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俺の生きている意味

作者: shiy

あなたは、本当に人を好きになったことがありますか?私はおそらくありませんでした。恋愛なんてつまらないもの、ゲーム感覚だと思っていました。でも今回そんな私がウソ偽りなく経験した恋愛を見ていただけたらと思います。

今あなたはどこで何をしてるんだろう?あなたは俺にたくさん思い出をくれた。たくさん幸せをくれた。あなたは俺を支えてくれた。俺は何をできたんだろうか?あなたには幸せでいてほしい。それだけが俺の願いです。




出会いなんて本当に偶然。俺はとある学習塾の講師で、毎日生徒達の指導に当たる。その合間に知り合った女性達とは遊び、時には関係を持ち、飽きたら次に行く。そんな社会人生活を6年ほど今では過ごしている。ただ、運命の出会いとは本当に偶然だ。あの子、飛鳥が俺の塾にアルバイトとして採用されたのは5年目の春、ちょうど春休み前の3月半ば頃だった。採用の面接に立ち会い、話を聞いていると新大学一回生。地元名古屋から塾の近くの大学に入学する一人暮らしの予定だ。学歴はなかなか。意識も高そう。採用はあっさり決まった。もちろん、この時点ではただの新しいバイト。俺も流石にバイトに手はださない。そう思っていた。

「あなたは国語だから私の研修を毎回受ける。もちろん、授業見学もしてね」そう言っているのは、俺の塾の国語の先生、宮城先生。たしかに実績はかなりのものだがいわゆるお局様。俺はあんまり好きじゃないタイプだ。

「はい、頑張ります!」飛鳥はしっかりとした口調で返事をする。

こんなマジメなコはさらに無理だと思った。それからは営業や授業や講習やでなかなかハードな毎日。当時付き合ってた相手も面倒臭くなって別れた。




ある日、仕事が終わってから外食をしたくなった。珍しいことではないが、一人で外食をすることができない俺は何人かに声をかけたがやはりこんな時間。誰も捕まらない。そこで、俺はふと頭に飛鳥のことがよぎった。家も近いし、来るかもしれない。そう思って電話した。

「もしもし、山口です。遅くにすみません。今から食事に行きませんか?もちろん、遅くなり過ぎないようにしますし、ご馳走もします。」

「わかりました、今から用意してでます。楽しみです。ちょうどお腹空いてて、、」

意外にあっさり決まった。俺も用意を済ませて、自転車で移動し、待っていると飛鳥がやってきた。

「お待たせしました。」飛鳥は歩いて来たようで、いかにも大学生という格好だった。

「もしかして歩いて来た?」

「はい、歩いて来ました。家が近くなんで。」

「そっか。じゃあここからは2人乗りにしようか。近くにあるから行こう。」

颯爽と自転車をとばした。春休みも終わった4月頃だったので風が気持ちよかった。店についてはたわいのない話をしながら食事を食べた。マジメなコという印象はあったが喋るとなかなか面白い。正直なかなか楽しい食事だなと思った。

