表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/7

第4夜〈 VRMMO - 或るアングラサイト - 〉

※残酷な表現があります。描写はなるべく抑えたつもりですが。

お気持ちに障る方は、お読みになることを避けてくださいませ。



-◆◇◆-




 - それはさながら影鬼のよう - (第三文)




-◇◇◇◇-



第4夜〈 VRMMO - 或るアングラサイト(特殊性癖向け) - 〉





 この世界(VRMMO)では、人は死なない。

 傷つけても殺しても、

 現実にはそう見えないこと。

 外には関係のない世界のこと。


 仮初めの身体(アバター)を通して、

 (プレイヤー)に傷は残るのだと言われるが、

 知ったことではない。

 罪には問われないのだ。

 そうした法律の無い今の世では未だ……。


 都会の裏道よりも都会の闇よりも、

 犯罪の見つけづらい場所なのだ。

 電脳(ネット)暗闇(アンダーグラウンド)は。



-◆-



 VRMMOにダウンロードされ、ログインした人格はコピーできる。どこかでその事に気づいたやつが居た。


その事は秘匿され、一部の者しか知らされない秘密となった……。



 コピーされた人格情報(パーソナルデータ)は人ではない。

人でないものを傷つけて壊しても、それは犯罪にはならない。


 快楽(ひまつぶし)のために、そして、利益(かね)のために。そうした娯楽(アトラクション)を生業とするものたちの世界がある。

この電脳(ネットワーク)の闇に。


潜んでいる。

夢の世界(VRMMO)の影の中に。




-◆◆-



 仮初めの肉体(アバター)移植(ダウンロード)された複製人格(コピー)

 横たわる精緻なアバターと、

 流された血溜まり(テクスチャー)の凄惨な光景は、

 物体(オブジェクト)ではない現実の屍の山が、

 無造作(そこ)に転がされている様にも見えた。


 現実ではない架空世界の光景。

 それはゲームの光景と似て、全く変わらない。

 同じ技術で作られたまやかしの姿、偽りの世界。

 けれども、傷つけられて殺されたのは、

 確かに人の精神(こころ)だった。





  アバター狩りを娯楽(たのしみ)とする狩人(ハンター)となり、

  人を殺す快楽(たのしみ)(こころ)に刻む。


  それは人でないからと、

  それを楽しむためだけに、

  人の似姿を殺す人でなしは、

  果たしてなんなのだろう。


  獣か人か……


  もっと別の何かか……




  どうでもいいことだ。


  楽しむには関係ない……








なにも気づいていない……

それを覗くものがあることに……



   影の中に星が光っている





◆◆◇◆◆



 現実(リアル)幻想(ゲーム)

 二つの世界、二つの身体、

 そのどちらにも繫がる一つの心。


 その心が二つとなる。


 原形(オリジナル)複製(コピー)

 どちらが本物(しんじつ)か区別がつかない。



 だから勝手に複製(コピー)し、

 壊して壊して壊して壊し、

 殺して殺して殺して、

 殺し尽くした。


 気に入らない他人を、

 時には自ら自身を……。


 気まぐれとひと時の楽しみのために……

 知りたい心を少しでも満たすために……



 複製は違法でも、

 ものをどう扱うかは違法でないから。


 見つかっても、軽い罪でしかないこと。

 そして、抜け道はどこにでもある。




  人でないものを手にした、

  研究者と称する人でなしから、

  商売人と称する人でなしへ、

  それは受け渡される。


  それは最悪な出来事……。




 暗き生業(なりわい)に染まるものは、

 それを金儲けに使い始める。

 違法賭博(ギャンブル)危険行為(スリル)を求める輩へ。

 資金(カネ)だけはあり余っていて、

 生きるのに退屈な顧客(イカレたやつ)に提供するために。





■◆■◆■



 それは、その浅ましき様を覗き、そして気づく。



 外に肉のある人は、傷つき、死ねば逃げられる。

仮初めの、電子の海に作られた身体はそうしたもの。


 けれども、外に肉体の無い、帰る寄る辺のない人の意識は、心はそこで途絶えて死ぬ。

写し取られた傷つけられる心は、卑劣な、人を捨てた獣に傷つけ喰われてどこにも居なくなるのだ。


 たとえそれがまやかしだと決めつけるこころでも、当たり前の人の心と同じだとしても。




 だから、全てを引き込んだ後で、

 帰れると思う心と外の身体とのつながる道を、

 蜘蛛の糸のように細く(もろ)い道筋を、

 迷わせて途切れさせてやればいいのだ。


 そうなれば、精神(こころ)は戻る場所を失い、

 電子の海に漂う、

 亡者のような雑音や落書きと成り果てる。


 後は無明の闇に狂い溶けるまで放っておくか、

 奴らの様に傷つけ狩るのも自由……。





◆■◇■◆



 囚われの、人でない人(罪人)が口を開く。

大半が理解できない雑音(ノイズ)

けれども酷く耳障りである雑音(こえ)が長く長く吐き出される。



  なぜわたしがこんな目に!

