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4話 ブラッドストーンの行方 4

苦界迷宮がもっとも強壮だった時代、7層まで『深まって』いた。

完成したダンジョンは『願いを叶える器』になる。対価は通常『探索者達の撃破』と『ダンジョンの成長』。


ここのダンジョン主がどんな願いを叶えようとしたかは今となっては不明。現在6層以下は崩壊していて、5層も不安定化して探索用ゴーレムの類い以外は立ち入り禁止になってた。


つまり4層は苦界迷宮で立ち入り可能なもっとも深い領域!


4層は空気が重く、魔力が強かった。籠手の下でリボンで固定されてる修道女の守りを付けてててもプレッシャーを感じる。


そんな中、『索敵スキル』を持つテオの先導で慎重に進んで、仮面を付けた下位巨人の亜種『トロル・マスカレード』の小グループを隠れてやり過ごしたりしていた。


「廃れたダンジョンだからここまで潜ると、規模のある野営地に寄っても全然人がいないよね」


「許可制で探索者同士で『被り』を避けてるからだろう。難度が下がってるワリにはここでの『事故』がそこそこ多いらしい理由だろうな」


「多少稼げてもこんな辛気臭いとこに長々潜るのはごめんね」


バルタン族は『空が見えない環境』は基本、嫌い。


「・・もう、ヒロシなんとかさんの隊の活動エリアだよ?」


テオは警戒を解かず、購入してたダンジョンマップをこっちに軽く投げ渡してきた。現地での方針決めろ、てことね。


「う~ん。位置的に『イタンゴ(たけ)』の採取ポイントが近いよ?」


「『11日目の探索』でいるかな? 途中、モンスターが多いらしい所がいくつかある。ここの『安全地帯(セーフゾーン)』からソラユキにざっと見てもらった方が早い気がする」


「『コンドルアイ』の魔法は疲れるわ」


コンドルアイは千里眼魔法。暗いと暗視効果も足さなきゃだから、めちゃ消耗するヤツ!


「ふっふっふっ、ソラユキが嫌がるだろうのはわかってた。しかし・・これだ!」


ガンモンは収納ポーチから目玉のような装飾の宝珠を取り出した。


「『物見(ものみ)の玉-1』だ。これは別のクエストの残り物でさ。 今回ハマるだろうとは思ってたぜ。使い捨てだが1回でイケるだろ?」


物見の玉は負荷の大きいコンドルアイなんかの視覚系魔法の補助魔法道具。使い捨てでもそこそこの値段!


「しょうがないわねぇ」


ソラユキがその気になったので、私達は、野営設備の無い簡単な魔除けの施された避難所、セーフゾーンに移動した。

横穴の高台になった所に魔除けの魔方陣が描かれてるだけ。ここで、


「コンドルアイ!」


物見の玉を使って、負荷を軽減し、ソラユキは千里眼魔法を発動した! ソラユキの『視点』が通路を伝って4層の迷宮を素早く巡りだす!!


「ん~~~~~っっっ、あ! えっ?! あらー・・・」


なになに??


「ちょっとソラユキ! なに見えたの?」


「それらしいのを見付けたけど、厄介なことになってたわ」


コンドルアイ解除と同時に物見の玉-1が砕けながら、ソラユキが珍しく神妙な顔をして言った。



──────



小柄なワープラント族の僧侶『ポポヒコ・グランガーデン』は苦界迷宮地下4層を全力疾走していた。


「はぁはぁっ、『ヒール』!『ブレッシング』!」


疲労は回復魔法で、回避は祝福魔法の効果と持続時間を圧縮して成立させ、泣きながら逃げるポポヒコ。


「ポ、ポっ! ポポヒコぉーーっっ!!『血』をよこせぇーーっっっ!!!」


ポポヒコの背後から逆巻く『血の渦を纏う魔人』と化したヒロシが追ってきてきた。手には魔剣に変質したクレイモア+1が握られ、それは腕と一体化している。


魔力、気力、体力が尽きたポポヒコはついに転倒した。


「ぷはっっ、も、もうダメですぅ・・」


ヒロシは駆けながら血の渦を数十の血の獣に変え、ポポヒコに襲い掛からせた。


その時、


「放て!」


「ほいっ」


テオが広げたファイアボールのロールから火球が射出され、血の獣達を焼き払い、ミリミリが投げ付けた汎用クレイモア+1を魔剣で弾かせ、ヒロシの突進を止めた。


「ぬっ?!」


怯む魔人と化したヒロシに、


「液体よね?『サンダーショット』!!」


シルフワンドから電撃魔法を放つソラユキ。残りの血の渦を介して、魔人ヒロシとその魔剣が感電した。


「がぁっっ!!!」


その隙にガンモンとミリミリが突進し、テオが『鎖鎌+1』の鎖分銅でポポヒコを巻き取り後衛に回収し、ソラユキが蓋を開け、


「ぼふぅっ?!」


ポーションをその口に突っ込んだ。



──────



いや詳細はわかんなけどっ! どうもブラッドストーン+2が『ヤバい感じで』暴走してるっ。ソラユキは通路のかなり先で干からびたワープラント以外の仲間の斬殺遺体も『視認』していた。


どうも『吸血鬼的な魔人』になってしまってるっぽい。


ブラッドストーンで吸血鬼化って聞いたこと無いんだけどっ?!