「ところで、彼氏は今いる?」なんでこんなことを聞いたかはわからない。

どんな答えがかえってくるか気になった。

飛鳥はフォークを手元に置き、やや困った顔をした。

「地元にいます。でも遠距離になるんです。全然会えないって難しいんです。相手は私のことを凄く好きなのがわかるんですが、これからどうなるかはわかりません。」

「そっか、でも好き合っていればうまくいくと思うし、縁がないならうまくはいかないかもな。俺も遠距離したことあったけど、、、」

そう言って話を続けて帰ることにした。

「自転車だし送ってくよ。」

「あ、いいんですか?ありがとうございます。じゃあお願いします。」

そう言って2人で自転車に乗り込んだ。飛鳥の家に着いてからはあっさり帰った。時間は夜中の2時だった。

俺は自分の家に着いてから携帯でメールを送った。

「今日はいきなりやったのにありがとう。明日学校頑張りや。ところで飛鳥先生の彼氏にするならの条件って何?」

これに対しての返事を待ちながら寝る用意をして、返事が来た。

「こちらこそありがとうございました。とっても楽しかったです。私の彼氏にしたい条件は、面白くて、私の知らない世界を教えてくれる年上の人です。お休みなさい。」

これを見て正直嬉しかった自分がいた。




何回か食事に行き、6月頃、飛鳥がゴールデンウイークに実家に帰って、京都に帰ってきてからのこと。2人で塾を出て近くのバーに一緒に行こうと言う話になってバーに行った。カクテルの話なんかをしながら、また僕は聞いた。

「実家に帰った時に彼氏に会った?」

飛鳥は間髪いれずに必死に答えた。

「会ってないです!」

少し焦ったような表情だったので話を変えて、カクテルを飲み干した。

「そろそろ帰ろうか」

「わかりました。ちょっと酔っ払ってしまいましたけど楽になりました。」

外に出ると雨が降っていた。幸い、自転車に傘をつんでいたので二人で一つの傘の中に入った。お酒のせいではない。俺はそんなに飲まなかった。でも自分の中でドキドキしているのがわかった。

ピカっと空が光ってカミナリの音がした。

「きゃっ、雷!」

そのまま飛鳥は俺の腕を掴んだまま離さなかった。

「怖いならこのままで大丈夫やから、ちゃんと掴んどき。」

そう言うと飛鳥はさらに俺の腕を掴んだ。




その夜以降、俺の頭から飛鳥のことが離れなかった。メールが返ってくるだけで嬉しかったし、その頃から宮城先生が、飛鳥にしてた研修に、国語も担当することになった俺も参加することになり、それからはことあるごとに一緒に帰っていた。ある日、俺は飛鳥に行った。

「あのさ、俺は飛鳥先生のこと好きなんです。飛鳥先生には彼氏がいるし、付き合ってとかは言わない。返事を何かしろとも言わない。でも好きなことは知っておいて下さい。」

飛鳥はあの時すごいびっくりしてる顔をしてた。

「は、はい。」

「じゃあ、また。」

そう言って俺は逃げるように帰った。

正直、「好き」なんて言葉を言うのに詰まったことなんかなかった。言い淀んだこともなかった。返事がいらないなんて言葉も言ったことなかった。言った後に関係が崩れるかもって不安になったこともなかった。

それからはまた普通にメールをしたり、一緒に帰ったりもした。ある日帰り道に雨が降ってきた。

「ちょっとパラパラ降って来たし、俺の家で休んでから帰ろうか?」

「わかりました。始めて行きますね。」

すんなり、飛鳥は家に来た。家では飛鳥が好きなディズニーランドについて無邪気に語っていたり、塾の話をしたり、学校の話をしたりした。

「雨、全然やまないですね。むしろ強くなってきてる。」

「ほんと、ごめん。明日の朝には送って行くし、もう寝てていいよ。俺はソファーで寝るから。」

「じゃあ、お言葉に甘えて寝ます。」それから飛鳥がすやすや眠るのには時間はかからなかった。普段なら飛鳥に手を出してもおかしくない。でも飛鳥の寝顔を見るだけで満たされた。

朝になってからは家まで送った。本当に飛鳥と一緒にいたい。心からそう思った俺は行動にうつした。携帯でメールした。

「来週の水曜日に四条に行きませんか?」

返事はすぐに来た。

「わかりました。楽しみにしています。」




デートプランをしっかり練って、待ち合わせの場所から四条に向かった。ところどころで舞い上がってる自分がいた。飛鳥が、靴を見たいと言ったので食事の前に百貨店に入った。