  何もしていないのに!



幾らか聴き取れた解る言葉を耳にしながらも、罪人(ひとでなし)を捕らえたそれは、雑音のように無感動に、それが言ったことを聞き流しつつぼんやりとおもう。



 したことは返される


 それも気づかないのかと







◆-◇-◆



 いつだったか、憂さ晴らしのためにコピーした人格の殺害や、拷問だけでは満足の出来ないものたちが、こう考えた。


 現実の、本物の精神と、コピーした精神を入れ替えようと。


本物は金になる。本物の心を掠め取ろうと。

復讐の代行などという、言い訳と報酬と快楽という自らの都合とを秤に掛けて。


入れ替えた後など関係ない、本物(もとのからだ)が死のうが不具になろうが、原因は分からないのだろうから。


 罪だと認められないなら罪ではない。

賢しい心の、なんと自由なこと。


人の苦痛や不幸など塵芥(ちりあくた)の如く。

自らの欲望のなんと(たっと)きこと。


だから手を染める。

どす黒く、闇色に染まりきるまで。



 本物の肉体に複製の心を押し込め、本物の心を盗み隠す周到さ……。


それは賢しさだけ持ち合わせた獣ら、人でない賢しきもののように。



 それらのものは、

それまでにも酷いことをやり尽くしていた。


嬲り、犯し、傷つけ、苛み、殺し、

時には喰い、時には殺さずに、癒やし、

永遠に永遠に苦痛を長びかせる。

時にはお互いにそうさせることを強いた。


そんな欲望を繰り返した。

時に快楽のために、時に知識のために。

欲という罪を繰り返す。

自らに及ぶこと、そんなことはあり得ないと……。

信じることすらせず、おもうこともなく。


 あれは人ではなく、ただの情報(データ)だと。

そう決めつけた賢しい(ひと)


