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前夜 〈 目覚め 〉
『電脳の鬼』 -ろーぷれ異文- (改稿版)
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-前文- 前夜、第零夜 〈 目覚め 〉
殺したい相手をあと腐れ無く殺すには
その唾棄すべき存在を
魂すら残さず食ろうてやればいい
この世へと生き返らぬようさせるには
悔いる心を救いとき放つか
輪廻すら怖れるよう傷を刻みこめばいい
恐怖を喰らい愉悦となす
心を喰らい望みを絶つ
力を喰らいおのが身を満たし
魂を喰らい虚無へと堕とす
そして忘れる
歓喜も憎悪も恐怖すらも喰らい尽くし
後には何も残さない
虚無と忘却の彼方に棄てる
残るは黒白の痕跡のみ
それは、炭と灰の如き記憶の残滓
もう思い出さない
かつてあったもの
それはどこにもない
鬼が嗤う
さあ次は何を食ろうてやろうか
闇に昏き悦びが灯る
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まどろみから開かれる眼
電脳の影のなか鬼が目覚める
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