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おおじいじいの木

作者: 一発出来茶太郎

G7サミット前 被ばくの影響の永さを伝えたい

   『おおじいじの木』

 シュシュシュシュシュ

「おい、人が来る。逃げるぞ。」

音もなく立ち去って行った。


「どうだけー。治りそうかー。」

 お坊さんが、樹木医に話しかけている。

「どうさねー。手は尽くしてみるよ。」

 樹木医は答えた。樹木医とは木のお医者さんだ。

 僕はいつも幻聴が聞こえる。森や草花のある所に行くと、必ず聞こえてくるのだ。聞こえないはずの左耳から。僕は片耳が聞こえない。でも、その耳から声が聞こえるのだ。だから僕は幻聴だと思っていた。おおじいじいの木に話しかけられるまでは。

 おおじいじいの木とはお寺に生えているご神木で、樹齢700年のお年寄りの木だ。だから僕はおおじいじいの木と呼んでいる。

「坊やわしは弱りきっている。昔のように綺麗な水が飲みたいものじゃ。聖なる泉の水が飲みたいんじゃが、酌んできてくれないか?」

「誰?」

「わしじゃよ。お前の前に居る木じゃ。」

「え?僕は木と話ができるの?」

「そうじゃよ。草花や木々達がいつも話しかけていたじゃろう?」

「あれは幻聴じゃなかったんだ!分かった。酌んできてあげるよ。」

 聖なる泉とは山の頂上に湧いている、湧き水でできた小さな泉の事だ。

 その前に先生に聞きに行った。

「おおじいじいの木が綺麗な水が飲みたいって、言ってるんだけど、どうしてだろう?先生。」

「そうかー、セナは木の気持ちが分かるのかー。たぶん原発の事故で土が汚染されて綺麗な地下水が無くなったせいかもしれんなー。」

「じゃあ僕、酌んできてあげる」

「泉は遠いいぞー。一人で平気かー?」

「たぶん大丈夫、森が助けてくれるよ。きっと!」

 セナは泉に向かう事となった。

 セナは登山口の入り口に立った。

「いよいよだ!」

 意気込んで歩を歩み始めた。しばらくすると分かれ道が出てきた。

「どっちだー。」

「右の道だよ。」

 森の草花達が教えてくれた。

「ありがとう。」

 セナはゆうゆうと、また歩を進めた。

森の奥に進むと大きな滝が現れた。道がない。すると

「滝の裏を抜けられるよ。」

 森の木々が教えてくれた。

「ありがとう。」

 セナは滝の裏を潜り抜けた。

 セナの後を追うように、一人の大人が後をつけていく。セナに見つからないように一定の距離をたもって。

「やたー。あれが泉だー。」

 セナは小走りに泉に駆け寄った。

「無事にたどり着いたか。」

 セナをつけていた男が呟いた。

 セナは背負えるだけの水を汲み帰り始めた。

「みんな、ありがとう。」

 セナは来た道を引き返す。時々

「ありがとう。」

を呟きながら。

セナはおおじいじいの木前に帰ってきた。すると後をつけていた男が現れた。

「セナ!酌んでこられたのか?」

 樹木医の先生だった。

「うん、一人で酌んでこられたよ。」

自慢げにセナは答えた。

「じゃあご神木にかけてあげなさい。」

「うん。」

セナは嬉しそうに背負っていた水をおおじいじいの木にかけてあげた。

「おおー。生き返る思いじゃ。セナよ、ありがとう。」

 おおじいじいの木は、セナにお礼を言った。

その数日後、事件が起きた。三人組の男が捕まったのだ。

「なんでも、樹齢のある木に枯葉剤をまいて、枯れた木を買いたたき転売していたそうだ。」

 お坊さんは、そう先生に話していた。

「じゃあ、このご神木も狙われていたのか?」

「警察の話によるとそうらしい。」

「セナには内緒にしてやってくれ。」

先生はお坊さんに頼んだ。セナが行ったいきさつを話して。

「そんな事があったのかー。」

 この事件は二人の秘密となった。

 いっぽう、セナはこの事に気を良くして将来、樹木医になるとみんなに話しているそうだ。 



繰り返さない知恵 考察力 思考力 考える 脳を頂いた 人類の見解は?

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