穀雨
高校2年生の井野嶽幌は、学校へ行く準備をしていた。
その時、双子の姉である桜が着替えながら幌に言った。
「今日雨だって」
テレビのdボタンを押して、確認をしていた桜が、幌にその画面を見せる。
「本当?」
「ホント」
「じゃあ傘がいるな」
ワンタッチタイプの傘をすぐに用意してくる。
「ここ最近雨が降るね」
「そりゃ今日は穀雨だからな。「春雨降りて百穀を生化すればなり」っていうし」
「ハルサメって、あのおいしいやつ?」
「違う違う。文字通り春に降る雨のことだよ。雨が降って、さまざまな穀物が育つ時期だっていうことを言うんだ。二十四節季の一つでもあるよ」
「そうなんだ。でも、それよりも気になるのは、もうすぐゴールデンウィークってことかな」
「再来週だものな。結構近いな」
幌は何か考えているようだが、時計が8時20分を告げたのを聞いて、考えるのをやめて、学校へと向かった。