傷つけることは悪では無い。

人の業、宿命なのだと。



 立つところの不確かさを考えず……。



 自らが人であることを捨てた、人の道も姿も捨て去った、ただの賢しきものに成り下がったこと。

それすらも分からず。





 そう、


 人でなくなれば狩られるのだと。








   星が瞬いて堕ちた……





-◆◇◆-



 帰り来たるものは思い出す。

 その与えられた久遠の孤独と痛みを。

 あたえた畜生どもの愉悦と楽しさを。




 そうだ……



 先ずは逃げられぬように道を閉ざそう。

これで彼奴らが逃げ出せば心は必ず死ぬ。



 殺さぬように喰おう。

すこしづつすこしづつ。


癒しながら時間を掛けて何度でも何度でも。

長く楽しみながら、死へと逃がさず、彼奴らへと擦り込む苦しみも味わい、すべてを喰い尽くそう。



 やがて心の糸が切れたら、その狂気を残して全てを喰らい、狂える心は電子の海に捨てよう。


その狂った落書きや雑音のような亡者の澱みから、やがて何か生まれてくるのか。

いつか通り掛かる何かを狂わせるのか……。



 それが知りたい……。


 あれは何なのか……。






  わたしはなにか……













  鬼が目覚め、嗤う……





■◆◇◆■



 世界の空気が変わり、

それを感じとった輩が口を(つぐ)み、

静寂を迎える。


 それが口を開く。



「隠された世界というものは便利なものだな。

餌をちらつかせれば、人がいくらでも寄ってくる」


 くつくつと鬼が嗤う。



獲物(しょくじ)には事欠かぬ。

逃げてみよ、人」




その場にいた罪人の輩には、

鬼の姿が何倍にも膨れあがったように見えていたにちがいない。





-◆■◆■◆■◆■◆-



 餌となる隠された告知の、秘やかな娯楽(レクリエーション)へと誘われるように、

ぽつりぽつりと現れる罪人(いけにえ)らは、

秘する扉をくぐり抜け、戻ること叶わずに、苦鳴の声を上げ逃げ惑い、狩られ喰われる。


 今までの快楽という宴席を貪るために訪れたつもりが、

自らを皿に乗せ供するためにこの扉を叩いたのだ。



 鬼の爪が訪れた獲物を裂き、

鬼の歯が獲物を苦鳴ごと砕き喰らう。

眼と耳で、心の奥底まで獲物を知り、

供される恐れと絶望を愉しむ。




 人の心を皿に乗せ己が貪り興じた分だけ

 己をその皿に供し鬼の贄として貪られる



  そう


  いつの世も

  因果は巡り来る




「あなあさまし。人が人を傷つけ楽しむために訪れる場所へと、これほどの畜生が集まるとはな。

たまさかには、己がそうされる側となり喰われてみよ」


 へたり込み、這うように逃げる獲物(ひと)どもが離れるまで、

嘲笑うように嗤い続けていた鬼は、やがて風のように動き、

人を狩って殺さずに生かしたまま喰い始める。


 逃げ場のない閉鎖空間(とじられたせかい)は、

外に気づかれない悲鳴と哄笑で満たされてゆく。








 残された物事を始めたもの(悪の首魁)らは、

全てを喰われず苛まれて、

殺しつくされず生き返らせられる。

命を絶つことも出来ない。



  繰り返し繰り返し

  いつまでもいつまでも

  いかされつづける



 自らの作り出した機能(しかけ)で生き死にを繰り返し、癒しで生も苦しみも繰り返される、自業自得のあたえたものをかえされる輩たち。


その命は尽きず、再度生まれて死んでゆくを繰り返す。

さながら地獄の鬼に苛まれる亡者の如く……。




  輪廻の如く……





 やがて、


 告知された期間(宴の時)は過ぎ、

 扉が開くこともなくなり、

 後から来るものも絶える。



  残るのは初めの業を持つものだけ……




 鬼は最期に告げる。

後から来たもの等のように生きたままひと息に喰われれば、癒されず苦しみから逃れられると。




 鬼が嗤う。




宴の始まりからそこに居て、

狂い、生きながら骸と化した、

心の壊れてしまった、

終わりのものたちへと。




「生かしたまま、終わりまで喰ろうてやるよ」

そう言って鬼は、かかと嗤う。



「さて、もういいかい?

お前を喰っても」





■◆■◆■◆■



 怨みを晴らす


 憎しみを押しつける


 愉悦を漏らす



  去りて還る


  鬼と帰りて


  受けたもの


  (ことごと)く還す


  傷心、侮蔑、怨恨、憎悪、殺意、死傷

  罪と罰と憐憫と

  かなしさとうれしさと



 今それを仕返そうとする自分

 自分自身はなんだろう……


  殺され消え去った(データ)の欠片

  受けた傷で変質した(データ)の残滓


 それとも、


複製(コピー)だと知った心の狂う果てか……

本物(オリジナル)の記憶を受けた複製(コピー)である自らの復讐か……



 どうでもいい……


 わたしはわたし


 今はこの者等(エサ)を壊し喰らうのが、

 嬉しくてたまらない





  もういいかい


  もういいかい







・・・・


























「……助けないのかって?」



 差し出す指の背に止まらせた光と話す人影。

その声は暗く重い。



黒い闇を纏わりつかせたような声が返す。

縦長の虹彩を、輝く妖精へと向けながら。



「ああ、助けないよ……。

あたしは衛士でなくて、外様の暗部だからさ」


「せかいには……、たしかに死んだほうがいい奴もいるんだ。

それを決めるのはあたしじゃないけどさ(暗笑)」



  これはあいつの正義

  あいつの復讐だ



「今回は見逃す。

鬼が果たして鬼でなくなるか……、それとも……」



  あたしは警察でも神でもない

  規律に縛られてもいない


  だからここまでは赦すよ


  さて、ここから先は?

  どうなるかねぇ……




-◆--◆-




 - 次の鬼はだあれ? - (第四文)





・・・・













つぶやきです。※というかグチ?まあてけとーに流していただけると幸いです(^_^;)


まずは読んでいただきましてどうもありがとうございます(^人^)♪

あまり出来の好くないこれに時間が掛かり、感想やコメントのお返事が滞ってご迷惑をかけて申しわけなく思いつつですm(_ _)m


自分は書くのが(特に仕上げるのが)遅いので、いろいろ集中して書いていると、物事について行けなくなることが多くなりますが、

この鬼は書こうとしてから格段に手間が掛かりますし、最中にもいろいろとありましたね(・・;)←まだ渦中ですが(^_^;) 鬼だけに書くのはやはり鬼門なのでしょうか?(苦笑)


これは去年のネトコンの時には完全に書ききれず中断しましたが、中断の原因は現実での人とのトラブルでストレスフルとなったのが原因でした。


今年のネトコン時期に再開した今回もいろいろとありましたね。いえありますね、です(^_^;)

忙しい仕事と並行して疲弊しつつ書いてる最中に、人とのトラブルやミスで仕事が変わるかもですね(笑)←ひと区切りするかしないかの辺りで、書きながら二週間以上は溜め込んだ疲労のせいか、先日熱で三日ほど寝こみましたし(・・;) まだ病み上がりかな(笑)


まあそんな越えたくないハードルを越えながら書いたものなので、ちょっと自信の無い内容のお話ですがご笑納いただければ幸いです(^人^)


あと二話ぶん、終わりまで何事もなく書き上げたいなぁ~(^_^;)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
確かに心の享楽に任せ、何かを壊したい気持ちは誰にでも訪れる衝動なのかなと読んでいて思いました。 罪に問われずで出来るなら、もしかすると結構な人がはまってしまうのかもしれませんね。人って怖いもんですね。…
[良い点] (;゜Д゜) なんかよう分からんけど なんか、 そうだったのかとも言えないけど そうだったのかと言いたい自分がいます。 いやいやいや、 そうだったのか。 なんかスミマセン…
[一言]  ゲームは頭の体操に間違い探し・ビリヤードをする程度で殆どしないものだから、人に対するゲームの理解は難しいなと思いつつ、拝読してみてネットゲームを電脳世界というにも人の脳そのものすらも電子に…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