「先生は花火大会とか行く予定ありますか?」

唐突な質問だったが、自分でも思い返してみた。

「花火大会はなかなか都合つかなくて見れてませんね。」

「そうなんですか。京都とかはどこが有名なんですかね。あっ、ここ降りるんですよね?」

なぜか飛鳥はエレベーターを下る。

「いや、そっちじゃない!」

俺は飛鳥の腕を必死に引き戻した。それが始めて手を繋いだ日になった。後は大学生が行かないだろう先斗町の高級和食屋に行き、その後加茂川で夕涼みをした。二人の会話は尽きることはなかった。川沿いに吹く風が気持ちよかった。飛鳥の笑顔が本当に嬉しかった。家の前で俺は言った。

「今日は本当に楽しかった。ありがとう。前で言ったこと覚えてる?」

「はい、覚えてます。」

少し戸惑ったような返事が来たが俺は続けた。

「俺はやっぱり好き。本気で好き。彼氏がいるからダメなのもわかってる。フラれるならそれでもいいから返事がほしい。俺は本気で好き。」

飛鳥のマンションの一階にベンチがある。その後2人で座って話をした。飛鳥は俺に言ってくれた。

「私もあなたが好き。今日もすごい楽しかったし、一緒にいたい。でも今の彼氏がいるままは付き合えない。でも今の彼氏と別れてあなたと付き合いたい。だから待っててほしい。今月帰る予定があるからその時に話をするから。」

俺は夢にも見なかった返事に、少し戸惑った。少し返事が遅れたけど返事をした。

「わかった。待ってる。」




少ししてから飛鳥が体調を崩した。俺はそれからしばらく飛鳥の看病をしに家に行った。氷枕を作ったり、病院に連れて行ったり、お粥を作ったり。もちろん仕事にも行くが、飛鳥はあまり良くはならなかった。結局実家からお母さんが迎えに来て、飛鳥は地元に帰ることになった。ずっと心配だったけど、飛鳥が帰ってきてからまた看病に行った。

「本当に毎日ありがとう。」

「飛鳥がよくなってるようでよかった。もうちょっとしたら家でるから。」

ピンポーンと玄関のチャイムがなった。飛鳥は玄関のドアを開けてもどってきた。

「ごめん、ちょっと部屋にいてて。」「あ、うん、わかった。」

家の外で誰かといるようだがやはりわからない。だんだん出勤時間が近づき、ダメだと言われたけど外に出た。

すると飛鳥と何やら大学生くらいの男が2人で話をしていた。

飛鳥は俺に言った。

「ごめん!中にいて。」

俺は言われるままに家の中で待った。

すると間も無く飛鳥が家に入ってきた。

「元カレだったんだけど、私が体調悪いの聞きつけて家に来たみたい。でももう別れたから、あなたと付き合う。」

そう言って2人は彼氏彼女になった。6月27日のことだった。




2人が付き合うことになってからすぐに夏休みが来る。飛鳥と花火大会に行ったりもした。浴衣姿が本当に可愛いかった。夏休みは塾にとっては大変な時期で朝一から夜終電の時間くらいまで連日出勤する。でもこの年の夏休みに関しては俺は本当に頑張れた。この辺りから飛鳥の家にいることが増えてきた。

塾ではお盆休みというのがあり、俺たちは2人で始めてのお盆休みを迎えた。

「一緒に実家に帰らない?私の家に泊まればいいし。」

正直驚いた。今でもわからないが、俺たちは付き合って1か月くらいだし、そんな人を一緒に実家に連れて行くのは普通なのか。少し考えていたが俺は飛鳥に押されたのもあって2人で実家に行くことにした。

飛鳥のお母さんや飛鳥のお父さん、それに飛鳥の弟はすごいいい人達で一緒にいるのが全く苦にならなかった。

飛鳥のお母さんは凄く凄く飛鳥に似ている。話し方とかは本当にそっくり。

飛鳥の弟のタケシくんは、ゆくゆく航空自衛官になるのだがなかなか人懐こい男の子だった。お父さんはバリバリ仕事できる感じで、役員やらしてるらしい。関西弁がよほど珍しいらしくテレビの人みたいって言われたかな。

