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都市伝説好きな少女の記録

都市伝説好きな少女が解体される旧校舎で見た物

作者: 大浜 英彰

挿絵の画像を生成する際には、「Ainova AI」を使用させて頂きました。

 親戚の家を訪問する用事に託けて訪れた町の一角は、私の記憶の中にあるイメージから大きく変わっていた。

挿絵(By みてみん)

「そっか…ここも再開発の手が入ったんだ。」

 老朽化したビルや団地が破壊され、新しいビルや住宅に置き換えられる。

 私こと鳳飛鳥(おおとりあすか)が生まれる遥か以前には「ニュータウン」と呼ばれていた吹田や泉北の住宅地も、この頃は耐用年数の限界に来た団地の取り壊しだの住民の高齢化やら減少だのにより、随分と様変わりしているらしい。

 今は日本中が再開発の時期にあるのかも知れないね。


 そんな私が足を運んだ先もまた、現在進行系で解体工事が行われている真っ最中だったの。

「そしてここも、そんな再開発の波に呑まれたのか…」

 今は休憩中なのか作業員の姿は見えず、パワーショベルを始めとする重機も動いていない。

 そこに聳えていたはずの旧校舎の廃墟は今や半分以上は取り壊されていて、往時の姿は影も形もなかったね。

「心霊スポットとしてそれなりに知られてはいたけど、目撃例が小粒だからって後回しにしていたのが悪かったのかな…」

 面白そうな学校の怪談や都市伝説に首を突っ込んで力試しをしてきた私だけど、こうして心霊スポット自体が壊されてしまったら打つ手はないね。

 昔の人は「後悔先に立たず」と言ったけど、この諺をこれ程までに痛切に実感した事もないだろうな。

「仕方ない、駅前の古本屋に行って均一棚からオカルト本でも漁ろうかな…」

 そうして肩を落として帰ろうとした、その時だったの。

 死んだように静まり返っていた再開発工事の現場に潜む、怪しい気配を感じたのは。

 視線を上げた時、私は待ち望んでいた光景を目にしたの。

 かつて三階の床があったであろう空中を、半透明の人影が平然とした様子で歩いている。

 肝試しの若者グループが目撃したという地縛霊とは、どうやらあれみたいだね。

 確かな情報筋によると、女子生徒に手酷く振られて自ら命を絶った男子生徒の成れの果てだったかな。

 解体中の旧校舎が倉庫代わりに使われていた頃から、生徒や教職員の間で目撃例があったみたいだけど。

「哀れなものだね。自分のテリトリーが取り壊されるのを止められず、かと言って成仏する事も出来ないんだから。」

「お前に何が分かるんだ?」

 気怠そうな声は、私の頭上から聞こえてきたんだ。

 見ればさっきの半透明な人影が、私の方をじっと見下ろしていたの。

「さあ、分かんないなぁ。だけど貴方も、私の事は分かんないでしょ?」

 そうして私はセーラー服のポケットに手を突っ込み、中身を頭上目掛けて放り投げてやったんだ。

「悪鬼退散、急急如律令!」

「うぐっ!あっ、ああ…」

 見れば先の半透明な人影が額に張り付いた黄色い霊符を剥がそうとして、必死になってもがいていたの。

 だけど、ああなったら手遅れだよ。

「冥府で御眠りなさい、成敗!」

「ぐはっ…」

 やがて鶏の血で記された経文の文字が眩い光を放ち、件の半透明な人影は煙のように消え去ってしまったんだ。

「これは素晴らしい。流石は清朝末期に日本へ移住された高名な道士様の流れを汲む、由緒正しき道教寺院の霊符だね。地縛霊程度なら難なくやれちゃうんだ。これと同レベルの霊符が自前で作れるように、私も勉強しなくちゃなぁ…」

 踵を返しながら、私は道教の伝承に則って作られた霊符をあらためたの。

 学校の怪談に引導を渡せたというのも、オカルトマニア冥利に尽きるって物だよ。

「何だ、さっきの悲鳴は!?」

「誰か事故にでも遭ったのか?」

 そんな私の後ろでは、休憩を終えた作業員達が大騒ぎをしている真っ最中だったの。

 どうやらさっきの地縛霊が上げた断末魔は、霊感のない人達にも聞こえる程に大きかったんだね。

 再開発で取り壊される真っ最中だとはいえ、心霊スポットが健在なうちに間に合って良かったよ。

 だけど、これで本当に心霊スポットじゃなくなっちゃったけどね。

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― 新着の感想 ―
都市伝説が好きな鳳飛鳥ちゃん、相変わらずの鮮やかな活躍でした。 霊を放っておいたら再開発の最中に何か事故が起こるかもしれませんし、 結果として心霊スポットはなくなってしまいましたが大勢の人を救ったのか…
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