表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍神の詩3 - 袖ひちて  作者: 白楠 月玻
三章 水滴る
12/17

三章四節 - 日と火の熱

 日があたる場所でも、やはり寒い。それを察してか、雷乱(らいらん)の連れてきた一人が、持って来た(たきぎ)に火をつけてくれた。


「お前か、俺から長髪美青年の称号を奪い取ったのは」


 彼はさらに自分の上着を比呼に着せ掛けながら、低く言う。


「え……?」


 比呼(ひこ)はその青年を見た。


 歳は二十代前半――比呼と同じくらい。腰をやや過ぎるくらいの滑らかな長髪を、低い位置でひとつに束ねている。顔は鼻筋が通り、あごは細め。やや黒目がちな目は穏やかで、しかしきりりとした眉が男性らしさをかもしている。

 比呼は中性的――むしろ女性っぽい美しさを持っているが、彼は完全な美男子だ。


「ついこの間まで、長髪・美青年と言えば俺を表す代名詞だったんだがな」


 不機嫌に比呼を睨み据える態度も、どこか野性味があって男性的だ。


「えと……」


 比呼は戸惑った。初対面の相手にいきなり文句を言われたのは初めてだ。謝るべきか、冗談だと思って笑うべきか――。

 比呼は彼の性格や気質はもちろん、名前さえ知らない。


 返答に困って黙っていると、青年はふと思い出したように自己紹介をはじめた。


「あぁ、俺は水月絡柳(すいげつ らくりゅう)。文官第五位。武官第十九位」


 戦の多い中州で、武官の位を持つ文官は少なくない。しかし、彼の歳を考えた場合、これらの位はかなり高いと言える。優秀な人物だ。

 もちろん、中州最大の文武一致を成し遂げているのは、文官一位、武官四位の古狐(ふるぎつね)卯龍(うりゅう)だが。


「こっちは漏日(もれひ)天雨(てんう)。月見川を挟んだ対岸の国――青原国漏日領主の遠縁だな」


「はじめまして。文官第三十七位。漏日天雨です。親しい人は『アメ』って呼びます」


 絡柳の紹介に、少年の世話をしていたアメは深く頭を下げた。歳は与羽(よう)辰海(たつみ)と同じくらいだろう。それでも、文官三十七位。辰海より上だ。

 北斗がそう呼んでいたように童顔で、よく日に焼けた肌もあり少年っぽい。背もあまり高くない。明るく優しい面差しで、親しみやすい雰囲気だ。


「えっと、比呼……です」


 一応自分も名乗っておく。まだ体が冷え、声も震えていた。火に当たっているところは熱いが、それ以外は氷のように冷たい。


「長髪、美青年、元暗殺者、薬師(くすし)の居候……、だな」


 なぜか絡柳がそう付け足す。


「水月大臣、それは少しひどいです」


 アメがたしなめようとするが、絡柳は涼しげな顔をしている。我関せずと言ったところか。


「前半はほめ言葉だが――?」


「たっぷりこめられた皮肉を感じます」


 アメの口調はどこか物慣れている。


「別に、そんなつもりはなかったが……。長髪美形の称号を奪われたくらいで、根に持つなどばかげているからな」


 そう言いつつ本当は相当根に持っているのを示唆しながら、絡柳は比呼に流し目した。


「……すみません。どうしてもいやなら、切りますけど――」


「比呼さんもそんなに気にしなくていいですよ。半分は冗談ですから」


 つまり、もう半分は本気ということか……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