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十数行で終わる話
恭太郎ルート
「なんでこうなった?」
「さあ、なんででしょうね?」
由紀子はスーツケースを持っていた。隣には、恭太郎がいる。彼もトランクを持っている。飛行機ファーストクラスで十数時間、ハネムーンをパスタの国で過ごすなんてリッチなことには違いないのだが。
どうしてこうなったのか説明しづらい、ただ、山田姉と母の策略で三択となったわけだ。由紀子はそのまま逃げることもできたが、四択目に新之助を加えようとする一姫があらわれてこうなった。
「なんで俺を選んだ?」
「……消去法ですね」
一番、リスクの少ない人物を選んだつもりだった。ニート以外は一番まともだった。それだけだ。でも、考えてなかった。選んだリスクと同時に選ばなかったリスクも考えるべきだった。
『なんでこうなった?』
街中を歩いていると、会うはずのない人物に出くわし、逃走した。山田姉たちが、邪魔にならないようにしてくれると言っていたのに。
廃屋の中に二人、外にはまさにゾンビのような顔をした山田が由紀子の名前を呪詛のように唱えながらうろついていた。