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不死王の息子  作者: 日向夏
中学生編 前半
49/141

小話 ツツジ

拍手で書いていた小話、以下略。



こちらのイラストをヒントに書かせていただきました。


http://urauradiary.sakura.ne.jp/diary/upfile/88-1.jpg


うらいまつさま、いつもありがとうございます。


「由紀ちゃん、何しているの?」


 下校中、山田少年が由紀子をのぞいてくる。


 由紀子の口には薄ピンクのラッパ型の花がくわえられていた。

 由紀子は花を口からはなす。


「つい、懐かしくって。小学生のころ、よくやったなって」


 山田も由紀子の真似をして、薄ピンク色の花をつまみ、口にくわえる。


「ちょっと甘い」

「でしょ」


 由紀子はかがみこんで、くわえていた花を木の根元に捨てる。


 小学校の頃の道草って妙に楽しかった気がする。

 それは、思い出補正というものだろうか。


 由紀子は、立ち上がる。


「じゃあ、帰ろ……、や、山田くん!」


 山田少年の足元には、大量の花が落ちていた。花が山のように重なっていくとともに、木には彩りがなくなり、ただの葉っぱだけの地味なものにかわっていた。


(はやっ!)


 なんというスピードだ。


 なんとなく、春先によくある『チューリップ引き抜き事件』を思い出した。

 このままほっておくと、街路樹の花がすべてなくなってしまう。


「山田くん。そろそろやめにしようね」

「えー」


 山田はしぶしぶ、立ち上がる。


 由紀子は、周りに誰もいないことを確認すると、山田のちぎった花を木の根元に隠した。

 ちょっと木が貧相になってしまったけれど、山田少年の腕をつかみそのまま帰る。


「まだ、物足りないよ」

「おうちに帰って、飴玉でも舐めてね。ってか、おなか一杯になるわけないでしょ」


 山田少年は名残惜しそうに、ツツジの花を見ていた。






『由紀子ちゃん。不死男来てない?』


 山田姉からそんな電話がかかってきた。

 家に帰ってから、日高家におつかいに行ったらしいのだが帰ってきていないらしい。


「うちにも来てませんけど」


 道草は山田少年には珍しいことでもないが、でてから二時間もたっているらしい。


(しょうがないなあ)


 由紀子は面倒そうに、サンダルを履くと玄関をでる。


(山田くんのいそうな場所は……)


 由紀子は、ふと思い浮かんだ場所があった。

 そこへと足をすすめる。


「やっぱり」


 由紀子は、オレンジ色の大量の花びらの中で、ぴくぴくと痙攣する山田少年を見つけた。


 由紀子はしゃがみこみ、落ちた花をつかむ。

 ラッパ状のそれは、放課後、蜜を吸っていたツツジと色違いに見える。同じ系統の花だが、種類はレンゲツツジという。


 由紀子の家では、果樹の受粉にミツバチを使っているが、春先のはちみつは採取しない。


 なぜなら、春先にレンゲツツジは花を咲かせ、その蜜には毒性があるからである。この近辺は、比較的高地にあるため、レンゲツツジが多いのだ。


 由紀子は、携帯を手にすると、山田姉に「見つけました」と報告した。

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