2話 ブラッドストーンの行方 2
珍しくもないけど、ヤンター郷までの街道の魔除けが一部破損してた。
補修系のスキルや素材を持ってるガンモンとテオが、幌馬車の御者に証人になってもらって(後で役場に代金と手間賃請求する)道の簡単な補修を始めた。
で、破損と人と馬のニオイを嗅ぎ付けて寄ってきたモンスターの処理を私とソラユキが担当することになったわけ!
「ミャースッ!」
「ポヨポヨっっ(声じゃなくて動きで音立ててる)」
現れたのは中型犬くらいの大きさの猫型モンスター『ベビー八つ裂きキャット』と、半透明ボディの不定形モンスター『原種スライム』の群れ。
「病み上がりの肩慣らしにちょうどいいわっ」
私は『収納ポーチ』から大盾『ラージシールド』とトンカチ型の鎚『ウォーハンマー』を取り出し、構えた!
「華麗にいくわよっ『ウィークネス』!!」
風の力を宿す短い杖『シルフワンド』を振りかざし、猫とスライムのモンスター群に身体弱体化魔法を纏めて掛けるソラユキ。
結構負荷のある魔法だけど、この範囲ボリューム! 魔力強いんだよね。
「そして翔ぶっ!!」
翼をはためかせ飛び上がるソラユキ。
「ホッホッホッ! 非力な地上のあなた達!! やっておしまいなさいっ、我が下僕、ミリミリ号っ!!」
「誰が下僕だよっ?『号』とか付けられたしっっ、もぅコンニャロー!!」
盾で『毛針攻撃』を防ぎつつ、弱体化したベビー八つ裂きキャットを纏めてウォーハンマーで吹っ飛ばし、弱体化しても打撃通り難い、原種スライム群は・・
「1、2のっ!」
溜め動作で魔力と生命力を高める!
「3っっ!!!」
鈍器系溜め打ち技『ヘビィスタンプ』でパワーのゴリ押しで消し飛ばしてやった。
「ふんっ」
肩にウォーハンマーの柄を置く。そう、私の固有能力は『怪力』なんだ!
「やるじゃない、我が『パワー系』下僕っ、ホッホッホッ!」
高笑いして飛び回ってる鳥類の人のアビリティーは『溢れる魔力』。魔力が有り余ってるからアレな感じだと思うんだ・・
「お~い、道の応急措置済んだぞ~?」
「小遣いGETだね。ギルドの『素行評価』上がるかも?」
補修は済んだみたい。
興奮して飛び回ってるソラユキを『投げ縄』で捕まえて降ろし、私達は幌馬車でのヤンター郷への移動を再開した。
・・・夕方、ヤンター郷に到着!
ヤンター郷は元はロングフット族主体のどうってことない農村だったそうだけど、100年くらい前に近くに試練迷宮『苦界迷宮』が出現!
その攻略の為に人が集まって一時は『ヤンター市』にまで発展っ。
でも70年程前に苦界迷宮の主が討ち取られ、ダンジョンの魔力が衰え、探索の『旨味』が薄れるとすぐにヤンター市は衰退。
40年前には元の『ヤンター郷』に戻っていた。しかし!
「相変わらずワープラント多いね」
かつてはロングフット族主体だったヤンター郷は住人の半数近くが植物系種族ワープラントとその混血の郷に変貌していた。
やたら街中に緑が多い・・
理由は郷の周囲で半ば森に埋もれてるかつての『ヤンター市の残骸』。
他の種族はそう住めたもんじゃないけど、ワープラント的には『程好い住環境』になるらしく、どんどん移住してきちゃう。
まぁ小鬼のゴブリン族とかが住み着くよりずっとマシなんだけどね。
「身分証明、取ろう。ここのギルド支部は潰れてるから役場だ」
ガンモンに促され、まずは『探索課』が冒険者ギルド支部の役割を果たしてる郷の役場に向かい、ギルドカードなんかで照合して『バズ・レンザの委任状』に魔術印の判子をドーン! と押してもらい、
「最初の道具屋が怒ってるから話しを聞いてやって下さい。クレームが役場に来るのは筋が違うでしょう?」
という役人からのクレームを、
「ですよねぇ~っ、ハハハ」
と笑って誤魔化し、やっぱ怒ってた道具屋はスルーして武器屋に直行っ!