「ミリミリ!」


「はいよっ、1、2のっっ」


先行するガンモンが居合い・イズナ巻きで、だいぶ減退したけど立て直してきた血の渦の攻撃を弾き飛ばし、その脇を私が力を溜めながら抜けてく!


「血ぃいいっっ!!!!」


正気じゃないヒロシ・カメオの魔剣の一撃! 速っっ。牽制から突っ込んだのに普通に後の先取られたしっ、


「んぎっっっ」


私はラージシールドに角度を付けて、それでもバキバキに砕かれながらもなんとか頭オカシイ攻撃力の振り下ろしを捌いた! からのっっ、


「3っっ!!!」


フルパワーのへビィスタンプを魔剣の鍔飾りのブラッドストーン+2に打ち込んだ!


ガキィイイインンッッッ!!!!


凄い魔力の反発っっ!!! ウォーハンマーにヒビが入るっ、だけどっっ、


「んにゃろぉおおっっ!!!!」


怪力アビリティーも全開っ!! 踏み締めた通路を割りながら、ブラッドストーンを打ち砕いてやった!!


「ほぁおおおぉぉ・・伯爵様ぁ・・・」


魔力を失い、劣化した剣も砕け、痩せ劣ろえて髪も真っ白になったヒロシは魔人化が解けて昏倒した。


残った血の渦も地に落ちて腐って悪臭を放ちだした。


「いや誰よ? 伯爵って??」


「まぁどうにか片付いた。かなり『斜め下』なことになったが・・」


ガンモンは打ち刀を納刀して、無事だけど号泣してるヒロシの仲間のワープラントの僧侶を振り返っていた。



・・・意識の戻らないヒロシはモータン市の聖教会に収監され、無実を訴えるバズ・レンザは領衛兵に逮捕された。ヤンター郷の武器屋、道具屋、ポポヒコ(僧侶の人)は捕まったけど取り調べ後、放免。


殺されたドワーフとフェザーフットハーフの人は遺体の損耗と呪いを受けていて『やがて不完全な下位吸血鬼として復活する』と鑑定され、浄化処置をされ火葬で葬られた。


ヒロシは探索中、段々正気を失い、ついに魔人化して仲間を襲いだしたらしい。酷い話だよ。ヒロシは剣、買っただけなのにさ。


私達は報酬は接収されたバズ・レンザの資産から多めにもらったけど、これもかなり気まずい・・


そうしてなんだかんだと、魔人化ヒロシ撃破から6日後、詳細を報せるからモータン市から離れないよう冒険者ギルドから申し渡されていた私達は、ついにモータン市冒険者ギルド本部に呼び出された。


それも『ギルドマスターの執務室』に!


「え? 私、先頭? ちょ? もうっ、失礼します!」


中に入ると、モータン市本部のギルドマスター、ワータイガー族のA級格闘士『吠える牙』の通り名の『コゴロー・アイアンリング』と、その『セクシー秘書(名前知らない)』、それからポポヒコがいた。


「よく来た。『ミリミリ・シルバーポットとその仲間達』よ!」


ギルドマスターに『パーティーリーダー認定』されたぁ?! 先頭で入ってきただけだよっ。ハメられた!


「はぁ、どうも・・」


「それなりの騒動になったから噂話は聞いているだろうが、実は同様の事件が我々が活動しているリーラ領を中心に続発している! ブローカーがいるようだ」


そうみたいなんだよね。日報誌とかでもすんごいあることないこと書かれてんの。


私達なんて『通った後にはペンペン草も生えない無慈悲な若手秘密バンパイアハンター部隊』とか書かれたしっ。


「全員が普段からパーティーを組んでいるワケではないようだが、どうだろう? 当面この件の専属になってくれないか? 各ギルド本部から何組か出すことになったんだ。勿論B級以上の冒険者達も動いている。単独で無理させるつもりはない」


「う~ん」


振り返ってみると、ガンモンとテオは仕方無いって顔をしてたけど、ソラユキはウィンクしてきた。


どういう感情?


「僕も同行させて下さい! 仲間があんなことになってっ、仕組んだ者達がいるなら許せないですっ!!」


ポポヒコ、本気だ。


これは・・参った。私はため息をついた。確かに、義憤感じないか? て聞かれたら、少しはねっ。


「わかった。わかりました! やれるだけやってはみますけど、私達、バンパイア系モンスターの退治専門じゃないですからね?」


そこは一応念を押しておいた。


そしてこれが、私達『ミリミリ隊』と吸血鬼達との戦いの始まりだったんだよっ!!

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