とまぁ、こんな具合に初対面をはたし、飛鳥が遊んでた辺りを案内してもらい、楽しかった帰省はすぐに終わった。夏休み終わりには初めて2人で泊りがけの旅行に行った。場所は飛鳥が好きなディズニーランドだ。楽しい時間は本当にあっという間だ。今までこんなに毎日が早く感じられただろうか?ちょっと飛鳥に怒られるようにもなったけど、本当に毎日楽しかった。

あなたの笑顔に俺は癒される。あなたと手を繋いで帰る帰り道は楽しかった。あなたは俺のすべてだった。




二人で初めて迎える誕生日。12月10日が俺の誕生日で、飛鳥は17日に誕生日を迎える。飛鳥は俺に嬉しそうに聞いて来た。

「あなたは誕生日に何がほしい?」

俺は本当に何もいらないと思ってた。でもすごく楽しそうに聞くので、

「なんか、券がほしいな。浮気しない券とか、、」

「ほんとにそんなんでいいの⁈」

飛鳥はその後も何回も同じことを聞いてきた。その度、俺ははぐらかす。

結局誕生日はヴィトンのキーケースと手紙。あとは本当に券をくれた。

「この白紙のは?」

「これは好きなこと書いてくれたら叶うってやつだから大事にしてね。」

こんなに嬉しい誕生日を迎えたのは初めてだった。本当に嬉しくて涙が出た。

俺は飛鳥のためにネックレスをあげた。

「ありがとう!一生つけるから!」

そう言った後に俺は後ろに回ってネックレスを首からつけた。

「毎朝つけてあげるからちゃんとして学校に行くんやで。」

「楽しみ!毎朝一緒に起きるってことね。」

それからは毎日飛鳥と一緒に起きて学校に送り出す。塾はこれからも飛鳥と一緒に頑張った。




それからは平凡な一年を迎える。でも二人の関係はここで変わっていくことになる。今までのことがまるで夢のように壊れていく。

飛鳥は怒りっぽくなった。俺はそれでも飛鳥が笑ってくれるように頑張った。でも飛鳥が笑うことは少なくなった。ちょうど誕生日から1年後、2012年の年末、飛鳥は成人式の準備、年明けの留学の打ち合わせなんかでよく実家に帰るようになった。事後報告のように男と遊んでたと言われ、その度にヤキモチをやくのを我慢した。でもその分疑いの気持ちが強くなっていった。ひょっとして浮気してるんじゃないか、その頃から飛鳥はますます俺に対するあたりが強くなっていた。今までのような雰囲気とは変わってしまった。俺も1人で寝ることを選んだりした日もあった。飛鳥はことあるごとに地元に帰る。かかってくる電話もどこかお互いそっけなく、俺もアリバイ証明なんだろうと疑うようになってきた。




そんな年のクリスマス。俺と飛鳥はもちろん2人で出かける。でもクリスマスっぽいことは何もしてあげられない日程。俺と飛鳥は新しくグランドオープンした百貨店に入り、ペアリングを買った。

「ありがとう!一生大事にする!」

そんな言葉を聞いて嬉しかった。そして次の日から塾の冬休み講習を迎える。俺は中学3年生の担当。日々生徒対応と日々の業務に明け暮れた。2人の会話は塾から帰宅後の時間。そんな中言われるのはやはり、留学の話。飛鳥はずっと楽しみにしていたし、俺も飛鳥のためになればと後押しをした。

成人式やらでやはり地元に帰ることが増える。その度に俺はぐっと我慢した。やっぱり飛鳥が楽しそうにしているのは嬉しかった。でもそんな中、飛鳥に言われた一言に衝撃を受けた。

