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ミリミリ・シルバーポット冒険記  作者: 大石次郎


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13話 ゾーナグ砦戦 1

「ヒロシが?」


ヒロシのハイバンパイア化と脱走、吸血鬼達に拉致された報せには驚かされたけど、ポポヒコは特にショックだったみたい。


ただゴブリン•バンパイア討伐とその後の血の蝙蝠騒動で大樹の森21番ベースは混乱していた。


治療と浄化、一部蘇生処置も。『失踪者』もいくらかいた。私達は手伝いはしたけど、僧侶のポポヒコは動揺はしても対応に追われてたね。


夜が明けて一通り状況が整理され、ギルドの調査部からの聞き取りが済むと徹夜のポポヒコは支給の『ポーション+1』を飲んで爆睡。


仮眠は取れていた私、ソラユキ、ガンモン、テオはポーション+1を飲んで取り敢えずトレーニングをすることにした。


「下手したら今日しか訓練する時間は取れなさそうだ。それぞれテーマを1つに絞って生存率上げようぜ?」


「だね。よし、じゃあ」


ガンモン案に乗っかって、早速大ベース内の空いてるスペースでトレーニングに取り掛かろうと思ったらテオに袖をちょい、と引かれた。


「なに? テオ」


「これまでクエストの流れがあってもそろそろ仕事選んだ方がいい」


「あー、確かに。B級の範囲になってきてるよね••」


今回は本格的にギリだったもんね。


「どのタイミングでも終わったところで鎮魂の舞を踊るわ」


「うん、それもわかった。このクエストラッシュの『締め』と『間合い』は考えるよ」


たぶん午後には調査部から新規の情報が入ると思う。

それまでは特訓だ!



決めたトレーニングテーマは全員シンプル。


私は『火系魔法で牽制してからの追撃』。搦手、覚えとこう。というわけ。


ガンモンは『大弓の活用』。侍クラスは大弓も使える。今なら高価な銀の矢もギルドから支給あるから。


テオはアビリティの気配絶ちの持久性アップ。ハイバンパイア相手だと『我慢比べ』みたいになるみたいだから••


ソラユキはちょっと意外だったけど『加速魔法を使っての扇の活用』。確かに身のこなしはできるし、『エッジファン』をガンモンに+1に打ち直してもらったけど近接に関心あると思わなかったよ。


「よし、昼までやろうっ。終わったらここの食堂のランチに私がたっぷりレーズン掛けてあげるからね!」


「「「•••」」」


え? 微妙な反応っ。


とにかく、他にもトレーニングしてる人がちらほらいるモータン市団の建屋の脇の広場で特訓開始!


「『トーチ』!」


発火魔法で炎をボッと起こしてシルバーハンマーやポールアクス+1を打ち込む、あるいはラージシールド+1で体当たり。


冒険者ギルドの教練所でも習った初歩的な魔法と物理のコンボだけど、実戦では手間に感じたり魔法を挟むと大技系のスキルが打ち難いから、効率悪くてやってこなかった。


でも『大技のゴリ押しが通じない相手』『簡単に掃討できない大群』『噛まれたくないから牽制大事』となるとちょっと話変わってくる。


私は初心に帰って『初級者向け魔法コンボ』の反復練習に励んだ。


ガンモンもそう言えばあんまり見ない大弓を器用に撃ちまくって練習。


テオは座って集中し、透けて見える錯覚がするくらいに気配絶ちをしてそのままダッシュスキル発動!  負荷を上げるのと、セットで実戦で通用させる、ってことだろね。


ソラユキは一人稽古どうするのかな? と思っていたら『クィックムーヴ』を自分に掛けた状態で魔力を帯びた金属の扇エッジファン+1を二刀流に構えて、猛烈な速さで扇術(せんじゅつ)の基本の型を始めた!

成立させる身体性もだけど、癖強めで、高速化した殺陣や舞を見ているみたいだった。

これまでのクエストラッシュで後衛が詰められかけたり、後衛を守るのに前衛が四苦八苦する場面多かったから、フィジカルは高いソラユキ的に思うところあったのかもね。



午前中の特訓を終えて、モータン市団棟で常備されてる普通のポーションと普通の魔法石の欠片で体力と魔力を回復させ、食堂で私が皆とたまたまいたモッチの分もたっぷりレーズンを掛けてあげてランチを食べていると、


「おおっ、ミリミリ隊! まだおったんや」


ヒルベリー坊っちゃん団長とユシュカさん達が食堂に来た。


そう、討伐が終わり、治療なんかも一段落ついたから、現地の状況確認や、失踪した仲間の捜索の無い人達はどんどん大ベースを去ってしまい、食堂もだいぶ人が減っていた。


「はい、ポポヒコが徹夜してまだ寝込んでるから午前中は自主トレしてました」


「へぇ~」


「意外と真面目だなぁ」


「意外と?」


「いやいやっ」


的確にソラユキを怒らせてくるヒルベリー!


「よいことですよ。ポポヒコ君も寝込む程力を使ったことは良い経験となるでしょうね」


「身内に変事があったようであるがの」


ヒロシ••モッチ以外の私達は食事の手が止まってしまった。


「ワシら3人は昼食べたらもう行くけど、調査部とギルドがC級向けにクエストの調整しとったからミリミリ隊は残っといたらええわ。モータン市より僻地のここの方が競合少ないし、選べるで?」


「はぁ」


そんなもんかぁ。ここだとどこのギルド管轄なんだろ?