委任状の魔術印を木彫りのキノコ型だった鑑定器で確認してもらい、
「水晶通信とかでレンザ氏から話を聞いていますよね? 許諾状と仮交換用の武器をお願いします」
「ミリミリ、売った冒険者の探索ルートも聞いた方がいい」
「テムは自分で聞かないの?」
「そろそろ踊ろうかしら?」
「どんなタイミングでっ?」
ややこしいぞ、仲間がっっ。
「なんか俺が悪いみたいで、参ってるんだよなぁ」
ハーフのワープラントらしい武器屋は困惑しながらも魔術印付きの許諾状と、代わりの『汎用クレイモア+1』を渡してくれた。
ソラユキの踊りも、
「・・いや、忙しいんでもう勘弁してくれよ?」
と言われるまで見せ、件のブラッドストーン+2付き剣を売った冒険者の大まかな探索ルートと、付き合いのある店の話も聞けた。
「聞き込みとダンジョン用の買い物は分担しよう。俺とテムは買い物する」
「では、わたくしとミリミリで二手に分かれ」
「ダ~メっ! あんた1人だといつまでも終わんないわ。まず途中で飽きるでしょ? コンビでやんよ」
「・・・」
頬を膨らませてもダメ!
私とソラユキは件の冒険者パーティーの馴染みの店や、知り合いなんかからざっと彼らの今回の探索について聞いて回り、すっかり夜遅くなってから待ち合わせていた宿『柳亭』の酒場でガンモン達と合流した。
「武器屋の話と合わせると、大体のターゲットの探索ルートは把握できたよ?」
「雑作もないことねっ、ホホホ!」
いちいちソラユキが踊ろうとするやら、やっぱり途中で飽きるやら、手こずったわ。
「そっか。こっちは無難に必要そうなもんは買えた。耐性アクセサリー類は役場の探索課からのレンタルで済ませたよ」
「諸費用込みだと今回ギャラ微妙だから」
相変わらず手堅いガンモン&テオのコンビ。
「よ~し、取り敢えず。確認済んだらまだ開いてる蒸し風呂屋行って、明日は昼出発にしようよ? 疲れた!」
「お風呂は賛成よ!」
「あたし、睡眠は大事だと思ってる」
「ミリミリはすぐ『昼出発にしよう』て言うよな」
うっ・・ガンモンに痛いとこ突かれつつ、確認作業に移った。
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ここで、ターゲット情報を確認っ!
『ヒロシ・カメオ』ロングフット族の男でクラスは戦士。C級。21歳。
最初は傭兵みたいなことしてたみたいだけど、ここ数年はヤンター郷を拠点にして苦界迷宮で収集活動や変動調査、あとは内部の探索設備補修業者の護衛を主な生業にしてる。
典型的なダンジョン特化冒険者だね。
今回のパーティーメンバーはワープラントの僧侶、フェザーフットハーフの鍵師、ドワーフの戦士兼精霊使い。うん、バランスは悪くない。
ルート取りも無難で、地下4層での収集活動と、いくつかの討伐依頼をこなす予定みたい。
役場の探索課に16日前後の探索と届け出を出してる。
そして日が変わって、すでに11日が経過。ヒロシ隊は4層仕様の高価な緊急テレポート帰還魔法道具『脱出の鏡』も全員所持してる。
16日くらい経つまでヤンター郷で待つって手もあるけど、バズとの契約は『ダンジョンまで交換しにゆく』ことも含まれてる。
『闇と血』の性質のブラッドストーンは希少。それも+2評価は達人のB級冒険者界隈でもわりとレアな物だからね。
のわりにはうっかりミスもいいとこなんだけど・・
──────
というワケで、森に埋もれつつある苦界迷宮の入口の1つの前の建屋で、受付に探索課の許可証と冒険者ギルドカードを提示して鑑定チェックも済ませ、入口の前に私達は立った。
「カビと土臭い・・」
そんな好きじゃないわ~、ダンジョン!
「みんな、あたし達がレンタルした『ここ用』の耐性アクセサリー、装備してる?」
レンタルした腕輪型の精神耐性強化アクセサリーを付けた腕を掲げてみせつつ確認してくるテオ。
全ての完成したダンジョンには『固有の呪い』がある。苦界迷宮には探索者の『トラウマを刺激する呪い』が掛けられてた。
もうダンジョン主が死んでるから弱まってるけど、3層以下は結構キツイらしい。
全員ちゃんと付けてた。・・私の、ちょっとサイズ合ってないかも? まぁ籠手で固定するから戦闘中外れることはないけど。
「灯りを頼むぜ?」
「よろしくてよ? さぁミリミリさん一緒に!」
「なんで私もよ? 魔力そんなないのに・・」
なんだけど、ソラユキ合わせる気満々でシルフワンドを構えて待ってるから、折れたわ。
「「・・ライト!!」」
2人の魔力で浮遊する光源が3つ出現させ、ダンジョンの闇を照らした。