「地元のコとアメリカ留学中に合流することになって、ホテルに泊まることにしたから。」

「メンバーは?」

聞いてみたら全員男だった。それから俺は飛鳥に対して疑って、疑ってばかりいた。もう、本当におかしくなって頭が割れそうだった。飛鳥はその頃から体調を崩しはじめたが、正直心配より疑いが強かった。留学前日にも俺は飛鳥に気の利いた言葉をかけなかった。




月日は流れ、飛鳥の留学が進んだ頃の2月下旬。俺はとうとう耐えきれず、飛鳥の母の潤さんに話をした。

「俺は正直浮気をされてると思っています。浮気するような奴とは付き合えないから別れようと思っています。」

「飛鳥は浮気してないとは思うけどな〜。信じてあげて。」

そんな話をしてる内に飛鳥に俺は電話した。でもつながらないのでメールした。もう考えるのをやめたかった。辛かった。

「俺は飛鳥は浮気していると思う。そんなに他の人がいいなら俺と別れればいい。邪魔なら別れればいい。」

「そうなんだ。」

その返信を見て、愕然とした。否定しない。それが更に辛かった。

更に俺はメールをした。

「飛鳥は俺と付き合いたい?」

「正直今はアメリカにいるしわからないけど、今は別れたいよりかな?」

俺はこの返信を見て、大切なものがなくなる気がした。

俺はこんなにも飛鳥が好きなんだ。やっと気づいた。浮気したとかそんなことを知りたいんじゃない。俺は飛鳥が好きなんだ。飛鳥に好かれたいだけなんだ。

それからは毎日飛鳥のことを考えた。しかし、その頃、潤さんにとんでもない話を聞いた。

「飛鳥、男の子に付き合わないかって言われたんだって。それで迷ってるんだって。本当にごめんね。」

俺はさらに悩んだ。どうすれば元に戻れるか考えた。頑張るしかない。好きになってもらうために頑張るしかない。それからは色んなことを頑張った。嫌いな読書もした。勉強もした。飛鳥に好まれそうなことは全部した。

頑張ることを飛鳥に報告した。

「俺は飛鳥に認められる素敵な彼氏になるから頑張る。好きな人のために頑張る。だから見てて。日本に帰ってきた時には生まれかわってるから。」




しばらくたった3月。飛鳥からメールが来た。

「やっぱり別れよう。もう頑張ってるの見てたら切なくなる。私はあなたほど好きの気持ちが届いてない。ごめんなさい。」

これを見て涙が止まらなかった。すぐに出勤という時間だった。でも涙が止まらなかった。職場にいても元気に話をしたりできなかった。周りもすごい気にしてくれたが俺は多分、誰にも話ができなかった。この頃からは本当にダメになった。ご飯が食べられなくなった。タバコを吸うだけ。そのせいか食べ物の味がなくなった。夜も寝れない日々が続いた。メールはたまに返ってきたりするので、それを深夜まで待ち、朝早くに悪夢で目が覚めた。飛鳥とデートしたり、話をしてた夢だった。もう俺は飛鳥以外のことを考えられなかった。




でも俺は思いたった。飛鳥とやり直したい。それからは飛鳥に好きだと言い続けた。メールの返信もないこともあった。でも何もしないという選択はなかった。今思えばおかしかったかもしれない。必死だった。




飛鳥は日本に帰ってきた。

「おかえり、もしよかったら夜電話してもいいかな?」

「うん、わかった。」

しばらく待ってた。その間に飛鳥ととりあえず楽しい話をしようと思った。

やがて電話がかかってきた。

「電話でだけど話してもいい?」

「あぁ、かまわない。」

「私ね、やり直す気はないから。告白してきた人と付き合うつもりだから。」

「なんでか理由を教えて。」

「てか、好きだけど恋愛感情じゃない。それに私のために頑張るとかそういうのムリ。私に幸せになってほしいとか言いながらやり直したいって自分の都合でしょ。私は決めたら説得されても自分を曲げないから。」