「モータン市の仕事も取ってくれよ?」


4人は食堂の注文口に向かいかけたが、


「そやそや! 忘れとったわっ」


ユシュカさんが戻ってきて『普通の飴』がどっさり入った小袋をくれた。


「••あざーす」


そういやくれる、って言ってたっけね。



食後、ポポヒコの様子を見に行ったらちょうど起きたところで、治療活動頑張ったポポヒコには支給された『魔法石の欠片+1』を使って魔力も回復させた。それから、


「朝御飯に軽くお茶どう?」


と売店で蜜煎りのお菓子を買って、皆で売店近くの席でお茶にして、いい時間になってたから、モータン市団の建屋の仮設のギルド受付に行ってみることにした。


情報とクエスト、更新されてるかな?


________



ミスリル製の杭で壁に手足を打ち付けられ、身動きが取れねぇ。


杭には何か魔術が掛けられてるらしい、なんの力も発動しない。せいぜい血を体内で操って失血死を防いでるくらい。


「ヒロシ様。聞いておられますか? このように、今の伯爵様は7代目なのです」


メイドみたいな格好をしたハイバンパイアが延々『紙芝居で』俺に一族の成り立ちを聞かせてくる。うんざりだな。


「お前らの身の上なんざ知らねぇ。『飽きたら代替わり』だ? クソ暇な死に損ないはどっか人気の無いとこでひっそり自主的に暖炉ん中突っ込んどけよ?」


「はい、僭越ながら、生意気です」


メイドバンパイアは血ではなく、実体ある鍔の無い『ロンデルナイフ』を俺の眉間に投げつけ突き刺してきた。


一瞬意識が飛ぶが、ナイフが眉間が抜け落ち、杭のせいでノロマな再生で脳が再生すると徐々に意識は戻る。


俺の足元にはもう百本以上の血塗れのロンデルナイフが落ちてる。


「とても効率が悪いです。状況を理解し、早く受け入れて下さい。一連の作業で手駒は増えましたが、『新しい家族』は十分に増えていません。ヒロシ様、あなたばかりに構ってはいられないのです」


「••俺はそんなに恨みがましい方じゃない。100回分の借りは1回でいいや」


言った側から眉間にロンデルナイフ投げ付けてきやがった。コイツ、短気だな。


俺がまた死んで、ズルズルと生き返っていると、なんのつもりか『古風な貴族女児』の格好をしたルルオとシシオが石造りのこの部屋に入ってきた。


「『姫』がもう連れて来いってさ」


「『ナオミン』のやり方だと頭オカシイのしか育たないんだよ」


「心外です。『教育係』として180年余りの私の信頼と実践を」


「もいいからさ、『イスティオ』の治療とか、『モヴィア』の仕事の支度とか色々あるから」


「早くしろよー」


ナオミンとかいうらしいメイドバンパイアはため息を紙芝居の額を置き、椅子から立ち上がると、やっとこを取って俺に近付いてきた。


「ヒロシ様。解放しますが無駄な抵抗はしないで下さい。時間の無駄ですし、あなたも『交渉』はしたいでしょう?」


ナオミンは勝手なことを言いながら直にやはり触れられないらしい、杭をやっとこで全て抜き、俺を解放した。


抜けると傷はすぐ治るし、山積みのロンデルナイフにこびり付いた血液も全て回収し、即、取り敢えず『血の小剣』を造りだしてすれ違い様にナオミンの首を跳ねて、床に落ちる前に頭に7本ロンデルナイフを投げて突き刺してやった。


ナイフまみれで床に転がるナオミンの首。


「1回は1回だ」


「あっ、無駄な抵抗するの?」


ルルオが血のレイピアを構えてきたが、俺は血の小剣を掌から吸収して消した。


「取り敢えず、さっさと姫だか伯爵だかのとこに連れてけ」


ハイバンパイアの双子に俺は言ってやった。


_________



もう半分くらいは帰ったり、失踪者捜索や森の状況調査クエストに出払っていたけれど、大樹の森でのモータン市団の討伐クエストの完了と解散式が市団の建屋で行われていた。


「蘇生と浄化は完了しましたが、後遺症が残られた方や失踪者も十数名程••補償等の手続き等は所属組織の受付まで。お疲れ様でした。えー、酒と肴は領主様の奢り、です! 一先ず、乾杯っ!!」


ヒルベリーの音頭で簡単な式は始まった。


「••早めに立ちます。皆さんはお元気で」


杯を片手に、ポポヒコは悲壮な顔で言ってくる。


ポポヒコはソロで、状況が不透明な『ゾーナグ砦防衛戦クエスト』に参戦を決めていた。


ゾーナグ砦は大樹の森の遥か東にある、巨人族の多いエリアからの侵入を阻止する魔力障壁の要になってる砦。


最近『吸血鬼化した巨人族』が増えてるらしい。相当ヤバい••ミリミリ隊はもう少しC級に相応しいクエストを受注したんだけどね。


止めたけど、ゾーナグ砦付近ではブローカーらしき者の姿が度々目撃されていて、事態の本線に近そうなクエストではあったんだ。

ヒロシの件で、ポポヒコは腹を括っちゃったみたい。


「あまり思い詰めないでね」


「わたくしはそんなに気にしたことないけど、魔力残量は3割で撤収判断がセオリーらしいわ」


「ソロなら教会関係者と組むといい。ギルドはソロをあまりフォローする構造は無いし、教会抜きで領兵と組むと便利使いされる。ヒルベリーのようなタイプ稀だ」


「聖水は支給より多めに自腹で買っといた方がいい」


「うん。ありがとう。短い間だけど楽しかったです、ミリミリ隊!」


笑って、穴空き帽子から見える大体が白い花々を揺らし式を抜け、ギルドでタダで使用許可が出たらしい転送門を使いに、ポポヒコは建屋から出ていった。

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