入学
神社で、私は全力疾走していた。
鳥居を潜っても潜っても、終わりは見えない。
「産土神様とか冗談じゃない! やっぱり罠依頼だったなちくしょう!」
私は必死で逃げていた。ああもう、最悪!
どでかい異形に追われて、心臓が破けそうになるくらい必死で走り続けていると、鳥居の先に光が。それがなんだろうと、飛び込むしかない。
私は助走をつけて、飛び込んで……そして生まれた。
「だううー!(やっぱり死んだー!)」
嘆いても始まらない。こうなってしまったものは、新しい人生を歩まなくては。
来世があっただけ、万歳ではないか。
私、メイと弟のハガネは今年、国立の学校へ通う。別に双子ではない。
学校への入学年齢に幅があるだけだ。
この国の国立学校は二つあり、貴族の通う国立竜玉学院と、平民の通う国立鴉玉学院である。
それぞれ、竜の守る宝物、カラスの守る宝物、という意味らしい。
私が通うのはもちろん、国立鴉玉学院の方。
塾を開いていた母が先生としてお呼ばれして、交換条件として、私達も入学させてもらえる事になったのだ。学校の入学資金貯めるの大変だったから本当に助かる。
自己紹介などはないらしく、教室にバラバラと生徒が散る。
友達作るの難易度高いな……。前世では、クラスの人数が少なかったから、簡単に仲良くなれたというか、ならざるを得なかったのだけれど。
クラスを見渡してギョッとする。ポーカーフェイスはなんとか保ったけど……。
「メイ」
「うん」
めちゃくちゃ凄いのに憑かれている人がいるな……? 顔色が悪い。それに病的に太っている。呪霊に気づいているようだね。憑かれているとはいえ、それが認知できる人は少ない。
他の人はもちろん、その化け物に無反応だ。
この世界、魔物はいても幽霊・呪霊は認知されていないのだ。
そして何を隠そう、母と私とハガネは霊能者な転移者、呪術師な転生者、忍者な転生者である。
母はがっつり見える人で、世界を跨ぐ傍迷惑な世界転移系呪霊に私達はしてやられた。というかよくぞ死ななかったな母よ。
母の世界では、霊能の技術がかなり進んでいたものの、霊能力では物は動かせなかったらしい。術式だ、護符だ、占いだの進んではいたものの、見えない人には全く見えない触れもしないなのでマイナーだったとか。
私の世界では、呪霊は人を簡単に害せたし、呪術で人を害する事も可能だった。
身体能力なんかも底上げできた。
ハガネの世界では、主に人同士で争っていて、霊能とかはあったかわからないとのこと(でもまあ呪霊に襲われたんだから、あったんでしょうね)。でも結界だのなんだのの技術はあったらしい。
転移者だから、母の血に流れる霊力と術式はバッチリ受け継いでいる。
私の世界の技術やハガネの世界の技術は使えないかといえば、この世界には魔力があって、それで結構代用できる。
霊力と術式、魔力を混ぜる事も出来た。これは内緒にする事にしている。
護符なんかは、こっちの神様について調べて、こっちの神様に帰依する事で作れるようになった。
そんなこんなで、私達は互いに知識を教え合い、力を合わせて生きてきた。
しかし、私達は普通を知らない。それに、私達3人、学校は通うべきとの固定概念があった為、喜んで学校に通う事としたのだ。
父親? 魔力がなくて物理的に抵抗できない母に、正妻との間にまだ子ができてないのに、二人もできるまで手を出しやがったクズが何か? 正妻に子供が出来てどれだけホッとしたことか。手切れ金以外に財産を要求しない、跡取りにならないって証文? もちろん書きましたとも。
「君、私達と友達にならない? 私はリン!」
「俺はハガネ。武術の師範になりたいんだ!」
「わっ わぁっ」
ハガネが呪霊にパンチして、呪霊は消し飛んだ。
「な、友達になろ!」
ニコリと笑いかけるハガネ。
「名前。教えて?」
「あっ 僕はニコラって言います!」
そうして、私達はニコラと友達になった。
しかし、教室の人達には引かれてしまった。ううん。うまく誤魔化したつもりだったが……。