そう言われた。泣きそうだったけど、最後に笑って電話を切った。もう無理だ。そう思った。自分に生きている意味なんかない。飛鳥が全てだった。飛鳥とやり直したい。でもそんな気持ちは届かない。

とりあえず手紙を書いた。本当に最後の手紙だった。飛鳥に謝りたいことがいっぱいあったし、自分の気持ちをわかってほしかった。

「飛鳥、今までごめん。飛鳥に嫌われて当然だった。俺は本当に飛鳥が好きだ。一生好き。そっけなくされても冷たくされても同じ。一生好き。

飛鳥とやり直して飛鳥を幸せにしたい。

飛鳥を疑ってごめん。飛鳥に我慢させてごめん。飛鳥にウソをついてごめん。飛鳥を泣かせてごめん。

今まで俺に笑いかけてくれてありがとう。今まで好きって言ってくれてありがとう。今まで隣にいてくれてありがとう。これからごめんなさいが増えるかもしれないけど、ありがとうを増やしていきたい。だから俺とやり直して。俺とやり直してくれるなら4月4日の10時に駅に来て。」

その手紙と一緒に、飛鳥との始めての誕生日にもらったものを置いた。

「俺とやり直してくれる券」

飛鳥に貰った願い事が叶う券だった。




4月4日になったがやっぱり飛鳥は来なかった。ポケットにはクリスマスに買ったペアリングをいれておいた。飛鳥がクリスマス以来つけなかったペアリング。取ってみても気づかれないペアリング。俺は絶望した。飛鳥にメールをしてみたら返信が来た。

「ごめんなさい。ありがとう。」

帰ってから俺は本当に生きる意味がないと思った。本当に飛鳥の笑顔は俺の生きている意味だった。その生きている意味がなくなった。生きているのに意味がない。そう思って、俺は寝つきをよくするために買っておいた睡眠薬に手をつけた。いくつかはわからない。片手にいっぱいうまるくらいの量。それを手に取りぐっと飲み干した。頭がグラグラした。すごく気持ち悪かった。そしてそのまま俺は意識を失った。




朝になって目が覚めた。死ねなかった。でも酷い吐き気と眩暈がした。飛鳥のことも頭をよぎった。全身に力が入らない。でも俺は思った。これからどうするか。仕事に穴を開けるわけにもいかないので仕事に行った。

卒業した中学3年生が授業前に来て、今までありがとうと色紙をくれた。涙が出そうだった。俺はこんなにも必要とされてたんだと思った。

「俺には生きている意味があった。」




それからは飛鳥も塾に来る。俺は英語の引き継ぎを笑顔でした。結局付き合って彼氏がいるのか、どこで何をしているかはわからない。でも、俺は一生飛鳥のことが好きだ。飛鳥は悪くない。俺が全部悪い。だから今すぐやり直したりはできない。

俺はやっぱり頑張る。好きなコのために頑張るのは悪いことじゃないと思う。生きるために頑張るのは悪いことじゃないと思う。

今は通院しながら眩暈や吐き気を抑えている。

根本的な問題だからやり直せないって飛鳥は俺に言った。たしかに根本的な問題だ。俺は飛鳥が好き。飛鳥に好かれたい。それが俺の根本的なものだから。

飛鳥を好きでいる。飛鳥に好かれたい。

それが今の俺の「生きている意味」だから。

私は今も飛鳥のことが好きです。飛鳥にとって私は興味がなくなったつまらない男だと思います。すれ違い、別れるということは皆さんもあると思います。

今の私はそんな皆さんに言いたい。どうか逃げないで下さい。どうか正直に相手を思って下さい。男女問わずです。自分の気持ちを隠すのは気遣いではなく逃げです。

どうか後悔しないで下さい。全て出し切って気持ちを伝えて下さい。それができないならそれも逃げです。

好きな人、愛する人から逃げないで下さい。

私も逃げなければまた違った結末だったのかもしれません。

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