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夢の魔法  作者: 天窓
3/13

『時間停止』



「やめてください(社会的に俺たちが)死んでしまいます」


「はっは、何を言ってるんだ同志!僕たちに不可能はないのだぞ!」


だめだぁこの人、話がかみ合わないや。



時間停止(ストップ)



簡素だが強烈なネーミングだと思う。


彼は最初自分の能力を《永遠の黄昏に眠る騎士》という名前だと説明してくれた

清らかなる少年の心の持ち主だ。名を富士野ふじの 秀平しゅうへい

当人曰く「世界の隙間に潜り込む能力」

そして想像するに難くない「時間停止の能力者」である。


彼は文字通り時間を切り取り、止める。完璧に。自分ごと。


それを聞いた時に彼の能力の名前を「永遠のパンチラ」にしようと思ったが可哀想なのでやめた。

つまり彼は停めた時間の中では動けないのである。なんという……

せいぜいが一瞬のパンチラを永遠に留める能力なのだ。羨ましい。

ちなみに辰野と違って特に回数制限は無いらしい。

だが停められる時間も永遠とは程遠くバラつきがあるということだ。

さらに停めている時は体全部が動けないので眼すらも動かせない。

ピントも合ってなければ良く視えないなど色々と使えない。

脳、だけが動いていると考えれば良いのだろうか。

時が停まれば光も~とか考えるだけ無駄、良く分かんない。


そして彼は自分が超能力者だと公言しているので友達はいなかった。

小学校の頃の自分を褒めてやりたい、やはり異常は弾かれるのだ。

彼の能力の証明は運ゲの辰野君に比べて簡単だと思ったが

誰も相手にしないので公にもならなかった訳だ。


当人も超能力者と公言してはいるが何故かそれを強く証明する気もないので、

タダの痛い子として入学した最初の方に残念な方向で有名になり、

俺たちの耳にも入ったという経緯である。


さっそく辰野と話を聞きに行き、実際に時を停めて貰った。さっぱり分からなかった。

証明する方法をいくつか考えたが結局辰野の『嘘発見器(ポリグラフ)』が成功したので確認は終了した。

残念確立の運ゲのくせにこういう肝心なところで成功するので

やはり能力は使い様だなとこちらも確認し自分たちも超能力者であるとカミングアウト、

俺の能力も披露、そして


「だから富士野君、わざわざ違うクラスまで来なくても放課後に部室で会えばいいだろ」


「なんでだ同志達よ!仲間に朝の挨拶をするのは必須だろう!」


 懐かれた。



「それでだ同志よ、今日の『山岳部』の活動は何をするのだい?」


「同志もやめて下さい富士野君。活動内容は部室で話すよ」


やはりクラスで超能力超能力言うのはちょっと避けたい。

既に富士野君とつるんでる俺たちは異常としてクラスから距離を置かれ出している。

これ以上は俺の高校生活が本気でピンチなので説得する。


「富士野。とりあえず授業始まるから教室戻っとけって」


どうやら辰野も同じ考えらしく富士野君を誘導する。


「ふむ、分かった。では放課後部室で会おう!同志達よ!」


はっはっー!と高笑いをしながら教室を出ていく彼はとっても異常でどうみても頭がおかしかった。

もしかしたら俺の高校生活は既に終わっているのかもしれない。




「はい全員席に着いて下さーい。朝のHRはじめまーす」


富士野君と行き違いでようやっと我らが担任の(はる)先生が来て今週の授業が始まる。



俺たちの通う若葉高校は進学校である。偏差値は高く人数も多いし共学だ(これが最重要)

受験の時は辰野とよく徹夜で勉強会をした。

徹夜でやる必要もなかったけど何だか泊まり込みってテンションあがるやん?みたいな感じでよくやった。

晴れて二人揃って合格できた時はやはり嬉しかった。俺たちの青春はこれからだ!

ちなみに春ちゃん(愛称)は20代の美人先生という大勝利宣言である。

少しウェーブのかかったセミロング、おっとりした雰囲気だが決して頼りない訳ではなく、

大人の余裕が感じられる立ち振る舞いはまさに男子高校生理想の先生である。

この最高の青春の船出に、入学式の朝は辰野と2人にやけ顔が止まらなかった。

しかし好きな異性のタイプは!という男子高校生テンプレの質問にサラッと「年上の男性」と答えた春ちゃんに教室の男子全員が涙を呑んだ。俺たちの青春は大丈夫か?


春ちゃんの注意事項などを聞きながら俺はぼんやりと考える。

小、中では人数も少なく本気で探してもいなかった超能力者だが

同じ高校という狭い範囲で3人もいるのだ、

もしかしたら自分が思っている以上に超能力者というものは存在しているのかもしれない―――

そして考える、その超能力というのはもしかして基本的にしょぼいんじゃないかと。


…もしかしなくても癖のあるものだろう、信頼と実績から。

炎の玉を熾したりするような能力ならそれこそすぐに大きな騒ぎになる。

そうならないのは能力が発現しても誰も気づかないか、うわさ程度。

ごくたまに人の嘘が分かったり

パンチラを一人だけ長時間楽しんだり


むしろ当人ですら偶然と思うほどのモノなのではないか――と



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