゃんの顔と、ぽかぽかお日さま。
僕も幸せ。