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龍神の詩3 - 袖ひちて  作者: 白楠 月玻
一章 雪花舞う
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一章二節 - 真冬の雪

 

* * *



 如月(きさらぎ:二月)。中州の冬が最も厳しくなる時期だ。

 昼夜無く雪が降り、通りの雪かきもやってもやってもきりがない。


 大通りの中央には、子どもたちが作った雪だるまや雪像が列を成していた。与羽(よう)がいればすごい雪像が見られるのに、天駆(あまがけ)に行っていて残念だ、と言うのは城下町に住むある人の言だ。


 それまでは数日に一度だった比呼(ひこ)の仕事も、毎朝に増えた。

 下に人がいないことを確認して、雪に(すき)をさし込み、体重をかけて屋根の上を滑らせる。積もりたての細かな雪がふわりと舞い上がり、通りへ落ちた。

 そしてすぐに、その隣へと鋤を立てる。


「うん、まぁだいぶ板についてきたわね」


 屋根の一番高いところに座った(ナギ)が、比呼の手際をそう評す。


「屋根から落ちることは無くなったし」


 以前は力加減が分からなかったり、雪や氷に足をとられたりして、屋根から落ちることもあった。体術に優れた比呼なので、怪我をすることは無かったが、そのたびに近くにいた人々の失笑の的になっていたのだ。


「……ありがとう」


 比呼は顔の下半分を覆っていた細長い毛織物をあごまで下げ、ほほえんだ。凍った空気が頬を刺したが、今はそれが気にならないくらい喜びで火照っている。


「お礼なんていいのに」


 比呼よりも幾分薄着な凪は、ほんのり桃色に染まった手を振った。


「寒くない?」


「寒いわよ」


 凪は当たり前のように答える。


「でも、中州の冬なんてこんなもんだから、慣れるわ。あたしを早く温まらせたいなら、仕事をしてちょうだい」


「……厳しいな」


 比呼は呟いて、新たな雪に(すき)を立てる。

 その背を、凪はほほをかじかませながらもにっこり笑って見た。長年中州城下町に住んできた人々と比べれば未熟だが、彼は結構筋が良い。道具の扱い方も体の動かし方もすぐ覚えた。

 雪おろしは全身を使う重労働だ。慣れていない人がやれば、少なくとも一週間は筋肉痛に苦しむことになるにもかかわらず、比呼は全くそうならない。ここは、かつて暗殺者として鍛えてきた体と、適応力のなせる業だろう。

 ただ、素なのか、暗殺者としての使命を解放され気が抜けたからか、今の彼はどこか間の抜けた状態だ。それが、屋根から落ちるなど、小さな失敗を生む原因になっている。


 ――この調子なら、すぐに中州にもなじめるわ。

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